記事をシェアする

風力発電は、風の力と風車で電気を作るクリーンな発電方法です。日本の地理的条件を生かせる洋上風力発電を中心に、主力電源化に向けた取り組みが進んでいます。風力発電は再エネの主役になれるのでしょうか?導入状況やメリット・デメリットを解説します。

再エネ由来の電気をフル活用
料金プランはこちら

風力発電とは?

風力発電は、大きな風車を風力で回転させて電気エネルギーを生み出す方法です。日本の風力発電は欧州に比べて発展途上ですが、陸上と洋上の両面で開発が行われています。

風力発電にはどのような特徴があるのでしょうか?国内における風力発電の実態を把握しましょう。

再生可能エネルギーの一種

風力発電は、巨大な風車を風の力で回転させ、発電機を通じて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みです。再生可能エネルギーの一種で、以下のような特徴を有します。

  • 資源が枯渇せず繰り返し使える
  • CO₂を排出しない(増加させない)
  • 自然界に常に存在するエネルギーである

エネルギー供給構造高度化法(エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律)で定義されている再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存在する熱・バイオマスの7種類です。これらは、非化石エネルギー源であり、国内のみで賄えます。

資源エネルギー庁によると、日本は2030年までに再生可能エネルギーの電源構成を全体の36~38%にする目標を掲げています。

※出典:今後の再生可能エネルギー政策について|資源エネルギー庁

国内における風力発電の割合

日本において風力発電はどれほど活用されているのでしょうか?環境エネルギー政策研究所のデータによると、2022年の風力発電の割合はわずか約0.9%でした。
風力発電の先進国であるデンマークでは、風力発電だけで55%に達しています。スウェーデンやポルトガル、ドイツといった欧州諸国に比べても、日本の風力発電の割合は低く、まだまだ発展途上であることがうかがえます。
2022年6月末時点の日本の風力発電の累積導入量は4,691MW(※1)で、風力発電所の総数は2,605基です(日本風力発電協会調べ)。
2030年の風力発電の導入見込量は、陸上風力発電が17.9GW、洋上風力発電が5.7GW(※2)であり、今後は導入拡大に向けた取り組みが加速する見通しです。

(※1)1MW=1,000,000W
(※2)1GW=1,000MW

※出典:2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報) | ISEP 環境エネルギー政策研究所
※出典:2022年6月末時点日本の風力発電の累積導入量|一般社団法人 日本風力発電協会
日本の電源構成についてもっと詳しく知りたい方はこちら

風力発電の仕組みを知ろう

風力発電というと、広大な大地で大きな風車が回転している様子を思い浮かべる方は多いでしょう。どのようにして風車と風で電気を作り出しているのでしょうか?発電の仕組みをわかりやすく解説します。

なぜ風力で電気が作れるの?

風力発電の設備は、主に以下のようなパーツで構成されています。

  • ブレード:風を受け止めるための羽
  • ロータ:回転中心部品にブレードが付いたもの
  • 増速機:ブレードの回転を発電に必要な回転数まで増幅させる機械
  • 発電機:ロータからの回転エネルギーを電気エネルギーに変換する機械
  • ナセル:増速機や発電機を格納する箱
  • タワー:風車全体を支える部分

ブレードが風を受け止めると、ブレードの中心部分に付いたロータが回転し、回転がナセルに伝わります。ナセル内の増速機によって回転エネルギーが増幅され、発電機によって回転エネルギーが電気エネルギーに変換される仕組みです。

陸上風力発電の場合、タワーの高さはブレード下端と地表面の隔離が30m以上になるように設計されるのが一般的です。ロータ径が80m級の場合、タワーの高さは65~80mほどになるでしょう。

風車の形状と大きさ

風車の形状は、軸が地面と水平になる「水平軸風車」と、軸が地面と垂直になる「垂直軸風車」に大別されます。

  • 水平軸風車の種類:プロペラ型・オランダ型・多翼型・セイルウィング型
  • 垂直軸風車の種類:サボニウス型・ダリウス型・パドル型・ジャイロミル型

水平軸風車は、小型から大型まで幅広い大きさに適しています。最も代表的なのがプロペラ型で、羽の枚数が少ないほど速度が上がるのが特徴です。

垂直軸風車は、風向きを問わない全風向型で、風力以上の回転速度が得られるのが強みです。ただし、設置面積を大きく確保する必要があり、大型化にはあまり適していません。風力発電でよく使われているのは、サボニウス型とダリウス型です。

風は地上から高いほど強く吹く性質があるため、多くの発電量を得るにはタワーの位置はできるだけ高くするのが理想です。一般的に大きな風車ほど回転力が強くなり、より多くの電気を生み出せます。

陸上風力と洋上風力

設置場所によって「陸上風力発電」と「洋上風力発電」の2種類に区別されます。

陸上風力発電は、陸上に発電所を設置する方法です。高原や峠、海岸沿いなどの風況の良い場所が選ばれますが、国土面積の狭い日本では適地は多くありません。

洋上風力発電は海上や港湾内に設置する方法で、以下のタイプに分かれます。

  • 着床式:風車の基礎を海底に直接固定する方法
  • 浮体式:浮体構造物を設置し、海底のシンカーにつなぎ止める方法

日本は四方を海に囲まれているため、洋上風力発電のポテンシャルは大きいといえます。現状は陸上がメインですが、今後は洋上での開発が進む見通しです。

風力発電のメリット

風力発電には、「資源が枯渇しない」「地球温暖化を助長しない」という以外にも多くのメリットがあります。発電コストを抑えられれば、日本の主力電源の候補になり得るでしょう。代表的なメリットを解説します。

エネルギー変換効率が良い

ほかの再生可能エネルギーと比べ、風力発電はエネルギー変換効率が良いのがメリットです。

エネルギー変換効率(発電効率)とは、再生可能エネルギーをどれだけ電気エネルギーに変換できたかを示す指標で、数字が高い電源ほど、効率的に電気を作れることを意味します。

太陽光発電や地熱発電、バイオマス発電のエネルギー変換効率は10~20%前後に留まりますが、風力発電は最大30~40%前後です。

風力エネルギーを100%とすると、空気力学的損失が約50~60%、機械的損失が約4%、電気機械的損失が約6%となります。

※出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書|独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

1日を通して発電が可能

太陽光発電は太陽が出ている日中しか発電ができませんが、風力発電は風さえあれば1日を通して発電が可能です。

風力発電所は、年平均で6~7m/s以上の風速がある場所に設置されるケースが多く、海岸沿いや山間部などの風況が良い場所であれば、1日を通じて比較的安定した発電量が見込めるでしょう。

風力発電の導入量と風車基数が多い都道府県は、青森県・秋田県・北海道です。地域別では東北エリアの導入量が多い傾向があります。

条件によっては発電コストが低くなる

再生可能エネルギーは火力発電に比べ、発電コストが高いのがデメリットです。どんなに優れたエネルギーでも発電コストが高すぎれば、主力電源化への道のりは厳しいものとなります。

ただし、風力発電は条件次第で発電コストが低くなる可能性があります。ウィンドファームのような大規模な発電施設を建設すれば、火力発電と同等レベルまでコストを抑えられるかもしれません。

洋上風力発電においては、低コスト化に向けたプロジェクトがスタートしています。技術革新が進めば、2030年には着床式洋上風力発電の発電コストが欧州並みの8~9円/kWh前後にまで下がる可能性があります。

※出典:「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトの研究開発・社会実装計画(案)の概要|資源エネルギー庁

風力発電のデメリット

風力発電は一見、地球にも人にも優しいエネルギーに見えますが、デメリットも多く存在します。風力発電の導入拡大に向け、デメリットや課題を一つひとつ解決していかなければなりません。

発電量が風況に左右される

風は風向きや風量が変化するため、常に一定の発電量が見込めるわけではありません。

発電機の極数を増やしたり、風速に合わせて異なる発電機を切り替えたりして、低風速でも効率良く発電する工夫が行われていますが、安定供給の観点からすると、課題は山積みです。

現状では風力発電の主力電源化は難しく、他の発電方法とうまく組み合わせる必要があります。蓄電池を導入すれば、供給タイミングをシフトできますが、多額のコストがかかります。

陸上に適地が少ない

機種にもよりますが、風力発電は約2m/sで回転し始め、3~25m/sの間で発電します。風力エネルギーは風速の3乗に比例するため、安定した電力を得るには30~40mの設置高さで、年平均風速が6~7m/s以上あるのが理想です。

日本は国土面積が狭く、陸上で風況が安定している場所というと、山脈沿いや海岸沿いに設置場所が限られてしまうのがデメリットです。

中には、ブレードを含む高さが最大120m(30階建てビルに相当)になる風車もあり、住宅密集地には設置ができません。強風で風車が基礎ごと倒れるリスクを考慮して、設置場所は慎重に選ぶ必要があります。

※出典:FAQ | 日本風力開発株式会社

台風や落雷の被害を受けやすい

風力発電は、暴風や落雷、乱気流の被害を受けやすいのがデメリットです。特に、冬季雷によるブレードの故障が多く、修理や交換に多額の費用がかかります。復旧するまで時間がかかれば、発電量にも影響が及ぶでしょう。

日本は欧州と違って頻繁に台風が襲来します。タワーの基礎から倒壊したり、ブレードやナセルカバーが吹き飛んだりすることもあり、欧州仕様の設備では太刀打ちができません。

ただ近年は、強風に強い規格の風車が開発されているため、技術進歩とともに故障や事故は減少していくと考えられます。

地域住民や周辺環境への影響も

風力発電は地球に優しいクリーンなエネルギーですが、すべての人が風力発電所の導入に賛成しているわけではありません。特に、風力発電の建設予定地に住む地域住民からは、騒音の発生や景観への影響を懸念する声が上がっています。

ブレードから生じる風切り音やナセルから漏れる機械音は、人間の耳には聞こえにくい低周波音ですが、感度は人それぞれ異なります。睡眠障害やストレスのリスク要因になるかどうかはまだ解明されていない状況です。

また、風力発電所の周辺では、鳥類がブレードに衝突して死亡する「バードストライク」が多発しています。オジロワシやミサゴ、オオワシといった絶滅危惧種の被害が多く、このまま風力発電の開発が進めば、生物多様性が脅かされるでしょう。

風力発電の導入拡大に向けた対策は?

風力発電の課題を乗り越え、導入を拡大させるにはどのような対策が必要なのでしょうか?現時点で実施が検討されている代表的な取り組み事例を取り上げます。

ウィンドファーム方式の導入

風力発電は発電出力が一定ではないのがデメリットですが、ウィンドファーム方式(集合型風力発電所)を導入すれば、安定した発電量の確保が可能です。

ウィンドファームとは、複数の風車を1カ所に集め、1つの風力発電所として営む方式です。集団化によって出力変動の緩和が期待できる上、建設にかかるコストも抑えられます。風車を大型化すれば1基ごとの発電出力が増大し、より安定した電力供給が実現するでしょう。

ただ、日本は国土が狭いため、巨大なウィンドファームを陸上にいくつも建設するのは現実的ではありません。

洋上風力発電の促進

陸上にウィンドファームを建設すれば、景観の劣化や森林伐採、騒音問題などで地域住民からの苦情が相次ぐ恐れがあります。

一方で、日本は排他的経済水域(EEZ)と領海を合わせた面積が世界第6位で、海岸線の長さも世界第6位を誇ります。洋上風力発電なら、周囲を海に囲まれた日本の立地的優位性が存分に活用できるでしょう。

洋上風力発電の導入拡大に向けた政府の取り組みの一例を紹介しましょう。

  • 政府による導入目標の明示と案件形成の加速化
  • グリーンイノベーション基金を活用した技術開発
  • 風力の立地地域を中心とした人材育成の拠点化
  • 洋上風力人材育成補助金を活用した専門作業員・エンジニアの育成

日本の海域は遠浅が少ないため、着床式よりも浮体式の導入に期待が寄せられています。

※出典:浮体式洋上風力発電に関する国内外の動向等について|資源エネルギー庁

風力発電の可能性に期待

風力発電には、騒音やバードストライク、景観の劣化といった課題があり、太陽光発電よりも人々に受け入れられにくい側面があります。

しかし、風力は火力発電からの脱却を図る上では欠かせないエネルギー源であり、大きなポテンシャルを秘めています。技術革新によってデメリットが改善されれば、風力発電の主力電源化が進むでしょう。

再生可能エネルギーを普及させるには、1人1人がエネルギー問題に向き合い、行動をすることが重要です。

Looopでんきは、再生可能エネルギー実質100%やCO₂排出量実質ゼロの電気をオプションとして提供しており、再生可能エネルギーの更なる普及を通じた「エネルギーフリー社会の実現」をビジョンとしています。

Looopでんきの新たな試みの1つが市場価格に合わせて30分ごとに電気料金が変わる「スマートタイムONE」の提供です。

市場価格は電力の需要と供給のバランスを体現しており、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー由来の電気が多く発電される時間帯においては、市場価格が安くなる傾向にあります。

市場価格の確認を習慣化すれば、環境への意識も自ずと高まるでしょう。太陽光パネルや蓄電池と併用することで、電気料金を抑えながら地球にやさしい生活を目指せます。

環境への意識や太陽光パネルとの組み合わせを重視して、Looopでんきをご利用いただいているお客様の声を紹介します。

(50代 / 女性 / 4人暮らし)
環境を重んじたキャンペーンなど、独自の取り組みがあり、社会課題についてささやかながらも参加できるから。

(30代 / 女性 / 4人暮らし)
基本料金がないことと、太陽光などと組み合わせてうまく使えばかなり電気代を抑えることができる為。

再生可能エネルギーに興味がある方は、Looopでんきが提供する「スマートタイムONE」の仕組みや料金をぜひご覧ください。