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水力発電は日本でも古くから利用されている発電方法で、近年の火力発電によるCO₂排出問題を受けて、再び注目されています。この機会に水力発電の仕組みや、メリット・デメリットを押さえておきましょう。運用方式や構造別に詳しく解説していきます。

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水力発電とは

水力発電はその名の通り、水の流れる力を利用して発電する方法です。日本では明治時代から使われている発電方法で、長い歴史があります。まずは基本的な仕組みから確認していきましょう。

水力発電の仕組み

水力発電は、水が高い場所から低い場所へと流れる際の、エネルギーを利用した発電方法です。水の流れでポンプ水車を高速回転させ、水車につながった発電機を動かす仕組みです。

多くの水力発電所はダムに併設されており、ダムの取水口から水を取り、水路を流れ落ちるエネルギーで水車を回して発電しています。

水路を流れる水の量が多く、高低差が大きいほどエネルギーが大きくなるため、より多くの電気を発生させられます。

なお、水力発電をはじめ、国内の主要な発電方法の仕組みに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてみましょう。

発電方法の種類とそれぞれの仕組みについて、もっと詳しく知りたい方はこちら

水力発電の歴史

水力発電は19世紀半ばのイギリスで誕生したといわれており、日本では1891年(明治24年)に、京都に初めての事業用水力発電所が作られました。

第2次世界大戦が始まる前までは、水力発電の発電量が火力発電を上回る「水主火従」の時代でしたが、戦後は電力需要の増加により、火力発電の出力が大幅に上回る「火主水従」に転じています。

その後、いわゆるオイルショック以降は、石油に代替する発電エネルギーとして、徐々に水力発電が再注目されるようになりました。さらに近年は、いわゆる再生可能エネルギーの一種として、さらなる普及が検討されている状況です。

日本における水力発電の現状

2023年時点において、日本の一般水力発電所は、既存発電所数が2,028カ所あり、建設中のものが92カ所あります。さらに未開発地点は2,660カ所あり、徐々にではありますが増加する予定です。

また電気事業者の発電電⼒量は718.9億kWhであり、そのうち水力発電は49.2億kWhで、全体の6.8%にあたります。なお、国内で最も電力量の多い火力発電が591.7億kWhで、全体の82.3%を占めており、原子力発電の発電量は53.9億kWhで全体の7.5%となっています。

※出典:電力調査統計(統計表⼀覧)|経済産業省

【運用方式別】水力発電の種類

水力発電は発電方式により、以下のように「流れ込み式」や「調整池式」といったように分類が可能です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

流れ込み式

流れ込み式は河川から水を取り込み、川の流れをそのまま発電に使うシンプルな方式です。水を溜めずに流れをそのまま発電に利用するため、川の水量が発電量に影響します。河川の水が増える時期には発電量が多くなり、逆に渇水する時期には少なくなります。

発電量が安定しないのが欠点ですが、他の発電施設や発電方式に比べて低コストで建設が可能で、環境に負荷をかけないのがメリットです。川の流れをダイレクトに利用する形なので、ダムも必要ありません。

調整池式

川の水を調整池と呼ばれる場所に溜めておき、そこから流れる水量を調整しながら発電する方法です。

短期間の電力需要の増減に応じて、発電量を柔軟に調整できるのが特徴で、夜間や週末の日中など、比較的消費者の電力使用量が少ない時間帯には、水を調整池に溜めてくことで、発電量を抑えられます。本格的にダムを利用する場合に比べると貯水量は少ないですが、環境への負荷は大きくありません。

貯水池式

川の水をダムで溜めてから、必要な時に利用して発電する方法です。調整池式と同じように電力ニーズに従って発電量を調整可能ですが、こちらの方が長時間にわたる需要の変動に対応できます。

大量の水をダムに溜め込めるので、河川が渇水している状況でも問題なく運用可能です。降水量の多い時期に水を溜めておき、電力使用の多い季節や時間帯に放水して発電量を増やします。

貯水池式は巨大な施設が必要になるので、対応できる河川が限られており、ダムを建設する際、周辺住民から反対の声が挙がるケースもあります。

揚水式

発電所に上池と下池を作り、電気の消費が多い昼間に上池の水を下池に落として発電する方法です。電力消費の少ない夜間になると、昼間の余剰電力を利用して下池から上池へと、電動ポンプで水をくみ上げておきます。

上池に水が溜まっていれば、水の位置エネルギーという形で大量の電気を蓄えておけるのが特徴ですが、水の移動に電気を要するため、エネルギーのロスが多い欠点もあります。

【構造別】水力発電の種類

次に、発電所の構造の観点から、水力発電の種類を分類してみましょう。以下のように、大きく分けて「ダム式」「水路式」「ダム水路式」の3種類があります。

ダム式

ダムから流れ落ちる水を利用して発電する方法です。水力発電の構造として最もスタンダードで、ダムで河川の流れを止めた上で、その下に発電所を建設して、水の流れの落差を人工的に作ります。高低差を利用した水の流れにより、発電所内の水車を回して電気を起こすわけです。

ダム式の水力発電は上記の貯水池式や、調整池式と組み合わせて利用されるのが一般的です。さらに、ダムは発電に利用されるためだけではなく、大雨で河川の水が大幅に上昇しそうな場合に、流れる水の量を調整する役割を持っています。

水路式

水路式は適度な高低差があるところから、水を流して発電する方法です。

堤防を設けて河川の流れの一部をせき止め、人工的に勾配と水の流れを作り出し、水車によって発電します。川の流れを一部人工的に変更し、勾配を付ける形で水車の方に呼び込むわけです。

ダム式に比べると柔軟に水量を増やしたり、強い流れを生み出したりすることはできませんが、一部周囲の地形を利用するため、大型のダムを建設するよりもコストがかかりません。上記の流れ込み式と、組み合わせられるケースが多くあります。

ダム水路式

ダム式と水路式を組み合わせた構造の水力発電です。ダムを建設して河川の水を大規模にせき止め、さらに水路で高低差のあるところに水を引き込んで発電します。水をためておく場所と、水を落として発電するところが分けられているのが特徴です。

ダムによる貯水および水量の調整能力と、大きな落差による発電能力を兼ね備えているため、水力発電の中でも最も発電効率がよい方式といえます。実際、大規模な水力発電施設のほとんどは、ダム水路式が採用されています。

水力発電のメリット

水力発電のメリットは以下のように、高い変換効率で発電できる点や、CO₂の排出量が少ない点、国内のみで安定的に発電できる点などが挙げられます。それぞれみていきましょう。

エネルギー変換効率が高い

水力発電は数ある発電方法の中でも、非常にエネルギーの変換効率が高い方法です。国内で最も多くの発電量のある火力発電のエネルギー変換効率は、約30~40%ですが、水力発電の変換効率は約80%と圧倒的に高い水準にあります。

ちなみに原子力発電のエネルギー変換効率は約33%で、再生可能エネルギーは風力発電が約25%、太陽光発電が約10%、地熱発電が約8%といった数値です。水力発電だけが、抜きんでた変換効率である点がわかるでしょう。

CO₂排出量が少ない

水力発電は発電の課程でCO₂を排出しない、再生可能エネルギーの一種です。

近年は世界中で地球温暖化を抑制するための議論が活発に行われており、2015年のパリ協定をきっかけとして、日本も2030年までに、温室効果ガスの排出を46%削減する方針を打ち出しています。

最も多くの発電量がある火力発電は、燃料を燃やす際にCO₂を排出するので、徐々に水力発電や太陽光・風力・地熱発電などの、再生可能エネルギーの利用が注目されています。

国内のみで安定的に発電できる

河川の流れやダムを利用するので、輸入に頼らず国内で安定的に発電できるのも、水力発電のメリットです。

流れ込み式の場合は、渇水によって発電量が下がってしまう可能性はあるものの、事前に水をためておく方法であれば、自然条件に大きな影響を受けずに発電ができます。発電量も電力の需要に応じて、柔軟に調整が可能です。

また、エネルギーの自給率が低い日本において、純粋に国内の資源のみで発電できるのも、水力発電の魅力の1つです。ある程度の規模の河川がある限り、電力を生み出し続けることができます。

水力発電のデメリット

水力発電には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。発電所の建設コストや周辺環境への影響など、注意すべき点を押さえておきましょう。

多額のコストがかかる

水力発電の発電所は、ほかの発電施設に比べて運用・管理コストが安めではありますが、大型のダムを建設する場合は多額のコストがかかります。

例えば、日本を代表するダムとして知られる「黒部ダム(くろよん)」の場合、建設費用は約513億円といわれており、完成までに7年もの歳月を要したとする記録が残っています。

近年は建設技術が向上しているため、昔ほど費用がかかるとは限りませんが、それでも立地によっては森林を大きく切り開く必要があるため、多額のコストを要するでしょう。

さらに、ダムを運営するには定期的にメンテナンスが必要になるので、ランニングコストも計算に入れなければいけません。自治体によっては、多額の費用がかかるダムの運営が難しいケースも多くあります。

周辺環境に影響を与える

水力発電に必要なダムを建設する場合、発電所周辺の自然環境や、住民の生活に悪影響を与える恐れがあります。事実、これまでダムの建設で周辺地域が水没してしまった場合や、住民がほかの地域に移住が必要だったケースは決して少なくありません。

そのため、新たにダムを建設するとなると、地域によっては住民に強く反対される可能性もあります。時間をかけて住民の理解を得なければいけません。また、森林を伐採する必要があるため、生態系への影響が出てしまうリスクもあります。

近年注目の「小水力発電」とは

近年は水力発電の発電コストの問題などから、農業用水をはじめ既存の水の流れを生かした、小規模な水力発電(小水力発電)が注目されています。小水力発電の特徴やメリット、導入事例などを簡単に解説します。

小さな流れを利用した水力発電

小水力発電はその名の通り小規模な発電方法で、分類としては上記の「流れ込み式」にあたります。水の流れをダイレクトに利用する形式で、一般河川をはじめ農業用水や上下水道などを使って発電するものです。

国内の水力発電の多くは大規模な施設によるもので、これまで小水力発電の施設はほとんどありませんでした。しかし近年、地域密着型の小規模な発電施設が注目されており、既存の仕組みをうまく活用して、効率的に電力を得る方法が各地で模索されています。

主な事業主体は地方自治体ですが、NPOや民間の事業者も、小水力発電に参入するケースも増えてきました。再生可能エネルギーへの注目もあり、今後さらに小水力発電事業が活発になるでしょう。

小水力発電の導入事例

国内の小水力発電の事例は着実に増えています。例えば、鹿児島県の薩摩川内市での「らせん水車」を利用した小水力発電や、東京都の檜原村を流れる神戸川の支流を活用した発電所、和歌山県有田川町にある有田川上流のダムから放流される水の流れを利用した二川小水力発電所などが挙げられます。

さらに、山梨県にある農業用水路を利用した小規模な発電施設や、熊本県の砂防堰堤を利用した施設など、さまざまな工夫を凝らした水力発電の施設が続々と建設されている状況です。

詳しくは資源エネルギー庁の公式サイトなどで確認してみましょう。

※参考:なっとく!再生可能エネルギー|資源エネルギー庁

水力発電はクリーンな発電方法

水力発電の基本的な仕組みや種類、メリット・デメリットなどを解説しました。水力発電は国内で古くから利用されている発電方法です。発電量は火力発電に及ばないものの、再生可能エネルギーの需要の高まりなどを背景に、再び注目されています。

大規模なダムを建設する場合には相応のコストがかかるものの、水力発電はエネルギー変換効率が非常に高く、発電の過程でCO₂をほとんど排出しないのがメリットです。

近年はできるだけコストをかけない、小規模な水力発電施設の建設も広まっているので、興味のある人は調べてみるとよいでしょう。再生可能エネルギーに関する理解が深まります。

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