近年は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて地球環境に配慮したエコカーの導入が推進されています。エコカーの一種である「PHEV」は、ハイブリッド車の進化版といわれ、外部から充電ができるのが最大の特徴です。電気自動車(EV)との違いや買い替えのメリットを紹介します。
PHEVとはどんな車?
PHEVは「Plug-in Hybrid Electric Vehicle」の略称で、日本語では「プラグインハイブリッド車」と呼ばれます。PHEVの仕組みや電気自動車(EV)との違いについて理解を深めましょう。
外部充電ができるハイブリッド車の進化版
PHEVはハイブリッド車(HEV)の一種で、エンジンとモーターの2種類の動力が使用された車を指します。しかし、HEVとPHEVは使い勝手や走行コストが大きく異なります。
- HEV:走行状況に応じてエンジンとモーターを併用、または使い分ける。燃料はガソリンのみで、外部からの充電は不可
- PHEV:モーターがメイン動力で、電気による「EV走行」が基本。燃料はガソリンと電気で、外部からの充電が可能
EV走行時は車体のバッテリーから供給される電気を使ってモーター回しタイヤを駆動させますが、バッテリー残量が少なくなったときはエンジンによる走行も可能ですので、環境への配慮と利便性を両立させることができます。
電気自動車(EV)との違い
電気自動車(EV)とは、電気を動力とする車両全般を指します。広義では、HEVやPHEVも電気自動車(EV)の一種ですが、ここではバッテリーに充電された電気のみを動力とする「BEV(Battery Electric Vehicle)」を電気自動車(EV)と定義します。
ガソリンと電気の両方を燃料とするPHEVに対し、電気自動車(EV)は電気のみで走行します。バッテリー残量がゼロになれば走行できなくなるため、PHEVよりもバッテリー容量が大きいのが特徴です。
PHEVはバッテリー残量がなくなっても、ガソリンによるエンジンで走行できます。まさに、電気自動車(EV)とガソリン車のいいとこ取りといえるでしょう。
PHEVに乗り換えるメリットとは?
ガソリン車からPHEVへの乗り換えを検討している方や、PHEVと電気自動車(EV)のどちらを選ぶべきかで悩んでいる方もいるのではないでしょうか?PHEVに乗り換えるメリットを解説します。
長距離でも充電を気にせず走れる
電気自動車(EV)の場合、ロングドライブではバッテリー切れを起こす恐れがあります。充電スポットは徐々に増えてはいるものの、ドライブの途中でタイミング良く充電ができるとは限りません。
PHEVは、バッテリー残量がゼロになっても、ガソリンによるエンジン走行が可能です。現状では、充電スポットよりもガソリンスタンドの方が身近であるため、遠出の際は安心感があるでしょう。
コストの面では、ガソリンよりも電気の方がお得です。短距離移動をEV走行のみにすれば、月々の燃料コストが抑えられます。
加速性能や静粛性に優れている
PHEVは加速性能や静粛性に優れています。ガソリン車のエンジン音や振動が大きいのは、シリンダー内部でピストンが往復運動を繰り返しているためです。
PHEVのEV走行は、エンジンを使わずに電気の力のみでモーターを動かすので、音や振動がほとんどありません。
電気自動車(EV)はガソリン車に比べ加速性能に優れているため、車線変更や高速道路の合流がストレスなく行えるでしょう。
エコカー減税の対象になる
エコカー減税とは、排出ガス性能や燃費性能といった「環境性能」に優れた車(エコカー)への税制優遇です。
エコカーの普及を目的としており、要件を満たす車は「自動車重量税」の免税・減税が受けられます。自動車重量税は、車の区分・重量・経過年数などによって納税額が変わる国税の一種です。
期限についてはもともと2023年4月30日まででしたが、2023年度の税制改正によって2026年4月30日まで延長されています。
PHEVは、エコカー減税の対象車となっており、新車新規登録時の初回車検分と2回目車検(継続車検)分の自動車重量税が免税となります。
※出典: エコカー減税 (自動車重量税) の概要
⇒エコカーのメリットについてもっと詳しく知りたい方はこちら
地球環境に配慮できる
PHEVのEV走行は、モーターがエンジンの役割を果たします。燃料にガソリンを使わないため、地球温暖化の主な原因であるCO₂が排出されません。EV走行が中心のライフスタイルにすれば、地球環境に配慮できるのがメリットです。
※出典: クール・ネット東京 :東京都地球温暖化防止活動推進センター | 「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」
⇒温室効果ガスの影響と問題点についてもっと詳しく知りたい方はこちら
PHEVのデメリットも把握しておこう
環境に優しく、乗り心地や燃料コストも申し分のないPHEVですが、メリットばかりではありません。PHEVを検討する前に、デメリットや注意点も把握しておきましょう。
車両価格が高く、車種が少ない
PHEVは、エンジンや燃料タンクのほかに、バッテリーやモーターを搭載しているため、ガソリン車よりも車両価格が高額になるのが難点です。
購入コストを抑えたい方は、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」をはじめとする国・自治体の補助金制度を活用しましょう。
また、ガソリン車に比べて車種が少なく、人と車がかぶりやすいのもデメリットです。ただし、今後エコカーが主流になれば、PHEVの品ぞろえも増える可能性が高いでしょう。
※出典: クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
ガソリンの劣化に注意が必要
EV走行をメインにすると、給油したガソリンがなかなか消費されません。劣化したガソリンは、ガソリンタンクや配管部などの金属部を腐食させたり、燃料配管通路や燃料フィルターなどを詰まらせたりする恐れがあります。
ガソリンの明確な使用期限はありませんが、半年もすれば劣化が始まるため、できるだけ早く消費するのが基本です。
長距離走行をほとんどせず、買い物や通勤に車を利用する方は、PHEVよりも電気自動車(EV)の方がよいかもしれません。
ガソリン車に比べて車内空間が狭い
PHEVには、バッテリーやモーターが搭載されています。小型化が進んでいるとはいえ、車体に搭載するには、ある程度のスペースを確保しなければなりません。
これらの設備は、座席の下に設置されるのが一般的なので、ガソリン車よりも、車内空間が狭くなる傾向があるようです。
大きな荷物を積んだりすると窮屈さを感じるかもしれません。購入前は必ず乗車をし、快適に運転できるかどうかをチェックしましょう。
PHEVが向いている人の特徴
車を選ぶときは、車両価格や維持費などのコスト面はもちろん、自分のライフスタイルや目的に合っているかを考えることが重要です。特徴やメリット・デメリットから総合的に判断すると、PHEVはどのような方に向いているのでしょうか?
近距離移動だけでなくロングドライブも多い
PHEVは、ガソリン車と電気自動車(EV)の両方のメリットを兼ね備えています。近距離移動はもちろん、ロングドライブも多い人に向いているでしょう。
電費や燃費を考えると、通勤や買い物などの近距離移動ではEV走行、高速道路を使った長距離移動ではエンジン走行が理想です。
発進と停止を頻繁に繰り返す街中では、ガソリン車よりもEV走行の方が効率が良く、逆に長距離移動では、エンジン走行の方が効率が良くなります。
アウトドアや災害時にも蓄電池として利用したい
PHEVはアウトドアが好きな方にもおすすめです。クルマを電源として使用できる機能があるため、屋外でもコンセントを挿すことで家電などを利用することができます。
また、災害が多い日本では、インフラが被災し電気が使えなくなることも珍しくありませんが、バッテリーに蓄えられた電気を使えるため、数日間は生活が維持できるでしょう。
電気自動車(EV)の方がバッテリー容量は大きいものの、バッテリー残量がゼロになれば、その時点で使えなくなるのがデメリットです。
PHEVは、バッテリー残量がなくなっても、ガソリンさえあれば発電や走行ができるため、いざというときにも安心です。
国内メーカーの代表的な車種をチェック
自動車業界では、ガソリン車からモーターを動力源とする車への転換が進んでいます。ガソリン車に比べると、PHEVの車種は少ないですが、時代の流れとともにラインナップは増えるでしょう。国内メーカーの代表的な車種をピックアップして紹介します。
トヨタ「RAV4 Z」
大容量バッテリーと高出力モーターを備えた「RAV4 Z」は、動く電源と称されるほどのパワーとスタミナが自慢です。PHEVを電源として使用する外部給電機能は合計1,500Wで、停電などの非常時にも頼りになるでしょう。
バッテリー容量は18.1kWh、満充電からのEV走行距離は95kmです。モーターの小型化・軽量化・高効率化技術により、加速性能と静粛性が向上しています。後輪がパワフルに駆動する「E-Four(電気式4WDシステム)」にも注目しましょう。
200V用と100V用の充電ケーブルが標準装備されており、ケーブルとコンセントをつなぐだけで充電ができます。普通充電のみで、急速充電は非対応です。
- 寸法:全長4,600mm×全幅1,855mm×全高1,690mm~1,695mm
- 乗車定員:5人
- バッテリー容量:18.1kWh
- 燃費(WLTC):22.2km/L
- EV走行距離:95km
三菱「アウトランダーPHEV」
PHEV×SUVのたくましい走りが実感できるのが、「アウトランダーPHEV」です。国内のPHEV販売台数において、2年連続で1位を獲得しています(2021年度・2022年度)。
ドライブモードは7パターンで、路面状態や走行状況に合わせて自由に切り替えが可能です。急速充電にも対応しており、経路充電をしながらの遠出にも向いています。
アクセルペダルのみで加減速が調整できるため、長時間の運転でも疲労を感じにくいでしょう。前後輪の両方に搭載された高出力モーターが力強く安定した走りを生み出します。
- 寸法:全長4,710mm×全幅1,860mm×全高1,740mm~1,745mm
- 乗車定員:5~7人
- バッテリー容量:20kWh
- 燃費(WLTC):16.2~16.6km/L
- EV走行距離:83~87km
マツダ「CX-60 PHEV」
「CX-60 PHEV」は、2.5Lガソリンエンジンに17.8kWhのバッテリーと大型モーターを組み合わせた車種です。後輪駆動ベースの「i-ACTIV AWD」により、高い旋回性と安定性を実現しています。
走行時は「Mi-Drive」によって、ドライブモードを変更できます。ノーマルモードは、バッテリー残量や走行シーンに応じて、EV走行からハイブリッド走行に切り替わる仕組みです。
普通充電と急速充電に対応しており、「MyMazdaアプリ」を使えば、リモートで充電の開始・停止が操作できます。
- 寸法:全長4,740mm×全幅1,890×全高1,685mm
- 乗車定員:5人
- バッテリー容量:17.8kWh
- 燃費(WLTC):14.6km/L
- EV走行距離:75km
レクサス「RX 450h+」
「RX 450h+」は、2.5L直列4気筒エンジンと総電力量18.1kWhの大容量バッテリーを備えた4WDモデルです。EV走行の航続距離は86kmと長く、普段使いであれば不便さを感じません。
走行モードは、「EVモード」「AUTO EV/HVモード」「HVモード」「セルフチャージモード」の4パターンです。ルート状況に合わせてEV走行とHV走行を自動で切り替える「先読みエコドライブ」により、無駄のない走りが実現します。
- 寸法:全長4,890mm×全幅1,920mm×全高1,700mm
- 乗車定員:5人
- バッテリー容量:18.1kWh
- 燃費(WLTC):18.8km/L
- EV走行距離:83km
PHEVの購入前にチェックしたいこと
PHEVとガソリン車との大きな違いは、走行に電気が必要となる点です。普段はEV走行が基本となるため、定期的な充電は欠かせません。購入を決める前に、次の2点は必ずチェックしましょう。
自宅に充電設備を設置できるか
PHEVの充電方法には、「自宅での充電」と「充電スポットの利用」の2パターンがあります。PHEVや電気自動車(EV)は、自宅充電を基本とし、充電スポットは遠出の際の経路充電に使うのが一般的です。
「自宅での充電は電気代がかかる…」と不安になる方もいるようですが、走行コストはガソリン代よりも安価な上、充電スポットを利用するよりも安く済みます。空いている時間や寝ている間に充電すれば、充電時間の長さも気になりません。
自宅での充電を基本とする場合、充電設備を設置する必要があります。戸建て住宅なら問題はありませんが、集合住宅に住んでいる方は、大家や管理組合、ほかの住民の合意を得なければなりません。
自宅に充電設備が設置できるかどうかをきちんと確かめた上で、PHEVを購入しましょう。
普段使いであれば3kW充電器で十分
PHEVの充電には、出力数が3~6kWの「普通充電」と10~150kWの「急速充電」があり、自宅での充電は普通充電が基本です。
自宅に充電設備を設置する際に、3kWと6kWのどちらの充電器を購入すべきかで悩む方は少なくありません。普段の生活でPHEVを使うのであれば、3kWで十分でしょう。
6kWの充電器なら、充電時間は3kWの約半分で済みますが、電気の契約アンペア数を上げる必要があり、電気料金の基本料金が高くなります。3kWに比べ、充電設備の工事費用も高額です。
3kWの充電器の設置にかかる費用の目安は以下の通りです。工事の前に必ず専門業者に見積もりを依頼しましょう。
- コンセントの設置費用:50,000~150,000円前後
⇒電気自動車(EV)の自宅充電は可能か?必要な設備や費用を解説
電気料金プランがPHEVに適しているか
PHEVを購入するにあたり、現在の電気料金プランがPHEVに適しているかどうかをチェックしましょう。大手電力会社が一般家庭向けに提供しているベーシックな料金プラン(従量電灯プラン)において、電気料金は以下の計算式で算出されます。
- 電気料金=基本料金+電力量料金(燃料費調整額を含む)+再生可能エネルギー発電促進賦課金
⇒電気自動車(EV)に合うプランについてもっと詳しく知りたい方はこちら
PHEVに適した電気料金プランとは?
多くの電力会社が独自のプランを打ち出す中、「プランが多すぎて、どれを選べばよいか分からない…」という方もいるのではないでしょうか?PHEVに適した料金プランの一例を紹介します。
基本料金がかからない
PHEVは、一般的な電化製品に比べて、多くの電力を使用します。PHEVに乗り換えた後は、契約アンペアの容量を引き上げなければ、頻繁にブレーカーが落ちる可能性が高いでしょう。
電気料金の基本料金は、契約アンペアに比例して高くなるのが一般的です。充電をまったくしない月でも、一定額の料金がかかってしまうため、「基本料金がかからないプラン」を選ぶのが良いでしょう。契約アンペアが大きいご家庭ほど、節約の効果を実感できます。
時間帯によって電気料金が変動する
前述の通り、従量電灯プランは、電力使用量に応じて1kWhあたりの単価が上がります。充電が増えると、電気の使用量だけでなく料金単価も上がり、電気代が高くなりやすいのがデメリットです。
電気代を少しでも安く抑えたい方は「時間帯ごとに単価の変わる料金プラン」を選んで、単価が安い時間帯に充電をしましょう。
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これからの時代は車もガソリンから電気へ
PHEVは、ハイブリッド車の中でも、外部の電源から充電ができるタイプを指します。基本は、電気とモーターによるEV走行が基本で、走行状況や走行距離などに応じて、エンジン走行に切り替えが可能です。
日本はまだガソリン車が主流ですが、これからの時代は、車もガソリンから電気へと切り替わっていくでしょう。ガソリン代がかからなくなる分、電気代が高くなるのは避けられないため、電気の使い方を考える必要があります。
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