2022年は世界情勢や急激な円安の影響を受けて電気代が高騰し、各家庭の負担が増大しました。2023年も電気代の値上げは続くのでしょうか?電気料金が変動する要因やプランごとの値上がりリスク、各家庭ができる対策方法を解説します。
2023年の電気代は高くなる?
物価上昇で家計負担が増える中、「今後も電気料金は高くなるのか」「家計への負担はどのくらいなのか」を気にする方は多いはずです。2023年は今までよりも電気代が上がる可能性はあるのでしょうか?
6月より規制料金の値上げがスタート
経済産業省が、大手電力会社(7社)の規制料金の値上げを正式に認可したことから、2023年6月1日より新料金がスタートしました。
電力会社には、旧一電と呼ばれている大手電力会社と2016年の電力自由化以降に生まれた新電力会社の2つに分かれますが、今回値上げの対象になっている「規制料金」は大手電力会社のみが持っているプランになります。
各電力会社の標準家庭の値上げ率は以下の通りです。東京電力を除いては20%以上の値上がりで、家計への打撃は避けられません。
- 北海道電力:21%
- 東北電力:24%
- 東京電力:14%
- 北陸電力:42%
- 中国電力:29%
- 四国電力:25%
- 沖縄電力:33%
規制料金と自由料金の違い
今回、国に値上げを認可されたのは「規制料金」です。規制料金は、電力小売自由化以前からある料金体系で、消費者保護の観点から料金改定に国の認可を要します。燃料費調整額にも上限が設けられており、上限を超えた部分は電力会社が負担する仕組みです。
一方、自由料金は電力小売自由化以降に生まれた料金体系で、料金の改定に国の認可を必要としないのが特徴です。燃料費調整額に上限を設けるかどうかは、電力会社が自由に決定できます。
自由料金については、新電力会社はもちろん、大手電力会社も電力自由化後に採用しているプランです。
燃料費調整額の上限を撤廃する電力会社も
2023年に電気代が値上がりするとされている理由の1つが、燃料費調節額の高騰です。燃料費調節額とは、燃料の価格変動を電気料金に組み込むための調整額で、燃料費調整制度で算定方法が定められています。飛行機の燃油サーチャージのようなものと捉えましょう。
日本は燃料の多くを輸入に頼っているため、燃料費は海外情勢や為替レートの影響を受けます。近年は燃料コストが上がり続けていることから、自由料金プランの燃料費調節額の上限を撤廃する電力会社が増加しているのが現状です。
上限撤廃は、家庭が燃料費高騰の影響をダイレクトに受けることを意味します。
⇒燃料費調整額についてもっと詳しく知りたい方はこちら
政府の負担軽減策は12月使用分で終了
エネルギー価格の高騰による家庭の負担を軽減するため、政府は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づく電気・ガス価格激変緩和対策を実施しています。
国が登録申請を行った電気・都市ガスの小売事業者などが補助金を原資に値引きを行う仕組みで、適用期間は2023年の12月使用分(2024年1月検針分)までです。それ以降の負担軽減策は発表されておらず、2024年1月使用分からは家庭の負担増が懸念されます。
<電力使用量あたりの単価からの割引額(低圧)>
- 1~8月使用分:7.0円/kWh
- 9~12月使用分:3.5円/kWh
- 2024年1月使用分:発表なし
なお、9月~12月使用分は支援額が7.0円から3.5円に半減しています。
※出典:電気・ガス価格激変緩和対策の実施のため、電気・ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました (METI/経済産業省)
電気料金の変動をもたらす要素
電力会社は意味もなく電気料金を上げ下げしているわけではありません。エネルギー自給率が低い日本は、エネルギーを巡る国内・国外の動きに敏感です。電気料金の変動をもたらす代表的な要素を見ていきましょう。
石油・石炭・天然ガスの価格
日本におけるエネルギー供給は、火力発電が大部分を占めています。経済産業省が公表する「日本の一次エネルギー供給構成の推移(2021年度)」を見ると、化石燃料(石油・石炭・天然ガス)への依存度は80%以上です。
日本は化石燃料のほとんどを海外輸入に頼っているため、化石燃料の市場価格が高騰すれば、電気料金も大きく値上がりする可能性があります。
2022年は「ロシア産石油の原則禁輸」「円安」「世界的なLNG需要の増加(脱炭素化の流れ)」などによって燃料価格が高騰しました。
※出典:日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問|経済産業省 資源エネルギー庁
再生可能エネルギー発電促進賦課金
「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)」も電気料金の値上げに影響する要素です。
日本には、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取る「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」があります。電力会社が買い取りに要した費用は、電気の使用者が負担する仕組みで、毎月の電気料金に再エネ賦課金として反映されています。
年ごとの再エネ賦課金単価は経済産業大臣によって決定されており、電気の取引価格が高いと再エネ賦課金単価が下がり、取引価格が低いと単価が引き上がるのが一般的です。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度には最長20年間の買取期間があります。2030年頃から買い取りを終了する電力会社が増加するため、将来的には再エネ賦課金は減少すると見込まれます。
※出典:制度の概要|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
国内の電力供給力
需要が供給を上回れば市場価格が上昇し、需要が供給を下回れば市場価格が低下するのが需要と供給の法則です。
国内の電力供給力は低下傾向にあり、電力の供給量が年々減少しているのが現状です。電力需給が逼迫すれば、電力の卸売取引市場の価格は高騰します。
供給量が減少している主な理由としては、「原子力発電所(原発)の停止」や「老朽化した火力発電所の休廃止」などが挙げられます。
東日本大震災以降、原発の多くは停止となり、廃炉が決定した原発も少なくありません。さらに近年は、老朽化した火力発電所の休廃止が増加しており、供給力の低下に拍車がかかっています。
※出典:原子力発電所の現在の運転状況|原子力規制委員会
値上がりリスクをプラン別に紹介
電気料金が値上がりする中、電力会社やプランの見直しを検討する方が増えるでしょう。電力会社のプランは大きく「規制料金のプラン」「自由料金のプラン」「市場連動型プラン」があります。それぞれが抱える値上がりリスクを把握しましょう。
規制料金のプラン
電力会社が規制料金プランの内容を変更する際は、国への申請が必要です。許可なしの変更は認められておらず、突然値上がりする心配がないのがメリットです。
消費者保護の観点から、燃料費調整額には上限が設定されています。上限の超過分は電力会社が負担するため、燃料価格の高騰の影響を受けにくいといえるでしょう。
2023年6月1日からは、大手電力会社(7社)の規制料金が値上げされます。プランの価格改定が行われ、家計の負担が増える可能性があります。
自由料金のプラン
自由料金のプランには「変更に国の許可を必要としない」「燃料費調整額に上限の定めがない」という特徴があります。元は、2016年の電力小売自由化で各電力会社が設けた料金プランで、価格競争による料金の低額化が期待されていました。
これまでは「規制料金よりも自由料金の方が安価」といわれてきましたが、プランによっては燃料費調整額の上限がなく、燃料価格の変動がダイレクトに反映されます。急に価格が改定されたり、燃料費調整額が上昇したりして、家計が圧迫される可能性があるでしょう。
また、電気料金が急に高くなったからといって途中解約をすると、違約金や解約事務手数料がかかるケースもあります。思わぬコストが発生しないように、契約時は利用規約をよく確認する必要があります。
市場連動型のプラン
市場連動型のプランは、電気料金の単価が市場価格と連動します。市場とは、国内唯一の卸電力取引所である「日本卸電力取引所(JEPX)」です。
市場価格は電気の需要と供給のバランスによって決定され、需要が供給より多ければ市場価格は上昇し、逆に需要が少なければ下落するのが基本です。
時間帯を選んで電気を使える方は節約につながりますが、タイミングによっては請求が高額になる可能性があるでしょう。国際情勢や国内の電力供給が不安定な中、先の見通しが立てにくい点にも注意が必要です。
なお、燃料費調整額は市場価格に含まれるのが一般的ですが、電力量料金と燃料費調整額の単価を分けて提示する電力会社もあります。
⇒市場連動型のプランについてもっと詳しく知りたい方はこちら
一般家庭は値上げにどう対処する?
オール電化や電気自動車が普及すると、電力使用量がさらに増加します。電気代が右肩上がりに高くなる中、一般家庭はどのような対策を取ればよいのでしょうか?電気とうまく付き合っていく上で意識すべきポイントを解説します。
電力会社・プランを見直す
1つ目のポイントは、電力会社やプランの見直しです。電力の小売りが全面的に自由化となった昨今、お得な電力会社を消費者自らが選べるようになりました。
日本国内には数百社の電力会社があり、それぞれが独自のプランや料金体系を確立しています。電気代が高いと感じているご家庭は、以下の点を見直してみましょう。
- 時間帯割引のある電力会社やプランを契約する
- 契約アンペア数を下げる
- 「電気+ガス」のセットプランを選択する
- 燃料調整額がかからないプランを選ぶ
Looopでんきの「スマートタイムONE」は、30分ごとに料金が変わる市場連動型プランです。基本料金・燃料調整額がかからない上、太陽光発電量の多い時間帯はJEPXのスポット市場価格が0.01円/kWhまで下がることもあります。
電力消費量が多い時間帯から少ない時間帯に活動を移す「ピークシフト」の習慣を身に付ければ、無理のない節電が叶うでしょう。
電化製品を省エネ型にする
電化製品の性能や省エネ性は年々向上しています。10年、20年と長く使っている冷蔵庫やエアコンがあれば、買い替えを検討しましょう。
資源エネルギー庁の資料によると、2008年の冷蔵庫の電力消費量は年間490~550kWhでしたが、2018年は293kWhにまで低下しています。また、照明器具を一般電球から電球形LEDランプに変えれば、約86%の節電が可能です。
法律で定められた省エネ基準を満たした電化製品は「省エネルギーラベル」や「統一省エネラベル」で基準達成状況が確認できます。省エネ性能を比較する際の参考にしましょう。
※出典:機器の買換で省エネ節約 | 家庭向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト
※出典:省エネルギーラベル・統一省エネラベル | 省エネ家電で温暖化防止 | 省エネ家電 de スマートライフ -温暖化の影響と防止- (一般財団法人 家電製品協会)
太陽光発電の導入を検討する
住宅用の太陽光発電システムを導入すれば、電気代の大幅な削減につながります。太陽光発電協会によると、設置容量1kWあたりの年間発電量は約1,000kWです。一般住宅では4kW前後の容量が一般的なので、年間で約4,000kWの電気が賄えます。
自家消費しきれなかった余剰電力は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」による現金化が可能です。売電収入が確保できれば、初期費用の回収も比較的スムーズに行えるでしょう。
太陽光発電システムの補助金制度を設ける自治体もあり、各自治体が定める要件を満たせば、数万円~100,000円ほどの補助金が支給されます。
※出典:太陽光発電により、家庭で使用する電気を全部まかなえますか? - JPEA 太陽光発電協会
今日から実践できる節電方法
節電は日々の積み重ねです。電化製品の買い替えや太陽光発電の導入をする前に、日々の電気の使い方を見直してみましょう。家庭でできる節電方法は数多くありますが、簡単で効果が高い方法をピックアップして紹介します。
待機電力を減らす
小まめなスイッチオフは心掛けていても、電化製品の待機電力を正確に把握していない人は多いものです。機器の電源プラグをコンセントに挿しっぱなしにしていると、知らずしらずのうちに電力が消費されていきます。
資源エネルギー庁の資料によると、家庭の待機時消費電力量は年間で約228kWhです。中でも、ガス温水器(19%)・テレビ(10%)・冷暖房兼用エアコン(8%)は待機時消費電力量が多いため、使わないときはコンセントを抜いておくのが望ましいでしょう。
出張や旅行で長期間家を空けるときは、配電盤のブレーカーを落とすのも有効です。ただし、冷蔵庫等も停止してしまう点に注意しましょう。
※出典:平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要|資源エネルギー庁 省エネルギー対策課
電化製品の設定温度を変える
エアコンや冷蔵庫の設定温度を1℃変えるだけで、電気代は大きく変わります。環境省の資料によると、冷房時の温度設定を1℃高くした場合、約13%(約70W)の消費電力が節約できます。省エネモードや自動運転を賢く活用し、電気代の節約に努めましょう。
冷蔵庫の適正温度は、冷蔵室が約2~6℃、野菜室が約3~8℃です。温度を下げれば下げるほど消費電力が多くなるため、必要以上に冷やさないようにしましょう。温度調節が弱・中・強の3段階の場合、年間を通じて「中」で問題ないとされています。
※出典:みんなで節電アクション! | オフィスでできる節電アクション | 1.エアコンで節電!|環境省
値上げは電気の使い方を見直す良い機会
規制料金の値上げ申請や自由料金の燃料費調整額の上限撤廃など、2023年以降は電気代が値上がりする要素が少なくありません。物価高が続く中、家計の負担は高止まり状態が続くでしょう。
各家庭ができる主な対策としては、電力会社の変更や節電などが挙げられます。これまで無意識に電気を使ってきた方にとっては、使い方を見直す良いチャンスかもしれません。この機会に大手電力会社から新電力に乗り換えをするのもおすすめです。
Looopでんきでは、市場価格に合わせて電気料金が変わる「スマートタイムONE」を提供しています。
ご自宅で電気を使用するタイミングを工夫したり、使用量を調整したりすれば電気料金の節約につながります。これを「ピークシフト」や「ピークカット」と呼びます。
以下は、ピークシフト・ピークカットの取り入れ方の例です。
- 電気料金が安い時間帯に「電化製品を使用する家事」を済ませる
- タイマー機能の付いた洗濯機や食洗機などを導入し、電気料金が安い時間帯を狙って稼働させる
- 電気料金が高い時間帯には、外出を楽しむ
まずは、市場連動型のプランを無理なく生活サイクルへ取り入れられるかどうかイメージしてみてはいかがでしょうか。
⇒スマートタイムONEについてもっと詳しく知りたい方はこちら