近年話題のSDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、深刻化する地球温暖化への対策が世界中で急がれています。
温暖化を阻止するために不可欠なのがCO₂排出削減です。この取り組みが進むにつれて「化石燃料」が問題視されるようになりました。化石燃料は私たちの生活と密接に関係していますが、環境保全の観点からはいくつかの問題を抱えているのです。
今回は、化石燃料の基礎知識やメリット・デメリットを紹介します。化石燃料の問題点と解決方法についても解説します。
化石燃料とは
化石燃料とは、石油や石炭、天然ガスなど過去の植物や動物の死骸が変化して生成された有機物のうち、人間活動のエネルギー源として用いられる燃料です。地中深くに埋まっているため、採掘して手に入れます。
太古に生息していた動植物の死骸は、微生物に分解されて地中深くに沈み、堆積して地層の一部となります。これが地中にかかる圧力や熱の影響を受けながら、数千万年から数億年かけて燃えやすい物質に変化し、燃料として使えるようになります。
こうした過程が「化石」と似ていることが、化石燃料と呼ばれる所以です。なお、一般的な化石は可燃性の成分が少ないため、燃料にはなりません。
また、化石燃料は、近代以降急速に消費量が増加しました。
16世紀ごろから石炭が動力源として使われはじめ、19世紀のはじめにはイギリスで世界初の天然ガス会社が設立(※1)。さらに、19世紀後半からはアメリカで開発された採掘方式をもとに、石油産業が発展します(※2)。
現在でも化石燃料は、灯油やガソリンに加工されたり、火力発電の燃料となったり、プラスチックの原料になったりと、私たちの生活を支える重要な存在です。
化石燃料の種類
化石燃料には石油、天然ガス、石炭などいくつかの種類があります。それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
石油
石油とは、炭素と水素の化合物である「炭化水素」を主成分とする液状の資源です。炭化水素のほかに硫黄や酸素、窒素などを少量ずつ含みます。石油は堆積したプランクトンなどの死骸が微生物によって分解され、地熱や地中の圧力によって液状に変化したものである、というのが定説です。
石油に変化する前の有機堆積物が「ケロジェン」です。このケロジェンを多く含む頁岩(けつがん)や炭酸塩岩、細粒砕屑岩(さいりゅうさいせつがん)などは、石油や天然ガスを多く生み出すため「根源岩(ソースロック)」と呼ばれています。
また、根源岩から発生した石油は、地層の隙間を移動して「貯留岩」と「帽岩」がある場所に溜まります。隙間が多い貯留岩には石油が溜まりやすく、その上にある帽岩はきめが細かく、石油の移動を防いでいるためです。
石油からは、主にガソリンや灯油、軽油、重油、ジェット燃料、発電燃料などが作られます。また、石油から得られる「ナフサ」はペットボトルやプラスチック、化学繊維などの原料になります。
石炭
地中の堆積物が、地熱や圧力の影響で炭素が濃く集まってできた燃料が石炭です。石炭には炭素のほかに、酸素や水素、硫黄や液体窒素などが含まれています。
石炭が多く採掘されるのは「石炭紀」と呼ばれる3億6,000万から3億年前の地層です。温暖で酸素濃度が高く、植物が大変繁栄した時代として知られています。
また、石炭は炭素が含まれる量によって、さらにいくつかの種類に分かれています。最も炭素含有率が多く、発熱量も高いのが「無煙炭」。次いで「瀝青炭(れきせいたん)」、「褐炭(かったん)」などが続きます。
無煙炭は鉄鋼業やセメント業など工業用として、瀝青炭は主に燃料・原料として利用されています。また、燃料としては品質が劣る褐炭は、近年水素エネルギーの原材料として注目されはじめています。
天然ガス
石油と同じく、プランクトンなどの死骸が地中に堆積し、地熱や圧力の影響で可燃性の気体に変化したものが天然ガスです。主成分は炭化水素の一種であるメタン。そのほかに、エタンやプロパン、ブタンなども含みます。
天然ガスは石油に伴って発生することも多いため、同時に採掘される場所は「油ガス田」と呼ばれています。なお、石油が主に採れる場所を「油田」、ガスが主に取れる場所は「ガス田」です。
天然ガスは、家庭用の「都市ガス」や発電燃料、工場など産業用エネルギーとして広く利用されています。
また、天然ガスには、以前から採掘されていた「在来型天然ガス」と新しい採掘方法で得られる「非在来型天然ガス」の2種類があります。
中でも注目されている非在来型天然ガスの一つ「メタンハイドレート」について、次項で詳しく見ていきましょう。
メタンハイドレート
メタンハイドレートは、天然ガスの主成分でもあるメタンが水の分子と混ざり、氷状になった物質を指します。水分子が形成した水素結合のなかに、ガス分子などが取り込まれた物質である「クラスレートハイドレート(包接水和物)」の一種です。氷状でありながら火をつけると燃え上がるため、「燃える氷」とも呼ばれています。
メタンハイドレートは、燃焼時に排出するCO₂が石炭や石油よりも30%ほど低く、1立方メートルあたり約160立方メートルものメタンガスが得られることから、次世代のエネルギー資源として期待を集めています。
天然のメタンハイドレートが発見されたのは、1960年代のシベリア凍土地帯です。それまでにも人工的なガスハイドレートは存在していましたが、自然界では確認されていませんでした。
その後、グアテマラでも大量のメタンハイドレートが見つかったことから、世界に広く分布している可能性が浮上しました。日本の周辺海域にも多く存在すると考えられ、採掘技術の開発が進んでいます。
化石燃料のメリット
産業革命以降、世界の発展に大きく寄与し、現在も私たちの生活に深く関係している化石燃料ですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
エネルギー密度が高い
まず挙げられるのは、「エネルギー密度」が高い点です。
エネルギー密度とは、燃料の重量・容積とエネルギー量の比率を数値化したもので、kWh/L、kWh/kgまたはL/kWh、kg/kWhであらわされます。重量や容量に対してエネルギーの発生量が大きければ、その燃料のエネルギー密度は高いということになります。
石油、石炭、天然ガスは、いずれも高いエネルギー密度を持つことから、日本の一次エネルギー供給においても、長らく大きな割合を占めてきました。
また、化石燃料の中でも特に優れたエネルギー密度を持つのが、ガソリンや軽油などの液体燃料です。
ガソリンのエネルギー密度は12,722wh/kg。ハイブリッド車に使われるリチウム・イオン電池の少なくとも25倍は高い数値だとされています。高いエネルギー密度を持つガソリンは、自動車の発展や輸送の発達に大きく寄与してきました。
コストが低い
エネルギー密度が高い化石燃料は、少ない量から高いエネルギーを得ることができる、コストパフォーマンスに優れた資源でもあります。発電燃料にも利用される化石燃料のコストは、電気やガスなどのライフラインに影響する重要な要素です。
また、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている日本では、化石燃料の輸入価格も重要視されます。この点で特に優れているのは石炭です。
火力発電に利用される石炭は、輸入先が分散されているため価格変動が少なく、安定した供給が見込めることがメリットです。加えて、エネルギーあたりの単価は天然ガス(LNG)の半額ほどと、低コストなエネルギー資源として知られています。
輸送や貯蔵が容易
化石燃料は、輸送や貯蔵が比較的容易であるという点も大きなメリットです。採掘地から各地に輸出されるため、運搬や保存にかかる手間やコストは重要視されます。
なかでも輸送・貯蔵が容易とされているのが石油の原料となる原油です。
日本に輸入される原油の大半は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東諸国からタンカーで輸送されます。運び込まれた原油は石油備蓄基地に貯蔵され、その後国内の製油所や発電所などに運ばれます。
国内の輸送手段は、大別して海上輸送と陸上輸送があります。海上輸送はタンカーですが、陸上輸送は貨物列車、タンクローリー、トラック、パイプラインなどがあります。
また、震災時に電気や都市ガスが供給不能となった際にも、持ち運びや貯蔵が容易な石油は活躍します。避難所の暖房用の燃料として、緊急車両や被災地住民の避難用車両の燃料として、貴重なエネルギー資源となります。
化石燃料の問題点
さまざまなメリットを持つ化石燃料は日本の主要エネルギーですが、「脱炭素化」の流れにある近年では、「脱化石燃料」が進められています。
化石燃料が抱える問題点には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球温暖化を招く
化石燃料は、世界的な問題である地球温暖化を悪化させる要因だとされています。
化石燃料には炭素(C)が含まれていますが、燃焼することで酸素(O₂)と結びつき二酸化炭素(CO₂)となります。このCO₂が、地球温暖化の主な原因とされる「温室効果ガス」の76.0%を占めているのです(※)。
大気中のCO₂は産業革命以降に化石燃料が広く普及し、大量に使われるようになってから大幅に増加しています。このことをふまえ、地球温暖化対策に取り組む各国政府間の機関・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2021年に「地球温暖化は人間の活動によるものだ」という見解を示しました。
なお、CO₂排出がゼロになっても気温上昇がすぐに止まるわけではありません。IPCCによると、「2050年までにCO₂排出ゼロ」になるペースで取り組みが進んでも、50%以上の確率で2040年までに気温が1.5℃上昇するとされています。
いずれは枯渇する
化石燃料は無限に手に入るわけではありません。太古の動植物が堆積し、長い年月を経て変化したもので、限りある資源です。生産を上回るペースで消費が進んでいる現状では、いずれは枯渇すると推測されています。
石油を例に挙げてみましょう。世界の石油確認埋蔵量は、2018年末時点で1兆7,297億バレル。2018年の石油生産量をベースに計算すると、可採年数は残り50年(※)という結果になりました。
しかし、石油をはじめとする化石燃料の埋蔵量は増加傾向にあります。新たな油田の発見に加え、新技術の発明によって採掘可能になったシェールオイル、先述のメタンハイドレートなどにも期待が寄せられています。
ただし、埋蔵量の増加はタイムリミットを先延ばしにするだけで、根本的な解決にはなりません。また、仮に埋蔵量が無限にあったとしても、地球温暖化対策でCO₂排出削減が求められる昨今の状況を鑑みると、今後の需要は縮小すると考えられています。
化石燃料に頼らないエネルギー
化石燃料の問題点は、世界が抱える地球温暖化に直結しています。CO₂排出の削減が急がれる現在、化石燃料に代わるエネルギーの普及が必要です。
化石燃料に頼らないエネルギーは、「非化石エネルギー」と呼ばれています。最後に、2種類の非化石エネルギーについて見ていきましょう。
原子力発電
1950年代から普及した原子力発電も、非化石エネルギーです。
火力発電ではボイラーで燃料を燃やし、蒸気の力で発電タービンを回します。原子力発電では、原子炉が火力発電のボイラーにあたります。原子力発電の燃料であるウランを核分裂させ、その際に得られる膨大な熱エネルギーを利用します。
ウラン燃料は燃焼時にCO₂を出さないため、化石燃料の問題点を一部カバーできる発電方法です。しかし、ウランは天然の鉱石であり、いずれは枯渇する有限な資源。加えて、使用済み核燃料の処分方法や最終的な処分場所は未だ決定していないこともネックとなっています。
2011年の東日本大震災に際して起きた福島第一原発事故以降、日本における原子力発電の割合は大きく減少しました。災害時の深刻なリスクを鑑みて、原子力発電所の再稼働に反対する声は根強く残っています。
再生可能エネルギー
原子力発電のようなリスクを伴わない非化石エネルギーとして注目を浴びているのが、再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーとは、太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスなど、永続的に利用することができるエネルギーを指します。温室効果ガスを排出せず、かつエネルギー源が枯渇しないことが最大の特徴です。
地球温暖化とエネルギー資源の枯渇という、化石燃料が抱える大きな問題点を解決しうる方法として、普及への取り組みが進んでいます。
しかし、再生可能エネルギーにはいくつかの課題が残されています。
例えば、太陽光発電や風力発電は、季節や天候、時間帯などによって発電量が変動してしまうことが課題です。また、発電設備のイニシャルコストが高いこともデメリットです。
日本では、東日本大震災以降に自然エネルギーへの本格的な取り組みがはじまったため、ほかの先進国に比べて自然エネルギーの普及が遅れています。化石燃料に頼らない社会になるためには、公的機関や企業だけではなく、消費者1人ひとりが再生可能エネルギーに興味を持つことが大切です。
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