FIP制度は2022年4月からスタートした再エネ導入支援制度です。再エネ発電の普及に興味がある方は、FIP制度についても理解を深めておくとよいでしょう。FIP制度の概要やFIT制度との違いについて解説します。
FIP制度とは
FIP制度のFIPは、「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」を略した言葉です。まずは、FIP制度の概要や導入された背景を押さえておきましょう。
売電価格にプレミアムが上乗せされる制度
FIP制度とは、再エネ発電事業者が売電したとき、売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度です。FIT制度からの移行を目指し、2022年4月から始まっています。
FIP制度の対象となるのは50kW以上の発電所です。1,000kW未満の発電所はFIP制度とFIT制度のいずれかを選べ、1,000kW以上の発電所は今後FIP制度が適用されます。
2012年にFIT制度が施行された後、再エネは急速に導入が進みました。水力を除く再エネが全体の発電量に占める割合は、2011年度が2.6%であったのに対し、2019年度は10.3%にまで増えています。
しかし、FIT制度の予算は国民の電気料金で支えられているため、再エネが自立しているとはいえない状況です。電力市場に再エネを統合し、将来的な主力電源としての運用を目指すために、FIP制度が創設されました。
※出典:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案 P7 | 資源エネルギー庁
FIP制度の仕組み
FIP制度で売電価格に上乗せされるプレミアムは、基準価格と参照価格の差額により決まります。
基準価格とは政府があらかじめ設定している価格です。また、参照価格は再エネ発電事業者が期待できる売電収入のことをいいます。
過去の市場取引を参照して設定される参照価格は、1カ月ごとに更新されます。基準価格と参照価格の差額がプレミアムとなり、再エネ発電事業者が受け取れるという仕組みです。
FIP制度とFIT制度の相違点
FIP制度はFIT制度の反省点を踏まえて制定された制度です。FIP制度とFIT制度にはどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
売電収入
FIT制度では、どの時間帯に売電しても価格は一定です。基本的には電力会社による全量買い取りが保証されています。需要ピーク時のインセンティブはありません。
一方、FIP制度は卸電力取引所または相対取引で売電します。収入は市場価格に連動し、プレミアムによりFITと同程度の収益が確保され、需要ピーク時のインセンティブを期待することが可能です。
このように、FIP制度とFIT制度は売電収入の決まり方が異なります。FIP制度では再エネの導入を促進するために、プレミアムを補充する策が採用されているのです。
⇒FIT制度の売電収入についてもっと詳しく知りたい方はこちら
発電計画値の報告義務
FIP制度には発電計画値の報告義務があります。電気の需要と供給を常に一致させる「バランシング」が求められるためです。
FIT制度ではインバランス特例により、需要と供給の調整が免責されています。再エネ発電事業者に代わり、一般送配電事業者がバランシングを行うことになっているのです。
一方のFIP制度では、再エネ発電事業者が発電量を計画値として予測し、実際の発電量である実績値と一致させなければなりません。
計画値と実績値に差が生じた場合、再エネ発電事業者はペナルティとしてインバランス費用を負担する必要があります。プレミアムには、バランシングコストの負担を軽減する手当の意味合いも含まれているのです。
非化石価値の取引
非化石価値とは、発電においてCO₂を排出しない価値のことです。再エネと原子力に由来する電気は、非化石価値を有していることになります。
非化石価値は本来、卸電力市場とは別の非化石価値取引市場で売ることができるようになっています。
FIT制度では消費者が電気料金の中で再エネ還付金を負担しているため、非化石価値は消費者に分配されているという考え方をとっています。そのため、発電事業者が非化石価値を取り出して売ることができませんでした。
しかし、FIP制度では市場及び相対取引で売買されるので、非化石価値取引が可能になっているという違いがあります。
FIP制度では、プレミアムから非化石価値取引市場での収益が差し引かれます。卸電力市場での売電収益と併せて非化石価値が二重取りにならないようにするためです。
FIP制度のメリット
FIP制度が導入されたことで、どのようなことが期待できるのでしょうか。FIP制度の主なメリットを紹介します。
収益拡大の可能性が高まる
FIP制度で市場価格の変動に応じた発電を行えば、収益拡大の可能性が高まります。市場価格が高いときに売電することで、売電価格が一定のFIT制度より高く売れる可能性があるのです。
再エネで発電した電気を効率よく売電するためには、蓄電池を活用する必要があります。市場価格に合わせて発電量を調整する方法でも、収益拡大の可能性を高められるでしょう。
再エネに投資するインセンティブを確保できることも、FIP制度のメリットです。制度開始当初は、高い水準の金額がプレミアムに含まれる形で交付されます。
電力系統の需給バランスを維持しやすい
FIP制度のメリットとしては、インバランスリスクを回避しやすいことも挙げられます。インバランスとは電力の需要と供給の差を示すものです。
電力系統の需給バランスが崩れると、停電が発生しやすくなります。FIT制度の場合は定額で自動的に電気を買い取るため、発電した電気が余剰となる恐れもあるのです。
一方のFIP制度では、再エネ発電事業者が電力の需給バランスを意識するようになると考えられます。国内の電力需給が安定しやすくなり、再エネ発電による電気の余剰も発生しにくくなるでしょう。
多様なビジネスモデルが期待される
FIP制度で収益を拡大していくためには、発電した電気をそのまま売電するのではなく、電気の需要が高い時間帯に売電することが重要です。
卸電力市場を介さずに、小売電気事業者と直接契約する相対契約で売電すれば、電気がより高値で売れる可能性があります。需要家に直接売電したり、電力の需給を調整しているアグリゲーターに売電したりすることも可能です。
また、蓄電池の需要が高まることで、蓄電池市場の活性化も期待できます。このように、FIP制度の活用が進むと、多様なビジネスモデルが生み出される可能性があるのです。
FIP制度のデメリット
FIP制度のデメリットや課題を見ていきましょう。リスクに対する対策や動きについても解説します。
収益の予測が困難
FIT制度では電力会社が電気を定額で買い取るため、収益の予測を立てやすいという側面があります。一方、変動する市場価格の影響を受けやすいFIP制度では、収益の予測が困難です。
売電収入が高くなる時間帯を見極めたり、バランシングコストの負担が軽減する方法を考えたりと、再エネ発電事業者のやるべきことが多くなるでしょう。
このような状況では、電気の需給バランスを調整するアグリゲーション・ビジネスの発展が期待されます。アグリゲーターを活用すれば、より適切な市場取引を行うことが可能です。
運用コストがかかる
バランシングが求められるFIT制度では、発電が計画通りに進まなければペナルティを支払うことになります。運用コストを売電でどのように回収するのかを考えなければなりません。
大容量の蓄電池には高額なコストがかかる点もデメリットです。蓄電池があれば効率よく売電を行えますが、同時に設置コストの回収も意識する必要があります。
FIP制度では再エネ発電事業者が市場競争に参入しなければならないため、コストに対する意識を強く持ち、その中でいかに収益を上げていくかを考えることが重要なのです。
再エネを市場に統合するFIPを理解しよう
FIP制度は売電価格にプレミアムが上乗せされる制度です。FIT制度と異なり、FIP制度には発電計画値の報告義務があるほか、非化石価値の取引も行えます。
収益拡大の可能性が高まることや、電力系統の需給バランスを維持しやすいことが、FIP制度のメリットです。FIP制度の仕組みを知り、再エネ発電への理解を深めましょう。
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