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原発は必要?不要?なくなったら起こる問題と今後に向けた取り組み 原発は必要?不要?なくなったら起こる問題と今後に向けた取り組み

CO2を出さないことから、原子力発電が脱炭素の文脈で注目されています。しかし、2011年に起きた東電福島第一原発事故を機に、日本では安全性に対する懸念が非常に大きくなりました。一方、事故を受けて日本の原発の多くが停止したことは日本全体のエネルギー供給にも大きな影響を与えており、再稼働についての議論も多く存在します。

ここでは、日本の原発の現状とその影響や将来に向けた取り組みを紹介。日本における原発のメリットや課題について解説します。

原子力発電所の現状

原子力発電所の現状 原子力発電所の現状

東電福島第一原発事故の影響を受け、日本国内の原子力発電所は全基停止しました。現在も多くは停止中ですが、安全基準に適合していると認められた原発は一部再稼働しています。日本の原子力発電所の稼働状況がどうなっているか見ていきましょう。

東電福島第一原発事故以降急減した原子力

東電福島第一原発事故以降、日本の発電に占める原子力の割合が急減しました。
1980年代から増加していた日本の電源別発電電力量における原子力の割合は、2010年には25%と4分の1を占めていました。しかし、2011年に起きた原発事故のため、全国の原子力発電所が順次停止し、2012年にはわずか2%まで低下。2014年には原子力の割合は0になりました。2015年以降は少しずつ再稼働してきたので現在は回復傾向にありますが、2019年の時点でも6%と事故前の水準の半分以下にしかなっていません。原発事故によって急減した原子力発電所の割合は、事故から10年以上が経過した現在でも以前とは程遠い状態にあります(※)。

※ 出典:一般財団法人日本原子力文化財団 エネ百科

現在の原発の稼働状況

2022年4月現在、日本の原子力発電所は、①稼働済み、②許可の下りたもの、③審査中、④未申請、⑤廃炉の5つに分かれます。福島第一原発事故の影響により停止した日本の原発は一部再稼働しているものの、多くは審査中や未申請など停止中の状態にあります。

①稼働済み(定期検査中含む)
関西電力 高浜原子力発電所 3~4号機
関西電力 大飯原子力発電所 3~4号機
関西電力 美浜原子力発電所 3号機
四国電力 伊方原子力発電所 3号機
九州電力 川内原子力発電所 1~2号機
九州電力 玄海原子力発電所 3~4号機
②許可の下りたもの
東北電力 女川原子力発電所 2号機
東京電力 柏崎刈羽原子力発電所 6~7号機
関西電力 高浜原子力発電所 1~2号機
日本原子力発電 東海第二原子力発電所
③審査中
北海道電力 泊原子力発電所 1~3号機
東北電力 東通原子力発電所 1号機
中部電力 浜岡原子力発電所 3~4号機
北陸電力 志賀原子力発電所 2号機
中国電力 島根原子力発電所 2~3号機
日本原子力発電 敦賀原子力発電所 2号機
電源開発 大間原子力発電所
④未申請
東北電力 女川原子力発電所 3号機
東京電力 柏崎刈羽原子力発電所 1~5号機
中部電力 浜岡原子力発電所 5号機
北陸電力 志賀原子力発電所 1号機
⑤廃炉(廃止措置)
東北電力 女川原子力発電所 1号機
東京電力 福島第一原子力発電所 1~6号機
東京電力 福島第二原子力発電所 1~4号機
日本原子力発電 東海原子力発電所
中部電力 浜岡原子力発電所 1~2号機
日本原子力発電 敦賀原子力発電所 1号機
日本原子力研究開発機構 高速増殖原型炉もんじゅ
日本原子力研究開発機構 新型転換炉原型炉ふげん
関西電力 美浜原子力発電所 1~2号機
関西電力 大飯原子力発電所 1~2号機
中国電力 島根原子力発電所 1号機
四国電力 伊方原子力発電所 1~2号機
九州電力 玄海原子力発電所 1~2号機

原発の新規制基準

原子力 原子力

現在、日本の原発は安全への最大の配慮を目指し、2011年の東日本大震災後に策定された新規制基準に基づいて運用されています。原発の新規制基準とはどのようなものかを見ていきましょう。

新規制基準の特徴

新規制基準は、福島第一原発事故後に設立された規制機関である「原子力規制委員会」によって2013年に策定されました。安全性が高いといわれていた日本の原発で発生した重大事故を踏まえ、2度と同様の事態を起こしてはならないという反省の下に、世界で最も厳しいといわれる水準で定められています(※)。

新規制基準のポイントは大きく3つあります。1つ目として、福島第一原発事故の教訓により、従来よりも地震・津波への基準が強化されています。

2つ目は核の炉心損傷や格納容器破損といった重大事故(シビアアクシデント)への対策が新設されたことです。このなかには、意図的な航空機の衝突などテロ対策も含まれます。
新規制基準では、仮に想定を超える事故が起きた場合でも、炉心や格納容器に被害がおよぶのを防ぎ、放射性物質の拡散を抑制可能な対策を要求しています。

3つ目として、火山や竜巻、森林火災など地震以外の自然災害に対する安全基準も新たに追加・強化されました。

現在、日本では既存の原発を含めて新規制基準を満たすことが求められています。

※ 出典:原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント|広報特集|資源エネルギー庁

審査の流れ

新規制基準の下、原発を設置・稼働する場合は、電力会社(一般電気事業者)が原子力規制委員会に申請を行い、適合性審査への合格が求められます。審査から営業運転開始までは以下のような流れになっています。

適合性申請
 ↓
審査会合
 ↓
補正書申請
①原子炉設置変更許可申請 原子炉設置の基本設計、体制の整備などの基本方針の変更についての認可申請
②工事計画認可申請 設計・工事の品質管理の方法などが設置許可と整合しているか、基準に適合しているかを認可申請
③保安規定変更認可申請 保安のために必要な措置が充分であることを認可申請
 ↓
燃料装荷
 ↓
原子炉起動
 ↓
発電機の送電網接続
 ↓
営業運転開始

適合性申請は、基本的な設計を審査する「原子炉設置変更許可申請」、詳細な設計審査を行う「工事計画認可申請」、運転や管理方法について審査する「保安規定変更認可申請」の3種類があります。
工事や保安、安全対策に関する計画を申請書として提出し、3つの審査は並行して実施されます。審査会合の後、必要に応じてさらに内容を充実させた補正書を提出する場合もあります。
その後、審査内容ごとに審査書の作成などが求められ、3つすべての審査に許可・認可をもらい、使用前検査などさまざまな検査にも合格しなければなりません。

こうして新規制基準に適合していると認められた原発のみが、燃料装荷(原発の燃料であるウランの装荷)・原子炉起動(原発の心臓部である原子炉の起動)・送電網への接続(実際に送電開始)といった再稼働へのプロセスを経て、営業運転を開始できます。

原発再稼働を期待する声

現在、日本の原発は厳しい基準の下で運用されていますが、こうした新基準が必要とされるのも、一部で原発の再稼働を期待する声が上がっていることに理由があります。
ではなぜ、原発再稼働が望まれているのかを見ていきましょう。

原油・天然ガスへの依存を減らす

原子力発電に期待が高まっている大きな理由は、原油や天然ガスといった化石燃料への依存リスク(価格高騰のリスク)です。

一時期は日本全体の発電量の4分の1を担っていた原子力発電の多くが停止したことで、不足分を補うために日本では化石燃料への依存が進みました。2018年における日本の化石燃料依存度は85.5%とかなり高い水準です。
原子力の不足分を代替しているのは主に天然ガスで、2010年には18.2%だったものが2018年には22.9%に増加。原発停止によって日本の天然ガス依存が過剰となった面は否めません。

化石燃料への依存が増えることで大きな問題になるのが、日本では原油や天然ガスのほとんどを海外から輸入している点です。日本のエネルギー自給率は11.8%と低く、OECD諸国35カ国中34位です。そのため、海外情勢の変動による資源価格高騰の影響を非常に受けやすくなっています。
中東情勢はもちろん、最近ではウクライナ戦争もあり、さまざまな政治的・経済的要因を受けて原油・天然ガス価格が高騰しています(※)。

資源価格の高騰は社会や経済に直接影響をおよぼします。原発停止後、日本では電力価格が上昇傾向にあり、特に雪や厳しい寒さで暖房器具の使用が欠かせない冬場は電気料金が上がると国民生活へのダメージが大きくなります。こうしたリスクを避けるためにも、海外に依存しない発電方法が求められています

※ 出典:資源エネルギー庁 2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)

脱炭素に貢献できる

原子力発電に期待が寄せられるもう1つの理由に、温室効果ガスを排出しないエネルギーであることが挙げられます。

現在、地球温暖化対策として世界中で脱炭素化が進められています。
2015年にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では多くの国に温室効果ガスの排出抑制を求めるパリ協定が結ばれました。

アメリカは2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて全体的な排出を0にするカーボンニュートラルを目指すと宣言。EUでも2030年までにCO2排出を55%にする野心的な削減目標を定め、さらに、イギリスや中国もカーボンニュートラルを目指すと表明しています(※)。日本でも、2020年10月に2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。

温室効果ガス削減目標を達成するには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを普及・拡大させるのが第一です。しかし、再生可能エネルギーによる電力供給はまだまだ理想的な量には遠いため、発電時にCO2を出さない原子力発電が注目されています。たとえば、2022年2月にEUの政策執行機関である欧州委員会(UC)は、原子力を環境にやさしい「グリーンエネルギー」と認める方針を打ち出しています。

フランスのように脱炭素のため新たな原発の新設を計画している国もあります。日本でも、2050年までに掲げた目標を達成するには、再生可能エネルギーのみでは不十分と考えられ、原子力発電への期待が上がっています。

※ 出典:経済産業省 今後の原子力政策について

原発再稼働反対の声

エネルギーの安定供給や環境問題の面で原発は注目を集めていますが、一方で原発再稼働には反対の声もあります。原発に対する国内世論の現状や、反対の声が上がる理由について見ていきましょう。

放射性廃棄物が出る

原子力発電には、発電で使用した使用済み核燃料による放射性廃棄物の処理問題があります

日本では一度使用した核燃料の再処理を行い、重量の95%を再利用しています(※1)。しかし、残り5%は利用できず廃液になるため、融かしたガラス原料と合わせてステンレス容器に流し込み、ガラス固化体として冷やし固めます。これが高レベル放射性廃棄物です。
高レベル放射性廃棄物は、放射能レベルが十分減少するまでに非常に長い時間を必要とします。ウラン鉱石と同じ放射能レベルになるには数万年かかる(※2)といわれ、人から隔離した場所で長期間保管しなければなりません。
しかし、これはあまりにも長期間であり、高レベル放射性廃棄物を適切に管理し続けられる保証は誰にもできません。また、地中深くとはいえ、地球環境を放射性廃棄物で汚染することへの批判は根強く存在します。

政府は地下深くの安定した岩盤に閉じ込める地層処分を提唱していますが、日本では受け入れる自治体がほとんどありません。
2020年には北海道の寿都町と神恵内村が地層処分の前段である文献調査の受け入れを決めました。しかし、この後もボーリングによる地層の調査や地下施設で試験を行う精密調査が必要で、すぐに処分ができるわけではありません。

原発を運用する上で、放射性廃棄物をどうするかは重大な課題になっています。

※1 出典:資源エネルギー庁|放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて
※2 出典:電気事業連合会|高レベル放射性廃棄物の地層処分

事故への懸念

原子力発電はひとたび事故が起こると、周辺地域を巻き込んだ大災害へ発展したり、最悪、地球規模に影響をおよぼしたりする可能性があります。

福島第一原発では炉心融解や水素爆発により放射性物質が拡散し、周辺住民が避難しなければならない事態になりました。東日本大震災による影響も含めると、福島県における県内外への避難者数は2020年7月時点で37,299人でした(※1)。
また、1986年に旧ソ連のチョルノービリ(チェルノブイリ)で起きた原発事故では、原子炉と建物が破壊されて大量の放射性物質が放出。北欧や東欧にまで拡散され、13万5000人(※2)といわれる周辺住民が強制避難により移住させられました。周辺では住民の急性放射線障害や小児甲状腺ガンの急増など、重大な健康被害が報告されています。

このように、原子力発電所が事故を起こすと原発そのものはもちろん、放射性物質が撒き散らされることで周辺に住む人々にまで広範囲の影響を与えます
日本では福島の教訓を基に新規制基準が作られていますが、人間のやることに「絶対」はなく、どんな基準や対策をもってしても「絶対安全はありえない」という声は根強く残っています。

※1 出典:福島民報 【震災 原発事故9年6カ月】避難者数3万7299人 仮設入居は12人 2012年の0.03%
※2 出典:京都大学複合原子力科学研究所 チェルノブイリ原発事故

再稼働反対が多数派

2022年3月で東京電力福島第一原発事故から11年が経とうとしている現在でも、日本国内では原発再稼働に反対する人々が多数派を占めています。

2022年2月19日、20日に朝日新聞社が実施した全国世論調査(※)では、現在停止している原発の運転再開について「賛成」38%に対して「反対」は47%と反対が上回る結果になりました。この調査では、2013年から22年まで一貫して反対が賛成を上回っており、国民のなかには根強い原発への拒否反応が見られることがわかります。
一方で、2019年以降、反対は徐々に割合を落とし、賛成が年々増えています。今回の調査では、初めて反対が半数を切り、逆に賛成が過去最高となっており、少しずつ差は縮まっています。

しかし、現時点ではまだ反対派が多数であることに変わりはなく、こうした世論に配慮せず原発再稼働を進めるのは望ましくないでしょう。

※ 出典:朝日新聞 原発再開、反対は半数割れ47% 朝日世論調査

電気を選ぶことができる時代

原発再稼働はメリットとデメリットの両方があります。双方を比較した上で、許容できるリスクは何かを考えて決めるべきでしょう。原発を必要とするか不要とするかは社会的な問題のため、個人に決められることは少ないように思えますが、私たちにもできることがあります。それは、購入する電気を選ぶこと。

例えば、再生可能エネルギーで発電された電気を購入する人が増えれば、再生可能エネルギーの普及につながります。将来的には原子力発電への依存が減り、再稼働の議論が不要になる未来もくるかもしれません。

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