近年、地球温暖化に関連して「気候変動」「脱炭素」といったトピックを報道でもよく見聞きするようになりました。
地球温暖化対策のために期待されているのは、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーです。日本における再生可能エネルギーの利用率はどれくらいなのでしょうか。火力発電や原子力発電と比べて、どれほどの割合を占めているのでしょうか。
この記事では、日本の発電における現状を海外の主要国と比較。世界各国が取り組む「カーボンニュートラル」の将来的な展望についても解説します。
日本における発電の割合
特定の地域や国における発電種類ごとの割合を「電源構成」と呼びます。火力発電や水力発電、原子力発電といった項目ごとに発電割合を出していて、脱炭素推進の文脈では再生可能エネルギー発電の電源構成などに着目されることが少なくありません。
ここからは、日本の電源構成についてまず詳しく見ていきましょう。
2019年度の電源構成
2019年度の日本における発電量の電源別の割合は天然ガス37.1%、石炭31.9%、石油等6.8%、水力7.8%、水力以外の再生可能エネルギー10.3%となっています。また、再生可能エネルギーの内訳は太陽光6.7%、バイオ2.6%、風力0.7%、地熱0.3%です。
天然ガスや石炭といった火力発電が大きな割合を占めていることが分かります。
1980年度以降の電源構成推移
1980年度から2019年度までの電源構成がどのように推移したのかも見てみましょう。
日本は1970年代に2度の石油ショックを経験したことで、石油への依存を減らし、電源の多様化を進めました。その結果、1980年代以降には原子力や天然ガスの割合が増えています。
2011年3月には東日本大震災と、東京電力福島第一原発事故が発生し、女川原子力発電所、福島第二原子力発電所、東海第二発電所が停止。深刻な電力不足を受けて首都圏では計画停電が行われ、それ以降も日本の原子力発電所はほとんどが稼働停止となりました。
震災以降、再生可能エネルギーの必要性は強く意識されています。
2012年には再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)が導入されました。これは、電気事業者による再生可能エネルギー事業への参入を手助けする制度で、導入以降、再生可能エネルギーの生産は着実に増加しています。電気事業連合会の「発電設備と発電電力量」からも、「地熱および新エネルギー」の発電量は2012年段階では229.9kWhで、2019年には1024.7kWhまで増加していることが見てとれます。
2030年度の電源構成目標
今後の政府は、より脱炭素に向けた電源構成を目指していきます。
2021年10月22日には第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、2030年度エネルギーミックス(電源構成)の「野心的な見通し」が掲げられました。
具体的な電源構成は以下のとおりです。火力発電を抑え、再生可能エネルギーの割合を大きく伸ばす目標になっています。
2030年ミックス(野心的な見通し) | ||
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再生可能エネルギー | 36~38% | |
(内訳) | 太陽光 | 14~16% |
風力 | 5% | |
地熱 | 1% | |
水力 | 11% | |
バイオマス | 5% | |
水素・アンモニア | 1% | |
原子力 | 20~22% | |
LNG | 20% | |
石炭 | 19% | |
石油など | 2% |
基本的考え方として示されているのが「S+3E」。これは、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)、環境への適合(Environment)、経済効率性(Economic Efficiency)という、エネルギー政策における3つの理念をあらわしています。
すべての面で優れたエネルギー源というものはありません。エネルギーミックスでは、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが補完されるように多層的なエネルギー供給構造を実現することが不可欠となります。
そのバランスの中で、環境への適合のために再生可能エネルギーを最大限に増やしていこうとしているのが第6次エネルギー基本計画の「野心的な見通し」なのです。
世界の主要国との比較
ここまでは、日本におけるエネルギー供給の現状について解説しましたが、世界の主要国はどのような電源構成になっているのでしょうか。主要各国における再生可能エネルギーの割合を見ていきましょう。
ドイツ
日本では「再エネ優等生」として語られることが多いドイツ。
ドイツは2030年までに全体の65%を再生可能エネルギーに移行することを目標に掲げています。2019年時点で再生可能エネルギーの割合は46%、化石燃料を利用した発電方法よりも上回りました(※)。
また、日本では太陽光が再生可能エネルギーの大きなシェアを得ているのに対し、ドイツでは風力・バイオマスの比率が大きくなっています。
ちなみに、ドイツを含むヨーロッパ大陸の国々は電線網がつながっているため、お互いに電力を融通できるのが有利な点です。例えば、再生可能エネルギーの占める割合が多いドイツは再エネ電力を輸出していますが、状況に応じてフランスから原発電力の輸入もしています。
英国
2024年までに石炭火力発電0を目指す英国では、2021年にボリス・ジョンソン首相の「2035年までに再生可能エネルギーで全電力をまかなう」という発言が報じられるなど、再生可能エネルギーへの移行に意欲的な姿勢を見せています。
再生可能エネルギーが占める割合は、2020年時点で43.1%。さらに、石炭火力発電の割合は2012年時点で40%であったのに対し、わずか1.8%まで削減されるなど、急速に脱炭素が進められています(※)。
英国では太陽光・水力発電は少なく、ドイツと同じくバイオマスが多いのが特徴です。加えて四方を海に囲まれた島国の立地を生かし、洋上風力にも力を入れており、主力エネルギー源の1つになっています。
フランス
原子力を最優先にしているフランスは、エネルギー政策で特異な立場をとっている国です。エネルギー資源の自給率が低いという点では日本と共通しているため、原子力発電に頼っています。
フランスでは、2019年時点の電源構成は70%以上を原子力が占めています。しかし、ドイツやスペインなどから再エネ電力を輸入することも少なくないため、消費電力に対する再生可能エネルギーの比率はこの限りではありません。
原子力と再生可能エネルギーは「非化石エネルギー」とも呼ばれています。一旦は原子力発電の縮小を掲げたものの、政権交代後は原子力発電の拡大を中心として脱炭素に取り組むことをマクロン大統領が宣言しました。
アメリカ
続いては、世界第2位のCO₂排出国であるアメリカ。2021年11月に可決された大規模なインフラ投資計画には、再生可能エネルギーやクリーンエネルギー技術、電気自動車といった分野への多額の投資が盛り込まれました。
2020年時点での再生可能エネルギーの比率は20%弱とヨーロッパ諸国と比べて落ちるものの、2022年には22.5%になる見通しを発表。
トランプ政権からバイデン政権に交代後は脱退していたパリ協定に復帰するなど、公約として掲げていた「2035年までに電機部門の脱炭素化」の実現に積極的な姿勢が打ち出されています。
中国
中国は、世界最大のCO₂排出国であると同時に、再生可能エネルギーの導入実績において世界最高を誇る国でもあります(※)。
2021年の発表によれば、再生可能エネルギーの発電容量は全体の44.9%。対して、石炭火力の発電容量は48.8%まで縮小されており、近い将来、電源構成が逆転する見通しです。
中国は国内外で展開する太陽光発電事業も盛んです。低コストで大量生産が可能な設備と、世界各地の市場動向を読む力に長けており、圧倒的なシェアを獲得しています。
こうした自国の強みや今までの実績をふまえ、中国は「2060年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言。 習近平中国国家主席の「2030年までに風力発電と太陽光発電の総設備容量を12億kW以上にする」という、急速な再生可能エネルギーの普及を目指す発言でも話題になりました。
再生可能エネルギー発電の割合と課題
世界各国で普及が加速する再生可能エネルギー。日本でも取り組みは順調に進んでいるものの、課題も多いのが現状です。
ここからは、各種再生可能エネルギーについて解説します。
太陽光発電
太陽光発電は、太陽光のエネルギーを利用した発電方法。発電装置の太陽光パネルは一般住宅の屋根などにも設置可能で、比較的取り入れやすいのが特徴です。日光さえあれば電力供給が可能ですが、日光がない悪天候や夜間では発電が不可能など、条件が限定される場合もあります。
2019年度の日本における電源構成では、太陽光発電は全体の6.7%。再生可能エネルギーのなかでも高い割合を占めており、主力ともいえる太陽光発電ですが、普及が頭打ちになりつつあるのが現状です。
住宅用(10kW未満)では、2012年度~2013年度の導入推移は年平均27.2万件だったのが、2017年度~2020年度には14.3万件と約半数に(※)。
事業用(10kW以上)の新規稼働量は維持されているものの、FIT(固定価格買取制度)価格削減による投資意欲の減退や、設備に適した土地確保の問題、建設する地元との合意形成など諸々の課題が解決されなければ減少すると見込まれています。
シェアを高めるためにはFIT制度からの自立に加え、地域との共生やコスト低減などさまざまな観点からの取り組みが求められます。
水力発電
高いエネルギー変換効率が特徴の水力発電。高い位置から流れる水で水車やタービンを回して発電する水力発電は、日本の気候や風土に適した発電方法として知られています。
2019年度の電源構成では7.8%を占めているものの、ダムなど巨大な発電装置が必要とされる大型水力発電は、既に開発の余地を残していません。そんななかで注目を浴びているのが上下水道や農業用水、一般河川などを利用した「小水力発電」です(※1)。
概ね10,000kW以下の小規模な水力発電を指す小水力発電は、環境負荷が少なく、比較的短時間で設備設置が可能などさまざまなメリットを持ちます(※2)。
未開発の部分が多いものの、今後の普及次第では地域の活性化につながると考えられています。小水力発電は地域密着型で、さまざまな事業団体が参入可能なため、地域によっては高いエネルギー自給率の実現や雇用の拡張が期待できると考えられているためです。
開発コストや運用コスト、水利権調整などさまざまな課題を残しているものの、小水力発電は、次世代の主力候補として注目を集めている発電方法です。
風力発電
風の力を利用した発電方法が風力発電です。山や海、湖などに風車を設置して発電します。昼夜を問わず運転できて発電効率が良いものの、天候や風力に発電量が左右される点やコストが大きな点が課題です。
先ほども触れたように、ドイツや英国をはじめとするヨーロッパ諸国では、風力発電の普及が進んでいます。
日本における風力発電の割合は、2019年度時点で全体の0.7%。まだまだ普及が進んでいるとはいえない状況なものの、理論的なエネルギー量は大きく、ポテンシャルの高さから大きな期待を集めています。
特に洋上風力については、着床式で約128GW、浮体式で約424GWが理論上発電可能だと見込まれています(※1)。
加えて、第6次エネルギー基本計画では「再生可能エネルギー主力電源化の切り札」と太鼓判が押されるなど、高い期待を集めているエネルギー源です(※2)。
その他の再生可能エネルギー
再生可能エネルギーには、ほかにもバイオマス発電と地熱発電があります。
バイオマス発電は、木くずや家畜の排泄物などを燃料にする発電方法です。産業廃棄物を再利用するため、環境の改善および農林水産における「自然循環環境機能」を助けるとされています。燃料となる資源を広い地域から集めなければならないため、運搬などのコストを抑えることが今後の課題です。
第6次エネルギー基本計画では「各種政策を総動員して、持続可能性の確保を大前提に、バイオマス燃料の安定的な供給拡大、発電事業のコスト低減等を図っていく」としています。
地熱発電は、火山帯などの地下熱を利用した発電方法です。火山の多い日本は地熱資源量では世界第3位を誇っており、国内で得られる安定的なエネルギー源として早い段階から注目されてきました。
日本の風土に合った発電方法ですが、開発に時間とコストがかかることが課題です。また、地熱発電に利用される土地は、公園や温泉などの施設と重なることも多く、地元関係者との調整が求められています。
消費者が電気を選ぶことで再生可能エネルギーが増える
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環境への意識や太陽光パネルとの組み合わせを重視して、Looopでんきをご利用いただいているお客様の声を紹介します。
(50代 / 女性 / 4人暮らし)
環境を重んじたキャンペーンなど、独自の取り組みがあり、社会課題についてささやかながらも参加できるから。
(30代 / 女性 / 4人暮らし)
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Q 日本における発電の割合は?
2019年度の日本における発電量の電源別の割合は天然ガス37.1%、石炭31.9%、石油等6.8%、水力7.8%、水力以外の再生可能エネルギー10.3%となっています。また、再生可能エネルギーの内訳は太陽光6.7%、バイオ2.6%、風力0.7%、地熱0.3%です。
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Q 今後の発電割合はどうなる?
2021年10月22日に、2030年度エネルギーミックス(電源構成)の「野心的な見通し」が掲げられ、火力発電を抑え、再生可能エネルギーの割合を大きく伸ばす目標になっています。具体的な電源構成は記事本文をご覧ください。