現代に生きる私たちは、さまざまな環境問題が存在する社会で暮らしています。各国の首脳が集まるG7の会議でも、環境問題は毎回議題にのぼっています。
私たちが毎日排出しているゴミも、環境問題の1つです。ゴミ問題がほかの生態系に与える影響は大きいため、ゴミを適切に処理することが、地球規模の環境を守るためにとても重要になります。この記事では、ゴミ問題の内容や歴史に触れたうえで、解決のためにどのような方法を選択すべきなのかを解説します。
ゴミ問題とは何か
ゴミ問題といっても、ゴミの意味やゴミの種類をどう捉えるかで、問題になる範囲は大きく違ってきます。ゴミ問題にはどのような種類があるのかについて順を追って説明します。
ゴミ問題とは
ゴミ問題とは、一言でいうとゴミが増えすぎたことによる社会問題です。ゴミは出して終わりではなく、その後どう処理していくかが重要になってきます。可燃性のゴミは、焼却することになりますが、燃やすにしても燃焼施設や燃焼エネルギーの確保などの問題があります。燃えないゴミは、埋め立てやリサイクルなどで処理されていますが、埋め立て地やリサイクルにかかるコストも大きな課題です。
一般的に経済成長が進むと、人々の所有物が増えて、廃棄物であるゴミも増えるとされています。社会経済の成長にともない、公衆衛生の段階→環境保全の段階→ゴミ削減の段階→循環型経済の構築の段階へと進むことになります。循環型経済とは、廃棄物をそのままゴミとするのではなく、新たな資源として活用する経済という意味です。
法律上の「ゴミ」とは何か
ちなみに、日本の法律上ではゴミを「廃棄物」という言葉で定義しており、一般廃棄物と産業廃棄物に大別されています。
産業廃棄物とは、事業活動によって生じる廃棄物のうち、廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物のことです。具体的には、石炭がらや焼却炉の残灰などの「燃えがら」や「廃油」、「金属くず」といったものです。
それに対し、一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物であり、家庭系一般廃棄物、事業系一般廃棄物、特別管理一般廃棄物、し尿に分類されています。家庭系一般廃棄物とは、いわゆる家庭ゴミで、事業系廃棄物とは、企業などの事業活動によって出るゴミ(ただし産業廃棄物に該当する物は除く)です。特別管理一般廃棄物とは、爆発性や毒性を含んだゴミで、エアコンや電子レンジの部品などです。し尿とは、人間の排泄物になります(※)。
ゴミ問題の種類
ゴミ問題には、以下のような種類があります。
・公衆衛生
・公害
・不法投棄による土壌・水質汚濁
・ゴミの焼却処理施設にともなう問題
・最終処分場の不足
・海洋ゴミ
以下では、それぞれのゴミ問題における内容や課題について解説します。
公衆衛生
し尿を含む廃棄物が適正に収集・処理がなされないと、公衆衛生上の問題が起きます。現在の日本では、全国的に水洗式トイレが一般的となっていますが、かつては汲み取り式のトイレが主流でした。
戦後日本はめざましい経済発展を遂げ、人口も急速に増加していきます。その過程で無秩序なし尿投棄を禁止する法令などが整備され、し尿処理体制が急速に整備されました。高度経済成長期には、し尿処理施設の建設ラッシュもありました。
公害
高度経済成長期に社会問題になった数々の公害も、廃棄物処理の問題と捉えられています。代表的な公害として、水俣病やイタイイタイ病などが思い浮かぶ方も多いでしょう。
水俣病とは、メチル水銀が海に排出され、水銀を取り込んだ魚介類を食べた人の脳や神経に障害が残る病気です。水俣市で発生したため、そのような名前となりました。
イタイイタイ病とは、カドミウムが河川などに放流され、その水から育った農作物を食べた人に強烈な痛みが生じてしまう病気です。発症した患者が「イタイイタイ」と叫ぶことからイタイイタイ病と呼ばれています。
どちらの公害も、当時の工場が汚染物質を外部に垂れ流すことにより生じています。そのため水俣病、イタイイタイ病などの経験を経て、工場などから排出される廃棄物を適正に処理する体制が整えられました。
不法投棄による土壌・水質汚濁
廃棄物の処理にコストがかかるようになると、不法投棄といった悪質な方法でゴミが処分されるケースも出てきます。かつて、香川県豊島(てしま)で産業廃棄物処理業者が約90万トンの産業廃棄物を不法投棄したことは、大きな社会問題となりました(※)。
豊島問題は、大量生産・大量消費がもたらした戦後最大の不法投棄事件とされています。そのため、それまであまり重要視されてこなかった廃棄物処理の問題が、環境問題として一気にクローズアップされました。
そのことがきっかけとなって、廃棄物処理の政策も見直され、循環型社会への転換を迫られることになります。
なお、豊島に不法投棄された廃棄物は、国の公害等調整委員会の調停に基づき、香川県が処理を実施することになりました。
ゴミの焼却処理施設にともなう問題
ゴミの焼却処理施設にともなう大気汚染、悪臭、大量のハエの発生、有毒物質の生成なども問題になります。
1950年代後半から70年代にかけて江東区と杉並区で起きたゴミ処理の紛争は、当時の東京都知事が「ゴミ戦争宣言」を行ったことから「東京ゴミ戦争」とも呼ばれています(※1)。高度経済成長により大量に生じたゴミが江東区の清掃工場などに集積され、悪臭やゴミ火災、大量のハエの発生などにより被害が生じて住民運動に発展しました。
その他90年代には、ゴミ処理施設からのダイオキシン発生が問題化していました(※2)。ダイオキシンとはゴミの焼却で生じる有害物質であり、ゴミの不完全燃焼が発生原因とされています。現在では焼却技術が進み完全燃焼が可能となったことで、排出量は急減しています。
最終処分場の不足
一般廃棄物も産業廃棄物も、処理における「最終処分場」がひっ迫しています。最終処分場とは、ゴミを埋め立てて最終的に処分する施設です。再利用やリサイクルもできない焼却灰などが埋められることになります。
最終処分場がなくなったら、また新規の施設を増やせばいいと思われるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。最終処分場に適した場所の確保がまず問題です。東京など人口が密集した土地では、最終処分場に適した土地がそもそもあまりないのです。
場所の確保ができたとしても、近接住民の合意を得ることが次の課題になります。反対運動に発展して、建設が立ち消えになったケースも少なくありません。また環境面での影響も懸念されています。
海洋ゴミ
近年、世界的な問題として、海洋ゴミ問題が急浮上しています。海洋ゴミとは、海岸に打ち上げられた漂着ゴミ、海面や海中を漂う漂流ゴミ、海底に積もった海底ゴミなどの総称です。ペットボトルやレジ袋といったプラスチック製のゴミなどが多く、海洋ゴミの65%以上を占めています(※)。
海洋ゴミのプラスチックゴミは、海に直接投げ込まれたものもありますが、多くは街中のプラスチックゴミが海に流れ着いたものとされています。人々によりポイ捨てされたゴミが、雨により排水溝などをつたって川へ流れ、海へたどり着くケースがほとんどです。海洋ゴミは海を汚しているだけではなく、海中の生態系にも深刻な影響を及ぼしています。
日本のゴミの現状
環境省の発表によると令和元年(2019年)の日本のゴミ(一般廃棄物)排出量は、以下の通りです(※)。
・ゴミ総排出量は、4,274万トン(東京ドーム約115杯分)
・1人1日あたりのゴミ排出量は、918グラム
・ゴミ総排出量、1人1日あたりのゴミ排出量ともに横這い
・最終処分場は、前年比1.1パーセント減少。リサイクル率も減少。
・最終処分場の残余容量と最終処分場の数は、概ね減少傾向にあり、最終処分場の確保は引き続き難しい状況。
現在日本では1年間で、4,000万トン以上というすさまじい量のゴミを一般廃棄物として排出しています。産業廃棄物を計算に加えると、排出されるゴミの量はさらに膨大になります。
上記データで懸念されるのが、ゴミ総排出量、1人あたりのゴミ排出量ともに横ばいにもかかわらず、最終処分場の容量や数が減少傾向にある点です。出されるゴミの量は変わらないのに、それを処分できる施設が減っていけば、いずれ処理しきれなくなります。
国・自治体の取り組み
ゴミを減らすには、国民に対して行政による働きかけが必要です。そのため国・自治体はゴミの量を削減するために、法令を通して取り組んでいます。廃棄物処理に関する法令は多数あるため、ここでは消費者の生活に関係のあるものをご紹介します。
循環型社会形成推進基本法
循環型社会形成推進基本法は、形成すべき「循環型社会」像を明確に提示して、3R(リユース・リデュース・リサイクル)の優先順位を初めて明確に定めた法令で、2000年に成立・公布されました。3Rを同列に扱うのではなく、①リデュース(発生抑制)、②リユース(再使用)、③リサイクル(再生利用)の順番で行うべきだとして、処理の優先順位を位置づけました。
循環型社会とは、廃棄物をゴミとするのではなく資源とすることで天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り減らすことを目的とする社会です。
容器包装リサイクル法
ご家庭から排出されるゴミの量の約2~3割、容積で約6割が容器包装廃棄物であるとされています(※)。容器包装リサイクル法とは、容器包装であるペットボトル、ビン、ガラスを削減して資源の有効活用を目的とした法令です。
容器包装リサイクル法の具体的な施行内容は、消費者の分別排出義務、市町村の分別収集義務、事業者のリサイクル義務を定めています。消費者、市町村、事業者の3者の役割分担を定め、3者が一体となって容器包装廃棄物の削減に取り組むことが要求されました。
家電リサイクル法
家電リサイクル法とは、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の4つを、小売業者により収集、運搬を行わせ、製造業者に再商品化を義務付けた法律です(※)。以前は電化製品もほかのゴミと同様に処理されていましたが、テレビや冷蔵庫といった電化製品は、大型で重いため回収が難しいとされていました。
そこで家電リサイクル法では、上記4つの電化製品を特定家庭用機器として指定し、小売業者と製造業者に回収、リサイクルを行わせることで、市町村の処理負担を減らすことを実現しています。
食品リサイクル法
商品として作られた食品のうち、売れ残りや食べ残しなどは人が食べることなく廃棄されているのが現状です。
食品リサイクル法は、食品廃棄物を肥料や飼料として再利用することで、フードロスの削減を目的として施行されました。
外食小売などの食品関連事業者は、以下のことに取り組むことが求められています(※)。
・食品廃棄物の発生を抑制する。
・食品廃棄物の減量に取り組む。
・食品廃棄物のうち食品循環資源については、再生利用に取り組む。
・再生利用できない食品循環資源については、処理時の熱回収を行う。
私たちができること・3Rの徹底
ここまで、ゴミ問題の概要を確認してきました。では、それらを踏まえたうえで、私たちができることは何でしょうか。
人によっては、日々の生活のなかで必要のないものをなるべく買わないようにしたり、使用済みトレイや牛乳パックを店頭で回収してもらったりするなどは、すでに多くの方が取り組まれていることと思います。ゴミ削減に取り組むなら、「3R」を徹底することが重要になります。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つの総称です。循環型社会形成推進基本法では、廃棄物処理の優先順位をReduce、Reuse、Recycleの順番で定めています。
リデュース(Reduce)
リデュースとは、なるべくゴミを出さないということです。ゴミ問題において、最優先されることはまずゴミの量を減らすことになります。そのため、すぐに捨ててしまうものはなるべく購入しないことが求められます。
具体的には、
・マイバックを使用して、なるべくレジ袋は使わない
・物が壊れても簡単に捨てず、修理や補強をしながら長い間使用する
・使用頻度が少ないものは、レンタルやシェアリングシステムを利用する
などです。
リユース(Reuse)
リユースとは、すでに使い終わった物を捨てずに再利用することです。中古製品の販売、購入がリユースの典型例です。近年では多くのフリマサイトが出てきているので、個人が不要品をインターネットにより簡単に出品することができます。
再利用するためには、物自体の状態がある程度保たれていることが求められます。傷だらけの中古品よりも、新品に近い中古品の方が高い需要があるからです。リユースにより繰り返し使用していくためには、まず物を大切に扱うことが大切になるでしょう。
リサイクル(Recycle)
リサイクルとは、ゴミを資源として有効活用することです。使用済みペットボトルを再びペットボトルの原料として使用するのも、典型的なリサイクルの1つになります。
ペットボトル以外にも、新聞紙、空き缶、ビン、ガラスといった品目もリサイクルの対象です。リサイクルを高頻度で行うためには、リサイクルの対象になる資源ゴミを正しく分別する必要があります。分別に加えてリサイクル商品の積極的な利用も、リサイクルの促進につながることになるでしょう。
環境にやさしい電気を選ぼう
ゴミ問題は、日本だけではなく地球規模での問題です。処理しきれなかったゴミにより破壊された環境を元に戻すのは、容易ではありません。人間だけではなくほかの生態系を守るためにも、一人ひとりの心がけが地球環境を守る第一歩につながります。
現在では電力会社を自由に選べるようになりました。なかには再エネ由来のCO₂排出量が実質ゼロの電気を提供している会社もあります。3Rに加えて電気の選択でも地球環境に貢献できれば、よりよい未来に近づけるのではないでしょうか。
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