ガスエアコンとは、ガスエンジンで駆動するエアコンのことです。家庭用は一般的に流通していませんので、なじみのない方も多いかもしれません。例えば大学や野球ドーム動物園といった大きな施設で使われています。
ガスエアコンは電気式のエアコンよりも電力消費量が少なく、省エネであり、電気料金も低く抑えられる特徴があります。大規模な施設など、業務用では多く使われていますが、一方でデメリットもあり、一般的に家庭用には普及していません。
ガスエアコンと電気式のエアコンの違いは仕組みの違いが関係しているので、仕組みとメリット・デメリットについて解説します。
ガスエアコンの仕組み
ガスエアコンの仕組みにはいくつかの種類がありますが、ガスエアコンがどういった仕組みで冷暖房が可能になるのか、代表的なGHP(ガスヒートポンプ)、吸収式冷温水機をとり上げ、詳しく解説します。
GHP(ガスヒートポンプ)
エアコンはヒートポンプという仕組みで気体を圧縮したり、膨張させたりして、熱を生み出したり奪ったりしています。
ガスエアコンの内部には、フロンガスなどが「冷媒」として組み込まれています。
冷媒には次のような性質があります。
圧縮…液体となって熱を吸収する効果があり、周囲の空気の温度を上げます。
膨張…気体となって熱を外に放出する効果があり、周囲の空気の温度を下げます。
ガスエアコンでは、ヒートポンプを原動力にして、冷媒を圧縮機(コンプレッサー)で圧縮(液体に変換)しては開放(気体に膨張)することを繰り返しています。
室内の空気をエアコンの室外機に運び、冷媒が膨張し気体となる際にできる冷たい空気を室内に送るのが冷房、逆に冷媒が液体となるときにできる暖かい空気を室内に送るのが暖房です。
このようにして室外機の冷たい空気・暖かい空気をつくる原動力がヒートポンプです。
室外機の中にあるコンプレッサー(圧縮機)を電動モーターで動かしているのが、電気式のエアコンです。これに対し、コンプレッサーをガスエンジンで動かしているのがガスエアコンです。
吸収式冷温水機
ガスエアコンの方式でもう1つ代表的なのが、吸収式冷温水機です。水の蒸発の際に生じる気化熱を利用して冷水をつくるシステムなので、フロンガスを使う必要がありません。
気化熱は、液体が気体となる際に必要とされる熱のことです。水を100度まで温めると沸騰して気体になりますが、常温で水が蒸発して気体になるときも熱を必要とするのは変わりません。
その場合、気体に変化するために、熱が奪われて周囲の温度が下がることになります。これが気化熱の仕組みです。
夏の日に打ち水をして涼をとるのも気化熱を利用しています。
吸収式冷温水機=ナチュラルチラーとも呼ばれるタイプのガスエアコンでは、水を温めて、蒸発した水を臭化リチウムに吸収させ、液体の水に再生する過程で出る温度が下がった冷水を冷媒として使います。
吸収式冷温水機の内部では、水が以下のようなサイクルで変化します。
蒸発→臭化リチウムへの吸収→水に再生→凝縮→また蒸発
吸収式例温水機では蒸発の際の気化熱によって生じる水の温度の変化を利用して、室内の空気を冷やします。
一方、暖房の際にはガスで水を温めることによる熱を利用して室内を温めます。フロンを使わない環境にやさしい空調システムがこの吸収式例温水機の仕組みです。
ガスエアコンのメリット
ガスエアコンは、電気式のエアコンと比べてみるとどんなメリットがあるのでしょうか。
電気料金が安くなる
ガスエアコンは、ガスのエネルギーを使って冷暖房を行う仕組みです。そのため電気の使用量を少なく済ませることができます。
通常のガスエアコンでは電気使用量が1/10、自家発電ができるタイプでは1/100まで電力使用量を抑えることができます。
料金の面では、ピークタイムに電力消費を抑えられると、電力の最大消費量を抑えられるため、最大電力消費量を基準として決められる基本料金の削減にもつながるというメリットがあります。
暖房の立ち上がりが早い
ガスエアコンは暖房の立ち上がりが早く、部屋が温まるまでの時間も短縮できます。
ガスエアコンはガスエンジンの廃熱を有効利用しており、暖房運転を始めると、1から冷たい空気を暖めるのではなく、廃熱ですでに温められている空気を室内に放出できる仕組みをもっています。
そのため冷たい空気を暖めるために待つ必要がありません。立ち上がりからフル稼働が可能で、急速に部屋の温度を上げることができます。厳寒期でも暖房性能が落ちにくく、効率よく部屋を暖めることができるのです。
災害時にも使えるタイプもある
災害は真夏や真冬にも発生する可能性があり、被災された方を避難所等で暑さ・寒さから守ることが課題です。その点、ガスエアコンの供給源がLPガスであった場合は、停電時にも稼働でき、また都市ガス網が寸断された場合でも冷暖房を利用することができます。
さらに発電した電気で通信機器や、照明などほかの電気製品も使えるため、災害時の電力供給およびスムーズな復旧活動にも役立ちます。
ガスエアコンのデメリット
ガスエアコンはメリットを見るととてもすばらしい空調システムのように思えますが、普通のエアコンと比べるとデメリットもあります。
家庭用は供給がほとんどない
ガスエアコンの利用シェアはエアコン全体の約21%とされていますが、そのほとんどが業務用です。
家庭用ガスエアコンは、現在ほとんど供給がありません。1970年代頃には大手都市ガス会社の関係会社などが販売していましたが、現在は販売中止になっていて部品の供給もないので、修理も難しい状況です。
かつては電気式エアコンも高価格でしたが、今では価格が下がってきています。電気式エアコンとガスエアコンの価格差が大きくなった今では、需要がそもそも非常に少ないことがガスエアコンの販売中止の原因とみられます。
定期的なメンテナンスが必要
ガスでエンジンを回すため、自動車のエンジンと同じように定期的なメンテナンスが必要になります。設置後5年、1万時間でインターバルを設けることなどがメーカーにより推奨されています。
点検する部品もエンジンオイル・オイルフィルター・エアークリーナーエレメントなどのように、自動車の部品と非常によく似ています。消耗品については交換も必要です。電気式のエアコンがフィルターの洗浄や機器本体のクリーニングなどのクリーニングに限られ、工程が比較的に単純であり、1日あれば完了することとは対照的です。
初期導入費用が高い
電気式エアコンと比較すると、初期費用が高くなる点がデメリットです。
業務用で現在販売されているものでも、数百万円からと本体価格だけでも高額であり、設置工事費用などが加わります。
電気式エアコンの場合、導入費用は安いもので数万円、高額でも数十万円単位で済ませられるため、ガスエアコンははるかに高額です。
室外機が大きく広い設置スペースが必要
ガスエアコンの場合、室外機が大きいので広い設置スペースが必要になります。ガスエアコンは、中の駆動装置がエンジンですので、電力で動かすモーターの大きさと比べると大きいものです。駆動装置の大きさの違いが主な原因となり、大きな室外機が必要になります。
家庭用の室外機が高さも幅も50〜60センチくらいのものが多いのに比べて、ガスエアコンは業務用ということもありますが、室外機は2メートルくらいの高さ、または幅があるものが少なくありません。
またエンジンなので、電気式のエアコン室外機と比べて稼働音が大きいところもデメリットです。音が近所迷惑になることもあるので、設置場所には配慮が必要になります。
電気料金の見直しが節約への道
ガスエアコンは電気の使用量が少なく、暖房の性能もよく、特にノンフロンのタイプなら環境にもやさしいです。
しかし、現在家庭用ガスエアコンが流通していないので、ご家庭で使用することは事実上不可能です。1970年代から東京ガスのTESシステムなど家庭用のガスエアコンが流通していましたが、今は生産終了しており、電気式のエアコンへの切り替えも進んでいます。
もしエアコンで省エネ・節電を考えるならば、電気式の中で最新のエコ対応エアコンにすると電力使用量が抑えられ、省エネ・節電効果が得られます。
また、電気料金という観点では、エアコンのような電化製品の省エネ化や節電以外にも、電力会社の切り替えを行うことで電気料金の節約ができます。エアコンをすぐに買い替えるのが難しい場合でも、簡単な申し込み手続きで効果的な節約につながります。
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Q ガスエアコンとは?
ガスエアコンとは、ガスエンジンで駆動するエアコンのことです。大学や野球ドーム動物園といった大きな施設で使われています。
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Q ガスエアコンのメリットは?
ガスエアコンは電気エアコンと比べると、電気料金が安くなる、暖房の立ち上がりが早い、災害時に使えるタイプもある、といったメリットがあります。