「セントラルヒーティングという言葉は聞いたことがあるけど、どんな暖房なのかはよくわからない」
こんな声をよく聞きます。日本では導入例がまだまだ少なく、あまりなじみのない暖房方法なので、仕方のないことなのかもしれません。
エアコンなどによる暖房と、セントラルヒーティングとでは暖かさやコスト、使い勝手などはどう違うのでしょうか。
そこで、この記事ではセントラルヒーティングの仕組みやエアコンなどとの違い、そのメリット・デメリットについて解説します。
暖房方法の種類
暖房の考え方には、局所暖房と全館暖房があります。ファンヒーターやエアコンなどで各部屋を暖めるのが局所暖房です。これに対して、セントラルヒーティングなど家全体を暖めるものを全館暖房と言います。
セントラルヒーティングを説明する前に、それぞれの暖房方法の特徴を説明します。
局所暖房
局所暖房とは、部屋ごとに個別の暖房器具で温める方式です。日本家屋では昔から使われていた火鉢、こたつ、石油ストーブ、電気ストーブなどが該当します。現在では、各部屋にエアコンを設置しているケースが多くなっており、これも局所暖房になります。
局所暖房は、部屋ごとに温度設定を変える、必要のない部屋の暖房器具のスイッチを切る、など柔軟性がありますが、暖房器具のない部屋や廊下、洗面所・脱衣所、トイレなどが寒いなど、建物内の温度にムラが出ることから、ヒートショックによる健康被害が問題になります。
ヒートショックは、暖かい場所から寒い場所へ急に移動すると身体が急激な温度差にさらされることで血管が収縮して血圧が上昇、循環器系の疾患が引き起こされることです。心筋梗塞や脳卒中などにつながることもあるため、脱衣場やトイレなどを暖めてヒートショックを予防する必要があります。
全館暖房
全館暖房とは、1つの暖房器具ですべての部屋を暖房する方式を言います。セントラルヒーティングも全館暖房の1つです。部屋ごとの温度のムラが少なく、家中どこでもほとんど温度が同じで、快適に過ごせるのが特徴です。温度差がないので、血圧の急激な変化もなく、ヒートショックも予防できます。
全館暖房では、局所暖房に比べて暖房する空間が広い分、容量が大きい機器が必要になります。このため局所暖房よりランニングコストが高いと考えられ、ぜいたくであるとか、もったいないと見る方が多く、北海道以外の日本では普及していないのが実情です。
もう1つの問題は、全館暖房にするには、家自体が高断熱・高気密である必要があります。断熱レベルは、HEAT20(一般社団法人 2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)が定める断熱グレードG2レベル以上が必要とされます。全館暖房を導入する場合は、新築の設計段階から検討することをおすすめします。
セントラルヒーティングとは
セントラルヒーティングは英語で表記すると「central heating」で、直訳すると中央暖房という意味です。建物の1カ所に熱源を発生させる装置を設置して、この装置で発生した温水、温風、蒸気などを循環パイプで各部屋へ送り、建物の内部全体を暖める暖房システムです。
具体例を紹介しますと、ボイラーで電気やガス、石油などを燃やして温水や熱風を発生させ、建物内の各部屋まで張り巡らした循環パイプを通して各部屋のパネルヒーターを温めます。パネルからは輻射熱が発生し、その輻射熱と自然対流によって部屋全体を暖めます。
セントラルヒーティングは、石油ストーブのように部屋にいる子どもやペットがやけどする心配はなく、火を使用しないので一酸化炭素や二酸化炭素で空気が汚れることもありません。エアコンなど他の暖房器具に比べても高く、長く使えるのが特徴です。
セントラルヒーティングは欧米の寒冷地で生まれた暖房システムなので、日本ではあまりなじみがありませんが、北海道では今や一般的な暖房システムとなっています。
セントラルヒーティングの種類
セントラルヒーティングには温水式と温風式があります。熱源は電気、ガス、石油とさまざまです。
温水式
温水式セントラルヒーティングは、熱源で温めた温水を建物内部に巡らせている循環パイプによって各部屋のラジエーターと呼ばれるパネルヒーターへ送り、輻射熱で部屋を暖める方式です。建物の1カ所にボイラーを設置・稼働して、温水をつくります。温水を床に巡らせる床暖房もあります。
温水式は水を媒体として熱を届けるシステムなので熱損失が少なく、大きな建物の暖房に利用しやすいというメリットがあります。一方で配管には高い気密性が求められ、初期費用が高くなる傾向があります。
一般的には、セントラルヒーティングは温水式のことを言いますが、特に北海道のような寒冷地では温水式が多いようです。
温風式
温風式セントラルヒーティングは、発生させた温風を建物内に巡らせた循環パイプで各部屋へ送り、部屋を暖めます。
循環パイプは、温水式に比べて気密性が高くなくてもよいというメリットがありますが、温水に比べて熱損失が大きいので冷めやすいという短所もあります。広い室内をまんべんなく暖めるのが難しいため、小規模な建物でしか採用できないのがデメリットです。
セントラルヒーティングのメリット
セントラルヒーティングには、家の中に温度差が生まれない、空気が乾燥しない、安全性が高い、おしゃれで部屋になじむ、などのメリットがあります。それぞれについて、説明します。
温度差が生まれない
セントラルヒーティングは各部屋だけでなく、循環パイプが通っている廊下や階段など家全体を暖めることができます。そのため、建物全体がほぼ均一の温度になり、建物内での温度差が生まれにくいというメリットがあります。
基本的にパネルヒーターは24時間稼働となるため、どの部屋でも快適に過ごせるだけでなく、冬場によくあるヒートショックを防ぐことができ、健康的に過ごせます。
空気が乾燥しない
エアコンなどのように温風を出す暖房機は乾燥の原因になりますが、温水式セントラルヒーティングは暖房使用時に風を出さないので、空気が乾燥しません。このため、乾燥によって起きる喉や肌のトラブルも防ぐことができます。また、風が出ないので、風によるほこりやアレルギー物質の飛散も防ぐことができます。
ただし、そもそも冬場は湿度が低く、温風に関わりなく乾燥しやすいので、必要に応じて加湿器を併用するとよいでしょう。
安全性が高い
セントラルヒーティングは、建物内の熱源発生装置で熱をつくり、その熱を各部屋に届けるシステムで、部屋ごとに火を使わないため安全性が高いのがメリットです。火を使う暖房機の場合、火災の心配や、二酸化炭素の発生、不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険性などがありますが、セントラルヒーティングはこれらの心配がありません。
熱を出すラジエーターは子どもが触ってもやけどしない温かさなので、子どもや高齢者も安全に使用できます。
おしゃれで部屋になじむ
パネルヒーターはデザイン性が高くおしゃれなものが多く、部屋の雰囲気になじむものを選ぶことができます。パネルヒーターは一度設定すると、使用しない夏も設置されたままとなるため、デザイン性に優れたものがラインナップされています。
空間の雰囲気やデザインに合わせてインテリアの一部になるようなものから、部屋の雰囲気を損なわないオブジェのようなものまで、豊富に揃っているので、部屋に合わせて好きなものを選択できます。
セントラルヒーティングのデメリット
一方、セントラルヒーティングには初期費用が高い、ランニングコストがかかる、部屋が暖まるまで時間がかかる、定期的なメンテナンスが必要、などのデメリットがあります。以下で説明します。
初期費用が高い
セントラルヒーティングは、熱源(ボイラー)の設置だけでなく、家全体を暖めるため循環パイプや各部屋にパネルヒーターを設置する必要があり、エアコンなど局所暖房に比べて、初期費用が高くなるのがデメリットです。
そのため、新築工事やリフォーム工事でも大掛かりになり、費用や工事日数がかかる可能性が高くなります。住宅の規模によって異なりますが、一般的にはセントラルヒーティングの初期費用は100万円前後とされています。
ランニングコストがかかる
セントラルヒーティングは、途中で止めると冷めた水を温めるために大きなエネルギーが必要になるので、24時間運転が基本です。そのため、一度稼働させたら冬が終わるまでずっと動かすことになり、その分ランニングコストがかかります。
北海道電力の試算によると、4人家族、木造2階建て住宅(3LDK/33坪)をスマート電化住宅にして、ヒートポンプ式温水セントラル暖房とヒートポンプ式家庭用ロードヒーティングを利用すると、電気料金は年間298,200円(※)となります。
実際にセントラルヒーティングを利用している家では、数日旅行する場合でも、低めの温度設定にしてつけっ放しで外出しています。セントラルヒーティングを使う場合には、暖房のつけっ放しに慣れることも必要になります。
暖まるまで時間がかかる
セントラルヒーティングは各部屋のパネルヒーターで温度設定ができます。空室にする際には設定温度を下げて省エネを図り、使用するときは設定温度を上げて暖めるのですが、パネルヒーターの構造上部屋が暖まるまでにどうしても時間がかかります。普段石油ストーブなどを使っている方は、少しイライラするかもしれません。
パネルヒーターが温まってくると、その輻射熱(ふくしゃねつ)が少しずつ部屋全体を暖めます。そのため、部屋を使用する前に早めに運転をしておくことで、快適な温度になります。この仕組みに慣れることが大切です。
定期的なメンテナンスが必要
セントラルヒーティングはボイラーやその周辺の機器を稼働し続けるため、消耗や劣化が激しいです。そのため、定期的に専門業者によるメンテナンスを行う必要があります。年に1回の保守点検が推奨されますし、温水式の場合は防錆不凍液の交換を3~4年に1度行う必要があります。
ボイラーを長く使っている場合は、メーカーによる修理部品の供給が終了している場合もあります。その場合は修理できないので、入れ替え工事が必要になります。暖房シーズンに入る前に、点検を行うことが必要です。
セントラルヒーティングのメリット・デメリット | |
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メリット | デメリット |
家の中に温度差が生まれない | 初期費用が高い |
空気が乾燥しない | ランニングコストがかかる |
安全性が高い | 暖まるまで時間がかかる |
おしゃれで部屋になじむ | 定期的なメンテナンスが必要 |
セントラルヒーティングを賢く利用するポイント
セントラルヒーティングのコストを節約するためには、どのように使えばよいでしょうか。ここでは、セントラルヒーティングを賢く利用する際の、ポイントをご紹介します。
住宅を高気密・高断熱にする
セントラルヒーティングは家全体を暖めるものなので、住宅は高気密・高断熱であるほど効率的に暖房ができます。
セントラルヒーティングは暖かい空気を各部屋に送り、ゆっくりと家全体を暖めます。住宅の気密性が低いと外の冷たい空気が入ってきて暖房の効果が弱くなるため、気密がしっかり保たれていることが重要になります。
断熱性も高くする必要がありますが、家の断熱性能は窓が特に大きく影響します。例えば、窓ガラスは単層ガラスよりも複層ガラス、複層ガラスよりもトリプルガラスの方が断熱性は高くなります。また、複層ガラスの中空層は真空が最も断熱性が高く、クリプトンガス、アルゴンガス、乾燥空気の順に断熱性能が低下します。
アルミサッシも断熱性能は低いのでおすすめしません。断熱性能が高いのは塩化ビニールなどによる樹脂サッシです。このように窓の細部まで断熱性を高めると効果的です。
局所暖房と組み合わせる
セントラルヒーティングだけでは物足りない場合は、局所暖房と組み合わせて使用することができます。
セントラルヒーティングは家全体をじんわり暖めるものです。エアコンや石油ストーブに慣れた方が、どうしても物足りないという場合は、エアコンや石油ストーブなどの局所暖房を適度に併用して、部屋が暖まったら止めるなど温度管理もこまめにしましょう。
とはいえ、セントラルヒーティングはランニングコストがかかるので、局所暖房は使い過ぎないように気を付けましょう。
窓の下にパネルヒーターを設置する
セントラルヒーティングのパネルヒーターを部屋に設置する際に、窓の下に設置すると「コールドドラフト現象」を防ぐことができます。
コールドドラフト現象とは、室内の暖かい空気が窓に触れて冷やされ、冷気が床に降りてくる現象で、室温が下がるだけではなく足元が冷えやすくなり、体感温度も低く感じられるようになります。
窓の下にパネルヒーターを設置することで、パネルヒーターの設定温度を上げずに済み、コストも軽減できます。また窓下への設置によって、結露防止にも役立ちます。
電力会社の切り替えで電気料金の節約が可能に
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