私たちの生活は、もはや電気なしでは成り立ちません。日常生活の多くを電化製品に頼っている以上、電気は暮らしに欠かすことができません。しかし、あまりにも生活に根ざしすぎた結果、普段はほとんど電気料金を意識することがないのも事実です。
そこで、この記事では電気料金の仕組みや内訳、電気料金の計算方法についてわかりやすく解説します。身近な電気料金のことをよく知ることで、日々の節約に活かしていきましょう。
電気料金の仕組み
私たちが普段支払っている電気料金は、「基本料金」と燃料費調整額を含んだ「電力量料金」、そして国が定めている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を合計したものです。
電気料金のうち、「基本料金」と「電力量料金」は「電気料金の三原則」に基づいて決定されています。この原則は次のようなものです。
1.原価主義の原則
「料金は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものでなければならない」
2.公正報酬の原則
「設備投資等の資金調達コストとして、事業の報酬は公正なものでなければならない」
3.電気の使用者に対する公平の原則
「電気事業の公益性という特質上、お客さまに対する料金は公平でなければならない」
このような考えから、電力料金は「電気を安定的に発電・送電・配電・販売するために必要な費用を、確実に回収できる金額」であると同時に「電力会社が過度な利益を得ない(電電気使用者の利益が保護される)金額」であることが求められます。
たとえば、契約プランやプランごとの料金は、利用者が使う電圧や電力の利用方法などによって適切に設定されることが原則となっています。そのため、利用者は不公平な電気料金を支払う心配はありません。
また、電力会社が電気料金を値上げする場合は、経済産業大臣の認可が必要です。
電気料金の構成要素
電気料金は、大きく次の3つの要素で構成されています。
1.基本料金
⇒電気料金の「基本料金」と「電力量料金」とは?仕組みについても解説
2.電力量料金(燃料費調整額を含む)
⇒電気料金に含まれる「燃料費調整額」とは?仕組みと役割について解説
3.再生可能エネルギー発電促進賦課金
⇒電気料金に含まれる「再エネ賦課金」とは?仕組みと役割について解説
基本料金
基本料金とは、契約プランごとに設定された固定料金のことです。
基本料金は「アンペア制」と「最低料金制」の2つに大きく分類されます。基本料金は固定なので、電気をどれだけ使用したかにかかわらず、毎月同じ金額がかかります。
アンペア制の場合、同時に使用できる最大電力は、契約アンペア数に応じて決まります。契約するアンペア数が上がれば、基本料金は高くなります。
例えば、一人暮らしなどで電化製品を同時に使う数が少ない場合は、20Aや30Aといった低いアンペアでも生活に支障がない場合が多く、また電気料金も節約できます。
逆に、世帯人数が多いご家庭などでは、一人暮らしなどと比べると同時にたくさんの電化製品を利用することが多く、契約アンペア数が小さいとブレーカーが落ちやすくなります。そのため、契約アンペア数は高くしておく必要があります。
契約アンペア数と基本料金の関係性 | ||
---|---|---|
基本料金 | ||
区分 | 単位 | 料金単価 |
10A | 1契約 | 286円 |
15A | 429円 | |
20A | 572円 | |
30A | 858円 | |
40A | 1,144円 | |
50A | 1,430円 | |
60A | 1,716円 |
※出典:TEPCO東京電力エナジーパートナー
アンペア制と最低料金制の違い
契約するアンペアによって金額が決まる「アンペア制」以外に、契約アンペアに関係なく1つの契約ごとに金額を設定する「最低料金制」という仕組みもあります。
アンペア制の場合、契約アンペアの容量が小さいと、契約以上の電力を使ったときにブレーカーが落ちてしまいます。電化製品を同時に使うことが多い家庭ではアンペア容量を大きくする必要があり、その分基本料金は高くなります。
一方、最低料金制の場合はアンペア容量が基本料金は関係ありません。1契約あたりで最低料金が決められています。利用者は、最低料金に含まれている以上の電力を使ったら、その分の料金を上乗せして支払う仕組みです。
アンペア制か最低料金制、どちらを選ぶとお得なのかは、家族構成やライフスタイルなどによって変わります。
最低料金制を採用している代表的な会社としては、関西電力・中国電力・四国電力・沖縄電力などがあげられます。また、これらと同じ地域の新電力会社も同じ形式を採用していることが多いです。
電力小売自由化以前の2016年までであれば、住んでいる地域で電力会社が決まっていたため最低料金制以外の契約プランを選ぶことはできませんでした。しかし、電力小売自由化後は地域に縛られることなく契約先を選べるようになりました。
電力量料金
電力量料金は使用した電力量に応じてかかる料金のことで、従量料金とも呼ばれています。
「1kWh」あたりの料金単価として金額が設定されるので、その月に使った電力量に比例して電力量料金が発生します。電気料金の請求額が普段よりも特に多い場合は、電気をたくさん使ったことで電力量料金の請求が増えたと考えられます。
三段階料金とは
電力量料金の三段階料金とは、電気を使用した量に応じて、単価設定を三段階に分けたものです。電気使用量が一定量を超えると、単価が切り替わります。
電力会社によって異なりますが、この電力量料金の単価は、基本的に三段階で設定されています。電力を使う量が増えるほど、単価が高くなる仕組みです。こうすることで電力の消費量が抑制されるようにという省エネルギーの目的で、昭和49年から推進されています。
例えば、東京電力の「従量電灯B(税込)」の場合、単価の段階は、次のように定められています。
1段料金……使用量が月間120kWh未満
2段料金……使用量が月間120kWh~300kWh未満
3段料金……使用量が月間300kWh以上
なお、単価が切り替わるラインや、切り替わった後の料金単価は電力会社によって異なります。例えば、北海道電力では3段料金に切り替わる使用量は280kWhです。東京電力の「従量電灯B(税込)」の場合は、3つの段階で下の表のように料金単価が変わります。
電気使用量と電力量料金の単価(東京電力・従量電灯B) | |
---|---|
電力使用量(月間) | 電力量料金(円/kWh) |
120kWh未満 | 19.88円 |
120kWh~300kWh未満 | 26.48円 |
300kWh以上 | 30.57円 |
※出典:TEPCO東京電力エナジーパートナー
ちなみに、Looopでんきは三段階料金ではなく、どれだけ使っても料金単価が変わらないため、電気を多く使う人ほどお得です。また、基本料金が0円でなので、使った分にあわせて簡単に電気料金が計算できる納得の仕組みです。
燃料費調整額
原油、LNG(液化天然ガス)、石炭などの燃料価格は毎日変動しています。そのため、発電にかかるコストも月ごとに異なります。発電コストの変化を電気料金に公平に反映させるため、過去3カ月間の燃料価格の平均を計算し、2カ月後の電気料金に反映させています。これが、燃料費調整額です。
⇒電気料金に含まれる「燃料費調整額」とは?仕組みと役割について解説
燃料費調整額は電力量料金に含まれています。月々の燃料費調整単価にその月の使用電力量をかけて計算され、発電に必要だった燃料費分のコストを電力量料金に反映して調整を行います。燃料費調整額は、燃料価格が上昇したときには上乗せされ、燃料価格が低下したときにはマイナスされて、電気料金が計算されています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」に基づいて、各電力会社は国が定めた一定の期間・価格で再生可能エネルギー源を買い取ることが義務付けられています。
コストの高い再生可能エネルギーの普及を推進するため、電気料金の一部である「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(再エネ賦課金)として支払うことになっています。
再エネ進賦課金の単価は、全国一律になるように決められており、電気の使用量に単価をかけることで、再エネ賦課金の金額を算定できます。
電気料金の計算方法
電気料金は、使用電力量に応じて毎月計算されます。電気料金の計算方法や明細表(検針票)の見方を知っておくことは、電気代を意識して節約するためにはとても重要です。
明細表(検針票)を確認してみる
一定期間ごとに使用電力量を検針して届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)で電気料金の仕組みを知ることができます。
- 契約アンペア数……固定料金である「基本料金」にかかわる数値。アンペア数が高ければ、基本料金は高くなります。
- 基本料金の内訳……一般的には使用した電力量に応じて三段階で単価が決められ、料金が計算されています。燃料費調整額もここに反映されています。
【アンペア制】電気料金の計算法
アンペアは10A・15A・20A・30A・40A・50A・60Aと7段階に区切られていて、家庭によって契約アンペアは異なります。電力会社によって単価は変わりますが、東京電力の「従量電灯B」を契約していると仮定して、電気料金を計算してみましょう。電気料金の計算式は、次の通りです。
電気料金=基本料金(アンペア制)+電力量料金(三段階電力量料金単価×使用電力量+燃料費調整単価×使用電力量)+再エネ賦課金(再エネ賦課金単価×使用電力量)
この計算式に、単身世帯で契約が多い30A、1カ月の使用量が350kWhの場合を当てはめてみます。燃料調整費単価は-2.11円、再エネ賦課金単価は2.98円とします。
【基本料金】
30A:858円
【電力量料金】
第1段階:19.88円×120kWh=2,385.6円
第2段階:26.48円×180kWh=4,766.4円
第3段階:30.57円×50kWh=1,528.5円
燃料調整費単価:-2.11円×350kWh=-738.5円
【再エネ賦課金】
2.98円×350kWh=1,043円
【合計】
9,843円
また、4人家族で40A、1カ月あたり400kWhの電気使用量の場合は、次の通りです。燃料調整費単価は-2.06円、再エネ賦課金単価は2.95円とします。
【基本料金】
40A:1,144円
【電力量料金】
第1段階:19.88円×120kWh=2,385.6円
第2段階:26.48円×180kWh=4,766.4円
第3段階:30.57円×100kWh=3,057円
燃料調整費単価:-2.06円×400kWh=-824円
【再エネ賦課金】
2.95円×400kWh=1,180円
【合計】
11,709円
検針票には計算に必要な情報がすべて書いてありますので、計算式を把握していれば自分で電気料金の内訳を計算することが可能です。
※出典:TEPCO東京電力エナジーパートナー
【最低料金制】電気料金の計算法
次に、最低料金制の場合の電気料金の計算の仕方を見てみましょう。計算式は次の通りです。
電気料金=基本料金(最低料金制)+電力量料金+再エネ賦課金
関西電力の「従量電灯A」を契約中という前提で、単身世帯と家族世帯それぞれで、電気料金を計算してみましょう。
単身世帯の場合、1カ月の使用量は350kWhと仮定します。燃料調整費単価は-0.13円、再エネ賦課金単価は2.98円とします。
【基本料金】
341.01円
【電力量料金】
第1段階:20.31円×105kWh=2,132.55円
第2段階:25.71円×180kWh=4,627.8円
第3段階:28.70円×50kWh=1,435円
燃料調整費:-0.13円×350kWh=-45.5円
【再エネ賦課金】
2.98円×350kWh=1,043円
【合計】
9,533円
家族世帯の場合、1カ月の使用量は400kWhと仮定します。
【最低料金】
341.01円
【電力量料金】
第1段階:20.31円×105kWh=2,132.55円
第2段階:25.71円×180kWh=4,627.8円
第3段階:28.70円×100kWh=2,870円
燃料調整費単価:-0.13円×400kWh=-52円
【再エネ賦課金】
2.98円×400kWh=1,192円
【合計】
11,111円
※出典:関西電力
ここまでの4パターンを表にしてまとめてみましょう。
月額の電気料金比較例 | |
---|---|
アンペア制 単身[350kWh 30A](東京電力) | 9,843円 |
アンペア制 家族[400kWh 40A](東京電力) | 11,353円 |
最低料金制 単身[350kWh](関西電力) | 9,533円 |
最低料金制 家族[400kWh](関西電力) | 11,111円 |
まとめ
電力会社や契約プランによって、月々の電気料金が変わります。最近では、基本料金が0円で従量料金のみのプランや従量料金単価も3段階料金ではなく、一律のプランなど一人ひとりのライフスタイルに合わせた新しいプランが増えています。
そのため、家族構成や使用電力量によって選ぶ電力会社や契約プランを見直すと、電気料金が節約できることがあります。
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ご自宅で電気を使用するタイミングを工夫したり、使用量を調整したりすれば電気料金の節約につながります。これを「ピークシフト」や「ピークカット」と呼びます。
以下は、ピークシフト・ピークカットの取り入れ方の例です。
- 電気料金が安い時間帯に「電化製品を使用する家事」を済ませる
- タイマー機能の付いた洗濯機や食洗機などを導入し、電気料金が安い時間帯を狙って稼働させる
- 電気料金が高い時間帯には、外出を楽しむ
まずは、市場連動型のプランを無理なく生活サイクルへ取り入れられるかどうかイメージしてみてはいかがでしょうか。