夏や冬に電気代が高くなってしまう要因として、エアコンの使用が挙げられます。快適に過ごすためには仕方がないことだとわかっていても、電気代の急上昇に頭を悩ませているご家庭も多いかもしれません。そこでこの記事では、エアコンに実際にかかる電気代の計算方法から冷暖房の仕組み、さらには効率的な節約方法まで詳しく解説します。
エアコンの稼働にはどのくらいの電気代がかかっている?
電気代を節約しようとするとき、まず「エアコンの使い方の改善」が頭に浮かぶ方がいらっしゃるかもしれません。「エアコンはたくさんの電気を使うので、電気代に大きく影響する」というイメージがあるからでしょう。
資源エネルギー庁の調査によると、夏の日中(14時頃)の消費電力(在宅世帯平均)のうち、実に58%がエアコンによるものとされています。また、冬の夕方(19時頃)の消費電力のうち、30%がエアコンによるものという例も示されています。
※出典:経済産業省資源エネルギー庁Webサイトより
※出典:経済産業省資源エネルギー庁Webサイトより
たくさんの電気を使っている電化製品の使い方を改めれば、電気代を効率的に節約することが可能になります。節約の第一歩としてエアコンの使い方に気を付けるのは正しいといえそうです。
エアコンの稼働にかかっている電気代を計算してみよう
それでは、エアコンを稼働させるためにどれくらいの電気代がかかっているのかを計算してみましょう。通常、電化製品を使用するためにかかる電気代は、「消費電力」の値から計算するのですが、エアコンの場合は運転中に消費電力が大きく変化するため、「期間消費電力量」という数値を用いて計算します。
期間消費電力量とは、冷暖房機器としてエアコンを1年間使用した場合に使用する電力の量の目安です。多くの場合、メーカーWebサイトや取扱説明書などに記載されているので、ご自宅で使用しているエアコンの数値を確認してみましょう。
期間消費電力量が確認できたらあとは簡単。その数値とご自宅で契約している電気事業者の従量料金単価(電気代のうち、電気の使用量によって変動する部分の単価。通常は●●円/kWhで表されている)の掛け算をしてみましょう。計算結果がそのエアコンに1年間にかかっている電気代の目安です。
製品によって期間消費電力量はさまざまなのですが、一例として、一般社団法人日本冷凍空調工業会の「家庭用エアコン(ルームエアコン)国内出荷実績」統計に参加している10社の中から、無作為に選択したあるメーカーの2021年モデルの期間消費電力量をもとに電気代を計算して表にまとめてみました。従量料金単価には東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bを適用しています。
1台のエアコンに1年間にかかっている電気代の目安 | ||
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対応する部屋の広さ | 期間消費電力量 | 1年間の電気代 |
6畳用 | 621kWh | 16,444円 |
8畳用 | 717kWh | 18,986円 |
10畳用 | 790kWh | 20,919円 |
14畳用 | 1,097kWh | 29,049円 |
18畳用 | 1,736kWh | 45,969円 |
20畳用 | 1,922kWh | 50,895円 |
※期間消費電力は日本冷凍空調工業会の「家庭用エアコン(ルームエアコン)国内出荷実績」の統計に参加している10社の中から無作為に選んだメーカーの2021年モデルのものです
※従量料金単価には東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの2段階料金である26.48円/kWhを適用
※「1年間の電気代」は小数点第1位で四捨五入しています
例えば、2LDKのご自宅で、LDKに14畳用、その他の2部屋に8畳用のエアコンを1台ずつ設置し、標準的な使用をしているなら、
- LDKのエアコンの電気料金:年間29,049円(14畳用)
- その他の2部屋のエアコンの電気料金:年間18,986円(8畳用)×2
となり、年間で約67,000円の電気代がかかっているわけです。エアコンの稼働にどの程度のお金がかかっているかを把握する手掛かりにしてください。
知っておきたいエアコンの冷暖房の仕組み
エアコンを動かすために、たくさんの電気代がかかっていることがわかりました。すぐにでも節約方法を知りたいところですが、その前にエアコンの冷暖房の仕組みについても知っておきましょう。冷暖房の仕組みを知ることで、このあとに説明する節約方法がなぜ効果的なのかを理解しやすくなります。
室内と室外の熱を交換するヒートポンプ
エアコンが冷風や温風を出して室内の温度を調整できるのは、室内と室外の熱を交換する「ヒートポンプ」という機能を持っているからです。エアコン自体が冷たい風を作ったり、電気で熱を作ったりしているわけではありません。
下の図はヒートポンプの機能を簡単に説明したものです。冷房時には室内の熱をエアコンが取り出して外に放出することで、結果として冷風が生まれ、室内が涼しくなるのです。逆に暖房として使うときには、室外の熱を室内に取り入れることで、部屋を暖かくしています。
エアコンの電気代を左右するのは室温と設定温度の差
ヒートポンプという機能を利用して室温の調整を行うとき、エアコンの稼働状況に最も大きな影響を与えるのが、室温と設定温度の差です。熱の交換によって部屋を涼しくしたり温めたりしているので、室温と設定温度に大きな差があると、エアコンをフルパワーで稼働させなければならない時間が長くなってしまうのです。
ちなみに、冷房よりも暖房のほうが電気代が高くなりがちなのはこのせいです。例えば真夏に32度の室内を28度まで下げたいとしましょう。このときの室温と設定温度の差は「4度」です。
一方、冬場の場合はどうでしょうか。ここでは、何もせずにいると室温が10度前後まで下がってしまうような地域にお住まいの方を想像してみましょう。快適に過ごすためには室内温度を20度程度に設定しておくのが適切といわれているため、設定温度との差は「10度」になります。このように、暖房のほうが設定温度と室温の差が大きくなりやすく、結果として電気代が高くなってしまうケースが多くなるのです。
エアコンの電気代を節約する10のコツ
それでは、エアコンの電気代を効率よく節約するためには、どのようなことに取り組めばよいのでしょうか。すぐに実践できるコツを10個紹介しましょう。
1.設定温度を確認する
まず確認したいのはエアコンの設定温度です。冷房時の設定温度を1度高くすると、約13%の消費電力の削減が可能になり、暖房時に1度低くすると約10%の消費電力の削減になるとされています(※)。たった1回、設定を変えるだけで電気代を抑えることができるのであれば、実践しない手はありません。
ただし、夏冬の冷暖房は体調管理に欠かせないものです。節電を意識しすぎて熱中症になってしまったり、風邪をひいたりしまっては元も子もありません。快適に過ごせる室温の範囲内で調整をしましょう。
(※)環境省Webサイト「みんなで節電アクション」より
2.エアコンの電源を頻繁にオン/オフしすぎない
電気代を節約するためには、「電化製品の電源はこまめにオフにする」が基本です。しかし、エアコンは少し事情が異なるので注意が必要です。エアコンは電源を入れた直後に最も電力を使うため、頻繁に電源のオン/オフを繰り返すと、かえって電気代がかかることがあるのです。
機器の種類や設定温度などによって異なるため一概にはいえませんが、30分程度の外出であれば電源をオンにしたままのほうが無難かもしれません。
3.風量設定を「自動」にする
エアコンにかかる電気代を節約したいと考えるなら、風量の設定は「自動」にしておくのがおすすめです。設定温度になるまでは「強」、設定温度になったら「弱」などと、エアコン本体が適切な風量を判断して稼働してくれるので、手間をかけずに電気代を抑えられます。
4.定期的にフィルターの掃除をする
エアコンのフィルターの目詰まりは、冷暖房の効果を弱める原因になります。定期的に掃除をしてフィルターがきれいな状態を維持するだけで、冷房時で約4%、暖房時で約6%の消費電力の削減につながるとされている(※)のでぜひ実践してみてください。
フィルターの掃除頻度は2週間に1度程度を目安とするのが理想的です。本体からフィルターを取り外し、表面についたほこりを掃除機で吸い取ったあとに、裏面から水をかけて洗い、完全に乾くまで陰干すれば掃除は完了です。
なお、フィルターのお手入れの方法は取扱説明書に記載されているのが一般的です。モデルごとに方法が異なることもあるので、確認してから掃除に取り掛かりましょう。
(※)環境省Webサイト「みんなで節電アクション」より
5.カーテンを閉める
室内が外気から受ける影響をできるだけ少なくする工夫も、エアコンにかかる電気代の節約につながります。せっかく快適な温度に近づいても、外気の影響で室内が暑くなったり寒くなったりすると、エアコンの再稼働による温度調節が必要になってしまうからです。
そこでおすすめなのがカーテンやブラインドを閉めること。断熱効果が期待できますし、日中であれば日差しによる温度上昇も抑制できます。
6.室内の空気を循環させる
冷たい空気は下に、温かい空気は上に留まりやすい特性があります。暖房をつけても足元だけが冷たかったり、冷房をつけたときに寝転がると寒いのに、起き上がるとあまり涼しく感じられなかったりするのはこれが理由です。
最も簡単な対策は、エアコンの風向きを調整すること。冷房時は水平に、暖房時は下向きにするのがよいでしょう。そのほか、扇風機やサーキュレーターを併用して、空気の循環を促すのも有効です。
7.室外機の前には物を置かない
室外機の吹き出し口の前に物を置くと、暖房の場合は外気を上手に取り込めず、冷房の場合は排気の妨げになります。その結果、冷暖房の効率が落ちるだけでなく、室外機に負荷がかかり、エアコンが故障する可能性もあります。
ベランダ付近に自転車や植木鉢、ゴミ箱、傘などを置き、室外機の吸気・排気の邪魔をしてしまっているご家庭も多いので、ご自宅の状況を確認してみましょう。
8.季節に合った服装を心掛ける
室内の空調が整っているからといって、夏に長袖を着たり、冬にTシャツ1枚で過ごしたりしてはいないでしょうか。室内でも季節に合わせて適切な衣服を着ることで省エネにつながります。
夏場はできるだけ涼しく過ごせる服を着る、冬場は重ね着をして体温を維持できるようにする。当たり前に聞こえますが、衣服の工夫をすることで設定温度を適切に保ち、電気代の節約が可能になります。
9.エアコンの買い替えを検討する
「エアコンの買い換えは故障したとき」と考えている方も多いかもしれません。物を大切に長く使うことは良いことなのですが、電気代のことを考えると、最新モデルへの買い替えを検討したほうがよいケースもあります。
新型のエアコンには、人感センサーやフィルター自動洗浄などといったさまざまな省エネ機能が搭載されており、効率良く電気代を安くできる可能性があります。
10年前のエアコンを新しく買い替えるだけで4%も電気代が安くなるという調査結果もあります(※)。ご自宅のエアコンと最新モデルの消費電力を比較してみて、明らかな差があるようなら買い替えを検討してみてもいいでしょう。
(※)環境省Webサイト「しんきゅうさん」より
10.契約している電気事業者を切り替える
エアコンの買い替えには本体の購入費用や設置工事費などがかかるので、少しハードルが高いと感じる方も多いでしょう。コストをかけずに電気代を安くしたいなら、契約している電気事業者を切り替えるという手もあります。
各電力会社では、さまざまな電気料金プランが多数用意されており、以下のように時間帯やライフスタイルによって電気料金が安くなるプランもあります。
夜の時間帯に電気料金が安くなるプラン
電気+ガスのセット割プラン
季節によって料金単価が安くなるプラン
様々な電気料金プランが用意されているため、ご自身のライフスタイルにあったものを選ぶことが重要です。
電気事業者の切り替えに必要なものは?
電気事業者の切り替えは、多くの場合、Webサイトからのお申し込みで完結します。準備するものは、電気事業者から毎月受け取っている「検針票(電気ご使用量のお知らせ)」「電気代のお支払いに使用するクレジットカード」「電気事業者との連絡に使うメールアドレス」程度。365日24時間お申し込みができます。
なお、スマートメーターの取り付けが済んでいないご家庭では、無料のスマートメーター設置工事が必要になる場合があります。
正しい知識を持って賢い電気代の節約を
毎年、夏や冬になるとエアコンにかかる電気代に頭を悩ませているご家庭は多いかもしれません。しかし、節約のコツをつかんで正しく実践すれば、電気代は確実に安くなるでしょう。
電化製品の電気料金が気になる方は、家電の買い替えや使い方を工夫するだけでなく、電力会社の変更や電気料金プランの見直しも検討してみましょう。
Looopでんきでは、市場価格に合わせて電気料金が変わる「スマートタイムONE」を提供しています。
ご自宅で電気を使用するタイミングを工夫したり、使用量を調整したりすれば電気料金の節約につながります。これを「ピークシフト」や「ピークカット」と呼びます。
以下は、ピークシフト・ピークカットの取り入れ方の例です。
- 電気料金が安い時間帯に「電化製品を使用する家事」を済ませる
- タイマー機能の付いた洗濯機や食洗機などを導入し、電気料金が安い時間帯を狙って稼働させる
- 電気料金が高い時間帯には、外出を楽しむ
まずは、市場連動型のプランを無理なく生活サイクルへ取り入れられるかどうかイメージしてみてはいかがでしょうか。