最近では、テレビなどのマスメディアでも盛んに耳にすることが増えてきた「SDGs」。17つある目標のうち、7つ目が「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」なのはご存じでしょうか。
エネルギー問題は、国連も注目する大きな問題になっています。ここでは、SDGsの目標No.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」について見ていきます。
SDGsとは
SDGsとは、英語の「Sustainable Development Goals」の頭文字をとって造られた用語です。「エスディージーズ」と読み、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。持続可能とは、地球の環境を壊さず、未来も生活し続けていける状態を指し、一言でいうと、「よりよい世界を目指す国際目標」となるでしょう。
SDGsは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に書かれました。そこでは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、17のゴールと169のターゲットが掲げられました。
合言葉は「Leave No One Behind」。地球上の誰1人取り残さないことを誓っています(※)。
SDGsの目標No.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」とは
SDGsの17の目標のうち、No.7は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」です。
この目標では、「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」ことが掲げられています。地球上のエネルギー問題を解決するための内容ですが、ポイントとしては、すべての人が手ごろな価格で近代的なエネルギーを使えるようにすること、環境にやさしい再生可能エネルギーを増やすということの2点にあります。
SDGs目標No.7のターゲット
それでは、SDGsNo.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の5つのターゲットを一覧表で見ていきましょう。
「7-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。また、「7-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。
SDGsNo.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」 | |
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7-1 | 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 |
7-2 | 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 |
7-3 | 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 |
7-a | 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。 |
7-b | 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。 |
世界には電力を使えない方たちがいる
今や私たちの生活に必要不可欠なインフラとなっている電気。ところが、世界を見渡すと未だに約7.9億人が電気を利用できずにいるのが現状です。
電気が使えない地域では、薪や木炭、石炭などを燃やして料理をしたり、暖をとったりしています。薪や炭の利用に頼らざるを得ない方たちは世界中に28億人以上いるとされています(※1)。
また、こうした燃料の使用による屋内空気汚染によって、2012年には430万人が命を失っています。そのうちの60%は、調理に従事することが多い女性が占めています(※2)。
電気を使うことのできない人々は、夜に明かりを使うことができないため、勉強や仕事ができません。外灯の明かりで勉強をする子どもがいるほどです。電気を使えないことにより、多くの人々が学習や事業の機会を奪われているのです。
世界の電力不足の現状
世界では電力がまだまだ足りていません。2010年から2018年にかけ、新たに10億人以上が電気を利用できるようになりましたが、世界の電力不足はサハラ以南のアフリカにますます集中している状況です。
サハラ以南のアフリカの約5億4,800万人、人口の53%は未だに電気を使えない状況が続いています。
クリーンエネルギーの意味
続いて、No.7の2点目のポイントであるクリーンエネルギーについて解説します。
そもそもクリーンではないエネルギーとは
クリーンではないエネルギーとは、地球に害を与えるリスクのあるエネルギーのことを指します。具体的には、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料がそれにあたります。ところが、世界のエネルギー事情を見てみると、電力は火力発電が主力ですし、自家用車はガソリン車が主流です。クリーンではない石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料が、エネルギーの中心にあるのです。
化石燃料は燃焼させると二酸化炭素(CO2)が発生するため、地球温暖化の主な原因となっています。二酸化炭素は地球温暖化を招いている温室効果ガスのうち、全体の76.7%を占めています。このことから、化石燃料はクリーンでないエネルギーとして利用を避けるべきだとされています。
持続可能な再生可能エネルギー
それでは、クリーンエネルギーは具体的には何を指しているのでしょうか。
それは再生可能エネルギーにほかなりません。再生可能エネルギーは英語では「Renewable Energy」となります。直訳すると更新性のエネルギーとなり、自然の中で繰り返し起こる現象(=更新性資源)から取り出すエネルギーの総称です。
一般的に、自然エネルギーとも呼ばれます。種類としては、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、太陽熱利用、バイオマスなどがあります。
また、再生可能エネルギーは発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化をくい止める有力な対策として、世界中で開発が進められています。
一方で、再生可能エネルギーには課題があることもたしかです。太陽光発電、風力発電は自然状況に左右されるなどの理由から利用率が低く、安定して大量のエネルギーを作ることが難しいということがあります。また、全般的にエネルギー密度が低いため、広大な土地を必要とするのも弱点となります。
世界で使われている電力のうち、再生可能エネルギーを使って作られたものは、2018年現在で総発電量の25.5%になります。
日本の再生可能エネルギーの現状
日本での再生可能エネルギーの現状について見ていきましょう。
エネルギー白書2021によりますと、2019年度の日本における発電量の中の再生可能エネルギーは18.1%となっています。電源別の割合を細かく見ていくと、天然ガス37.1%、石炭31.9%、石油等6.8%、水力7.8%、水力以外の再生可能エネルギー10.3%となっています。また、再生可能エネルギーの内訳は太陽光6.7%、バイオマス2.6%、風力0.7%、地熱0.3%です(※1)。
日本では、天然ガスや石炭といった火力発電がまだまだ大きな割合を占めていることがわかります。ドイツやスペインなどヨーロッパでの再エネ割合に比べると、日本の再エネ割合は低い状況です。
再生可能エネルギーの発電量では世界水準に劣る日本ですが、発電設備容量で見ると世界第6位で、日本で最も導入が進んでいる太陽光発電は世界第3位となっているところは注目していいでしょう(※2)。
日本の再エネ割合の推移
日本の再生可能エネルギーの割合がどのように推移しているのかについて、歴史的に見ていきます。下図は1980年度から2019年度までの電源別発電量の推移です。
わが国は2度の石油ショックを経て、石油への依存を減らすために電源の多様化を進めてきました。1980年代以降には天然ガスと原子力の割合が増えていることがわかります。
2011年3月11日、東日本大震災が発生。東京電力福島第一原発事故が発生したことによって、これ以降日本の原子力発電所はほとんどが稼働停止となりました。2012年以降、原子力発電の割合が急減していることが見てとれます。
2012年には再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)が導入され、再生可能エネルギーの割合が増加することとなりました。とはいえ、全体的には火力発電が圧倒的に多く、化石燃料に依存していることがわかります。
2021年10月22日には第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、2030年度エネルギーミックス(電源構成)の「野心的な見通し」が掲げられました。そこでは、再生可能エネルギーの割合は36~38%が目指されています。
世界と比べた日本の再エネ割合
日本の再生可能エネルギーの割合を、世界のそれと比較してみましょう。下の表は2019年のヨーロッパの主たる国、中国、日本の再エネ割合を一覧表にしたものです。
ヨーロッパ、中国、日本の再エネ割合 | |
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国 | 再エネ割合 |
デンマーク | 83.9% |
オーストリア | 78.1% |
スウェーデン | 58.5% |
ポルトガル | 53.7% |
イタリア | 42.2% |
ドイツ | 40.2% |
イギリス | 38.2% |
スペイン | 37.1% |
フランス | 20.5% |
中国 | 27.4% |
日本 | 18.5% |
ヨーロッパ諸国の再生可能エネルギーへの取り組みは、1990年代以降世界的にも先行して進んでおり、ヨーロッパ28ヵ国全体での割合も2017年には30%を超え、2019年には約34%に達しています。
石炭火力の割合が多く、再生可能エネルギー導入についてはおくれをとっていた中国も、ここ10年は太陽光発電、風力発電の導入が急速に進み、全体の割合で日本を抜いています。
ヨーロッパ諸国、中国と比較すると、日本の再エネ割合はまだまだ低いといわざるをえません。
日本の再生可能エネルギーの課題
日本で再生可能エネルギーを拡大させるには、解決しなければいけない課題がいくつかあります。
課題の1つは、導入するときに膨大な費用がかかる点です。一般的に再生可能エネルギーはエネルギー密度(単位面積あたりの発電量)が低く、大きな施設・設備・土地などが必要となり、初期費用が大きなものとなってしまいます。
バイオマスを除いて、火力発電のように燃料費がかからないのがメリットですが、この初期費用が大きいことで発電コストが上昇します。再生可能エネルギーの普及のためには、発電コストの低減が求められます。
課題の2つ目は、自然のエネルギーを利用するため、時間帯や天候によって発電量が不安定になることです。
天候などによって出力が大きく変動する太陽光発電や風力発電が増えてくると、電気が足りなくなったり、逆に余ったりします。電気は電気エネルギーとして溜めておくことができないので、発電量と使用量のバランスをつねに保たなければいけません。不足分はほかの電源によって補い、余った分は揚水発電や蓄電池などで溜めておく必要があります。
この課題を解決するために、火力発電や水力発電など異なる電源をバランス良くミックスさせたり、広域の送電網を整備して調整能力を確保したりするなどの取り組みが進められています。
再生可能エネルギーの事業支援を開始している
再生可能エネルギーを事業として取り組もうとする企業や自治体に対して、資源エネルギー庁は各種の支援策を用意しています。
2012年からは固定価格買取制度(FIT)が始まり、太陽光発電をはじめとして再生可能エネルギー導入が急速に進みました。この固定価格買取制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度のことです。電力会社が買い取る費用の一部を電気の消費者から「賦課金」という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えています。
事業化において最大の問題となる資金調達については、環境・エネルギー対策資金、環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域ESG融資促進利子補給事業)、地域脱低炭素投資促進ファンド事業など数多くの支援メニューが準備されています。
こうした資金調達支援メニューや関連許認可の手続き、支援施策活用事例集をまとめた「再生可能エネルギー事業支援ガイドブック」が資源エネルギー庁から発行されています。
SDGsのために私たち1人ひとりができること
SDGsの目標No.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を達成するために努力するのは国や企業ばかりではありません。私たち1人ひとりにもできることがたくさんあります。
節電を心がける
環境省の調査によると、2020年度の家庭部門からのCO₂排出量は1億6,700万トンにのぼっています。その内訳ですが、電気の使用にともなう排出(電力由来)が65.6%、都市ガスからの排出が15.1%、LPガスからの排出が5.8%、灯油からの排出が13.4%です。電気の使用によってCO2が多く排出されていることがわかります。
そこで、まずは節電を心がけることが大切です。エアコンは適切な温度に設定しましょう。冬の暖房時の室温は20℃を目安、夏の冷房時の室温は28℃を目安にします。古いエアコンは、最新の省エネタイプものに買い替えてしまうのが最も効果的です。
照明については、白熱電球からLEDランプに取り替えます。冷蔵庫はものを詰め込みすぎず、適切な温度設定にしましょう。
公共の交通機関を利用する
自家用車からのCO2排出量は、1世帯あたりで見ると「照明・家電製品など」に次いで2番目に多く、全体の約20%を占めています。移動する場合には、自家用車よりも鉄道・バスなどの公共交通機関を利用するようにすれば、CO2排出量の削減につながります。
自家用車を使う場合には、ふんわりとアクセルを踏むことや、加減速の少ないやさしい運転を心がけることで、省エネ効果が得られます。
再生可能エネルギーを選ぶ
最も手軽に、簡単に始められるのが電力会社の切り替えだといえます。契約中の電力プランを、再生可能エネルギーの比率が高いタイプのものに切り替えるのです。
電力会社によっては、再生可能エネルギー実質100%、CO2排出量実質0の電気が使えるプランも用意されています。
難しい手続きも必要なく、大きな負担もなく日々使っている電気がクリーンなエネルギーに変わるのはとてもうれしいことですね。
1人ひとりの取り組みがSDGsにつながる
持続可能な開発目標の1つに数えられている「クリーンエネルギー」。地球温暖化が待ったなしの状態となっている現在、持続可能な再生可能エネルギーの拡大は私たち1人ひとりの課題になっているといっても過言ではないでしょう。
まずは小さな一歩を歩み始めましょう。電力会社を切り替え、再生可能エネルギー実質100%、CO2排出量実質0の電力プランに変更するだけで環境改善に貢献できます。
そうしたプランの1つが、Looopでんきの「eneco」です。「eneco RE100%」をご契約いただくと、再生可能エネルギーの発電にあわせて発行された「非化石証書」がご利用中の電気に付与されます。
関心のある方は、enecoの紹介ページをぜひご覧ください。
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