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シェールガスって何?地球温暖化とシェール革命の行方 シェールガスって何?地球温暖化とシェール革命の行方

近年大きな注目を集めているエネルギー資源の1つが「シェールガス」です。一時は「シェールガス」「シェールガス革命」といった言葉がメディアでも盛んに取り上げられたので、見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。

この記事ではシェールガスの基礎情報とともに、どのようにしてエネルギー業界に「革命」をもたらしたのか、その経緯をご紹介。日本のエネルギー事情にシェールガスがどういった形で関わっているのかも解説します。

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シェールガスとは何だろうか

近年登場した「シェールガス」とは、具体的にはどのようなエネルギーなのでしょうか。まずは、シェールガスの概要や採掘方法、メリット・デメリットについて改めてご紹介します。

シェールガスとは

シェールガスとは シェールガスとは

「シェール(shale)」とは堆積岩(たいせきがん)の一種である「頁岩(けつがん)」を指す英単語です。地下深部に層を形成するこの「頁岩」の間から採れるガスを「シェールガス」、石油を「シェールオイル」と呼びます。

シェールガスをはじめとする化石燃料の原料となるのは、河川や海のプランクトン・海藻といった有機物です。海底に堆積したこれらの死骸はバクテリアに分解されて変質し、さらに地下深くに沈み込みます。そこに深層の圧力や熱が加わり化学変化を起こして生まれるのが、石油やガスです。

地球は中心部に向かうほど高温となるため、熱が加わる地下のより深い層ではガスが多く採れると考えられています。しかし、深部からガスを採掘するためには高い技術が必要です。

このことから、従来の技術で採掘可能なガスを「在来型天然ガス」、従来のガス田より深層にあるガスを「非在来型天然ガス」と呼びます。「非在来型天然ガス」であるシェールガスは、これまで存在は知られていたものの、採掘技術が追い付いていませんでした。

シェールガスを可能にした技術

シェールガスの採掘が難しいとされる主な理由は、頁岩の性質にあります。

在来型天然ガスは粒子が大きい砂岩(さがん)で構成された地層の中に貯留されています。ガスは比較的自由に粒子の中を通り抜けられるため、岩盤の一部にパイプを通すだけでガスが採掘できました。

これに対し、シェールガスは細かい粒子の頁岩で構成される層によって地中深くに留められています。この層ではガスが粒子の間を通り抜けにくいため、従来の方法ではコストに見合う採掘がかないませんでした。

こうした状況を打破したのが2000年代になって開発された「水平坑井」「水圧破砕」「マイクロサイズミック」という3つの新技術です。

水平坑井と水圧破砕 水平坑井と水圧破砕

まずは水平坑井。これまでは地層に対して垂直に採掘を行っていたのに対し、水平坑井では地層に沿った掘削が可能です。地層への接触面積が増えることで、ガスが採り出しにくい頁岩からもまとまった量の採掘が可能になりました。

水圧破砕では、シェールガスが含まれる地層に水圧をかけて人工的なひび割れを作り、ガスを採り出しやすくします。またこの際、マイクロサイズミックによって地層の状態を観測・解析することで、より効率的な採掘計画を立てられるようになりました。

シェールガスのメリット・デメリット

シェールガスのメリットとしてまず挙げられるのは、埋蔵量の大きさです。これまで手付かずであった地層から採掘できるため、大幅な供給の増加や価格の低下が見込めます。もし、シェールガスの増産によって天然ガス・原油が安定的に手に入れば、これまでエネルギー資源を中東諸国からの輸入に頼っていた日本にも大きなメリットです。

しかしながら、シェールガスには解決すべき課題も残っています。1つは環境汚染への懸念です。シェールガスの掘削には大量の水と化学物質を用いるため、水源への影響や地下水の汚染が問題視されています。また、採掘時に発生するメタンガスは温室効果が高く、二酸化炭素に次ぐ温暖化の一因として知られています。

持続可能なエネルギーの選択が必須となりつつある昨今の状況もあいまって、シェールガス・シェールオイルの生産拡大は阻まれているのです。

シェール革命とその影響

シェールガスやシェールオイルの採掘開始は世界に大きなインパクトをもたらし、「シェール革命」と称されるようになりました。ここからは、シェール革命がもたらした影響について解説します。

シェール革命とは

2006年、これまでは難しいとされていたシェールガスの採掘手法がアメリカで確立され、開発が進みはじめました。シェールガス生産量の増加に伴って、アメリカでは天然ガスの輸入量が減少し、国内価格も低下。その後もアメリカのシェールガス生産が増加の一途をたどったことで2011年には国内最大の天然ガス産出量を記録し、世界でも屈指の生産国となりました。

さらに、アメリカ国内の火力発電燃料は石炭から天然ガスへとシフトチェンジし、その影響で石炭の輸出量が増加。同時に、老朽化が取り沙汰されていた原子力発電所の廃炉が進むようになりました(※)。

エネルギー資源の輸出・輸入は時に外交戦略のカードとして使われることもあり、世界経済・社会に大きく影響します。アメリカでシェールガス・シェールオイルの採掘が盛んに行われるようになったことで、以前はエネルギー資源輸出で優位に立っていたロシアや中東諸国の力が弱まると予測されます。この一連の流れは「シェール革命」と呼ばれるようになりました。

シェールガスが採れるのはアメリカだけではありません。欧州、豪州、アジアなど世界各地に埋蔵されており、それらの採掘が進めば天然ガスや原油価格が低下したり、新たな産油国が生まれたりと、世界経済の活性化にも繋がると見られています。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「第1節 米国の「シェール革命」による変化」

シェール革命の日本への影響

シェール革命は日本にも好影響を与えると期待を集めました。

原油や天然ガスの生産が乏しい日本では、エネルギー資源のほとんどを海外輸入に頼っているのが現状です。なかでも、中東諸国からの輸入率は原油が約89%、天然ガスは約17%(※1)。政情が不安定な中東諸国への依存は、原油価格の変動や供給量の不安定さに繋がります。

さらに、2011年の東日本大震災で起きた東京電力福島第一原発事故によって、主要な原子力発電所が次々と稼働停止となりました。2021年時点でも、稼働しているのは全54基中9基(※2)。震災に見舞われる前は電力全体の30%を原子力が担っていましたが、約6%まで減少しています(※3)。
このような背景から、日本では安価で安定的なエネルギー源の確保が大変重要視されています。シェールガスはこの条件を満たす期待のエネルギー資源と目されていたのです。

さらに、シェールガスは従来の天然ガスと異なる価格方式を採用しています。従来の天然ガスが原油価格変動の影響を受けやすいのに対し、シェールガスはより安定した価格で提供されます。

2017年からは米国産シェールガスの輸入が開始。2019年度にはLNG輸入先の5.4%を占めるまでに至っています(※1)。

※1 出典:エネルギー白書2021|資源エネルギー庁 
※2 出典:日本の原子力発電所マップ 2021年版 | 公益財団法人ニッポンドットコム
※3 出典:原発高齢化時代 : 再稼働しないまま “定年” 時期迫るが… |公益財団法人ニッポンドットコム

地球温暖化問題とシェール革命の終焉

地球温暖化問題とシェール革命の終焉 地球温暖化問題とシェール革命の終焉

一時は大きな注目を集めたシェール革命。しかし、地球温暖化が世界的な問題として取り上げられるなかで、終焉を迎えつつあります。

日本への好影響も期待されていたシェール革命は、なぜ失速してしまったのでしょうか。

IEAロードマップの衝撃

国際エネルギー機関(IEA)が2021年5月18日に公表したロードマップ「Net Zero by 2050」(※)は、石油業界に衝撃を与えました。「2050年までに世界の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を達成するために、主要エネルギー資源への新たな投資を取りやめると記されていたためです。

「Net Zero by 2050」の概要は以下の通りです(※1)。

  • 化石燃料関連の新規投資の決定を今年中に停止
  • 35年までにガソリン車の新車販売を停止
  • 40年までに石炭・石油発電所を廃止
  • 50年までにエネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を約7割に引き上げる

このロードマップは石油業界だけでなく、シェールガス業界にも大きな影響を与えました。

一時はトップクラスのシェールガス・シェールオイルの生産量を誇ったアメリカでは、事業の停滞が続いています。後述する新型コロナウイルスの影響や、世界の脱炭素化に向けた流れに加えて、今回のIEAロードマップ発表が追い打ちをかけた、というのが主な見方です。

日本への影響も少なくありません。大手石油開発会社である石油資源開発(JAPEX)は2021年5月13日に、保有していたカナダのシェールガス開発事業を売却すると発表(※2)。主な理由として「脱炭素化に伴い事業環境が厳しくなった」点を挙げています。さらに同社は、2021年12月17日に当該子会社の解散を発表しました(※3)。

※1 出典:Pathway to critical and formidable goal of net-zero emissions by 2050 is narrow but brings huge benefits, according to IEA special report|News - IEA
※2 出典:カナダシェールガスプロジェクトの権益譲渡および同プロジェクトに係る特別損失の計上について|JAPEX
※3 出典:石油資源、特別利益271億円計上 子会社の解散で:|日本経済新聞

コロナショックが引き金に

新型コロナウイルスの世界的な流行は、世界経済に大きな打撃を与えました。

主要都市のロックダウンや渡航規制が相次ぎ、飛行機や船舶、車などの交通手段や、産業施設の稼働率が大幅に低下。経済活動が停滞したことで石油の需要が下がり、2020年4月には原油価格が暴落しました。

アメリカの石油企業やシェール企業も厳しい状況にさらされ、多くが経済破綻を迎えています。以前から急速な事業拡大によって不安定となっていた経営状態が、コロナショックによってさらに悪化したためです。

原油価格は2020年の暴落後、石油輸出国機構に非加盟国が加わった「OPECプラス」による減産や各国が講じる感染対策措置の変化によって需要が引き締まり、徐々に上昇。2022年現在は高騰しています。しかし、シェールガス・シェールオイルへの投資そのものが縮小している影響で、供給は未だに復活していません。

世界の経済活動は再開の動きを見せているものの、新型コロナウイルスの動向は予測が難しい面があります。2021年11月には新たな変異株であるオミクロン株の影響を受けて、原油価格が再び暴落しました。

これらの経緯から、「コロナショック」はシェール革命終焉の引き金を引いたと言えるでしょう。そして、世界は脱炭素時代の到来を迎えようとしています。

脱炭素時代の到来

地球物理学者のM・キング・ハバード氏が提唱した「ピークオイル論」では、エネルギー資源の限界が説かれています。石油などの化石燃料には限りがあり、いつかは資源量が減衰していくというものです。

しかし、新しい採掘技術の発展によって石油はむしろ増産傾向に向かいました。シェール革命はピークオイル論を覆し得る存在として脚光を浴びたのです。

ただし、シェールガスやシェールオイルが世界を席巻した時代は長くは続きませんでした。化石燃料の埋蔵量が豊富であったとしても、CO₂排出の削減が求められる現代では、需要が縮小傾向にあります。

ここで浮上するのが、「もう1つのピークオイル論」です。これは資源の枯渇ではなく需要の低下による石油時代の終焉を指しています。サウジアラビアの石油相を務めたアハメド・ザキ・ヤマニ氏の「石器時代は石がなくなったから終わったのではない。(鉄や青銅器など)石に代わる新しい技術が生まれたから終わった。石油も同じだ」という言説がよく知られていますね。

地球温暖化が大きく取り上げられている現在、世界は脱炭素時代を迎えつつあります。二酸化炭素をはじめ、温暖化の主原因となる温室効果ガスの排出を抑えるためには、石油や天然ガスに代わる新しいエネルギーの開発が急務です。

先述のIEAロードマップや2015年に行われたCOP21パリ協定採択など、世界機関によって次々と具体的な指針が示されました。そして、各国政府や企業によって積極的に脱炭素事業への取り組みが展開されています。

日本でもさまざまな企業が経営戦略に「脱炭素」や「カーボンニュートラル」を取り入れています。脱炭素を実現する製品の開発やサービスの提供が進み、CO₂の発生を抑えられる自然エネルギー事業も注目されはじめました。

脱炭素に関連する技術や研究は、今後重要な「知財」として各国の強みになると見られています。そのためには、政府や企業だけでなく国民1人ひとりが高い関心を寄せることも大切です。

脱炭素の電気を選択しよう

この記事では、世界のエネルギー市場に一石を投じたシェールガスについて解説しました。一時は「シェール革命」と称されるほど大きな影響力を持っていたシェールガスですが、さまざまな事情から失速し、時代は脱炭素に向かいつつあります。

世界的な問題である地球温暖化対策にはCO₂削減が大変重要です。国や企業だけでなく、私たち1人ひとりが脱炭素に意識的に取り組む必要があります。

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