近年、再生可能エネルギーの普及を促進するため、政府が「再エネ賦課金」を導入しています。再生可能エネルギーに関する事業を展開する企業は、電力会社がエネルギーの買い取りを保証してくれるので、制度の内容や仕組みをよく理解しておきましょう。
再エネ賦課金とは?
再エネ賦課金は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が正式名称で、再エネの買い取りをする際に利用できる賦課金です。まずは制度の概要から、確認していきましょう。
再エネの買取費用のための賦課金
再エネの買い取りにかかる費用を、電気料金の一部に含み、賦課金として消費者に負担してもらうのが再エネ賦課金の概要です。
「賦課金」とは本来、公的機関が事業資金を集めるために、国民に負担金として税金を課すものです。従って再エネ賦課金も、消費者の立場からすれば、電気料金に税金が上乗せされている状態になります。
一方、再エネの提供事業者にとっては、電力会社が買取価格を保証してくれるので、事業を展開しやすくなります。国を挙げて、再生可能エネルギーの普及を目指した制度といえるでしょう。
そもそも「再エネ」とはどういうもの?
再エネは「再生可能エネルギー」の略で、温室効果ガスを排出しない、国内で生産できるエネルギーの総称です。太陽光をはじめ、風力や水力、地熱発電などがあり、地球温暖化の原因とされるCO₂の排出を抑えられるので、近年とりわけ注目を集めています。
日本は2016年に発効されたパリ協定を受けて、2030年度の段階でCO₂の排出量を、-46%(2013年度比)にすることを発表しています。再エネの普及はCO₂の削減施策の一環として政府が注力しており、その流れで、再エネ賦課金が電気料金に反映されるようになりました。
なお、パリ協定に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてみましょう。
⇒パリ協定についてもっと詳しく知りたい方はこちら
再エネの固定価格買取制度とは?
再エネの固定価格買取制度は、再生可能エネルギーで発電した電気について、電力会社が一定の価格で買い取る旨を国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を電気代に上乗せするもので、最終的に消費者が負担します。
再エネを生み出す事業者が賦課金を受け取れるようにすることで、再エネ設備の導入・普及を促す国の考えが背景にあります。さらに2016年の電力小売自由化もあり、多くの事業者が参入し始めている状況です。
※参考:FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー|資源エネルギー庁
買取対象の再生可能エネルギー
固定価格買取制度の対象となるのは、太陽光と風力、水力、地熱、バイオマスによる発電事業者です。
一定の要件を満たす事業計画を策定した上で、それに基づいて、安定した電力を供給できることが条件となっています。それぞれのエネルギーの特徴は次の通りです。
- 太陽光発電:太陽の光のエネルギーを太陽電池によって、電気に変換する方法
- 風力発電:自然の風の力で風車を回して発電する方法
- 水力発電:河川やダムの高低差を利用し、水車を回して発電する方法
- 地熱発電:地下の地熱エネルギーから蒸気を取り出し、タービンを回して発電する方法
- バイオマス発電:生物資源(バイオマス)をエネルギー源にして発電する方法
原則として、いずれの方法でも要件を満たしていれば、すべての電力が固定価格買取制度の対象となります。
再エネ賦課金の基本的な仕組み
再エネ賦課金の基本的な仕組みについて、もう少し具体的に解説します。再エネ賦課金の恩恵を受けられる発電事業者と、電力会社および電気使用者(消費者)の関係を、整理して押さえておきましょう。
各事業者や電気使用者の関係
再エネ賦課金は、電力会社が再生可能エネルギーを生み出す事業者(再エネ発電事業者)から再エネ由来の電力を買い取り、そこから電気使用者に供給する仕組みです。
電気使用者は電力会社に電気代とともに再エネ賦課金を支払い、賦課金は国の指定した回収機関に納付される関係になっています。
そこから回収機関は電力会社に対して、再エネの買取費用を交付金として分配します。結果として、再エネ発電事業者は再エネ賦課金の恩恵を受けられ、発電施設や電力を供給するシステムへの投資に回せるようになります。
再エネ賦課金の主な特徴
賦課金とは実質的な税金のようなものであり、電気を使っているすべての方が、電気料金の一部として負担しなければいけません。
再エネ賦課金の単価は年度ごとに変化し、エネルギーの買取価格をはじめ一定の条件の下で推測され、経済産業大臣が毎年度決めることになっています。
さらに、再エネの推測値と実測値の差は翌々年度の賦課金単価にて調整され、全国一律に反映される決まりです。毎年、5月分から翌4月分までの単価が3月頃に発表されているので、気になる人はチェックするようにしましょう。
再エネ賦課金の算定方法
再エネ賦課金の基本知識として、賦課金の算定方法も知っておきましょう。賦課金の単価は年度ごとに変わるので、ここでは2023年度における単価と料金の計算方法を紹介します。
単価と料金の計算方法
再エネ賦課金の算定方法は、使用した電気量(kWh)に賦課金単価を乗算します。2025年度の賦課金単価は1kWhあたり3.98円(税込)です。ただし、上記のように賦課金単価は毎年度変わるので、気になる人は定期的に確認しましょう。
例えば、2022年度の賦課金単価は3.45円、2023年度は1.40円と一時的に大きく下がりましたが、その後2024年度は3.49円、2025年度は3.98円へと再び上昇しています。単価は燃料価格や再エネ導入量などによって変動するため、今後も推移に注目が必要です。
なお、事業所で一定の要件を満たす場合、賦課金の額が減免される場合があります。
【参考】減免認定を受けるための要件
(1)製造業においては電気の使用に係る原単位(売上高千円当たりの電気の使用量)が平均の8倍を超える事業を行う者、非製造業においては電気の使用に係る原単位が平均の14倍を超える事業を行う者※。
製造業、非製造業ともに5.6kWh/千円を超える必要あり
(2)申請事業所の申請事業における電気使用量が年間100万kWhを超えること。
(3)申請事業における電気使用量が申請事業所の電気使用量の過半(50%超)を占めていること。
(4)原単位の改善のための取組を行う者。
引用元:減免認定手続|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
再エネ賦課金の負担額を確認してみよう
毎月負担している再エネ賦課金は、計算せずとも検針票(電気ご使用量のお知らせ)に記載されているので、誰でも簡単に確認が可能です。ご家庭で毎月支払っている、再エネ賦課金の額をチェックしてみましょう。
2025年度の賦課金単価は1kWhあたり3.98円です。例えば、月間に185kWhの電力をご家庭で消費した場合、再エネ賦課金は「185×3.98=736.3円」となります。その月の電気料金に加えて、再エネ賦課金として約736円を支払う必要があるわけです。
再エネ賦課金は今後どうなる?
再エネ賦課金は2012年に制度がスタートしてから、毎年賦課金の額が増加してきました。2023年度には一時的に大幅な下落が見られましたが、その後は再び上昇しています。では、2025年度以降はどうなるのでしょうか?
2023年度に単価が大幅に減額
再エネ賦課金は2022年度まで単価が軒並み上がってきましたが、2023年度には1.40円/kWhと、2022年度の3.45円/kWhから大幅に減額となりました。
その背景には、燃料の市場価格の高騰が挙げられます。再エネ賦課金の単価はエネルギーの買取費用から「回避可能費用」を差し引いて計算されます。これは電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることで、本来自社で予定していた発電のための支出を、免れた分を指します。
回避可能費用が増減する最大の要因として燃料価格があり、今般のロシアのウクライナ侵攻などで燃料の市場価格が高騰したことで、回避可能費用が大きくなりました。その結果、再エネ賦課金の単価が下がったわけです。
しかしその後、燃料価格が落ち着き回避可能費用が減少したことや、再エネの導入拡大による買取費用の増加などを背景に、2024年度は3.49円/kWh、2025年度には3.98円/kWhと、再び大きく上昇しています。
※出典:資料4.回避可能費用について|資源エネルギー庁
今後はさらに単価が上がる可能性も
再エネ賦課金の単価は、2023年度に一時的な下落が見られたものの、2024年度以降は再び上昇傾向にあります。2025年度には過去最高の3.98円/kWhとなりました。
環境省の発表によると、固定価格買取制度(FIT)の終了とともに、再エネ賦課金が0になる見込みは2048年とされています。2030年頃から減額が始まるという予測もありますが、それまでは増額が続く見通しです。
こうした中で、国民や企業にとっての再エネ賦課金の負担をいかに抑えつつ、再生可能エネルギーの普及を進めていくかが課題となっています。家計への影響を抑えるためにも、電気の使い方を見直したり、料金プランを工夫したりといった対策が今後ますます重要になるでしょう。
※出典:「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」より5. 再生可能エネルギーの導入に伴う効果・影響分析
再エネ賦課金の制度について理解する
再エネ賦課金の概要と基本的な仕組みを解説しました。再エネ賦課金は再生可能エネルギーの普及を狙って作られた制度であり、恩恵を受けるのは再エネを利用した電気事業者です。
一般消費者は電気料金の一部として、再エネ賦課金を負担しなければいけません。実際の負担額は検針票から確認できるので、一度チェックしてみましょう。
単価によっては家計の負担が大きくなる可能性があるため、定期的に情報をチェックすることが大事です。
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