記事をシェアする

日本では、昔から地熱を発電に利用する方法があり、近年の再生可能エネルギーへの注目も背景に、重要性が広く認識されています。しかし、ほかの発電方法に比べて、地熱発電を知らない人も少なくありません。そこで、地熱発電の概要やメリットを解説します。

再エネ由来の電気をフル活用
料金プランはこちら

地熱発電とは

地熱発電とはその名の通り、地熱エネルギーを利用して発電する方法です。日本は火山帯に位置しているため、地下にある熱を利用できる環境にあり、さまざまな用途に活用されています。

地熱発電の仕組み

地下から地熱エネルギーによる蒸気を取り出し、タービンを回して発電するのが地熱発電の基本的な仕組みです。日本の国土の1~3kmほど地下には、マグマの熱による高温・高圧の熱水と蒸気が発生している場所があり、そこから井戸を利用して蒸気を取り出し、タービンを回す構造になっています。

地熱発電に利用される高温・高圧の蒸気が溜まっている場所は、地熱貯留層と呼ばれており、基本的に火山や温泉などがある地域にあります。そこでは地下数kmの場所にマグマ溜まりがあり、そこに浸透した雨水が熱されて熱水と蒸気の層が発生するわけです。

国内では東北や九州に地熱貯留層が集中しており、戦後の早い段階ですでに注目されていました。1960年代に本格的な地熱発電施設が稼働をスタートし、現在では再生可能エネルギーの一種として注目されています。

地熱発電の種類

地熱発電は大きく分けて「フラッシュ発電」と「バイナリー発電」の、2種類の発電方法があります。

フラッシュ発電は200℃以上にもなる地熱貯留層まで、生産井と呼ばれる井戸のようなものを堀り、そこからマグマの熱による高温・高圧の地下水(地熱流体)をくみ上げる方法です。取り出された地熱流体は気水分離器(セパレーター)により蒸気と熱水に分けられて、蒸気でタービンを回転させて発電します。

熱水の方は還元井から地下に戻され、さらにタービンの回転に使われた蒸気も、復水器によって温水にされ、冷やされた後に蒸気の冷却に使われる仕組みです。

一方、バイナリー発電も、生産井により地熱流体をくみ上げる仕組みはフラッシュ発電と同じです。しかし、取り出すのは150℃以下の地熱流体であり、そのままではタービンの回転に利用できません。そこで、取り出した地熱流体で、水とアンモニアの混合物などの二次媒体を熱し、その蒸気でタービンを回します。

二次媒体を熱した後の地熱流体は還元井から地下に戻され、発電後の二次媒体の方は凝縮器で液体に戻された後、循環ポンプで再び蒸発器に送られて発電に利用されます。バイナリー発電は比較的低温度の熱源を利用できるため、温泉が活用されるのも一般的です。

日本における地熱発電の現状

日本は地熱発電のポテンシャルが高く、地熱資源量はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位となっています。しかし、豊富な地熱資源量に対して、発電設備の容量は約60万kW程度(2021年末時点)であり、資源量に対する発電量が世界各国に比べて低いのが現状です。

国名 地熱資源量(万kW) 地熱発電設備容量(万kW)
アメリカ 3,000 309.3
インドネシア 2,779 119.7
日本 2,347 53.6

※出典:~特集~ 地熱資源大国ニッポンの新エネルギー

その理由としては、開発コストや温泉資源への影響などがありますが、近年の再生可能エネルギーの必要性などを背景として、2030年には現在の2倍以上の導入を達成する目標が立てられています。

国内の有名な地熱発電所としては、日本で初めて商用運転が開始された松川地熱発電所(岩手県)や、国内最大規模の八丁原発電所(大分県)、澄川地熱発電所(秋田県)などが挙げられます。

地熱発電のメリット

地熱発電のメリットは、地熱発電が再生可能エネルギーの一種とみなされることからも分かるように、CO₂をほとんど排出しない点にあります。さらには蒸気および熱水の再利用が可能な点、電力が安定している点なども挙げられます。それぞれ詳しくみていきましょう。

CO₂をほとんど排出しない

地熱発電はCO₂排出量が少なく、環境に優しい発電方法として広く認識されています。化石燃料を燃焼させた蒸気によって発電する火力発電に比べて、地熱発電のCO₂排出量は水力発電や原子力発電と同程度であり、圧倒的に少ないのが特徴です。

事実、石炭による火力発電は、1kWhの発電におよそ970g(石油の場合はおよそ740g)のCO₂を排出しますが、地熱発電は1 kWhの発電で、わずか15g程度しかCO₂が発生しません。太陽光発電をはじめとした数ある再生可能エネルギーの中でも、特にCO₂排出量が少ないのが地熱発電です。

なお、再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電に関しては、以下の記事で具体的に解説しています。こちらも参考にしてください。

太陽光発電についてもっと詳しく知りたい方はこちら

蒸気と熱水の再利用が可能

地熱発電は高温の蒸気や熱水を再利用できるのも、大きなメリットです。
上記のように、地熱発電は地熱貯留層からくみ上げた地熱流体を発電に利用しますが、利用した後の熱水は基本的に井戸を通じて地下に戻されます。さらに熱水から分離されて発電用のタービンを回した蒸気も、復水器によって温水に戻される仕組みです。

これらを河川の水で温度を調整した後、農業ハウスに提供する温水として利用したり、魚の養殖に活用したりできるわけです。今後さらに、再利用の用途が広まっていくでしょう。

電力を安定的に供給できる

時間帯にかかわらず発電できるほか、太陽光や風力などのように、天気の影響もほとんど受けないのが、地熱発電の最大の強みでありメリットの1つです。
地熱資源は気象状況の影響がなく、季節や時間帯によって発電量が変わってしまうこともありません。発電設備さえ問題なく稼働していれば、常に安定した電力の供給が可能です。

エネルギー源が枯渇する恐れがない

地熱発電はもともと、地中深くのマグマの熱を利用しているため、資源が枯渇する恐れがありません。火山国としても知られる日本は、世界第3位の地熱資源を有しています。エネルギー自給率の低さからしても、国内の資源で完全に発電を賄える地熱発電は貴重です。

地熱資源を有効に活用しているとは言い難い現状ではありますが、非常に高いポテンシャルを持っている発電方法といえます。近年、特に再生可能エネルギーが注目されているため、今後さらに発電施設の建設や改善が進められるでしょう。

地熱発電のデメリット

地熱発電には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。発電効率の低さや発電施設の建設コストの問題、開発失敗のリスクをどう回避するかといった課題は、国を挙げて取り組まなければならないものです。

発電効率が低い

地中から地熱流体をくみ上げて発電に利用する地熱発電は、ほかの発電方法に比べて、発電効率が悪い点がデメリットです。

地熱の約8割は発電に利用するまでに空気中に逃れてしまい、タービンを回す蒸気の温度が火力発電や原子力発電と比べて低くなってしまいます。そのため、発電量が限定的なものになるわけです。発電における熱効率をいかに高めるかが、地熱発電の目下の課題といえるでしょう。

建設に時間とコストがかかる

発電設備の建設と実際の発電までに、多くの時間とコストを要するのも、地熱発電の問題とされています。発電設備を建設するためには、時間をかけて地質調査をする必要があり、地熱流体をくみ上げるための掘削作業を含めて、膨大なコストが必要です。

また、発電設備が完成しても、想定していた発電量に至らない可能性もあります。投資額を回収できない恐れから、ほかの発電方法に比べて広まらない点は、専門家からよく指摘されています。

開発失敗のリスクがある

発電設備の建設に膨大なコストがかかるだけではなく、発電に適した場所を見つけるのにもリスクを伴います。掘削を進めても、その場所に発電に利用できる地熱貯留層が存在しているとは限らず、掘削失敗の可能性は決して低くありません。

失敗が続くとコストの問題で事業を続けられない可能性も出てくるため、リスクの高さからなかなか普及が進まない点は、地熱発電の大きな課題の1つです。

近隣の理解を得る必要がある

地熱発電に適した地熱貯留層のある場所は、国立・国定公園や温泉地と重なるケースが多いため、発電設備の建設に際して近隣の理解を得なければいけません。

景観が損なわれるといった理由から、発電施設の建設を反対される可能性も考えられます。その地域の地主を含め、地元の住民に地熱発電のメリットを説明し、よい関係を構築する努力も必要です。

日本の地熱発電への取り組み

地熱発電は発電効率の低さや発電施設の建設コストの問題など、さまざまな課題を抱えているのが現状です。しかし再生可能エネルギーの需要の高まりもあり、以下のような取り組みが国を挙げて進められています。

地熱資源の調査

地熱発電は発電施設に適した場所を発見し、実際に発電できるようになるまで、10年以上の年月がかかるとされています。さらに投資のリスクも高いため、近年はJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)が調査を先導して行い、開発のリスクとコストの低減を図っています。

また、事業者が地熱資源を探査する際にかかる費用の一部や、井戸の掘削で融資を受ける際の債務を一部保証するなど、JOGMECによる支援体制も整いつつある状況です。

新たな技術の開発

地熱発電の開発リスクの低減のため、探査技術の向上や、従来よりもさらに地下深くの熱水資源を活用することで、より大規模な発電が可能となる技術の開発なども試されています。

よりマグマに近いところにある熱水資源を活用することで、発電効率を高められる可能性があるため、生産井やタービンなど、発電設備の腐食対策などの研究が進められています。

地域の理解を促進

発電施設の建設に伴う近隣への理解を促進するため、温泉資源に配慮したモニタリングや意見交換、エネルギーの二次利用の積極推進なども実施されています。

事実、温泉資源への影響を心配する声があるため、定期的に勉強会を開催することで、地域住民への理解の促進を図っているところもあります。

特に地熱発電は発電後の温水を二次利用しやすいため、その部分でもメリットを打ち出すことで、発電施設への理解を求める取り組みは有効といえるでしょう。

大きな可能性を秘めた地熱発電に注目

地熱発電の基本的な仕組みやメリット・デメリットなどを解説しました。地熱発電はCO₂をほとんど排出せず、電力を安定供給できる強みを持っているため、再生可能エネルギーの一種として近年再注目されています。

現状において発電効率の低さや発電施設の建設コストの問題など、多くの課題を抱えていますが、今後は掘削技術の発展や国の支援などにより、徐々に普及していくと予想されます。

興味のある人は、地熱発電をはじめとした再生可能エネルギーについても、より詳しく調べてみるとよいでしょう。

Looopでんきは、再生可能エネルギー実質100%やCO₂排出量実質ゼロの電気をオプションとして提供しており、再生可能エネルギーの更なる普及を通じた「エネルギーフリー社会の実現」をビジョンとしています。

Looopでんきの新たな試みの1つが市場価格に合わせて30分ごとに電気料金が変わる「スマートタイムONE」の提供です。

市場価格は電力の需要と供給のバランスを体現しており、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー由来の電気が多く発電される時間帯においては、市場価格が安くなる傾向にあります。

市場価格の確認を習慣化すれば、環境への意識も自ずと高まるでしょう。太陽光パネルや蓄電池と併用することで、電気料金を抑えながら地球にやさしい生活を目指せます。

環境への意識や太陽光パネルとの組み合わせを重視して、Looopでんきをご利用いただいているお客様の声を紹介します。

(50代 / 女性 / 4人暮らし)
環境を重んじたキャンペーンなど、独自の取り組みがあり、社会課題についてささやかながらも参加できるから。

(30代 / 女性 / 4人暮らし)
基本料金がないことと、太陽光などと組み合わせてうまく使えばかなり電気代を抑えることができる為。

再生可能エネルギーに興味がある方は、Looopでんきが提供する「スマートタイムONE」の仕組みや料金をぜひご覧ください。