検針票(電気使用量のお知らせ)に記載されている「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」。わたしたちはそれを毎月の電気料金の一部として支払っていますが、何を目的としたものなのでしょうか。今回は、再エネ賦課金の仕組みや特徴、次世代の新エネルギーである再生可能エネルギーについて解説します。
再エネ賦課金とは
再エネ賦課金という略称で知られる「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、前述した固定価格買取制度にかかる費用を補填するために支払うものです。FIT制度での電力買取を維持するために、その費用は電力を使う日本全国の人々で平等に負担しています。そのため、再エネ賦課金は毎月の電気量の一部として自動的に徴収されます。
短期的に見れば負担が増えるものですが、再生可能エネルギーが今より普及・拡大すると、長期的には電気料金の価格が安定していきます。そのような形で将来的には国民みんながリターンを受け取ることができます。
再エネ賦課金の金額は、普及状況や事業コストを踏まえて算出された買い取り費用をもとに、有識者による調達価格等算定委員会を経て、経済産業大臣が毎年決定しています。
再エネ賦課金の仕組みと計算方法
まずは、再エネ賦課金の目的や毎月の料金の計算方法などについて見ていきましょう。
再エネ賦課金の目的
再エネ賦課金の最大の目的は、再生可能エネルギーの普及と促進です。固定価格で買い取ることで、再生可能エネルギー事業者の利益を安定化させ、事業が行いやすくなるよう配慮されています。
また、前述したとおり、再生可能エネルギーの普及が進めば化石燃料への依存を減らすこととができます。依存度が減ると電気料金が燃料価格変動の影響を受けづらくなりますので、電気を利用する人全員がメリットを享受することにつながります。
日本の発電電力量に占める再エネ比率は、2021年現時点で約20.3%。再生可能エネルギーの普及・拡大への道のりはまだまだ長く、再エネ賦課金も今より増額されることが予想されます。すぐに効果を実感できる訳ではありませんが、再エネ賦課金がより良い未来に貢献するものであることを、ぜひ覚えておいてください。
再エネ賦課金の特徴と懸念点
再エネ賦課金は、どの電力会社と契約していても、電気を使ったら必ず支払うものになります。
また、自宅に太陽光パネルなどを設置して自家発電・自家消費をしている場合などは、電力料金に加算されないので再エネ賦課金の負担対象外になります。
懸念点は、再エネ賦課金の単価が増加傾向にあることです。制度導入当初の2012年度には0.22円 / kWhでしたが、2024年度には3.49円/kWhまで上昇しています。
環境省の発表によると(※)、固定価格買取制度が終了し、再エネ賦課金が0になる見込みは2048年。2030年頃からやっと再エネ賦課金の減額が始まるとの予測ですが、それまでは増額し続ける見通しです。
国民や企業の負担と再生可能エネルギー普及コストのバランスをとることが、再エネ賦課金の課題と言えるでしょう。
※出典:環境省 「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」より5. 再生可能エネルギーの導入に伴う効果・影響分析
再エネ賦課金単価の推移 | |
---|---|
2024年度分 | 3.49円 / kWh |
2023年度分 | 1.40円 / kWh |
2022年度分 | 3.45円 / kWh |
2021年度分 | 3.36円 / kWh |
2020年度分 | 2.98円 / kWh |
2019年度分 | 2.95円 / kWh |
2018年度分 | 2.90円 / kWh |
2017年度分 | 2.64円 / kWh |
2016年度分 | 2.25円 / kWh |
2015年度分 | 1.58円 / kWh |
2014年度分 | 0.75円 / kWh |
2013年度分 | 0.35円 / kWh |
2012年度分 | 0.22円 / kWh |
再エネ賦課金の計算方法
再エネ賦課金の計算方法は以下のとおりです。
再エネ賦課金=再エネ賦課金単価×電気使用量(kWh)
毎年に改定される再エネ賦課金単価に、月々の電気使用量を掛け合わせたものが再エネ賦課金として請求されます。
例えば、2024年度分の再エネ賦課金単価は3.49円/kWhです。標準世帯(※)の1カ月の電力使用量で計算してみると、
約400kWh× 3.49円/kWh=1,396円/月
となります。
※標準世帯:月平均400kWhの電気を使う世帯。都市ガスは家庭及び年間契約量1,000万㎥未満の企業等が対象
再エネ賦課金を払わないことは可能か
経済産業省は、再エネ賦課金は電気を使用するすべての人に負担させるものと明言しています。電気料金が未納になれば電気の供給が停止されるため、この賦課金を拒否することはできません。
ただし、家庭で再生可能エネルギーを発電したり、再エネ由来の電気を購入することで、再エネ賦課金を減額するか完全に避けることは可能です。例えば、太陽光発電設備を企業や家庭に設置するという方法があります。
初期投資の負担が問題となる場合は、PPA(Power Purchase Agreement)モデルの利用がおすすめです。
このモデルでは、電力事業者が太陽光発電設備を無償で設置し、メンテナンスや管理も担います。利用者はこの設備から生成された電力を購入し、その電力に対しては再エネ賦課金が課されません。
【2024年最新】再エネ賦課金の2024年度の値上げ幅とその理由
2023年度は1kWhあたり1.40円に値下げした再エネ賦課金ですが、2024年には再び値上がりすることになりました。なぜ、値上がりになったのでしょうか?その理由と値上げ幅について具体的に解説します。
2024年度の再エネ賦課金は3.49円
2024年度の再エネ賦課金は、1kWhあたり3.49円に決定しました。これは、2012年から見ても過去最高の金額となっています。
2023年度の1.40円と比較しても、2.09円も値上がりしたことになります。
送配電会社は、再エネの電気を発電会社から一定の価格で買い取って市場で販売しており、買い取り費用と販売収入の差額分が賦課金となっています。そのため、販売収入が減ると、賦課金は上がる関係にあります。
ロシアのウクライナ侵攻による電気の市場価格高騰で再エネ電気の販売収入が増加し、単価が下がった2023年度に比べ、2024年度は燃料費の下落に伴い販売収入が減ると見込んでおり、賦課金を元の水準に引き上げられました。
2023年度に再エネ賦課金が下がった理由は?
2023年度の再エネ賦課金は1kWhあたり1.40円となり、2020年以降で最も低い水準になりました。
この下落の主な理由は、ウクライナ情勢によるロシアとの取引制限が影響し、化石燃料の価格が高騰したことです。
再エネ賦課金の計算式は「(買取費用等 - 回避可能費用等 + 広域的運営推進機関費用等)÷ 販売電力料」であり、化石燃料の価格上昇により「回避可能費用等」が増えました。
これは、化石燃料の高騰によって、再生可能エネルギーの電力が相対的に経済的になったことを意味します。その結果、再エネ賦課金の額が一時的に減少したのです。
再エネと固定価格買取制度
そして、日本での再生可能エネルギー普及に大きく関わるのが、再エネ賦課金と固定価格買取制度(FIT制度)です。ここからは固定価格買取制度の仕組みについて詳しく解説します。
固定価格買取制度とは
固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が固定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。FIT(Feed-in Tariff)という略称でも知られており、再生可能エネルギーの普及を目的に2012年7月からスタートしました。
FIT制度では、再生可能エネルギーで発電した電気は、制度を利用しはじめてから10年~20年、固定価格で電力会社が買い取ってくれます。
この買取は国が義務づけているものであり、また買取価格は通常よりも高額に設定されています。そのため、発電事業者は高い収益を安定して得ることができます。この利点によって多くの事業者が再エネの発電事業に参入し、日本における再生可能エネルギーの導入促進が後押しされました。
⇒卒FITとは?卒FIT後、余った電気はどこに売る?どう使う?
再生可能エネルギーの普及・拡大を行う理由
再生可能エネルギー普及・拡大に政府や企業が熱心に取り組む理由としては、まず世界規模で問題視されているCO2など温室効果ガスの削減が挙げられます。
菅義偉元首相は2021年4月、日本の2030年度における温室効果ガス削減目標を、それまでの26%削減から46%削減(2013年度比)へと引き上げると発表しました。菅元首相が打ち出した対策案には、「脱炭素」「カーボンニュートラル」に向け再生可能エネルギーの最大限の活用などが盛り込まれています。
また、再生可能エネルギーには、日本の低いエネルギー自給率を向上させてくれるという期待もかけられています。 日本には石油やガスといった資源エネルギーに乏しいため、そのほとんどを輸入に頼っています。2018年時点での日本のエネルギー自給率は11.3%(※)と、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国のなかでは37位とかなり低い状況です。また、輸入燃料は価格の変動が激しく、電気事業をはじめとする国内産業への影響も少なくありません。
こうした状況を打開するために、自給できる再生可能エネルギーの普及・拡大には大きな関心が向けられているのです。
なお、再生可能エネルギーは発電施設の建設や維持が課題となります。火力発電や原子力発電に比べて発電量が確保できない、あるいは再エネの種類によっては建設コストに見あうだけの発電量が得られないなど、導入における大きな懸念が多いです。
固定価格買取制度には、コストの面で再生可能エネルギーの普及を手助けし、エネルギー自給率の向上を後押しする狙いがあります。
※出典: 経済産業省資源エネルギー庁|日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
再生可能エネルギーの種類と特徴
ここからは、固定価格買取制度(FIT制度)の対象となっている再生可能エネルギーの、代表的な種類とその特徴、そしてそれらが抱える課題や解決方法について解説します。
太陽光発電
太陽光発電とは、太陽光のエネルギーを電気に変換する発電方法です。自然エネルギーと聞いて、まず太陽光発電を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
発電装置である太陽光パネルは一般住宅にも設置できるので、再生可能エネルギーのなかでも普及率が高いのが特徴です。また、2017年には世界の太陽光発電装置の累積導入量が原子力発電を追い抜くなど、世界規模でも導入が進んでいます。
日光さえあれば無限に発電できるのが特徴ですが、悪天候や夜間には電力の供給ができないことが課題点です。
風力発電
風の力で風車を動かして発電機を回転させる発電方法が風力発電です。太陽光発電と違い、風が吹いていれば日の当らない夜間でも発電し続けることができます。また、ほかの再生可能エネルギーより比較的効率良く発電できることも風力発電の特徴です。
風力発電には大きく分けて、山や海沿いに発電装置を設置する陸上風力発電と、海や湖に設置する洋上風力発電の2種類があります。
風力発電の課題点としては、風力が弱いときや台風などの悪天候のときには利用できないことなどが挙げられます。
水力発電
再生可能エネルギーのなかで最も電気エネルギー変換効率が高いのが水力発電です。水が高い位置から流れ落ちるエネルギーを利用して水車やタービンを回し発電します。
水を落とす高低差を作る方法にはダム式と水路式、2つを併用したダム水路式があり、水の運用方法も流れ込み式や調整池式などさまざまです。
水力発電には水の流れを調整して、必要に応じて発電量をコントロールできるという利点があります。日本は山など高低差のある土地に恵まれ、水も豊富なため、戦前から水力発電が活発に行われてきました。
ただし降雨量が少ない時期に発電量が減ってしまうことなどが主な課題点です。
地熱発電
日本の風土に適した発電方法の1つが地熱発電です。火山や天然の噴気孔、温泉などがある「地熱」地帯には、他の土地より浅い地点にマグマだまりがあります。
この地熱地帯の地面にしみ込んだ雨水は、マグマだまりによって加熱されて水蒸気となり地熱貯留層にたまります。地熱発電では、ここから水蒸気を取り出し発電に利用しています。火山国である日本では地熱発電が行いやすく、天候に左右されないため供給量も安定しているという特徴があります。
地熱発電が抱える課題点としては、発電施設の建設にコストと時間がかかることなどが挙げられます。
バイオマス発電
最後にご紹介するのが、動植物由来の資源を利用したバイオマス発電です。木材チップや動物の糞尿、下水の汚泥などを燃焼あるいは発酵させて、そこから発生した水蒸気やガスを発電に利用します。
天候に影響されやすい太陽光発電や風力発電に比べて供給が安定しており、また必要量に応じて発電量を調節できるという特徴があります。また、植物が持つCO2は元々自然界から吸収したものなので、植物由来の燃料資源は、利用してもCO₂を減らさない代わりに、本来のCO2量を増やすこともありません。このような考え方を「カーボンニュートラル」と言います。バイオマス発電はこのカーボンニュートラルに即した発電方法であることもポイントです。
バイオマス発電の課題点としては、電気エネルギー変換効率の低さや発電にかかるコストの高さが挙げられます。
再生可能エネルギーの種類と特徴 | ||
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発電方法 | 特徴 | 課題 |
太陽光発電 |
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風力発電 |
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水力発電 |
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地熱発電 |
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バイオマス発電 |
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再エネ賦課金の値上げに対策しよう
この記事では、再生可能エネルギーの種類や再生可能エネルギー発電促進賦課金について解説しました。再生可能エネルギーの普及・拡大を目的として設けられた再エネ賦課金は、2030年頃のピークに達するまで今後も増額し、2048年にかけて減額する見通しです。
再エネ賦課金そのものは、国の制度として定められているので、電力会社を切り替えても減額できません。ただ、再エネ賦課金に関係なく電力料金を節約したいのであれば、契約している電力会社の見直しで月々の支払いを減額できるかもしれません。
また、自宅の太陽光パネルで発電した分に関しては賦課金を回避できるので、こうした装置の導入も一つの選択肢です。
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