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産業革命以降の温暖化が、地球に深刻な影響を与えています。化石燃料の使用により排出されるCO2は温室効果ガスであり、その増加により地球の温度が上がっているのです。今こそ注目すべきサステナブルの取り組みを、企業と個人それぞれの視点から紹介します。

持続可能性を意味する「サステナブル」

SDGsと関連が深い「サステナブル(sustainable)」という言葉を、近年よく耳にするようになりました。日本語では「持続可能な」と訳されるサステナブルは、環境問題の文脈で使われるとき、どのような意味を持つのでしょうか。

何を持続させるための概念?

サステナブルは、人間や生物がいつまでも地球に住み続けられる地球環境を整えるための考え方です。

例えば、温室効果ガスによる温暖化は、気温が上昇することによりゲリラ豪雨やハリケーン・森林火災といった自然災害を引き起こしています。国や地域によっては、差別や貧困・搾取などの人権問題、戦争・紛争などの問題も環境を脅かす一因です。

これらを広く解決し、永く住み続けられる環境を整えるのがサステナブルという考え方です。

近年は、企業におけるサステナブルへの取り組みや考え方も「コーポレート・サステナビリティ」として注目されるようになりました。さまざまな企業が、環境保護や社会環境の改善を実現しながら、経済発展も目指す取り組みを見せています。

いつから始まった?

サステナビリティ(持続可能性)に通じる考え方は、1960年代にはすでに人々の中にあったと考えられます。18〜19世紀の産業革命の副産物として次々に環境問題が起こり、このままでは人間の活動に大きな影響が出るという指摘が出始めたのです。

この頃は大気汚染や水質汚染などの環境問題が顕著になり、環境問題に対する意識が高まりました。発展途上国では人口の急激な増加により、食料不足や飢餓・衛生問題が浮き彫りになった時期です。

1972年に国連はストックホルムで国連人間環境会議を開催し、「人間環境宣言(ストックホルム宣言)」を採択しました。

この宣言は、天然資源の保護や再生可能な資源の開発・海洋汚染の防止などを目標に掲げており、「かけがえのない地球」をテーマとしています。サステナブルな社会の実現を目標とするSDGsは、ストックホルム宣言を原型としているともいえるでしょう。

日本では実現できている?

日本人のサステナブルへの取り組みは、進んでいる部分と遅れている部分に分かれます。電通総研による「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」では、エコバッグの活用は世界3位・詰め替え商品の利用は4位と上位でした。

一方で、マイボトルの利用や不用品の回収・リサイクルなどは、12カ国中で最下位となっています。

レジ袋の有料化や詰め替え商品の積極的な販売など、政府や企業が主導して行った対策は功を奏しているといえるでしょう。ただ、個人レベルではまだまだサステナビリティへの意識が十分でなく、改善の余地があると考えられます。

※出典:消費は「私的満足を優先」の日本・欧米と、「公的意義を優先」の中国・ASEAN | 電通総研

サステナブルへの意識が高まった背景

ヨーロッパを中心に、世界各国でサステナブルに対する意識が高まっています。
サステナビリティに深く関わるIPCCの活動と国連で採択されたSDGs、パリ協定について確認しましょう。

1988年に設立された「IPCC」の調査

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)は、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立されました。

IPCCには2022年3月時点で195の国と地域が参加しており、世界中から集められた科学者によって、地球温暖化についての定期的な評価と報告が行われています。

IPCC発足当初の報告書では、温暖化が人為的であるとは断言されていません。しかし最新の報告書では、地球温暖化が人間の活動に影響されているのは疑う余地がないとしています。

※出典:気候変動対策を科学的に!「IPCC」ってどんな組織?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

最新の調査で判明したことは?

IPCCによる最新の第6次評価報告書では、以下のような内容が報告されています。

  • 人間が原因で地球温暖化が起こっていることは疑う余地がない
  • 今後数十年の間に温室効果ガスの排出を大幅に減らせなければ、21世紀中に地球の気温上昇幅は1.5~2.0℃を超える
  • 地球温暖化が進めば、すべての地域で気候を要因とする同時多発的な変化が見られるようになる
  • CO2の排出を実質ゼロにし、温室効果ガスも大幅に削減する必要がある

1つ前の第5次評価報告書でも、地球の気候が温暖化していることは疑う余地がないとし、人間の活動が20世紀半ばから観測されている温暖化の要因となっている可能性を95%と高く評価していました。

第6次報告書では、データから人間が温暖化に与える影響をさらに確実なものと捉え、私たちが取るべき対策の重要性を訴える形となっています。

※出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠) 政策決定者向け要約(SPM)の概要|環境省

※出典:IPCC 第5次評価報告書の概要 -第1作業部会(自然科学的根拠)-|環境省

国連サミットとSDGs

SDGsには、その前段として「MDGs」があります。貧困や飢餓の撲滅・初等教育の完全普及など、主に人権問題について8つの目標を掲げていました。

MDGsは2015年までの開発目標であり、後継として策定されたのがSDGsです。SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月にニューヨークの国連本部で開かれた「国連持続可能な開発サミット」で採択された目標です。

2030年までに達成すべき目標として、環境問題への取り組みを含む17のゴールと169の細かい目標が設定されました。その中で少なくとも6つのゴールが、サステナビリティの実現に関わっています。

※出典:(ODA) ミレニアム開発目標(MDGs) | 外務省

※出典:2030アジェンダ | 国連広報センター

パリ協定の締結

2015年にパリで開催した「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で合意されたのが、「パリ協定」です。パリ協定は「京都議定書」の後継として、以下のような目標を掲げています。

  • 世界的な気温の上昇について、産業革命以前を基準として2℃以下(できる限り1.5℃)に抑える
  • すべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新する

日本は主要なCO2排出国であるうえに、京都議定書の延長に参加しなかった経緯もあり、2021年に以下のような目標が閣議決定されました。

  • 2030年には温室効果ガスの排出量を、2013年比46%まで削減する
  • 2050年には温室効果ガス実質的な排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する

政府はこれらの目標を達成するために、再生可能エネルギーの導入促進や原子力発電所の再稼働も効果的との見解を示しています。

※出典:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省

日本が抱えるエネルギー問題についてもっと詳しく知りたい方はこちら

これからの企業と人に求められること

現在は、企業に地球環境に配慮した活動が求められる時代となりました。企業の資金調達においても、サスティナビリティへの取り組みが条件の1つになりつつあります。

脱炭素とカーボンニュートラル

カーボンニュートラルは、CO2の排出を減らしながら、森林などによるCO2の吸収を考慮して、CO2の排出を実質的にプラスマイナスゼロにすることです。CO2をはじめとする温室効果ガスの多くは、電気や熱を作る際に発生します。

日本は1970年代のオイルショックをきっかけに、再生可能エネルギーの導入促進に力を注いできました。しかし50年以上経過した現在も、発電の多くを火力発電に頼っている状態です。

カーボンニュートラルの実現には、多くのエネルギーを必要とする企業活動にも、CO2の発生を劇的に減らすための「脱炭素」が求められます。政府もCO2削減に対する企業の意識を高めるため、「J-クレジット制度」への申請を募っています。

J-クレジット制度は、申請した企業の温室効果ガスの削減・吸収量を「クレジット」に変換して販売できるものです。申請の要件に当てはまる企業が制度を積極的に活用することで、脱炭素の動きが活発になっていくでしょう。

※出典:再エネ | 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁

※出典:Jークレジット制度とは | J-クレジット制度

ESG投資とサステナブルファイナンス

近年は投資家が環境・社会への取り組みやガバナンスも意識して投資先を決める「ESG投資」が拡大し、企業の間で「サステナブルファイナンス」が重要視されるようになりました。

サステナブルファイナンスは、金融の観点から環境・社会問題を解決に導く考え方です。サステナブルファイナンスを意識した取り組みは、日本企業にも広がっています。

例えばトヨタ自動車は、2021年に「ウーブン・プラネット債」をサステナビリティボンド(発行の用途が環境問題・社会問題の両方に取り組むプロジェクトに限られる債権)として発行し、多くの投資家の注目を集めました。

今後はサスティナビリティの実現に積極的な企業は資金調達が有利になる一方で、サステナブルへの意識が低い企業は淘汰される可能性もあるでしょう。

※出典:ESG投資(METI/経済産業省)

※出典:Woven Planet 債(ウーブン・プラネット債)フレームワーク|トヨタ自動車株式会社

グローバル企業の取り組み例

世界中に店舗を展開する有名企業も、こぞってサステナブルに取り組んでいます。スターバックスは2020年1月、プラスチック製ストローに代わって紙製ストローの導入を始めました。

ストローに使用される紙は適正に管理された森林から供給されたものを使用し、年間約200,000,000本のプラスチックストロー削減を目標としています。

アディダスは海洋環境保護に向けて環境保護団体「Parley for the Oceans」と協力し、海から回収されたプラスチックゴミを素材として使用したモデルを発表しました。

このような取り組みは、サステナブルに取り組む行動が評価につながることを、企業が意識している証拠といえるでしょう。

※出典:プレスリリース(2019/11/26)|スターバックス

※出典:プラスチックがもたらす悲しい結末|サステナビリティ | 【公式】アディダスオンラインショップ -adidas-

個人でも実践できる脱炭素化

政府や企業だけが取り組んでも、サステナブルな社会の実現に欠かせない脱炭素やCO2削減の目標を達成するのは難しいでしょう。個人個人が環境問題に対する意識を高め、自分にできることに取り組んでいく必要があります。

私たちにできる取り組みには何があるのでしょうか。政府が推進する「ゼロカーボンアクション」を基に、アイデアを紹介します。

※出典:ゼロカーボンアクション30|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。

ゴミを削減できるライフスタイル

1カ月間に使うレジ袋の枚数や、ペットボトルの本数を思い出してみましょう。マイバッグやマイボトルを活用するだけで、相当な量のプラスチックゴミを減らせるのではないでしょうか。

びん類や発泡トレー・牛乳パックを回収に出せば再利用の循環に乗せられるため、ゴミを減らせます。電化製品や家具など家庭内のものを修理・補修して長く利用したり、アクセサリーや食器などを代々使い続けたりするのも、ゴミの削減に有効です。

1人1人の地道な活動により家庭ゴミを減らすと、ゴミが燃やされる際に排出されるCO2を削減でき、大きな脱炭素につながります。

サステナブルなファッションやフードの利用

衣料や食料に関するサステナビリティには、個人レベルの取り組みが欠かせません。日本の衣類の廃棄量は年間約1,000,000トンというデータが出ています。もし買う衣類を1人あたり1/4程度に抑えられれば、年間のCO2削減量は約194kgにもなります。

廃棄する衣料品を減らすには、流行に左右されないデザインの服を選び、長く着られるよう工夫する意識が大切です。服をリフォームしたりリユースショップに売ったり、古着を購入したりなど、個人で取り組めることは多くあります。

食べられる食品が消費されずに廃棄されてしまう「食品ロス」も、サステナブルな社会の実現を阻む要因です。保存方法を工夫して食べきれる量だけを購入する、寄付できる食品や調味料はフードバンクに寄付するといった習慣化を付けましょう。

太陽光発電やスマートムーブを導入する

太陽光発電はCO2を排出する火力発電に頼らない、再生可能エネルギーの1つです。自宅に設備を取り入れることで、個人で脱炭素に貢献できます。

Looopでんきの太陽光プランは、初期費用がかからないうえ、10年間の契約期間が満了した後は設備が無償で譲渡されます。太陽光発電の設備が自分の資産になり、住宅ローンに影響しない点はメリットといえるでしょう。

個人ができる脱炭素への取り組みには、自転車や公共交通機関を利用して移動する「スマートムーブ」もあります。自動車のCO2排出量は一般家庭が出すCO2の1/4を占めるといわれているため、可能な限り自動車の利用は控えたいところです。

自動車を運転する際は、スピードを出しすぎない・発進時にアクセルを踏み込まないといった工夫で、エコドライブを心がけましょう。

※出典:住宅・店舗・事務所 | 屋根置き太陽光とくするソーラー|Looop

太陽光発電の設置についてもっと詳しく知りたい方はこちら

再エネ導入の普及に貢献できる電力プランと契約する

個人のサステナビリティに対する意識を高めるには、電気の契約プランを「市場連動型」に切り替えるのも効果的です。市場連動型プランの電気料金単価は日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動しています。

電気の市場価格は、エネルギー高騰をはじめとした世界情勢に大きく影響されるのが特徴です。市場連動型プランに切り替えれば、月々の電気代を把握するために、環境問題を含む世界情勢に意識が向くでしょう。

また、市場連動型プランでは、1日の中で電力使用量を平準化させる「ピークシフト」によって市場価格の高い夕方に使う電気を減らすことで、電気代が安くなります。

多くの人が行動を変えて昼間に多く電力を使うようになると、日中に多く発電される再生可能エネルギーを無駄にせず済むようにはるはずです。

電気を消費する人の行動変容を後押しするため、Looopでんきでは2022年12月から市場連動型プラン「スマートタイムONE」の提供を開始します。サステナブルな社会を実現するためにできる行動を、Looopでんきの新プランで始めてみませんか。

スマートタイムONE | Looopでんきの市場連動型プラン

サステナブルな社会の実現に向けて行動を

産業革命以降、世界中で人々の暮らしはとても便利になりました。しかし、環境を顧みずに活動してきた結果、その代償として地球環境は疲弊しきっています。持続可能な環境の実現に向けて、企業も個人も取り組むべき段階にあるといえるでしょう。

例えば環境問題に積極的な企業を応援することは、地球環境の改善を後押しする行動です。日常生活でもサステナビリティへの取り組みを意識し、今後も長く住み続けられる地球の存続に向けて行動しましょう。