2015年に採択されたパリ協定では、気候変動問題に関する合意がされ、世界的に注目を浴びました。パリ協定について押さえておくべきポイントと、各国の取り組みを解説します。国内でも多くの取り組みがされているので、この機会に理解しておきましょう。
パリ協定とは?どういった枠組み?
パリ協定は2015年に採択され2016年に発効した協定です。各国が取り組むべき気候変動問題に関して、世界的な枠組みが決められました。まずは協定の概要から確認していきましょう。
気候変動問題に関する協定
パリ協定は2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたもので、世界の気候変動問題に対する国際的な枠組みを定めた協定です。
2020年以降の温室効果ガスの削減に関して、さまざまな取り決めがされており、55カ国以上が批准し、国内でもさまざまな取り組みがされています。
全ての国が温室効果ガスの削減目標を立て、削減に向けた行動を取るようにルール化した初めての協定であり、経済と両立させながら、低排出型社会の実現を目指すことが目標に掲げられています。
パリ協定が採択されるに至った背景
パリ協定が採択されるに至るまで、さまざまな国際会議にて、世界的な気候変動問題に関する議論がされてきました。
具体的には1992年の国連気候変動枠組条約を背景として、温室効果ガスの排出量を削減すべきであるという議論が活発化し、1997年に採択された京都議定書では、先進国を対象に温室効果ガスの削減目標が示されています。
しかしこれまでは、途上国に対してはうまく合意を得られていませんでしたが、2015年のパリ協定にて、ようやく大筋の合意がされるに至りました。温室効果ガスの削減が、世界的な取り組みとして認識されるようになったわけです。
パリ協定で採択された内容
パリ協定では具体的に何が採択されたのでしょうか。細かい点を挙げると多岐にわたりますが、以下の点は重要なポイントなので、整理して押さえておきましょう。
パリ協定の目的・目標
世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比較して2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすることが、世界共通の長期目標とされました。それに加えて、各国でできる限り温室効果ガスの排出量を下げていき、21世紀の後半に至るまでに、排出量と吸収量のバランスを取ることを目的としています。
また、パリ協定の時点では1.5℃以内に抑えることは努力目標とされましたが、2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、1.5℃の目標が正式に設定されるに至りました。
すべての国に削減目標の設定・更新が必要
パリ協定において、設定すべき具体的な温室効果ガスの削減目標は、各国に委ねられることとなりました。ただし、5年ごとに削減目標を更新・作成・提出しなければならないと決められています。
1997年の京都議定書では、温室効果ガスの削減目標に関して、一部の国から公平性に疑問が投げかけられていました。そこでパリ協定では、各国が自国の状況に合わせた柔軟な目標設定の上で温室効果ガスの削減に取り組むように、枠組みが決められた経緯があります。削減目標の作成・提出には法的な拘束力があるものの、違反した場合の罰則は特に決められていません。
途上国への資金支援の継続
京都議定書において先進国による途上国への資金援助が定められ、パリ協定でも継続して資金提供が推奨されています。
途上国が温室効果ガスの削減をはじめとして、気候変動への対応に必要な資金を援助するもので、パリ協定では先進国だけではなく、一部の途上国も資金的なサポートをすることが求められています。
二国間クレジット制度の導入
二国間クレジット制度とは、発展途上国の開発を持続させながら、温室効果ガスの排出量の削減目標を達成させるために提案されたものです。もともと日本が提案した仕組みで、取引システムとして市場メカニズムの利用が盛り込まれています。
具体的には日本を中心に優れた脱炭素技術や製品システム、インフラなどを、対象とした途上国に普及させ、成果を認証機関がクレジットとして発行します。それを温室効果ガスの排出削減施策として、評価できる仕組みになっています。さまざまな温室効果ガスの削減施策とその成果を、対象とした途上国とで分け合える制度です
パリ協定を受けた各国の取り組み
パリ協定を受けて、日本をはじめとした各国がどういった取り組みをしているか、整理して理解しておきましょう。
日本のパリ協定に関する取り組み
パリ協定に基づき、日本は温室効果ガスの削減目標と、目標達成のための取り組みを独自に定めました。中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年度の水準から26%削減するとしています。
そのほか、脱炭素化や再生可能エネルギー最優先の原則の設定、電気自動車の普及など、さまざまな施策を進めている状況です。また、気候変動の影響を大きく受ける途上国に対して、被害の抑止・防止のための投資も積極的に行っています。
※参考:「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み② ~日本の目標と進捗は?|資源エネルギー庁
諸外国のパリ協定に関する取り組み
諸外国のパリ協定に関する取り組みを簡単にまとめると、次のようになります。
- アメリカ:パリ協定が採択された当時、温室効果ガスの削減に協力的だったものの、2020年に協定を離脱する運びとなり、2021年に再び復帰が決定された。2022年に具体的な気候変動対策として、災害時に備えたインフラ強化などが打ち出されている。
- EU諸国:2021年にEU理事会が欧州気候法を採択し、2030年までに1990年を基準として、温室効果ガスの排出量を55%以上削減することを目標に掲げた。ほかにも、再生可能エネルギーに関する目標の引き上げや、カーボンシンクの増加促進などの取り組みを進めている。
- 中国:2030年に温室効果ガスの排出量をピークアウトさせ、GDPあたりの排出量を2005年より60%程度削減するといった目標を掲げている。非化石エネルギーの割合を25%程度に引き上げる目標も打ち出している。
目標達成のためにクリアすべき日本の課題
温室効果ガスの削減目標を達成するために、日本ではどういった課題をクリアする必要があるでしょうか。乗り越えるべきハードルは数多くありますが、国全体として注力すべき重要な課題としては、以下のものが挙げられます。
エネルギー供給の低炭素化が必要
日本は諸外国に比べて、エネルギーの消費効率は高めですが、低炭素化が喫緊の課題となっています。エネルギー自給率が低い国であるため、どうしても化石燃料に依存せざるを得ない状況であり、さらなる省エネルギー化を進めるとともに、再生可能エネルギー(クリーンエネルギー)への以降も積極的に進めなければいけません。
ただし再生可能エネルギーは、発電量が環境に依存するケースが多いのに加えて、現状では電力量も大きくはありません。技術の進歩により安定して電力を供給できるようになるまでは、化石燃料による火力発電との適度なバランスを考える必要があります。
低排出型社会の実現が急務
国全体として、経済と両立させた温室効果ガスの低排出型社会の実現が、急務とされています。具体的には上記のように、再生可能エネルギーの導入量を増やしたエネルギーミックスの推進と、エネルギー効率向上への取り組みが求められている状況です。
経済産業省の資料によれば、2030年には石炭が26%で、LNGが27%、原子力が20〜22%で、再生可能エネルギーが22〜24%程度をエネルギーミックスの目標としています。こういった施策を通して低排出型社会を実現していくことが、温室効果ガスの削減目標の達成に欠かせません。
さらに、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素や、ダイオキシンなどの抑制に必要なリユースの考え方も重要です。以下の記事を参考に理解しておきましょう。
リユースについてもっと詳しく知りたい方はこちら
※参考:2030年度におけるエネルギー需給の見通し|資源エネルギー庁
パリ協定の概要と達成目標を理解しよう
パリ協定の概要と、押さえておくべき重要なポイントを解説しました。パリ協定は温室効果ガスの削減に関する国際的な取り決めであり、各国ごとに削減目標の設定や、更新が義務付けられています。
採択された内容を整理し、自分なりにポイント分けしておきましょう。具体的な取り決め内容は多岐にわたるので、重要な点を絞って押さえることで、理解しやすくなります。
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