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EV(電気自動車)を導入するなら、誰もが気になるのは充電にかかる電気代でしょう。実はEVは”特徴的な電気の使い方”をするため、EVに合った電気料金プランがあるのです。今回はEVを自宅充電するにあたっての「EVに合った電気料金プランのポイント」を解説、今話題の「市場連動プラン」とEVの組み合わせについても紹介していきます。

再エネ由来の電気をフル活用
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EV(電気自動車)は電気使用量の多いモンスター家電

走行距離にもよりますが、EVの電気使用量は他の家電と比べてかなり大きいことをご存知でしょうか。

EVの電気使用量は、「1km走るのに必要な電力量(電費)×走行距離」で計算できます。
電費を155Wh/km(※日産リーフXモデル・Gモデルの値*)とおき、走行距離は一般的な目安と言われている年間10,000kmを当てはめると、月の電気使用量は130kWhに上ります。
  計算式:0.155kWh/km × 10,000km ÷ 12カ月=約130kWh

環境省の調査**によると、戸建て家庭の平均的な電気消費量が月間444kWh程度なので、これはその3割にあたる大きな量です。家電の中では消費量が大きいといわれる冷蔵庫でも20~30kWh程度***なので、その大きさが分かると思います。

年間走行距離 月あたり電力消費量 平均月間電気消費量に占める割合
5,000km(少な目) 65kWh 14.6%
10,000km(目安) 130kWh 29.3%
15,000km(目安) 194kWh 43.7%
※平均的な家庭の月間電気消費量・・・444kWh

<表1:EVの電力消費量>

そのため、EVの電気代対策を考えるのは非常に重要です。では、EVに合った電気料金プランはどのようなものなのでしょうか。考えるべきポイントについて解説していきます。

*  日産自動車Webページ「NISSAN LEAF 価格・グレード」
** 環境省(2022.3)「令和2年度家庭部門の CO2排出実態統計調査資料編(確報値)」p28 図1-50より。戸建て1世帯当たり年間電力消費量が19.2GJとある。
***LooopでんきWEBページ「冷蔵庫の電気代はいくら?買い替えのポイントや節約方法も解説」

EV(電気自動車)に合った電気料金プランの考え方

電気料金は基本料金+電力量料金で決まる

EVに合った電気料金プランについて知る前に、電気料金の基本的な仕組みについて解説します。
一般に電気料金は、基本料金+電力量料金+再エネ賦課金などで決まります。

<図1:電気料金の仕組み>

基本料金とは、電力会社が契約プランごとに設定した固定料金のことです。電力をまったく使わなかったとしても基本料金は発生し、必ず支払わなければなりません。契約アンペアによって料金が定められているアンペア制・契約容量(kVA)によって料金が定められている主開閉器契約などがあります。

電力量料金とは、使用した電力量に応じて発生する料金のことです。電気をたくさん使えば、その分電力量料金が上がり、その月の電気料金の請求額は高くなります。

実はEVを持つと、基本料金と電力量料金の両方が値上がりしやすくなります。

EVは基本料金が上がりやすい

EVは一気に使う電力が大きいため、契約アンペアや契約容量を見直す必要がある場合が多く、基本料金が上がりやすい、という特徴があります。

下の写真は、筆者が自宅でPHEVを充電した時の家庭の使用電力量のグラフですが、PHEVの充電をしている時間は使用量が一気に上がり、ピークが立っていることが分かります。(※充電器は200V・3kW壁コンセント型のもの)

<図2:EV充電はピークが急峻 左軸:kWh>

東京電力・東北電力などの一般的な電気料金プラン(従量電灯B)で採用されている「アンペアブレーカー契約」は、一度に使用できる電流量(単位:アンペア(A))が決められており、それを超過するとブレーカーが落ちてしまうという仕組みです。

EVを3kW充電器で200V充電すると、契約アンペア換算で30Aもの電流値が必要になります*。電子レンジが15A、炊飯器が13A程度**のため、一度に使う電流値が非常に大きいことが分かります。

(注)EVの自宅充電器には、100V充電と200V充電の2種類があり、100V充電タイプは1.5kW程度の出力のものが多く、200V充電タイプでは3kW充電器と6kW充電器の2種類がメジャーです。充電速度はkWに比例します。一般に100V充電器は1.5kW程度とkWが小さく充電に時間がかかり過ぎるため200V充電が主流で、最もポピュラーなのは200V・3kW充電器です。

また、オール電化や電力消費が多い方向けの電気料金プランで採用されている「主開閉器契約」は、一度に使用できる ”電流×電圧の値”(単位:キロボルトアンペア(kVA))によって基本料金が決まっていますが、これも3kW充電器・200Vで充電すると3kVA一気に使うので、こちらも契約容量を上げなければブレーカーが落ちやすくなる可能性が高いです。

そのため、EVの自宅充電をするなら契約アンペア/契約容量を上げることがおすすめとなります。

しかし、契約アンペアを上げる上で気になるのが基本料金。
例えば東京電力の従量電灯Bに契約していたとして、EV導入を機に40A→60Aに契約変更したとすると、全く充電しなかったとしても、それだけで月額572円の電気代増***になります。

そのため、EVで自宅充電するなら「基本料金が無い電力プランを選ぶ」というのが、1つポイントとなってきます。

*Panasonic Webページ「電気自動車充電設備の設置について」
**東京電力Webページ「ご契約アンペアの選び方」
***2023年3月時点での、東京電力従量電灯Bの基本料金を参照。
**東京電力エナジーパートナーWebページ「従量電灯B・C」(2023.3.20最終閲覧)

EVなら3段階料金はリスクも

東京電力・関西電力などの地域の電力会社の最も一般的な電気料金プラン(注)北海道電力・東北電力・東京電力・は、「電力消費量が多くなるほど電気料金の単価が高くなる」という「3段階料金」を取っています。

(注)北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・九州電力「従量電灯B」
関西電力・中国電力・四国電力「従量電灯A」 など

<図3:3段階料金制の電力量料金>
1ヵ月で444kWh使う家庭の電力量料金は
(第1段階料金単価+燃料費調整単価)×120kWh
+(第2段階料金単価+燃料費調整単価)×(300-120)kWh
+(第3段階料金単価+燃料費調整単価)×(444-300)kWh

これは、1ヵ月の使用量のうち、最初の0~120kWh部分については「1段料金」という低い電気単価、120~300kWh部分については「2段料金」という中くらいの電気単価、300kWh以上の部分については「3段料金」という高い電気単価で請求されるというものです。

(注)北海道電力従量電灯Bの3段料金は280kWh~、関西電力・中国電力の従量電灯Aの1段料金は15~120kWh、四国電力の従量電灯Aの1段料金は11~120kWhです。

EVユーザーが3段階料金制の電力プランで契約してしまうと、平均的な戸建て家庭の月間電気消費量が444kWhなので、EV抜きで「3段料金」に突入しているところに、EV充電により単価の高い3段階目の電気料金が増えることになり、EV電気代がより高くつきやすくなります。

<図4:3段階料金制の電力量料金でEVを自宅充電する場合の電気代イメージ>
※東京電力の現在(2023.4.6時点)申請中の「従量電灯B」プランの23年6月からの電力量料金は、第一段階単価34.84円/kWh、第二段階41.44円/kWh、第三段階43.52円/kWh*

しかも、「1.EVは電力使用量の大きいモンスター家電」でも触れたように、EVの電力消費量は他の家電と比べてかなり大きいため、高い単価で沢山の消費量が請求されることとなってしまいます。

そのため、EVで自宅充電する場合は3段階料金は避け、固定料金や時間帯別料金、あるいは今話題の「市場連動型プラン」といった、使用量が上がっても単価が上がらない料金体系の電力プランを選ぶのが良いかもしれません。

*東京電力ホールディングスプレスリリース(2023.1.23)「規制料金値上げ申請等について」 別紙2「電気料金単価表」

EVに合った電気料金プランの考え方

まとめると、EVに合った電気料金プランの考え方のポイントは、
①契約アンペア・契約容量を上げる場合が多いため、基本料金が無いプランの検討を
②電気使用量が多いので、使用量が上がる程単価も上がる「3段階料金」はリスクあり
という2点になってきます。

Looopでんきは基本料金0・市場連動型の電気料金プラン

Looopでんきは、業界初で「基本料金0円」を導入しているのが特長となっています。そのため、EV導入により契約アンペアを上げても、基本料金が高くなることがありません。例えば東京電力従量電灯Bで40A→60Aに契約変更したとすると、全く充電しなかったとしても、それだけで月額572円の電気代増*になるので、それを気にしなくて良いのは大きなメリットです。

また、Looopでんきは「市場連動型」の電気料金プランを採用しています。これは、電力量料金がリアルタイムで電力市場の価格に連動しており、使う時間を昼間や深夜にずらすなど上手に工夫することで、電気代を大きく抑えることができるプランです。

とはいえ、市場連動型プランと聞いても耳馴染みが無いのではないでしょうか。EV×市場連動型プランの可能性について、次章で詳しく解説していきます。

*2023年3月時点での、東京電力従量電灯Bの基本料金を参照。東京電力エナジーパートナーWebページ「従量電灯B・C」(2023.3.20最終閲覧)

市場連動型プランでは充電時間をシフトすれば電気代を抑えられる!

市場連動型プランとは?

一般に電気料金は、基本料金+電力量料金+再エネ賦課金の3つによって構成されています(※Looopでんきには基本料金はありません)。
市場連動型プランは、このうち「電力量料金」が固定の単価ではなく、毎月固定の料金単価と市場価格の動きに合わせて24時間毎日変動する、という点が特徴になっています。

再エネが余っている昼間や電力消費の少ない深夜の電力が安い

Looopでんきの電力量料金は、「毎日30分ごとに変わる電源料金単価+毎月固定の料金単価(送配電ネットワークの利用料/サービス料に該当)」によって計算されます。

市場連動型プランでは、電力の市場価格に合わせて24時間365日電力単価が変化しますが、「昼間・深夜が安い」「休日の方が安い」「夕方が高い」という特徴があり、電気の使い方を工夫することで節約も期待することができます。

これは、太陽光発電が特に普及している九州エリアにおける、2021年12月~2022年11月の、時間帯別の電力市場の平均単価です。

18:00がピークとなり夕方の単価が高くなっている一方で、12:00台をボトムに昼間の単価が凹んでおり、歪んだ「ひ」のような形になっていることが分かります。また、電力需要の少ない深夜帯・休日も電力単価が安くなっています。

このような形になっているのは、昼間は太陽光発電の普及が進み電気が余ってきているため単価下がっている一方、主に火力発電により賄われているそれ以外の時間では、昨今のウクライナ情勢等の影響で燃料費が高騰し電気代も高くなったことで、昼夜間の値差が拡大しているためです。その中でも電力需要の低い深夜は安くなっていますが、電力需要の多い夕方で特に高くなっています。

「昼間は電力が余ってきている」と言いましたが、補足すると、なんと条件の良い晴れの日には、太陽光の発電が需要を上回ってしまい、太陽光の電気を捨てる「出力抑制」が行われることもあるのです。

EV充電に置き換えると、土日のいずれかの朝~昼にまとめて充電する、夜帰ってきてすぐに充電を開始せず寝る前に充電を開始する、といった行動を取ると、電気料金の単価が大幅に抑えられます。
EVの電気使用量は大きいため、電気代全体に与えるインパクトも大きいです。

EV×市場連動型プランで再エネ普及にも貢献

実は政府でも、「ダイナミックプライシングによるEVの充電シフト」の実証が行われるなど、EV×市場連動型プランの組み合わせは注目を集めています。それは、それにより再生可能エネルギー(再エネ)の普及が期待できるからです。それはどういうことでしょうか。
一般社団法人 環境共創イニシアチブHP 「令和4年度 ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業」

EVで余った再生可能エネルギーを充電

地球温暖化対策として、太陽光発電や風力発電といった「再生可能エネルギー」の導入が国策として推進されています。
しかし、例えば太陽光発電は昼間しか発電できないなど、再生可能エネルギー単体では全ての電力を担うことができません。そのため、蓄電池を利用し、再エネの発電が多い時に溜め、発電が無い時に使うことが再エネ普及の鍵とされています。

そこで世界的に注目が集まっているのが、「電気自動車(EV)を動く蓄電池と見立て、EVに再エネを充電する」という発想です。EVは大容量の蓄電池(バッテリー)を搭載しているため、文字通り動く蓄電池として使用することが可能なのです。

近年では、太陽光発電の普及で晴れた昼間には電力が余り、せっかくの再エネの電気を捨ててしまうという「出力抑制」も出ていて、昼間の余った再エネを有効利用する必要性が増してきています。

今までの電力プランは、時間帯によらず固定単価であったり、夜間電力が安いプランが多く、必ずしも再エネの普及を促す形にはなっていませんでした。市場連動型プランは再エネの発電が多く電気にゆとりがある時に電気単価が安くなるため、再エネを使えば使う程電気代がお得になり、なおかつ再エネ普及にも繋がるというになっています。そのため、国も、「ダイナミックプライシングによるEVの充電シフト」の実証を実施するなどして注目しているのです。

EVは再エネの電気を充電してこそエコ

実はEVは、再エネで発電された電気を充電しているのか、火力発電で発電された電気を充電しているのかによって、CO2の排出量は大きく異なります。

車種 発電方法 CO2排出原単位 燃費/電費 CO2排出量/km
ガソリン車 2.322 kg-CO2/L* 22 km/L** 106g-CO2/km
電気自動車 石炭火力発電 0.8638 kg-CO2/kWh*** 6.45km/kWh**** 134 g-CO2/km
太陽光発電 0 kg-CO2/kWh*** 6.45 km/kWh 0 g-CO2/km
全電源平均 0.453 kg-CO2/kWh***** 6.45 km/kWh 70.2 g-CO2/km

<表2:車種・発電手法別の走行にかかるCO2排出量>
(注)CO2排出原単位は燃料燃焼による直接排出分で記載

*環境省HP「燃料別の二酸化炭素排出量」
**国土交通省(2022.3)報道発表「自動車燃費一覧(令和4年3月) ガソリン乗用車のJC08モード燃費平均値の推移」に、ガソリン乗用車のJC08モードでの令和2年度の平均燃費は24.1km/Lと記載あり。実際の燃費に近いWLTCモードに直すとやや数字が落ちるため、約22km/Lと仮定し、設定した。
***資源エネルギー庁(2019.6.27)「「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点」 各種発電技術のライフサイクルCO2排出量 より、燃焼による直接分の排出原単位で記載。表のCO2排出原単位は直接燃焼分で統一している。
****日産リーフX・XVセレクション・GモデルのWLTCモードでの電費が155Wh/kmとあり、そこから逆算。日産自動車HP「NISSAN LEAF 価格・グレード」
*****沖縄電力以外の一般送配電事業者の全国平均係数を採用。
環境省(2022.1.17)「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)-R2年度実績- R4.1.7環境省・経済産業省公表」p13

1kmの走行にかかるCO2排出量は、標準的な燃費である22km/Lのガソリン車で106gであるのに対し、全国の全電源平均の電気で充電した場合は70.2gとなり、一般にEVはCO2削減効果があると言うことはできます。

しかし詳しく見てみると、太陽光発電で発電された電力を充電する場合のCO2排出量は0となり、非常にCO2の削減効果が高い一方、CO2排出量が最も多い「石炭火力発電」で発電された電気を充電している場合は、ガソリン車を上回る134g/kmものCO2を排出することとなっています。

ぜひ、再エネが多く発電している時間帯に電気料金が安くなるLooopでんきでEVを充電して、お財布にも地球にも優しいEV生活に切り替えませんか。

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