私たちの生活に欠かせない電気は、火力発電や原子力発電をはじめとしたさまざまな方法で作られています。発電燃料の調達方法や発電施設の仕組みは、電気料金を左右する重要な要素です。
また、地球温暖化が世界的な問題として取り沙汰されている昨今では、「発電方法が環境に配慮したものであるかどうか」も大切なポイントです。
この記事では、発電方法の種類やそれぞれのメリット・デメリットについて解説。近年注目されている再生可能エネルギーについてもご紹介します。
発電方法の種類
日本で採用されている発電方法には、主に以下のようなものがあります。
- 火力発電
- 水力発電
- 原子力発電
- 太陽光発電
- 風力発電
- バイオマス発電
ここからは、それぞれの仕組みやメリット・デメリットについて見ていきましょう。
火力発電の仕組みと特徴
火力発電は、日本では主流の発電方法です。2020年度時点では全体の約75%を占めています。
火力発電の基本原理
火力発電とは、文字通り「火の力」を利用した発電方法です。石油や石炭、天然ガスといった燃料を燃やしてお湯を沸かし、発生した蒸気でタービンを回転させて電力を得る方法が主流です。この仕組みは「汽力発電」とも呼ばれています。
火力発電には、ほかにも燃料を燃やした際に出る燃焼ガスでタービンを回して電気を作る「ガスタービン発電」や、汽力発電と組み合わせた「コンバインドサイクル発電」などがあります。
また、エネルギー変換効率は汽力発電→ガスタービン発電→コンバインドサイクル発電の順で高くなります。
火力発電のメリット・デメリット
火力発電のメリットとしてまず挙げられるのは安定的に発電できる点です。燃料があれば、気候や周辺環境に左右されず発電できます。
また、エネルギー変換効率が良い点も火力発電のメリットです。主要な発電方法の中では水力発電に次いで効率が高く、ロスが少ないことで知られています。
発電量の細かい調整が可能な点も挙げられます。電気使用量は時間帯や季節によって変化しますが、火力発電では需要量に合わせた微調整が可能です。
火力発電のデメリットはCO₂の排出量が多いことです。地球温暖化対策のためにCO₂に代表される温室効果ガスの削減が叫ばれている近年では、この点は大きなネックとなっています。
また、火力発電の燃料調達を海外からの輸入に頼っている点も問題視されています。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は、日本国内ではほとんど採れません。政情の変化などで原油価格が高騰することがあれば、電気料金にも影響が及びます。
日本の石炭火力発電の現状については、こちらの記事で詳しく紹介していますので合わせてご覧ください。
⇒日本の石炭火力発電の現状は? 地球温暖化に与える影響も解説
水力発電の仕組みと特徴
続いては水力発電。水力発電もまた、日本のエネルギーを長らく支えてきた発電方法です。戦前までは「水主火従」と呼ばれるように、火力発電をしのぐ電力供給量を誇っていました。
水力発電の基本原理
水力発電では、水の「位置エネルギー」を利用して発電を行います。水が高い位置から流れ落ちる際の力を利用して発電機の水車を回し、電気を得る仕組みです。
水力発電にはいくつかの種類があります。河川の流れをそのまま利用する「流れ込み式(水路式)」や、河川の水量を調整池で調整して発電する「調整池式」、ダムに溜まった水を利用する「貯水池式」などが代表的な方法です。
また、発電所の上部と下部に調整池を作り、電力需要が大きい時間帯は上部から水を落として発電し、電力供給に余裕のある時間帯に水を汲み上げる「揚水式」は主に補助的な発電方法として採用されています。
水力発電のメリット・デメリット
水力発電のメリットとしてまず挙げられるのは、火力発電のように海外からの燃料輸入を必要としない点です。施設の管理・運営にかかるコストも比較的低いため、トータルコストが安く済みます。
また、エネルギー変換効率の高さもメリット。水の位置エネルギーを利用するため、エネルギー変換効率が高くロスが少ない発電方法です(※)。
さらに、水力発電はCO₂を排出しない再生可能エネルギーです。脱炭素の時代に変わりつつある現代に適した、持続可能なエネルギーとして知られています。
水力発電のデメリットとしては、気候の影響を受けやすい点が挙げられます。降水量が少ない日が続くとダムや河川の水量が減るため、発電量が低下したり、不可能になってしまったりする恐れがあります。
また、水力発電に使用するダムにもデメリットがあります。河川の流れをせき止めることで水温や水質に悪影響を及ぼし、生態系を損ねてしまう恐れがあるのです。このことから、日本では大規模なダムのこれ以上の開発は難しいと考えられています。
代わりに注目されているのが、農業用水などを活用する「小水力発電」です。ダムの建設を必要としない小水力発電は、まだ認知度が低く解決すべき課題も残っているものの、次世代を担うエネルギーとして期待されています。
原子力発電の仕組みと特徴
原子力発電は1950年代から普及がはじまりました。1973年に起きたオイルショックの際には注目を浴び、一時は全体の約25%を占める主要な発電方法でした(※)。
しかし、2011年の東日本大震災に際して起きた東京電力福島第一原発の事故以降、多くの原子力発電所が運転停止。その後は基準適合性審査が厳しくなり、現在でも多くの原発が再稼働できずにいます。
原子力発電の基本原理
原子力発電の原理は、基本的に火力発電と同じです。火力発電所がボイラーで燃料を燃やすのに対し、原子力発電所ではウラン燃料を「核分裂」させます。核分裂とは、物質が持つ「原子核」が2つ以上に分裂する現象です。この際発生する高熱を利用して水を蒸気に変え、タービンを回して発電しています。
日本には33基の原子力発電所があります。2020年時点で稼働しているものはそのうちの9基のみ。また原子力関連施設は、新しい基準をクリアした4つのみが運転しています(※)。
原子力発電のメリット・デメリット
原子力発電のメリットは、原料であるウランが比較的安定的に手に入る点にあります。
原料の調達を海外からの輸入に頼っているという点では火力発電と似ていますが、ウランの産地は石油や石炭と比べて世界の広い地域に分布しています。そのため、輸入先を分散させて世界情勢に変化が起きても価格や輸入量に影響が及びにくいのです。
また、ウランが核分裂する際にはCO₂が発生しないため「脱炭素」の観点からもメリットが大きい発電方法と言えるでしょう。火力発電などと比べて発電の際にかかる燃料費が少なくて済むこともメリットです。
原子力発電のデメリットとしてまず挙げられるのは、リスクの大きさです。東京電力福島第一原発で起きた事故では、漏れ出した放射線や放射性物質が周辺地域に甚大な被害を及ぼしました。事故の際の被害だけでなく、高レベル放射性廃棄物の処理や原子炉の廃炉に莫大な費用がかかることもリスクとして存在しています。
太陽光発電の仕組みと特徴
地球温暖化が地球全体の問題として、国を超えて議論されるようになりました。その中で注目されているのが再生可能エネルギーです。
太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表格として知られています。
太陽光発電の基本原理
太陽光発電は、光エネルギーから電気を作る発電方法です。「太陽電池」を組み込んだソーラーパネルを太陽光に当て続けることで発電します。
太陽光電池に使われるシリコン半導体は、太陽光を浴びると電子を帯びる性質を持ちます。太陽光によってプラス電子を帯びるP型シリコン半導体とマイナス電子を帯びるN型シリコン半導体を組み合わせることで、乾電池のような装置が作られます。これが太陽電池です。
太陽光発電には、このほかにも「化合物系太陽電池」「有機系太陽電池」などの種類が存在します。また、人体や環境に優しく、原料の供給不足を心配する必要のない太陽光電池の開発が進むなど、企業によるさまざまな取り組みが展開されている発電方法です。
太陽光発電のメリット・デメリット
太陽光発電のメリットとしてまず挙げられるのは、発電時にCO₂を排出しない点です。太陽光を資源として利用できるので、化石燃料などのように資源の枯渇を心配する必要もありません。
「太陽光パネルの生産や破棄でCO₂が発生するのでは」といった懸念もささやかれましたが、生産時に極力CO₂を排出しない方法や使用済みパネルのリサイクルへの取り組みも進んでいます。
また、太陽光パネルや関連装置は故障が少なく、メンテナンスの手間が少ない点もメリットです。
太陽光発電のデメリットとしては、天候に左右されやすい点が挙げられます。雨や雪が続く季節の安定的な供給が難しく、ほかの発電方法に頼らざるを得ません。
ほかにもエネルギー密度の低さも問題点として指摘されています。まとまった量の電気を得るためには広範囲にたくさんの太陽光パネルを設置する必要があります。
風力発電の仕組みと特徴
再生可能エネルギーの1つとして、世界的に拡大しているのが風力発電。どのようなメリットから注目されているのか、詳しい仕組みなどを見ていきましょう。
風力発電の基本原理
風力発電においては「風車」が発電装置の要です。風車の羽に風が当たり、回転することで発電機が動きます。
風車には、風車の回転軸が地面に対して水平な「水平軸風車」と、回転軸が地面に対して垂直な「垂直軸風車」の大きく2種類があります。現在主流なのは、より発電効率の良い水平軸風車です。
また、風力発電所は風が起こりやすい場所に設置されますが、陸上風力発電所と洋上風力発電所の2つが主です。
風力発電のメリット・デメリット
風力発電のメリットとしてまず挙げられるのは、燃料の枯渇を心配する必要がない点です。太陽光発電と同じく、「風」も絶えることなく発生するコスト0のエネルギー資源。発電の際にCO₂も発生しません。
優れた発電コストを持つ点も、風力発電のメリットです。大規模な風力発電施設は、火力発電所並みのコストにまで低下してきました。また、太陽光発電と違い、夜間や雨天時にも発電し続けられるのも大きな利点です。
風力発電のデメリットは、発電施設を置く場所が限られる点です。風の力で発電するため、無風の場所には風車を設置できませんが、強過ぎる風が吹く場所では装置が壊れてしまう恐れがあります。
バイオマス発電の仕組みと特徴
「バイオマス」とは動植物由来の有機性エネルギー資源を指します。バイオマス発電は、バイオ燃料を燃焼させて発電しています。
バイオマス発電の基本原理
バイオマス発電の基本的な仕組みは火力発電と同様です。燃料は木くずや家畜の排泄物、生ごみといったこれまでごみになっていたもの。これらを直接燃やしたり、発酵によるガスを燃料にしたりして発電します。
バイオマス発電にはいくつかの種類があります。
まずは直接燃焼方式。伐採材や木くず、廃油、可燃ごみなどを燃焼して水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回します。
熱分解ガス化方式では、木材などを高温で熱処理した際に発生するガスが燃料です。また生物化学的ガス化方式では、生ゴミや家畜の糞尿を発酵させてガスを発生させます。
バイオマス発電のメリット・デメリット
バイオマス発電には、環境に優しいという点に加えて地域活性化などさまざまな側面でのメリットがあります。
バイオマス発電を語る際に欠かせないキーワードに「カーボンニュートラル」があります。これは「植林や森林管理によって木々がCO₂を吸収する量とCO₂排出量を同じにすれば、CO₂排出量は実質0になる」という考え方です。2020年、日本政府はこのカーボンニュートラルを2050年までに実現すると宣言しました。
バイオマス発電に使う木材燃料は燃える際にCO₂を排出しますが、これは木が空気中から取り込んだ炭素に由来するものです。そのため、バイオマス発電は「カーボンニュートラル」を実現し得る存在として注目を浴びています。
また、バイオマス発電は廃棄物を再利用することで無駄の少ない循環型社会づくりに貢献します。さらに、家畜や森林の廃棄物を利用できることから、畜産業や林業を営む地域の活性化も期待されています。
バイオマス発電のデメリットとしては、まず燃料の安定的な調達が難しいことが挙げられます。廃材や生ゴミなどを燃料とするため、必ずしも同じ量の燃料が手に入るわけではありません。バイオマス燃料が不足しているからと森林伐採をするようになっては本末転倒です。
また、大規模施設の建設が難しい点もデメリット。バイオマスの燃料は多岐にわたるため、調達できる地域も日本各地に点在しています。運搬費用などを鑑みると発電施設は小規模になりがちです。
【まとめ】発電方法のメリット・デメリット | ||
---|---|---|
種類 | メリット | デメリット |
火力発電 | ・安定的な発電ができる ・エネルギー変換効率が良い ・発電量の微調整が可能 |
・CO₂を排出する ・燃料費が高騰すると電気料金に影響する |
水力発電 | ・CO₂を排出しない ・燃料費がかからない ・エネルギー変換効率が良い ・トータルコストが安い |
・大規模なダムはこれ以上建設が難しい ・雨量に発電量が左右される |
原子力発電 | ・安定的な発電ができる ・原料価格が安定している |
・事故が起きた際のリスクが大きい |
太陽光発電 | ・CO₂を排出しない ・燃料費がかからない ・装置の故障が少ない |
・設置費用が高い ・エネルギー密度が低い |
風力発電 | ・CO₂を排出しない ・燃料費がかからない ・エネルギー変換効率が良い |
・騒音問題がある ・装置の設置場所に限りがある |
バイオマス発電 | ・カーボンニュートラルの実現につながる ・循環型社会の実現に貢献できる ・地域の活性化につながる |
・燃料の安定的な調達が難しい ・発電施設が小規模になりがち |
バイオマス発電の基本的な仕組みと課題については、こちらの記事で詳しく紹介していますので合わせてご覧ください。
⇒バイオマス発電とは?基本的な仕組みと課題を解説
発電種類の割合(電源構成)
ここまでご紹介した発電方法は、日本ではどのような割合で行われているのでしょうか。発電種類別の割合は「電源構成」と呼ばれています。最後に、日本の電源構成について見ていきましょう。
2019年度の電源構成
2019年度の日本の発電量の電源別の割合は、以下の通りです。
- 天然ガス37.1%
- 石炭31.9%
- 石油等6.8%
- 水力7.8%
- 水力以外の再生可能エネルギー10.3%(太陽光6.7%、バイオ2.6%、風力0.7%、地熱0.3%)
第6次エネルギー基本計画
2021年に発表された第6次エネルギー基本計画で示されたのが「S+3E」です。
S+3Eとは、エネルギーの安定供給(Energy Security)、環境への適合(Environment)、経済効率性(Economic Efficiency)を意味します。
バイオマス発電の項でも触れた「2050年までカーボンニュートラル実現」に加え、2030年度にはCO₂を46%削減、さらに50%削減の高みを目指すとしています。
また、取り組みの一環として、再生可能エネルギーが主力電源として位置づけられました。電源構成としては再生エネルギーが36~38%(内訳:太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%)となるのが目標です(※)。
再生可能エネルギーの電気を選ぼう
この記事では、主要な発電方法の仕組みやメリット・デメリットについてご紹介しました。
地球温暖化をはじめとする環境問題においては、政府や企業だけでなく個人の取り組みも大切です。消費者の多くが再生可能エネルギーに力を入れている電力会社を選べば、企業側も環境に配慮したエネルギーの開発により熱心になるでしょう。
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