会社ごとに料金差はありますが、プロパンガスの料金は一般的に都市ガスより高くなる傾向にあるとされています。
プロパンガスを利用しているご家庭は「ガス料金を安くする方法があるのか」「ガス会社は変更できないのか」などが気になるところでしょう。
プロパンガス料金が高いと言われる理由や平均相場を解説します。
プロパンガス料金の仕組み
プロパンガス料金は、どのような仕組みで決まるのでしょうか。まずは、料金が決まる仕組みと値上げについて理解しておきましょう。
基本的には「基本料金」と「従量料金」で構成される
一般的に、ガス料金は「基本料金」と「従量料金」で計算されます。定額負担となる基本料金に含まれるのは、検針費・ガスボンベ配送費・ガスメーター交換費・ガス漏れ対処費などです。
従量料金は「従量単価×ガス使用量(立方メートル)」で算出されるため、ガスの使用量に比例してガス料金が上がっていきます。
検針票に従量単価を記載していないガス会社もあるでしょう。その場合でも、従量料金とガス使用量が記載されていれば、「従量料金÷ガス使用量」で従量単価がわかります。
輸入価格の高騰などで値上げがあることも
プロパンガス料金が値上げする要因は複数ありますが、特に影響しやすい要素の1つが、輸入価格の高騰です。
プロパンガス料金は、CPと呼ばれる指標に大きく左右されます。CPとは、世界最大の原油産出国であるサウジアラビアでの船積み価格です。CPと原油価格は相関関係にあるため、CPが高騰すると一般消費者が支払うガス料金は値上がりします。
自宅のプロパンガス料金は高い?
自宅のプロパンガス料金が高いと感じている方は、世帯人数別の平均相場と比較してみましょう。ガス使用量の確認方法や、使用量ごとの料金の目安についても解説します。
使用量を確認しよう
自宅のガス使用量は検針票で確認可能です。ガスメーターのカウンターの数字やスマートメーターの数値を読み取り、検針票にガス使用量が記載されます。
従来のガスの検針は、検針員が各家庭を訪問して目視で行う方法が主流でした。しかし近年は、オンラインでガスメーターの数値を読み取れるスマートメーターの導入が進んでいます。
検針票に記載されるガス使用量は、今回の指針から前回の指針を引いた数値です。検針票によっては、使用量の単位が記載されていないケースもあるため注意しましょう。
世帯人数別の平均使用量
日本エネルギー経済研究所石油情報センター「平成18年度 プロパンガス消費実態調査」の全国・年度計を見ると、プロパンガスの1世帯あたり月平均使用量は以下の通りです。
1人・2人世帯:6.5立方メートル
3人世帯:8.9立方メートル
4人世帯:11.3立方メートル
5人世帯:11.7立方メートル
※出典:一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター「平成18年度 プロパンガス消費実態調査」P45
使用量ごとの料金の目安
同じく石油情報センターが発表しているLPガスの月別価格を見ると、2022年6月の基本料金の平均は約1,900円、使用量ごとの小売価格は以下の通りです。
5立方メートル:5,411円
10立方メートル:8,802円
20立方メートル:15,236円
上記それぞれの従量単価の目安は、以下のように計算できます。
5立方メートル:(5,411円−1,900円)÷5立方メートル=702円
10立方メートル:(8,802円−1,900円)÷10立方メートル=690円
20立方メートル:(15,236円−1,900円)÷20立方メートル=667円
従量単価を上記の数字とすると、世帯人数別のプロパンガス料金の平均目安額は、以下のように計算が可能です。
1人・2人世帯:1,900円+(702円×6.5立方メートル)=6,463円
3人世帯:1,900円+(690円×8.9立方メートル)=8,041円
4人世帯:1,900円+(667円×11.3立方メートル)=9,437円
5人世帯:1,900円+(667円×11.7立方メートル)=9,704円
※出典:一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター「LPガス月別(2022年6月)」
国が公表しているガス料金の平均
総務省統計局の「家計調査 家計収支編」を見ると、2021年におけるガス料金の平均は次の通りです。
1人世帯:3,001円
2人世帯:4,330円
3人世帯:4,930円
4人世帯:4,882円
5人世帯:4,883円
上記の金額は都市ガスを含んだものであり、前項で算出した世帯別のプロパンガス料金と比べると、総じて金額が低くなっています。都市ガスとプロパンガスでは大きな料金差があるとわかるでしょう。
※出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編 単身世帯 表番号1 (実数,構成比,増減率,寄与度)」
※出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 表番号3-1 世帯人員別」
プロパンガスの料金が都市ガスより高い理由
なぜプロパンガスの料金は、都市ガスの料金より高くなるのでしょうか。料金差が生じる主な理由を紹介します。
供給コストが高い
都市ガスはあらかじめ設置された導管を通して各家庭に供給されています。ガスを届けるのに人の手を介さないため、供給コストがほとんどかかりません。
一方プロパンガスは、各家庭に設置したガスボンベから供給されるため、ガスボンベを運ぶ必要があります。人件費やガソリン代などが発生するため、どうしても供給コストが高くなってしまうのです。
しかし、プロパンガスにはガスボンベを運べる場所ならどこでも利用できるというメリットもあります。都市ガスは原則、導管が通っているエリアでしか利用できません。
相場が高止まりしている
プロパンガス会社は各地域に複数存在しています。業者は価格を自由に設定できますが、相場が高止まりしているのが実情です。
地域内で1社が価格を下げると、料金が安い業者に消費者が流れるため、必然的に価格競争が起こります。各社が高い単価を維持するために、業者同士で値下げを行わない慣習が、プロパンガス業界に残っているのです。
競争を避けて高めの料金相場を暗黙の了解で設定され、都市ガスよりも高い料金水準が保たれています。
消費者がガス会社を積極的に選ばない
プロパンガスの料金が都市ガスより高くなる理由としては、消費者が積極的にガス会社を比較しないことも挙げられます。プロパンガス会社を自由に選べる事実を知らない消費者が多いのです。
プロパンガスは都市ガスと同じく、2017年4月のガス自由化により自由化されたと思われがちですが、実際には都市ガスよりもかなり前に自由化しています。相場より料金が安い業者も数多く存在するため、丁寧に比較すればガス料金を抑えられるでしょう。
しかし、「プロパンガスは高いもの」という意識が浸透しており、ガス会社を積極的に選ばずにそのまま利用し続ける消費者が多いため、相場は高いままになっています。
プロパンガス料金を安く抑えるには?
相場が高いプロパンガス料金は、ポイントを理解すれば安く抑えることが可能です。プロパンガス料金を安くする方法を、持ち家と賃貸に分けて紹介します。
ガス会社の変更を検討する
持ち家(一戸建て)の場合は思い切ってガス会社の変更を検討するのがおすすめです。今より料金が安い業者を見つけることができれば、ライフスタイルを変更せずにガス料金を下げられます。
ガス器具の割引提供や電気とのセット割引など、ガス会社は独自サービスで他社との差別化を図っているため、料金以外のポイントもくまなく比較しましょう。
ガス会社の変更についてもっと詳しく知りたい方はこちら
ガス会社を変更する方法
新たに利用したいガス会社が決まったら、プランについて担当者から詳細な説明を受けましょう。ガス会社が決まったら、切り替え先の会社に連絡を入れます。
今まで利用していたガス会社への連絡も、基本的には不要です。切り替えの手続きのほぼすべてを、新旧のガス会社同士で行ってもらえます。
ガスボンベやメーターを交換する際は、点検作業に立ち会わなければなりません。点検時の立ち会いは法律による義務です。点検終了後に新しいガス会社と契約を交わせば、ガス会社の切り替えが完了します。
都市ガスに変更する場合、デメリットはある?
プロパンガスから都市ガスに変更したい場合は、自宅の近くに導管が通っていなければなりません。自宅に導管が通っていないのであれば引き込み工事も必要になるため、都市ガスが使えるようになるまで通常1~2カ月程度かかります。
引き込み工事に費用がかかる点も、都市ガスのデメリットです。導管の状況によっては、初期費用が数十万円に及ぶケースもあります。プロパンガスは基本的に初期費用がかかりません。
プロパンガスは災害時の復旧が早いという点も覚えておきましょう。都市ガスは導管が被災すれば復旧までに時間がかかりますが、プロパンガスはボンベでガスを引き込むため、比較的早期に復旧します。
都市ガスへの変更についてもっと詳しく知りたい方はこちら
集合住宅の場合はガスの使い方を見直そう
集合住宅に住んでいる場合、ガス会社は大家や管理組合が契約しています。相談すれば変更に応じてもらえる可能性もありますが、実際にガス会社を変更するのは難しいでしょう。
ちなみに、賃貸物件はガス料金が高い傾向があります。入居者が自由にガス会社を変えられないことから、ガス会社が自由に値上げできるためです。
集合住宅にお住いの方でガス料金が高いと感じた場合は、ガスを無駄に使っていないか意識して節約しましょう。
【場所別】プロパンガス料金の節約術
ガスの使用は生活に欠かせないため、節約は難しいのではないかと思われがちですが、入浴や料理、洗い物など多くのガスを使用するシーンを見直すと意外なところで無駄が見つかります。自宅内の場所別の節約方法の具体例を見てみましょう。
風呂場
風呂場におけるガスの使いすぎに気をつければ、ガス料金だけでなく水道料金の節約にもつながります。風呂場でできるガスの節約術を確認しましょう。
- お湯がたまったらすぐに入って追い焚きの回数を減らす
- シャワーを出しっぱなしにしない
- シャワーヘッドの変更
- 湯船用のふたや保温シートを使ってお湯の温度低下を防ぐ
- 自動お湯張り機能がない場合は自動でお湯が止まるアイテムを活用する
キッチン
いつものやり方にひと手間加えたり、電化製品と上手く組み合わせたりすることで、ガスの使用量を削減できることがあります。キッチンでのガスの使い方を見直してみましょう。
- ガスコンロの火力を適切な強さに調整する
- 底が平らなフライパンや鍋を使って熱効率を高める
- ガスを使わない電子レンジや炊飯器を料理で活用する
- フライパンや鍋を使う前に水気を拭き取る
- 余熱を利用してガスの使用時間を短縮する
- 鍋でお湯を沸かす際は鍋にふたをする
- ガスバーナー部分を小まめに掃除する
リビング
リビングで使用する代表的なガス機器が、ガスファンヒーターとガス温水式床暖房です。節約につながるそれぞれの使い方を押さえておきましょう。
- ガスファンヒーターの温度は20℃に設定する
- ガスファンヒーターのフィルターを定期的に清掃する
- ガス温水式床暖房の上にカーペットやじゅうたんを敷く
- ガス温水式床暖房の自動運転機能を活用する
- 消し忘れを防ぐために暖房器具のタイマー機能を使う
- 暖かい衣服を着用して暖房器具の温度を下げる
まずは料金が適正か確認してみよう
プロパンガスの料金は都市ガスより高くなる傾向にあります。供給コストが高い点や相場が高止まりしている点が、プロパンガス料金が高くなる主な理由です。
しかし、ガス会社をきちんと比較すれば今よりガス料金を下げられる可能性があります。まずは自宅のガス料金が適正かどうか確認し、平均より高いようならガス会社の変更を検討してみましょう。
ガス会社の変更が難しい場合は、ガスの使い方を見直すだけでも節約につながります。無理なくできる範囲で少しずつ実践しましょう。