手足を素早く温められるセラミックファンヒーターは、冬の強い味方です。手軽さから、自宅・オフィス・アウトドアとさまざまな場面で活用されますが、電気代はエアコンよりも高いのでしょうか?メリットやデメリット、電気代を抑える方法を紹介します。
セラミックファンヒーターとは
セラミックファンヒーターは灯油やガスを使わない暖房器具です。石油ストーブやガスファンヒーターと違い、電気エネルギーを熱エネルギーに変えて部屋を暖めます。燃料を燃やさずに発熱できる仕組みとはどのようなものでしょうか?
セラミックファンヒーターの仕組み
セラミックファンヒーターには、「ジュール発熱」と呼ばれる原理が使われています。ジュール発熱とは、導体に電流を流した際に生じる熱エネルギーのことです。
セラミックファンヒーターは、アルミフィンと呼ばれる薄いアルミ製の板と、特殊加工を施したセラミック部品、空気を送り出すファンなどによって構成されています。
ひと言で言うと、セラミック部品に電気を通して発熱させ、ファンで温風を送る仕組みです。灯油やガスを必要としないため、クリーンな空気を維持できます。
セラミックファンヒーターのメリット
セラミックファンヒーターの最大の特徴は、電気の力で部屋を暖めることです。燃料を燃やさないため、灯油やガスを使う暖房器具よりも安全性は高めです。セラミックファンヒーターならではの利点をチェックしましょう。
すぐに温風を送り出せる
電源を入れると、セラミックが即時に加熱され、すぐに温風が送り出されます。ほかの暖房器具よりも速暖性が高く、素早く暖が取れる点がメリットです。
送風機能や首振り機能があるため、一般的な電気ストーブよりも暖かさが広がりやすく、足元がすぐにポカポカしてくるでしょう。
セラミックファンヒーターは、局部的な使用に適したものですが、2m近くまで温風が届く大風量タイプもあります。
持ち運びが楽
エアコンや石油ストーブは持ち運びが難しいですが、セラミックファンヒーターは軽量でコンパクトなタイプが多く、どこにでも楽に移動させられるのがメリットです。
トイレ・脱衣所・オフィスなど、電源さえあれば、いつでも・どこでも利用ができます。移動を前提とするのなら、1~2kg前後で持ち手が付いたものを選びましょう。
上部や側面に持ち手が付いたタイプであれば、本体に手を触れずに済むため、やけどやけがの心配がありません。片手でサッと動かせるので、掃除をする際にも楽です。
嫌な臭いがしない
セラミックファンヒーターは灯油やガスを使わないため、使用時に嫌な臭いがありません。風通しの悪い部屋や狭い空間でも問題なく使える上、安全性も高めです。
一方、燃料を使うストーブは、燃焼時に臭いを発します。ストーブを消した直後は、灯油の臭いが部屋に充満するので換気が必要です。窓やドアを開ければ、暖かい空気が逃げてしまうでしょう。
近年は、消臭機能や除菌機能を搭載したセラミックファンヒーターが登場しています。嫌な臭いを出さないだけでなく、空気をきれいに保つ効果が期待できるのは、大きなメリットです。
小まめな換気が不要
セラミックファンヒーターは空気を汚さないため、小まめな換気が不要です。
「石油ストーブやガスファンヒーターの使用時は換気をするように」という注意喚起をするのは、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が充満するリスクを防ぐためです。
灯油やガスが燃える際は、CO2が発生します。密閉された部屋でストーブを使い続けると、室内の酸素が減ってCO2濃度が上昇し、息苦しさや倦怠感を感じる可能性があるでしょう。(※1)
さらに、酸素が足りない部屋で燃料を燃やし続けると、不完全燃焼によってCOが生じます。COは赤血球中のヘモグロビンと結合しやすい性質があり、吸入による一酸化中毒を引き起こす恐れがあります。(※2)
セラミックファンヒーターは非燃焼型の暖房器具なので、CO2やCOが充満するリスクがありません。
※1 出典:ガスファンヒーター・ガスストーブの安全な使い方|一般社団法人 日本ガス石油機器工業会(JGKA)
※2 出典:職場のあんぜんサイト:一酸化炭素中毒(CO中毒)[安全衛生キーワード]
使用中の安全性が高い
セラミックファンヒーターは火を使わないため、石油ストーブやガスファンヒーターに比べると、火災リスクは低いといえます。一酸化炭素中毒になる心配もなく、小さな子どものいるご家庭でも安心して使えるでしょう。
一般的に、セラミックを使ったヒーターは「PTCヒーター」と呼ばれています。PTCとは、温度の上昇とともに、電気抵抗値が正の係数で変化する特質のことです。
電流が流れると、電気抵抗で熱が発生して温度が上がりますが、一定温度に達すると抵抗値が増えて電流が流れにくくなります。過剰な発熱がなく、火災のリスクが最小限に抑えられるでしょう。
ただし、どんなに安全性が高いといっても、使い方を間違えると事故やけがにつながります。濡れた手で電源プラグを触ったり、コードの上に重いものを乗せたりすると、感電や火災を引き起こしかねません。
セラミックファンヒーターのデメリット
どんな暖房器具にもメリットとデメリットがあります。セラミックファンヒーターも万能ではなく、ほかの暖房器具に劣る部分も少なくありません。デメリットや注意点を理解した上で、特性を生かす使い方をしましょう。
広い空間を暖めるのには不向き
送風機能があるセラミックファンヒーターは、広い部屋の暖房に適していると思われがちですが、実際には暖房能力はそれほど高くなく、広い部屋にはあまり適していません。
大半の製品には、定格消費電力と適用床面積が記載されています。住宅の構造や地域にもよりますが、5〜8畳の部屋なら1,000W以上、8畳以上なら1,200W以上を目安にしましょう。
大風量のパワフルモデルは多くの電気を使うため、月々の電気代がかさみます。ほかの暖房器具と併用し、セラミックファンヒーターはスポット暖房として使用するのがベストでしょう。
空気が乾燥しやすい
灯油やガスを使う暖房器具では、燃焼時に水蒸気が発生します。灯油1Lの燃焼で約1Lの水分が発生するといわれており、冬でも部屋の空気が乾燥しにくいのが特徴です。(※)
セラミックファンヒーターは温風によって部屋を暖めるため、空気中の水分量が増えません。長時間使用すると部屋の空気が乾燥し、ウイルスが浮遊しやすくなります。
また、温風で床のほこりが舞い上がると、のどや鼻に不快感を覚えることもあります。使用が長時間にわたるときは、加湿器や空気清浄機と併用するのが望ましいでしょう。
※出典:公益社団法人石油学会|石油豆知識[燃料]
ファンの作動音がうるさい
セラミックファンヒーターはファンの作動音があります。音のない暖房器具に慣れている方は、作動音がうるさく感じてしまうかもしれません。
音の大きさを表す単位は、dB(デシベル)です。木の葉の触れ合う音やささやき声は約20~30dB、図書館や静かな住宅街は約40dBで、音がほとんど気になりません。
静かな事務所や家庭用クーラー室外機の音は、約50dBです。50dB以上になると、会話がしにくくなるため、日常的に使用する電化製品は50dB未満のものを選ぶのが理想です。
30~40dBであれば、テレワーク時や深夜でも音を気にせずに使えます。
セラミックファンヒーターが役立つ場所やシーン
広範囲に対応する製品もありますが、セラミックファンヒーターは局所的かつ一時的な「スポット暖房」に適しています。役立つ場所やシーンの一例を紹介しましょう。
トイレ・玄関・脱衣所
冬のトイレや脱衣所は非常に寒いものの、石油ストーブやガスファンヒーターを設置できる十分なスペースがありません。ごく短時間の使用になるため、「暖房器具を使うまでもない」と寒さを我慢してしまいがちです。
トイレ・玄関・脱衣所をはじめとする「狭い空間」では、セラミックファンヒーターのメリットを最大限に生かせるでしょう。
狭いスペースでも安全に使用ができる上、スイッチを入れればすぐに暖かさを感じることができます。
人感センサー機能が搭載された製品は、人の動きを感知してオン・オフの切り替えを自動的に行うため、消し忘れの心配がありません。つけっぱなし防止による節電効果も期待できます。
オフィス
オフィスではエアコンを使用するのが一般的ですが、冬のエアコンは暖かい空気が上部に溜まりやすく、「顔はほてるのに足元が冷たい」という状況を引き起こします。
小型のセラミックファンヒーターをデスク下に設置すれば、周囲に迷惑をかけることなく暖が取れます。卓上タイプなら、寒いオフィスや仕事場での「手のかじかみ」が防止できます。
ただし、ファンの音が大きい製品もあるため、静音モードや風量調整機能が搭載されたものを選びましょう。
アウトドア
多くの製品は上部や背面に持ち手があるため、自宅以外の場所にも持ち運べます。小型・軽量タイプであれば、冬のキャンプや登山にも最適でしょう。わずか1分以内で立ち上がる製品もあり、冷えた体を温めるのに大活躍します。
自宅以外で使うときは、電源の有無を事前に確認する必要があります。キャンプ場にはコンセントが使える「AC電源付きサイト(電源サイト)」があるものの、使用上限は1,000~2,000W前後です。
ホットプレートや電気ケトルなどを一緒に使った場合、キャンプ場のブレーカーが落ちてしまう可能性があります。アウトドアでの利用を想定しているなら、1,000W以内の製品を選びましょう。
セラミックファンヒーターとほかの暖房器具の電気代
セラミックファンヒーターの電気代は、ほかの暖房器具と比べて安いのでしょうか?それぞれの電気代を比較してみましょう。電気代は、以下の計算式を使用して算出します。
- 電気料金:1時間あたりの消費電力(kW)×使用時間(時間)×料金単価(円/kWh)
- 料金単価:1kWhあたり31円(税込)
料金単価には、「公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会」が2022年7月に改定した目安単価を使用します。
※出典:よくある質問 Q&A|公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会
セラミックファンヒーターの電気代
セラミックファンヒーターの定格消費電力を、約600~1,200W(0.6~1.2kW)と仮定します。(※)600W・1,200Wの製品を1時間・8時間・1カ月(30日)使ったときの料金を比較してみましょう。
<600Wの場合>
- 1時間:18.6円(0.6kW×1時間×31円)
- 8時間:148.8円(18.6円×8時間)
- 1カ月:4,464円(148.8円×1カ月)
<1,200Wの場合>
- 1時間:37.2円(1.2kW×1時間×31円)
- 8時間:297.6円(37.2円×8時間)
- 1カ月:8,928円(297.6円×1カ月)
エアコン(暖房)の電気代
エアコンの消費電力はメーカーや機種によって異なりますが、6~9畳用のエアコン(暖房)の目安は、約420~620Wです。(※)エアコンを1時間・8時間・1カ月(30日)使用したときの電気代を見てみましょう。
<420Wの場合>
- 1時間:13.02円(0.42kW×1時間×31円)
- 8時間:104.16円(13.02円×8時間)
- 1カ月:3124.8円(104.16円×1カ月)
<620Wの場合>
- 1時間:19.22円(0.62kW×1時間×31円)
- 8時間:153.76円(19.22円×8時間)
- 1カ月:4,912.8円(153.76円×1カ月)
セラミックファンヒーターよりもコストパフォーマンスがよく、広い部屋を暖めるにはエアコンが適していることがわかります。
※出典:省エネ 性能カタログ 2022年版
オイルヒーターの電気代
オイルヒーターは、セラミックファンヒーターと同じ非燃焼系の暖房器具です。本体の中にある難燃性のオイルが電気で温められ、パイプ内を循環します。
エアコンやセラミックファンヒーターのように温風が出ないため、空気の乾燥やほこりの舞い上がりが気になりません。
ここでは、オイルヒーターの消費電力を300・900Wと想定します。(※)1時間使用したときの電気代は以下の通りです。
<300Wの場合>
- 1時間:9.3円(0.3kW×1時間×31円)
- 8時間:74.4円(9.3円×8時間)
- 1カ月:2,232円(74.4円×1カ月)
<900Wの場合>
- 1時間:27.9円(0.9kW×1時間×31円)
- 8時間:223.2円(27.9円×8時間)
- 1カ月:6,696円(223.2円×1カ月)
※出典:デロンギ マルチダイナミックヒーター MDHU09-BKの製品情報 | ゼロ風暖房デロンギ ヒーター 風が出ないのに、部屋全体が暖かい。
赤外線ヒーターの電気代
赤外線ヒーターは、電気ストーブの一種です。電気の力で遠赤外線を放射させ、ふく射熱(空気を介さずに遠赤外線で伝わる熱)で周囲を暖めます。
空気が乾燥せず、立ち上がりが早いのがメリットですが、部屋全体を暖めるのには適していません。セラミックファンヒーター同様、スポット暖房としての使用が一般的です。
消費電力を450・900Wと、1時間・8時間・1カ月(30日)の電気代を算出しました。(※)
<450Wの場合>
- 1時間:13.95円(0.45kW×1時間×31円)
- 8時間:111.6円(13.95円×8時間)
- 1カ月:3,348円(111.6円×1カ月)
<900Wの場合>
- 1時間:27.9円(0.9kW×1時間×31円)
- 8時間:223.2円(27.9円×8時間)
- 1カ月:6,696円(223.2円×1カ月)
こたつの電気代
こたつは、手足を集中的に温めるための暖房器具です。寒冷地以外であれば、エアコンやストーブは使わずに、こたつで乗り切ることも珍しくありません。
山善のカタログを例にすると、75cm正方形こたつの消費電力は300Wで、1時間あたりの電気代目安は約2.2(弱)~4.3円(強)です。(※)8時間では17.6~34.4円、1カ月では528~1,032円が目安となるでしょう。
エアコンは起動時に最も消費電力を消費するため、小まめなオン・オフは電気代がかさむ要因になりますが、こたつはオフにしても布団による保温効果が長く続きます。
※出典:こたつ テーブル カジュアル 75×75cm 正方形 リバーシブル天板 SEU-752(W・B) | 山善ビズコム オフィス用品/家電/屋外家具の通販 山善公式
⇒こたつの電気代についてもっと詳しく知りたい方はこちら
セラミックファンヒーターの電気代を安く抑えるコツ
ほかの暖房器具に比べ、セラミックファンヒーターの電気代は高めです。近年は、電気料金の値上がりが続いているため、油断すると家計に大きな負担がかかります。電気代を安く抑えるコツを押さえながら、製品を賢く使いましょう。
特性に合った使い方を考慮する
電気代を押さえる重要なポイントは、特性に合った使い方をすることです。セラミックファンヒーターは部屋全体の暖房にあまり適しておらず、比較的狭い空間で、局所暖房として使用するのが理想です。
広範囲に温風が届く大風量タイプもありますが、パワフルなものほど電気代がかさむため、人が集まるリビングでは、エアコンや灯油ストーブを使いましょう。
「速暖性がある」「持ち運びが可能」という特性があるため、オフィス用やアウトドア用として購入するのもよいでしょう。
ほかの暖房器具と併用する
セラミックファンヒーターは立ち上がりが速く、電源を入れてわずか数秒で暖かさを感じます。エアコンや灯油ストーブは温まるまでに時間がかかるので、最初の数十分間だけ、セラミックファンヒーターと併用してもよいでしょう。
使用はあくまでも短時間にとどめ、こたつや電気カーペット、電気毛布などの「電気代が安く抑えられる暖房器具」と併用するのもおすすめです。
大勢がいる部屋で、エアコンの温度を勝手に調整できないときは、セラミックファンヒーターで自分の足元だけを温められます。
節約につながる設定で使う
セラミックファンヒーターの中には、温風の設定温度が調整できる機種もあります。設定温度が高いほど消費電力が高くなるため、無駄に温度を上げるのは控えましょう。
「省エネモード(エコモード)」や「人感センサー」が備わった機種であれば、節電効果はさらに高まります。
省エネモードは、室内温度を感知して温度を自動調整する機能です。人感センサーは、人を感知して自動的にオン・オフをする機能で、運転の無駄を賢くセーブできます。
消し忘れの心配がない上に、操作の手間も省けるため、ベッドルームでの使用にも最適です。
電力会社を見直す
電力小売自由化がスタートしてからは、電気の利用者自らが電力会社を選べるようになりました。電気料金のプランや仕組みは、電力会社によって異なります。
いくら節電を心掛けても、元の電気料金が高ければ家計の負担は軽くならないため、電力会社の見直しやプランの変更も検討しましょう。
Looopでんきの「スマートタイムONE」は、日本卸電力取引所(JEPX)の価格に連動して電気料金が決まる「市場連動型プラン」です。基本料金と燃料費調整額は0円で、料金単価が30分ごとに変動します。
太陽光発電量の多い時間帯は、JEPXのスポット市場価格が0.01円/kWhになるケースもあり、電気を使用するタイミングをちょっとずらすだけで、大幅な節電につながります。
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セラミックファンヒーターで上手に暖を取ろう
灯油やガスを使わないセラミックファンヒーターは、安全かつ快適に暖を取りたい方にぴったりです。立ち上がりの素早さや持ち運びの容易さにおいて、セラミックファンヒーターの右に出る暖房器具はないといえます。
一方で、広い部屋を暖めるのには適しておらず、エアコンに比べるとコストパフォーマンスが劣ります。無駄な電気代を増やさないためには、セラミックファンヒーターの特性・メリットを生かした使い方をすることが重要です。
電化製品の電気料金が気になる方は、家電の買い替えや使い方を工夫するだけでなく、電力会社の変更や電気料金プランの見直しも検討してみませんか。
Looopでんきでは、基本料金・燃料費調整額・解約手数料0円の「スマートタイムONE」を提供しています。
このプランは基本料金が0円のため、ご自宅で使用する電気の量が多い方や、現在のプランで基本料金が高い方に最適です。
また、解約手数料が0円で契約期間の縛りもないため、お試しで数か月間、Looopでんきをご利用いただき、現在の電力会社と比較することも可能です。
Looopでんきをご利用いただいているお客さまの声を紹介します。
(30代 / 女性 / 3人暮らし)
基本料金がかからないので、大きいアンペアで契約していてもお得感がある。
でんき予報などアプリが充実していて、自分の使い方で料金を安くすることも出来る。
(40代 / 男性 / 1人暮らし)
明らかに他社より安くなるし、色々なイベントもあり楽しい。基本料金が無いのも魅力です。
まずは、電気料金プランを見直して、今の生活のままで電気代が安くなるのか試してみてはいかがでしょうか。