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改正省エネ法がめざすもの~脱炭素の鍵を握る省エネルギー~ 改正省エネ法がめざすもの~脱炭素の鍵を握る省エネルギー~

日本には、企業に対して省エネルギーを促す「省エネ法」という法律があります。オイルショックを機に生まれた省エネ法は時代にあわせて何度も改正され、最近では2018年に改正、2021年に施行されました。省エネ法とはどのような法律で、今回の改正で何が変わったのでしょうか。

この記事では、省エネ法の内容やこれまでの取り組み、改正のポイントや新しい目標とともに、省エネのために私たちがとるべき行動について解説します。

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省エネ法とは

省エネ法の正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といい、石油危機をきっかけにして1979年に制定された法律です。

当時の日本では、1973年に起きた第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショックの影響で、省エネルギーの推進が急務とされていました。
そこで、経済の健全な発展に不可欠なエネルギーの安定供給を守り、エネルギー危機のような外部環境の変化に適切に対応するために、工場や輸送機関、建築物、機器など、各所での効率的なエネルギー利用が求められるようになりました。このため省エネ法では、国民経済の発展への寄与を目的に、経済的社会的環境に応じて燃料資源を有効利用するためのエネルギー使用の合理化や電気需要の平準化に関する所要の措置を定めています。

省エネ法が対象とするエネルギー

省エネ法が対象とするエネルギー 省エネ法が対象とするエネルギー

省エネ法が対象とするエネルギーは以下の通り、大きく3種類に分けられます。

  • 燃料
  • 電気

各項目について詳しくみていきましょう。

燃料

燃料では以下のものが対象になります。

  • 原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)
  • 可燃性天然ガス
  • 石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)のうち燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの
※引用元:工場の省エネ推進の手引き|経済産業省 資源エネルギー庁

上記に示す各燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)が対象になります。

※出典:工場の省エネ推進の手引き|経済産業省 資源エネルギー庁

電気

上記に示す燃料を起源とする電気が対象になります。

※出典:工場の省エネ推進の手引き|経済産業省 資源エネルギー庁

省エネ法の対象とならないもの

上記に示した燃料を熱源とする電気は省エネ法の対象になりますが、太陽光発電、風力発電、廃棄物発電など、上記の燃料以外を用いて発電したことが特定できる電気は対象外となります。熱においても、太陽熱、地熱など上記燃料を熱源としない熱のみで発電したことが特定できれば対象外になります。

規制の対象となる事業者

省エネ法はすべての事業者を規制対象としているわけではありません。規制されるのは特定の事業者のみで、以下の事業者が規制の対象になります。

特定事業者

全体のエネルギー使用量(原油換算値)合計が1,500kl/年度以上になる事業者は、国にエネルギー使用量を届け出て、特定事業者または特定連鎖化事業者の指定を受ける必要があります(※)。特定事業者になると、エネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者の選任や年度ごとの使用状況の定期報告、中長期計画書の提出、管理標準の設定や省エネ措置、指針として決めた措置の実践が義務づけられます。

※出典:資源エネルギー庁 省エネ法対応 工場の省エネ推進の手引き

連鎖化事業者

フランチャイズチェーン事業(連鎖化事業)を行う事業者の本部を連鎖化事業者といいます。その中で、本部から加盟店へのエネルギー使用状況の報告や、加盟店の使う空調や照明、調理設備等の指定など、約款が一定の条件を満たす場合は特定連鎖化事業者の届けが必要です。特定連鎖化事業者になると、特定事業者と同じく、エネルギー管理者等の選任や中長期計画の提出、エネルギー使用状況の定期報告などの義務が生じます。

フランチャイズチェーン事業などの場合は、本部と加盟店、自社工場、加盟者の工場を含む事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kl/年度以上の場合、本部が使用量を国に届け出て特定連鎖化事業者の指定を受ける必要があります(※)。

※出典:資源エネルギー庁 省エネ法対応 工場の省エネ推進の手引き

管理指定工場

個別の工場や事業場などでエネルギー使用量が1,500kl/年度以上になる場合は、それぞれの工場・事業場単位でエネルギー管理指定工場の指定を受ける必要があります。3,000kl/年度以上の場合は第一種エネルギー管理指定工場等、1,500kl/年度以上3,000kl/年度未満の場合は第二種エネルギー管理指定工場等に指定されます(※)。例えば、年度あたりの使用量が3,600klの工場なら第一種エネルギー管理指定工場等、1,800 klの事業場なら二種エネルギー管理指定工場等になります。

第一種エネルギー管理指定工場等では製造業の場合はエネルギー管理者、事務所・事業場の場合はエネルギー管理員、第二種エネルギー管理指定工場等ではエネルギー管理員を選任する必要があり、どちらの管理指定工場でも定期報告書の提出が義務づけられます。

※出典:資源エネルギー庁 工場・事業場の省エネ法規制 事業者の区分と義務

省エネ法のもとでのこれまでの取り組み

1970年代のオイルショック以降、日本の産業界は省エネ法に基づき省エネルギーを推進してきました。省エネ法の制定から40年以上。日本の社会や経済におけるこれまでの取り組みと成果をみていきましょう。

優秀な産業部門(工場等)の省エネ

省エネ法のもと、日本の産業部門(工場等)は省エネルギーの分野で高い成果をみせています。中でも優秀なのが製造業です。
製造業はもともとコスト意識の観点から、エネルギーの効率化に対する関心が高い分野です。

オイルショック前まで年平均11.8%で増加していた製造業のエネルギー消費は、1973年の第一次石油危機以降減少しはじめました。その後一時期増加していたものの、2011年東日本大震災による省エネ推進等もあり、現在は1973年の水準を下回って推移しています。1973年を100とした製造業エネルギー消費指数は、2019年には87.6になりました。この間、GDP(国内総生産)は1973年を100とすると2019年には256.1と2.5倍以上に増加しており、製造業全体の生産も約1.6倍の成長を遂げています。(※)

日本の製造業は、省エネルギーの進展や、エネルギー多消費型の素材産業から比較的エネルギーを消費しない加工組立型産業へのシフトによって、経済成長を実現しながらもエネルギー消費を抑制することに成功しており、省エネの観点からはかなり優れた成果をあげているといえます。

※出典:資源エネルギー庁 部門別エネルギー消費の動向

目標は「年平均1%以上」の省エネ

事業者の省エネに対する取り組みを評価する際、1つの評価基準となるのが「エネルギー消費原単位の年平均1%以上の削減」です。
エネルギー原単位とは、ある一定の生産活動に必要となるエネルギー使用量を表す単位です。エネルギー原単位は、エネルギー量と密接に関係している値(床面積、生産量、人数など)を分母としてエネルギー使用量を割ることで求められます。

工場でエネルギー効率の高い機械を新たに導入すれば、これまでより製品の製造にかかる電力等のエネルギーが減るため、エネルギー消費原単位は低減します。エネルギー原単位の改善は、省エネ取り組みの規範である「エネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断基準」をもとに定期報告書でも評価の対象とされます。

トップランナー制度

特定の機械器具製造において、一定の省エネ基準をクリアするよう求めるのが「トップランナー制度」です。トップランナー制度は、1997年に開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)を受けて、1998年の省エネ法改正で導入されました。

エネルギーを消費する機械器具のうち、国内で大量に普及し、エネルギー消費も多いことからエネルギー効率の向上が特に必要と考えられる「特定機器」(エアコン、テレビ、冷蔵庫、プリンターといった電化製品や自動車など)に対し、現在商品化されている製品の中でエネルギー消費効率が最も優れている製品(トップランナー)の性能を上回るエネルギー消費効率を3~10年先の目標年度までに達成するよう製造者に求める制度です。

これまで対象となっていたのは、自らエネルギーを消費する機器のみでしたが、2013年の法改正では新たに断熱材などの建材にも適用されることになり、現在、対象機器は32品目まで増加しています。(※)

※出典:資源エネルギー庁 省エネ大国・ニッポン ~省エネ政策はなぜ始まった? そして、今求められている取り組みとは?~

改正省エネ法のポイント

2018年改正(2021年施行)の省エネ法のポイントを2点解説します。

連携省エネルギー計画認定制度

連携省エネルギー計画認定制度とは、複数の事業者が連携して省エネの取り組み(連携省エネルギー措置)を実施する場合、省エネ法の定期報告書を提出する際に連携した省エネ量を事業者間で分配して報告できる制度です。現行法では、事業者ごとに評価されるため、統合などを行うと適正に評価されないケースがありましたが、制度導入後は各事業者の貢献度に応じた評価が可能になります。

制度の利用にあたっては、連携省エネルギー計画書を作成して提出し、経済産業大臣または経済産業局長から認定書の交付を受ける必要があります。計画には省エネ目標や改善計画の内容、配分方法や計画の実現性を記載する必要があり、認定後は毎年度の定期報告書で省エネ効果を報告します。

荷主の定義の見直しと準荷主の位置づけ

省エネ法では、輸送についてもエネルギーの使用の合理化に係る措置を定めています。

現行法では、貨物の所有者を荷主として省エネへの取り組みを求めていますが、改正省エネ法では、「荷主」の定義を見直すとともに、これまで省エネ努力の必要がなかった荷受け側を「準荷主」と位置づけました。また、輸送方法を決定する事業者として荷主の定義を見直し、さらに、到着日時を指定する荷受け側も準荷主として省エネへの努力を求める規定が定められました。

コロナ禍の影響もあって拡大を続けるネット通販市場により、小口の配送量は急激に増えており、それに伴う再配達の増加で宅配でのエネルギー消費が問題になっています。ネット通販では、宅配事業者に販売商品の配送を委託する通販事業者はこれまで購入者が所有する貨物を届けているだけで、荷主は購入者とされていましたが、法改正でそれを改め、通販事業者も省エネ法の規制対象(努力規定)にしています。

2030年度におけるエネルギー需給見通し

2021年10月、日本の中長期的なエネルギー政策を示す「第6次エネルギー基本計画」の閣議決定に伴い「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」が出されました。今回の見通しでは、2030年度に温室効果ガスを2013年度と比べて46%削減することを目標とし、さらに50%削減の高みに向けて挑戦を続けるとの表明を踏まえ、省エネや再生可能エネルギーの拡大を想定した予測が示されています。

目標達成に向けて省エネ対策の野心的な見直しを行い、発電方法においては原子力の割合はそのままに火力を縮小させ、再生可能エネルギーの割合を36~38%程度に拡大する見込みです。需要側でもさらに省エネを進め、2030年度における省エネ量は2015年策定時の原油換算5,036万klに対して6,200万kl程度にすることをめざします。(※)

ただ、今回の見通しは大幅なCO2削減目標に対する課題を克服するための野心的な想定とされています。そのため、現在の政策だけでは実現できない水準にあり、エネルギーの安定供給を基本としながらも、これまでより大胆な施策の実行が求められます。

※出典:資源エネルギー庁 2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)

私たちが取り組める省エネ

私たちが取り組める省エネ 私たちが取り組める省エネ

省エネ法は規模の大きな企業(事業者)を対象としてエネルギーの効率化を求める法律です。しかし、省エネ自体は私たち1人ひとりが取り組むべき課題といえます。ここからは、個人でも取り組める省エネ行動を紹介します。

家庭部門はまだまだ省エネの余地がある

製造業をはじめとする日本の産業部門は省エネ分野で優秀な成果をあげてきましたが、家庭部門ではまだまだ改善の余地があります。

1973年の家庭部門のエネルギー消費指数を100とした場合、2005年度には221.4まで拡大しましたが、その後の省エネ技術の向上や2011年に起きた東日本大震災以降の省エネ意識の高まりもあり、2019年度は184.3まで低下しました。(※)

しかし、エネルギー消費指数が100以下になっている製造部門と比べれば、家庭部門のエネルギー消費はまだまだ改善可能と考えられます。エネルギー基本計画に掲げた目標を達成していくためにも、今後は個人の省エネ行動が重要になるといえます。

※出典:資源エネルギー庁 部門別エネルギー消費の動向

個人でも取り組める省エネ行動

照明

普段使っている照明を白熱電球や蛍光灯からLEDにすると、省エネと同時に電気料金の節約にもなるのでおすすめです。54Wの白熱電球から9Wの電球形LEDランプに交換した場合、年間2,000時間の使用で電気90.00kWhの省エネにつながります。これは原油に換算すると22.68Lとなり、CO2の削減量は43.9kgです。

電気料金でいうと、年間で電気料金約2,430円を節約できる計算になります。また、点灯時間を短くした場合は、1日1時間の短縮で白熱電球なら19.71kWhの省エネで年間約530円の節約に、LEDでは3.29kWhの省エネで年間約90円の節約になります。(※)

※出典:資源エネルギー庁 無理のない省エネ節約 照明

エアコン

エアコンは電力消費量の高い電化製品のため、省エネを心がければ、エネルギーや排出ガスの削減を大きく減らすことができるうえに、電気料金も大幅に節約できます。例えば、夏の冷房を室温28℃を目安に設定しましょう。外気温度が31℃のとき、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から28℃にした場合、1日の使用時間を9時間とすると年間で電気30.24kWh、原油換算7.62Lの省エネになり、CO2削減量は14.8kgで、電気料金は約820円の節約につながります。

一方、冬の暖房時は室温20℃を目安にしましょう。外気温度が6℃のとき、エアコン(2.2kW)の設定温度を21℃から20℃にした場合、同様に1日9時間の使用で、年間で電気53.08kWh、原油換算13.38Lの省エネになり、CO2削減量は25.9kg、電気料金は約1,430円節約できます。(※)

※出典:資源エネルギー庁 無理のない省エネ節約 エアコン

冷蔵庫

冷蔵庫の省エネは、温度設定以外にも、熱いものを直接入れない、中に物を詰め込み過ぎないなど適切な使用法を心がけましょう。庫内の温度設定を控えめにすると消費電力も減らせます。温度調節を「強」から「中」にした場合、周囲温度が22℃のときであれば、年間で電気61.72kWh、原油換算15.55Lの省エネ、CO2削減量は30.1kg、電気料金は約1,670円を節約できます。

また、庫内に食材を入れ過ぎると余計な電力を消費してしまいます。詰め込んだ場合と、半分にした場合の比較では、年間で電気43.84kWh、原油換算11.05Lの省エネになり、CO2削減量は21.4kg、電気料金は約1,180円の節約になります。同様に、無駄な開閉をしない、開けている時間を短くする、壁から適切な距離をとって設置するなど、簡単な行動が省エネと電気料金節約につながります。(※)

※出典:資源エネルギー庁 無理のない省エネ節約 冷蔵庫

自動車

自動車運転時は、以下のように省エネを意識したドライブを心がけましょう。

  • 適正スピードを守る
  • 速度を5km/h落とす
  • エアコンの使用を控えめに
  • 余計なものを積まない

上記を意識することで、環境負荷を抑えるだけでなく、安全運転にもつながります。例えば、ふんわりアクセルを踏む「eスタート」なら、5秒間で20km/h程度に加速した場合、年間でガソリン83.57L、原油換算74.63L、CO2194.0kgの省エネになり、ガソリン代約11,950円を節約できます。

さらに、加減速の少ないやさしい運転を心がけると、年間でガソリン29.29L、原油換算26.16L、CO268.0kgの省エネになり、約4,190円の節約につながります。ほかにも、早めのアクセルオフやアイドリングストップなど、普段の運転を見直して省エネ運転に変えていってください。(※)

※出典:資源エネルギー庁 無理のない省エネ節約 自動車

省エネ・節電の次は電力会社の見直しを

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