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二酸化炭素削減に役立つ技術「CCS」の実態と今後の課題 二酸化炭素削減に役立つ技術「CCS」の実態と今後の課題

近年、世界各地から寄せられる異常気象や気温上昇などの報告から、地球温暖化対策のさらなる強化が世界的に求められています。

そのための新しい技術や取り組みが登場していますが、「CCS」もその1つです。温室効果ガス排出抑制の話題で出るCCSは、具体的には何をあらわす言葉なのでしょうか。

この記事ではCCSの基礎知識の紹介に加え、世界・日本でのCCSの取り組みやこれからの課題についても解説します。

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CCSとは何か?なぜ期待されるのか

CCSは「Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留)」の略称です。本来の名称のとおり、火力発電所や工場などで発生する二酸化炭素(CO₂)を集めて地中深くに貯留する技術を指します。

地球温暖化の対策においてCO₂の削減は不可欠です。地球温暖化の原因が温室効果ガスであり、なかでもCO₂が大きな割合を占めていることはすでに広く知られています。

これまでにも、発電時にCO₂の排出が少ない再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の改善(省エネ)、CO₂を吸収する森林を増やすなどさまざまな対策が講じられてきました。日本でも脱炭素の取り組みが、国の政策や各自治体によって行われています。

しかし、産業によってはCO₂排出を0にするのが難しい分野もあります。そこで開発された技術が、化学的・物理的な方法でCO₂回収し、貯留するCCSです。

CO₂が発生したとしても、大気中に放出しなければ温室効果は抑制されます。CO₂の排出が避けられない産業の継続とCO₂削減を両立できるCCSは、地球温暖化対策の有効な手立てとして高い期待を寄せられているのです。

CCSと並ぶ技術CCU

CO₂削減の新技術としてCCSと並ぶのが「Carbon dioxide Capture and Utilization(二酸化炭素回収有効利用 )」ことCCUです。回収した二酸化炭素を再利用する技術のことを指します。

代表的な利用法としてまず挙げられるのが、CO₂を古い油田に注入し、残存している原油を圧力で押し出しつつ、CO₂を地中に貯留するEOR(Enhanced Oil Recovery)という技術です。ほかにも、CO₂を飲料用や医療用の産業ガスとして活用したり、炭酸カルシウムやメタンといった別の物質に変換させて利用したりと幅広い利用法が考案されています。

また、CCSとCCUの2つの技術を併用したものはCCUSと呼ばれています。いずれも、「脱炭素化」を目指す社会には欠かせないものとして、世界で注目を浴びています。

CO₂を分離・回収する方法

CO₂を分離・回収する方法 CO₂を分離・回収する方法

CCSでは、まず工場や発電所から排出されるガスからCO₂を分離・回収します。

具体的にはどのような方法でCO₂を集めているのでしょうか。主な方法を4つご紹介します。

化学吸収法

CO₂の分離・回収方法として現在最も多く採用されているのが化学吸収法です。シンプルな構造の装置を利用するため、大量のガスを処理できるというメリットを持ちます。

化学吸収法では、化学反応によってCO₂のみを溶解させられるアルカリ性溶液を用いてCO₂を分離します。アルカリ性溶液には、一般的にアミンや炭酸カリ水溶液などが使用されています。

CO₂を吸収したアルカリ性水溶液は再生施設に送られ、大量の蒸気で加熱再生処理を施されてCO₂と分離。その後、再びCO₂の溶解に利用されます。

物理吸収法

化学反応を利用する化学吸収法に対し、圧力をかけて排ガス内のCO₂をメタノールなどの液体に溶解させる分離・吸収方法が物理吸収法です。高圧下でCO₂を溶解させた後、減圧することでCO₂を取り出します。また、CO₂を取り除かれた溶液は再びCO₂の溶解に利用されます。

圧力を利用する物理吸収法は、石炭に由来するガスなど高温・高圧のガスの処理に最も適しているといわれています。これは、ガスが元々持つ圧力を活用できるためです。

また、かける圧力が高いほどCO₂の溶解量が増えるため、より高圧で物理吸収法を行う設備や技術が整えば、CO₂吸収後の溶液を循環させる動力や溶液の再生にかかるコストの削減が可能です。

膜分離法

膜分離法とは、多孔質の気体分離膜にガスを通し、孔径によるふるい効果や拡散速度の違いを利用してCO₂を分離させる技術です。CO₂分離以外にも、汚泥や汚水の浄化や溶解した物質の分離に活用されています。

膜分離法は、天然ガスなどメタンが主成分のガス処理に向いているとされています。メタンはCO₂よりも分子が大きいため、分離が比較的容易なのがその理由です。

対して、窒素や酸素などCO₂と分子の大きさが近いガスへの適用は難しいとされてきました。しかし近年では技術開発が進み、分離の精度が上がりつつあります。

物理吸着法

ガスを活性炭やゼオライトなどの吸着剤と接触させ、圧力差や温度差を利用して吸着剤の微細孔にCO₂を吸着させる分離法を物理吸着法と呼びます。分離に使用する装置や工程がシンプルなため、低エネルギーで行えるのがメリットです。

物理吸着法に利用する吸着剤に関しても、技術開発が進んでいます。従来のものよりも効率良くCO₂を吸着・脱着できる材料や、低圧下など今まで吸着性能を発揮することが難しいとされていた環境に対応する素材が開発され、物理吸着法の低コスト化や効率化につながると期待が高まっています。

CO₂を貯留する方法

排ガスから分離・回収されたCO₂は、その後どのように貯留(隔離)されるのでしょうか。ここからは、CO₂を貯留する方法について解説します。

地中貯留

まず挙げられるのが地中貯留。これは、CO₂を地下800メートル以上の深い場所に溜めておくという方法です。このエリアには地下水や化石燃料が埋まっていることから、CO₂も長期間にわたり安定的に貯留できると期待されています。

CO₂を貯留する方法として最も有力視されているのが「帯水層貯留」です。帯水層(貯留層)は砂岩など隙間の大きい粒子でできており、さらに水や塩水で満たされています。さらに、泥岩などCO₂の漏洩を防ぐ「遮蔽層」で覆われており、貯蓄可能量・安定性ともに優れています。

「炭層固定」や「石油・ガス増進回収」「枯渇油・ガス層貯留」なども地中貯留の方法です。地中の石炭層や石油・ガス層にCO₂を注入し、CO₂の貯留と同時にメタンや石油、天然ガスなどの採掘を促進します。

海洋隔離

CO₂を海に廃棄する「海洋隔離」も、かつては検討されていました。海水に溶解させたり、新海底に液状のCO₂を送り込ませるというものです。

しかし、海水の酸性化や生態系への影響など懸念点が多いため、近年では実現に向けた目立った動きはなくなっています。

さらに、海洋への廃棄物などの投棄が原則禁止されている国際条約「ロンドン条約」が2006年に改正された際には、新たにCO₂も廃棄物として数えられるようになりました。

これらの理由から、海洋隔離への期待はあまり高いとはいえないのが現状です。

世界のプロジェクト例

世界各国ではCCSの実証実験や商業運転が着々と進んでいます。

ここからは、2019年11月時点での操業中の19の大規模CCS施設のなかから、特に注目度の高いものをご紹介していきます。

ノルウェー スライプナープロジェクト

世界初のCCS実現を果たしたのがノルウェーです。

ノルウェー沖に位置するスライプナーガス田での天然ガス採掘の際にCO₂を分離し、地中に貯留するスライプナープロジェクトは、1996年に操業開始。以来20年間続き、1,600万トン以上のCO₂を圧入しました。

2008年操業開始のスノービットプロジェクトと合わせると、2016年時点で圧入されたCO₂合計量は約2,000万トンと世界でもトップクラスの実績を誇っています(※)。

※出典:世界の CCS の動向:2016 サマリーレポート

ブラジル サントス海盆プレソルト油田プロジェクト

続いてご紹介するのは、ブラジルのサントス海盆プレソルト油田プロジェクトです。

プレソルトとは、ブラジルのエスピリトサント盆地とカンポス盆地、サントス盆地にまたがる大水深域の名称です。広大な油田は、発見当初から世界の注目を浴びていました。

リオデジャネイロ海岸から約300kmという超深層を活用したこのプロジェクトは、2015年12月時点で300万トンのCO₂圧入を達成しています(※)。

※出典:GLOBAL CCS INSTITUTE「THE GLOBAL STATUS OF CCS 2016 SUMMARY REPORT」

アメリカ合衆国 ペトラノヴァプロジェクト

アメリカ合衆国のテキサス州ペトラノヴァ(PetraNova)石炭火力発電所にて、2017年より操業開始したのがペトラノヴァプロジェクトです。

発電所としては世界最大のプロジェクトであったことから、当初は3年間で460万ショートトンのCO₂回収が期待されていました。しかし、設備などの諸問題により回収量は380万ショートトンと下回る結果に(※)。さらに新型コロナウイルス感染症流行による原油価格への影響で、2020年時点で操業の一時停止が発表されています。(1ショートトンは907.185kg)

※出典:米国:Petra Nova二酸化炭素回収、貯蔵(CCS)プロジェクトの進捗

苫小牧で行われた日本初のCCS実証試験

ここ日本でもCCSへの取り組みが進んでいます。2014年に発表されたエネルギー計画では、2020年前後の実用化を目指すことが明らかになりました。

経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本CCS調査株式会社(JCCS)が中心となって立ち上げた北海道の「苫小牧CCS実証試験センター」では、2016年から約3年に及ぶ実証実験が行われています。

国内唯一となるこのプラントでは、製油所の水素製造設備から排出されるガスを隣接する設備までパイプラインで輸送。排ガスからCO₂を分離・回収した後、海岸から3~4km離れた海底下の貯留層へ圧入・貯留する仕組みです。この実証実験により、累計30万トンものCO₂が最大3000mの地下に圧入されました(※1)。

2020年に発表された、日本における脱炭素の筋書きを示した「グリーン成長戦略」では、原子力発電・火力発電とCCUSを組み合わせることでCO₂の30〜40%を削減できるとしています(※2)。

※1 出典:資源エネルギー庁 CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に
※2 出典:BISINESSINSIDER 「二酸化炭素を地下に埋める」注目の技術“CCS”が抱える期待と課題【脱炭素とはなにか#5】

CCS実用化に向けた課題

地球温暖化阻止への大きな貢献が期待されているCCS。しかし、普及拡大のためには解決すべき課題もあります。 最後に、CCS実用化に向けた課題について見ていきましょう。

コストの壁

コストの壁 コストの壁

まず挙げられるのがコストの問題です。

先ほど紹介した「苫小牧CCS実証試験センター」では、CO₂の分離・回収にかかるコストが全体の大半を占めることがわかっています。実用化のためには、ここでのコスト低減が重要です。

CO₂の分離・回収には膜分離法や物理吸着法をはじめ、さまざまな方法があることは先述したとおりですが、いずれもさらなるコストカットが求められています。

また、CO₂の分離や回収、貯留などに必要な施設には、金銭面はもちろん、稼働のためのエネルギーコストがかかります。これらの設備を稼働するためにCO₂を余分に排出してしまえば本末転倒です。

貯留適地の確保

CO₂の貯留に適した場所の確保も重要な課題です。

先ほども触れたように、CO₂を長く安全に貯留するためにはいくつかの条件をクリアしなければなりません。貯留に適した地質であること、CO₂が地上に漏れ出ないよう、貯留層の上に遮蔽層があることなどが主な条件です。

2005年の調査では日本のCO₂貯留可能量は1,460億トンにものぼるとされています(※)。しかし、数十億トン規模の貯留層は数カ所に限られていることも判明しているため、効率的なCCSプラント運用のためには引き続き調査が必要です。

また、貯留地に住む地域住民や土地の持ち主の合意も重要です。地層の間に大量のCO₂を貯留することになるため、地震を引き起こさないかどうか、貯留したCO₂が漏れないかどうかなどの懸念点を指摘する声も上がっています。

※出典:経済産業省 CCSを取り巻く状況」

長距離輸送の問題

CO₂の排出源と排ガス処理施設やCO₂貯留のための施設が離れている場合は、移送手段も検討しなければなりません。

工場・発電所などで排出されたCO₂をCCSプラントまで輸送、またはCCSプラントで回収されたCO₂を貯留地まで輸送するためにはコストとエネルギーを要します。金銭・エネルギー両面でなるべく低コストの輸送手段が求められます。

輸送手段にはパイプライン、船舶、トラックなどがありますが、短距離ではパイプライン、長距離では船舶がコストの点では有力視されています。

CO₂を出さない電気を選ぶ

この記事では、CO₂の回収・地下貯留技術「CCS」について解説しました。地球温暖化の主原因であるCO₂削減に貢献できるとして、世界各国でCCSへの取り組みが進んでいます。

しかし、それとは別にCO₂をなるべく出さない選択を一人ひとりが行うことも大変重要です。

個人ができる「脱炭素」の1つとして、CO₂を出さない電気を選ぶという方法があります。再生可能エネルギーの普及・拡大に取り組む電力会社を選ぶことで、間接的にCO₂削減に貢献できるのです。

2021年8月に実施された「新電力会社についてのアンケート」において、「節約に期待できる」「わかりやすい料金プラン」「安心・信頼できる」「おすすめしたい」という4項目で新電力会社第1位の実績を誇る(※)Looopでんきもまた、再生可能エネルギーを掲げる電力会社の1つ。

Looopでんきが提供する環境価値サービス「eneco」の「RE100%」プランは、お使いの電気を実質再生可能エネルギー100%にすることができます。また、企業の再生可能エネルギー100%を目指すプラットフォーム「RE100」への報告ができるトラッキングを無料で利用できるなど、CO₂削減への取り組みを助ける納得のサービスを用意しています。

まずはLooopでんき「eneco」の紹介ページをのぞいてみてはいかがでしょうか。

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※日本トレンドリサーチによるサイトイメージ調査(2021年8月実施)

  • Q CCSとは? 矢印アイコン

    CCSは「Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留)」の略称です。本来の名称のとおり、火力発電所や工場などで発生する二酸化炭素(CO₂)を集めて地中深くに貯留する技術を指します。

  • Q CCSと並ぶ技術CCUとは? 矢印アイコン

    CO₂削減の新技術としてCCSと並ぶのが「Carbon dioxide Capture and Utilization(二酸化炭素回収有効利用 )」ことCCUです。回収した二酸化炭素を再利用する技術のことを指します。また、CCSとCCUの2つの技術を併用したものはCCUSと呼ばれています。