寒い冬を乗り切るためには暖房器具が欠かせません。エアコンや電気カーペット、こたつなどさまざまな種類がありますが、どのような基準で暖房器具を選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
暖房器具はこたつや電気カーペットのような局所的に暖める暖房器具と、エアコンやファンヒーターのような部屋全体を暖める暖房器具の2つのタイプに分けることができます。
特に後者の部屋全体を暖める暖房器具は長時間運転することも多く、電気代が高くなりがちです。
この記事では「ファンヒーター」について、その種類と電気代を紹介するとともに、お得に使うためのポイントを解説します。
ファンヒーターの種類と電気代
電気のみで動くエアコンと違い、ファンヒーターには「灯油」「ガス」「電気」の3つのエネルギー源があります。同じ部屋全体を暖めるという用途で使用しても、エネルギー源が違うとかかる費用も大きく異なるため注意が必要です。
一般的には「灯油<ガス<電気」の順で電気代が高くなるといわれています。ここではファンヒーターについて、エネルギー源別に特徴をご紹介します。また想定される電気代についても具体的に算出していきます。
石油ファンヒーター
石油ファンヒーターは灯油を燃焼させることでエネルギーを生み出し、温風を室内に送り暖める暖房器具です。
今回は10畳用の石油ファンヒーターを例に、電気代を算出してみましょう。ただし、メーカーやモデルによって燃焼時の電力は異なるため、正確な値を出したい場合は暖房器具の消費電力を確認し、以下の計算式にあてはめて算出すると良いでしょう。
電気代(円)=消費電力量(kW)×稼働時間(h)×料金単価(円/kWh)
石油ファンヒーターで最も電力を使うのは点火時となります。燃焼時の消費電力は製品によって異なりますが、新しいモデルの石油ファンヒーターでは待機時消費電力が0.8W、燃焼時が11~22W(※1)と省電力を実現しているものもあります。
料金単価を27円/kWh、1日あたり8時間稼働すると仮定したときの電気代は以下のようになります。
・1日あたりの電気代
11~22W(0.011~0.022kWh)×8時間×27円/kWh=2.37~4.75円
・1カ月あたりの電気代
2.37~4.75円×30日=71.1~142.5円
これはほかのファンヒーターと比べても安い料金となっています。
ただし、石油ファンヒーターの主な動力源は灯油です。先ほどの最新モデルの燃料消費量を1時間あたり0.350〜0.057リットル(※1)、灯油代を1リットル85円(※2)と仮定すると、1日あたり8時間稼働する場合の灯油代は以下のようになります。
・1日あたりの灯油代
0.057~0.350リットル×8時間×85円/リットル=41.04~252.0円
電気代と灯油代を合計すると、1日8時間稼働したときのコストは43.41〜256.8円となります。
ガスファンヒーター
パワフルかつスピーディーに室内を暖めることができるガスファンヒーター。暖房機能はもちろん、空気清浄機能やタイマー付きのモデルも販売されており、生活に合わせて使用することが可能です。
市販されているガスファンヒーターは、都市ガス用とプロパンガス(LPガス)用の2種類があるため、自宅で契約しているガスの種類に合わせた機器を選ぶ必要があります。
基本的にはガスをエネルギー源にして部屋を暖めますが、ファンにモーターを使っているので電力も消費します。1時間あたりの電気代は一般的に約0.7円が目安となり、わずか1円未満で稼働しています。
そのため、ガスファンヒーターのコストの大部分は「ガス代」が占めています。ガスファンヒーターは「号」の単位で表現され、コンクリート9畳までが20号、コンクリート15畳までが35号、コンクリート21畳までが50号です。
今回は20号を例にコストを算出します。ガス料金は都市ガス、プロパンガスの種類や契約プランによっても異なりますが、都市ガスの基本料金+従量料金で考えていきます。
まず都市ガスの従量料金は1立方メートルあたり130.46円(※1)と仮定します。
例えば、あるメーカーの20号のガスファンヒーター(※2)は13Aの場合で暖房能力は2.4kW(2,100kcal/h)です。これを都市ガスの1立方メートルあたりの熱量(10,750kcal)(※3)で割ると、0.19立方メートルとなります。
よって、1日あたりのガス代は以下のようになります。
0.19立方メートル×8時間×130.46円=198.2円
1時間あたりのガス代にすると、だいだい24.78円です。ガスファンヒーターを1時間動かしたときの料金は、ガス代の24.78円に電気代の0.7円を加えた約25.48円。1日あたりのコストは8時間稼働の場合、203.84円となります。
電気ファンヒーター
石油ファンヒーターは「電気代」+「灯油代」、ガスファンヒーターは「電気代」+「ガス代」がかかりましたが、電気ファンヒーターは「電気代」のみで計算することが可能です。
ここでは、電気ファンヒーターの中でもっともポピュラーなセラミックファンヒーターの特徴と電気代をご紹介します。
セラミックファンヒーターは、電気を通すと熱を発する発熱体に特殊加工したセラミックを採用しています。電気の力で熱を発生させるため、灯油代やガス代と比較すると、トータルコストが高くなる傾向にあります。
セラミックファンヒーターは風力を変更することができるため、設定によりワット数は変動しますが、今回は1200Wと仮定して計算してみましょう。
1日あたり8時間稼働したと仮定したときのセラミックファンヒーターの電気代は以下のようになります。
1200W(1.2kW)×8時間×27円/kWh=259円
ここまで紹介してきた各ファンヒーターの1日あたりのコストを下記の表にまとめました。
石油やガスに比べ、電気のファンヒーターが一番コストが高いことがおわかりいただけたでしょうか。
ファンヒーターの種類 | 1日あたりのコスト(※1) | 1カ月あたりのコスト(※2) |
---|---|---|
石油ファンヒーター | 43.41〜256.7円 | 1,302.3〜7,701円 |
ガスファンヒーター | 203.84円 | 6,115.2円 |
電気ファンヒーター | 259円 | 7,770円 |
エアコンとファンヒーター、電気代が安いのはどっち?
ここまで3種類のファンヒーターの1日あたりのコストを算出してきました。次はエアコンとファンヒーターの電気代を比較してみましょう。比較するデータは先ほどの計算式に基づいて、
- 石油ファンヒーター:約150円(最小値43.41と最大値256.7円の平均を採用)
- ガスファンヒーター:約203.84円
- 電気ファンヒーター:約259円
とします。
今回は7~10畳の部屋用のエアコンで、冬季暖房時の消費電力量が596kWhの製品をモデルケース(※)として1日あたりの電気代を導き出します。ただし、エアコンは電気を入れたときと、温度が安定しているときの消費電力量の差が激しいため、使用環境によって数値が大きく変わります。そのため、あくまで特定環境下での概算値となりますのでご注意ください。
まず、資源エネルギー庁のデータ(※)より、1時間あたりの消費電力量を計算します。
消費電力量を算出するのに必要なデータは以下です。
- エアコンの暖房期間消費電力:596kWh
- 1日の使用時間:18時間(6:00~24:00)
- 1カ月の日数:30日
- 使用期間:5.5カ月(165日)
これらを用いて1時間あたりの消費電力量を求めます。
596kWh÷5.5カ月(165日)÷18時間=0.2kWh
1日8時間使用するとエアコンの電気代は以下のようになります。
0.2kWh×8時間×27円/kWh=約43.2円
ファンヒーターとエアコンを比較した場合、エアコンは石油ファンヒーター(灯油代を含む)の43.41円を下回りました。このことから、エアコンの方が光熱費のトータルコストが安い暖房器具と言えるでしょう。
エアコンとファンヒーターの使い分け
エアコンの方がコストパフォーマンスに優れているのであれば、ファンヒーターはどんなときに活用するのが良いのでしょうか。
エアコンは比較的安い電気代で部屋全体を暖められる点がメリットです。コストを抑えながら部屋全体を暖めることができますが、「暖かい」と感じるまで時間がかかるケースがあります。
一方、ファンヒーターはどのタイプでも素早く部屋を暖めることが可能です。特にテーブルまわり、ソファまわりといった一部の場所を暖めたいときに向いています。
また軽量タイプの電気ファンヒーターは持ち運びが便利な点も魅力です。冷えやすい脱衣所やトイレなど、必要なときだけ動かせるため可動性も抜群です。
エアコンで部屋全体を暖めつつ、「すぐに暖かくしたい」「使うときだけピンポイントで暖めたい」といった場所にファンヒーターを設置すると、上手に使い分けができます。
ファンヒーターの電気代を節約する方法
「局所的に暖めたいが、電気代が高いならファンヒーターの使用を躊躇してしまう」という方もいるのではないでしょうか。
確かにエアコンと比較をすると、ファンヒーターはコストがかかります。しかし、エアコン以外の暖房器具があった方が、寒い時期をより快適に過ごすことができるはずです。
ここではファンヒーターの電気代を節約する方法をご紹介します。暖房器具の電気代は利用環境に大きく影響を受けます。少し工夫するだけで電気代を抑えることができるので、以下の内容を試してみてはいかがでしょうか。
電気代が安い暖房器具と併用する
部屋を暖める暖房器具はエアコンやファンヒーターだけではありません。エアコンよりさらに安い電気代で使用できる暖房器具もあるのです。
例えば、こたつは1時間あたり約2.7~5.4円(100〜200Wで運転時)、電気毛布は1時間あたり約1.5円(55W)で使用が可能です。これらとファンヒーターを組み合わせて使えば、少ない電力量で十分な暖かさを保つことができます。
また、エアコンとファンヒーターの併用も相性が良くおすすめです。エアコンが苦手とする暖めはじめをファンヒーターで補完し、急速に部屋を暖められます。
エアコン単体を稼働させるよりも素早く部屋全体を暖めることができるでしょう。十分な温度まで上がったらファンヒーターを切り、エアコンのみを動かすことで賢い節電が可能です。
設定温度を低めにする
電気代を節約する最も簡単な方法は設定温度を変更することです。
設定温度を低めにするだけで、消費電力を減らすことができるので電気代を抑えることができます。
ただし無理は禁物です。せっかく便利な暖房器具があるのに、部屋の中で寒さを感じ体調を崩したりしては本末転倒です。上着を一枚増やすなどできる範囲で防寒対策をし、設定温度を下げてみてはいかがでしょうか。
石油ファンヒーターやガスファンヒーターは、電気代より「灯油代」「ガス代」がかさみます。灯油が安いタイミングで購入したり、ガスの契約を見直してみるのも有効です。
また、最近の製品には自動で節約をしてくれる「エコモード」が搭載されているケースもあります。こういった暖房器具に備えつけられている機能も積極的に活用していきましょう。
窓の断熱対策を行う
節電の効果が意外と高いのが窓の断熱対策です。
断熱材を使用している家でも、窓はその性質上どうしても冷気や熱気が入りやすくなります。
冬場の部屋の温度を高く保つためには、窓からの冷気を防ぐことが大切です。具体的な方法として、窓ガラスに断熱シートを貼ったり隙間がないようにカーテンを閉めるなどが挙げられます。カーテンに遮熱、断熱効果がついているものを選べばさらに高い断熱効果が見込めるでしょう。
「昼間はカーテンを開けておきたい」という方は、レースの活用も検討してはいかがでしょうか。レースにも防寒、断熱素材のものがあるため、陽の光を遮ることなく冷気や熱気を軽減させることができます。
冬の電気代を節約する方法
冬は暖房費がかかるため、ほかの季節と比べて電気代が高くなりがちです。
今回ご紹介したファンヒーターはエアコンよりも電気代が高くなります。部屋を素早く暖められるファンヒーターにメリットを感じつつも、光熱費が上がってしまうことを心配する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
冬の電気代を節約するためには、暖房器具の使用方法を工夫する以外に、電気料金プランや契約アンペア(A)数を見直してみることもおすすめです。ここでは具体的な見直し方法についてご紹介します。
契約アンペア数の見直し
電気料金は主に「基本料金」と「従量料金」の二つで成り立っています。
従量料金は使用した電気量に比例して請求されますが、基本料金は固定費用となりまったく電気を使っていない月でも支払う必要があります。
一部エリア(例えば東京電力エリア)では、基本料金は契約アンペア数によって決まります。例えば東京電力エナジーパートナーの従量電灯B・Cの場合、30Aで858円、40Aで1,144円、50Aで1,430円といったかたちです。仮に30Aで十分カバーできるのに、多すぎる50Aを契約していた場合、毎月572円(1,430円-858円)、年間で6,864円も無駄にしていることになります。
一人暮らしや電気使用量が少ない世帯の場合は、最適なアンペア数で契約ができているか見直してみると良いでしょう。
電気料金プランの見直し
契約アンペア数の見直しと一緒に、ぜひ。電力自由化に伴いさまざまなニーズにマッチした料金プランが登場しています。
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まとめ
ファンヒーターは局所を短時間で暖めるときに便利です。しかし、長時間使用すると電気代がかかってしまうため、節約のポイントを上手く抑えながら賢く活用することが大切です。
また、電気代の節約を考える際は、現在の電気料金プランを見直してみましょう。特にライフスタイルが変わったり家族が増えたりしたときなど、これまでの暮らしに変化があったときは電力会社や料金プランの見直しのチャンスです。
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このプランは基本料金が0円のため、ご自宅で使用する電気の量が多い方や、現在のプランで基本料金が高い方に最適です。
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基本料金がかからないので、大きいアンペアで契約していてもお得感がある。
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まずは、電気料金プランを見直して、今の生活のままで電気代が安くなるのか試してみてはいかがでしょうか。
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電気の市場連動型とは?メリット・デメリットから電気の上手な使い方まで
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