毎日の食卓に欠かせない「ご飯」。ご飯を炊くために、炊飯器は必須とも言っていい大変便利な電化製品です。お米と水を内釜に入れれば、スイッチ1つで何もせずともおいしいご飯が炊きあがります。
近年では、省エネ性能を高めたタイプやレシピにあわせた炊き方ができるものなど様々な機能を備えた製品が次々と開発されています。しかし、機能が増えれば増えるほど、炊飯器の電気代が気になる、という方もいるかと思います。
この記事では、炊飯器の電気代はどれくらいなのかを具体的に算出しながらご紹介します。そのほか、保温機能の電気代はどれくらいかかるのかもチェックして、どんな使い方なら効果的な節約につながるか、といった疑問にもこたえていきます。
電気代を節約する方法として、明日から実践できる工夫についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。
炊飯器のタイプは3つ
炊飯器には機種によってさまざまな機能が搭載されています。それらは加熱方法で分類すると「マイコン炊飯器」「IH炊飯器」「圧力IH炊飯器」の3種類に分けられます。
マイコン炊飯器は古くから用いられてきたタイプですが、近年ではより温度が高く均一に加熱できるIH炊飯器が主流になりつつあります。また、IH式に圧力を加えた圧力IH方式も開発されました。
ここでは3種類の炊飯器について仕組みを見ていき、主な価格帯などをご紹介します。
マイコン炊飯器
古くから使われていた仕組みはマイコン炊飯器は、内釜の底にヒーターを搭載して加熱することで内釜全体に熱を伝導し炊飯します。シンプルな構造の炊飯器で、火力はあまり強くないのが特徴です。内釜の底を熱することで中心部分に対流を起こしますが、IHタイプの機種に比べると対流は小さく、炊きムラができやすくなります。
マイコン炊飯器の多くは、数千円~1万円程度と低予算の価格帯で購入できます。炊飯容量は3合炊きから5.5合炊きなど比較的小さいため、ご飯を一度にたくさん炊く必要のない1人暮らしの方や少人数のご家庭に向いています。
低予算で購入したい方や世帯人数が少ないご家庭、炊き方にそれほどこだわりがない方向けの炊飯器と言えるでしょう。
IH炊飯器
IH炊飯器は、電磁線により内釜全体を発熱させる「電磁誘導加熱方式」が採用されています。内釜の底面だけでなく側面も加熱させるため、一気に高温で加熱して炊飯することが可能です。
温度制御が優れている加熱方式なため、炊飯の工程ごとに最適な温度で炊くことができます。また、内釜全体で対流が発生するので炊きムラが起こりにくく、お米の芯まで加熱できて風味が良くなるのも特徴です。そのため、近年ではIH炊飯器が主流となっています。
「あきたこまち」「ひとめぼれ」などお米の銘柄によって炊き分ける機能や保温に最適な温度をキープできるものもあり、多様な機能を搭載している機種も多く販売されています。
炊飯後においしさを保つ秘訣は一定以上の温度を保つことなので、加熱にすぐれたIH炊飯器は最適です。IH炊飯器の保温機能を使えば6~12時間程度はご飯の味をおいしい状態で維持できるでしょう。
IH炊飯器は、容量や機能などによって価格帯に幅があります。例えば、5.5合炊きでも機種によっては9,000円~10万円と価格は大きく変化します。
圧力IH炊飯器
圧力IH炊飯器は「電磁誘導加熱方式」で加熱したうえで、釜の中を密閉状態にすることで高圧力で炊き上げるタイプです。炊飯中は、内釜内の温度が100℃以上になるため短時間での炊飯が可能です。
より高温で炊き上げることでお米は風味を残したやわらかく粘り気のあるおいしい状態に変化します。粒が立っていてふっくらとしたおいしいご飯を食べたい、という方におすすめの炊飯器です。
圧力IH炊飯器はIH炊飯器よりも保温時間が長くなるのも特徴で、3タイプのなかで最も多様な機能の機種がでています。
価格帯は5.5合炊きで12,000円~10万円程度、圧力機能が搭載されている分、一般的なIH式よりも価格帯は高くなる傾向があります。そのため、同じ容量でもほかのタイプよりも予算を多く取っておくと良いでしょう。
炊飯器の種類と特徴の比較 | |||
---|---|---|---|
マイコン式 | IH式 | 圧力IH式 | |
炊飯の仕組み | ヒーター式 | 電磁誘導加熱方式 | 電磁誘導加熱方式+圧力式 |
火力の強さ | 弱い | 強い | IHより強力 |
価格帯 (5.5合炊き) |
数千円~1万円程度 | 9,000円~10万円程度 | 12,000円~10万円程度 |
炊き上がり方 | 炊きムラができやすい | ムラなくおいしく炊き上がる | 風味よくおいしく炊き上げる |
特徴 | 低価格で容量の少ないものが多い | 保温機能や炊き上がりに優れ、多機能搭載型が多い | 価格帯は高めになるが、最も味が良くなる |
炊飯器の電気代
電気代を節約したいなら、炊飯器のように毎日使う電化製品の電気代は特に気になるところです。
炊飯器は「炊飯時」と「保温時」で大きく消費電力量が変わります。
また、炊飯器のタイプやごとに電力の消費量も違いますので、タイプ別の電気代を炊飯時・保温時でそれぞれ把握しておきましょう。
ここでは、炊飯の仕組みが異なる3種類の炊飯器「マイコン・IH・圧力IH」の電気代について、具体的な数値を使ってシミュレーションしていきます。
それぞれ1回の炊飯にかかる電気代と、保温1時間あたりと5時間あたりの電気代を計算します。炊飯器の使用は1日1回、1回の炊飯時間を1時間と仮定し、以下のような計算式で電気代を求めます。なお、1kWhあたりの電力量料金は27円とします。
消費電力(W)÷1,000×1日の使用時間(時間)×1kWhあたりの電力量料金(円/kWh)=電気代
マイコン炊飯器の電気代
まずはマイコン炊飯器の電気代を算出します。
- 条件:5.5合炊きのマイコン炊飯器を電気料金27円/kWhで1日1回使用した場合
- 商品:タイガー魔法瓶 マイコン炊飯器 JBH-G102W(※)
- 炊飯1回分の消費電力:140W(炊飯時間は1時間とする)
- 保温1時間あたりの消費電力:19.1W
<1回の炊飯にかかる電気代>
140W÷1,000×1時間×27円/kWh=3.78円
<保温1時間あたりの電気代>
19.1W÷1,000×1時間×27円/kWh=0.5157円
<保温5時間あたりの電気代>
19.1W÷1,000×5時間×27円/kWh=2.5785円
この例では、1回の炊飯に要する電気代は3.78円、保温1時間あたりの電気代は約0.52円、保温5時間では約2.58円という結果になりました。
IH炊飯器の電気代
次にIH炊飯器で炊飯する際の電気代です。
- 条件:5.5合炊きのIH炊飯器を電気料金27円/kWhで1日1回使用した場合
- 商品:タイガー魔法瓶IH炊飯器 JPK-H100K(※)
- 炊飯1回分の消費電力:170W(炊飯時間は1時間とする)
- 保温1時間あたりの消費電力:18.6W
<1回の炊飯にかかる電気代>
170W÷1,000×1時間×27円/kWh=4.59円
<保温1時間あたりの電気代>
18.6W÷1,000×1時間×27円/kWh=0.5022円
<保温5時間あたりの電気代>
18.6W÷1,000×5時間×27円/kWh=2.511円
この型のIH炊飯器の場合、計算結果からは1回の炊飯にかかる電気代が4.59円、保温1時間あたり約0.5円、保温5時間あたり約2.5円になることがわかりました。
IH炊飯器はマイコン炊飯器よりも消費電力が大きいため、当然ながら1回の炊飯に必要な電気代は0.81円高くなっています。一方で保温時の消費電力にはそれほど違いがないため、電気代にもほとんど差はありません。
圧力IH炊飯器の電気代
最後に、圧力IH炊飯器で炊飯する際の電気代を計算します。
- 条件:5.5合炊きの圧力IH炊飯器を電気料金27円/kWhで1日1回使用した場合
- 商品:タイガー魔法瓶 圧力IH炊飯器 JPA-X100 KC(※)
- 炊飯1回分の消費電力:176W(炊飯時間は1時間とする)
- 保温1時間あたりの消費電力:17.8W
<1回の炊飯にかかる電気代>
176W÷1,000×1時間×27円/kWh=4.752円
<保温1時間あたりの電気代>
17.8W÷1,000×1時間×27円/kWh=0.4806円
<保温5時間あたりの電気代>
17.8W÷1,000×5時間×27円/kWh=2.403円
この条件での圧力IH炊飯器の1回にかかる電気代は約4.75円、保温1時間あたりの電気代は約0.48円、保温5時間あたりの電気代は約2.4円と算出されました。保温にかかる消費電力はほかのタイプとさほど変わりありません。
3タイプの炊飯器の電気代を、比較しやすいよう表にまとめました。
炊飯器のタイプと電気代 | |||
---|---|---|---|
電気代 | マイコン炊飯器 | IH炊飯器 | 圧力IH炊飯器 |
炊飯 | 3.78円 | 4.59円 | 4.75円 |
保温1時間 | 0.51円 | 0.5円 | 0.48円 |
保温5時間 | 2.58円 | 2.5円 | 2.4円 |
炊飯器の保温は節約になる?
炊飯器の保温は、前の項で算出してきたように、保温する時間に比例して電気代が高くなることがわかりました。では、一度にご飯をまとめて炊いて次の食事まで残りを保温しておくのは、電気代の節約になるのでしょうか。もしかしたら、保温機能を使わずに電子レンジで温めなおした方が電気代がかからないかもしれません。両方のパターンを比較してみましょう。
たとえば、500W出力の電子レンジ(消費電力950W)でご飯を3分温めなおすときの電気代は、以下のとおり算出してみました。
計算式:
消費電力W÷1,000×1日の使用時間(時間)×1kWhあたりの電力量料金(円/kWh)=電気代
条件:消費電力が950W(50Hz)の電子レンジ(※)で電気代27円/kWhのときにご飯を3分温める
950W÷1,000×0.05時間×27円/kWh=1.2825円
こういった条件なら電気代は1.28円かかります。炊飯器の保温はどのタイプでも1時間あたり約0.5円かかるため、保温時間が3時間以上になるのであれば、電子レンジで温め直す方が電気代はかかりません。保温時間がさらに伸びて5時間以上になると、電気代は電子レンジの倍近くになります。
とはいえ、保温を切ってご飯が冷えるとご飯の味が落ちるので、電子レンジは必要なときに温め直せば炊飯器での保温よりも節電になるので上手に活用していきましょう。
炊飯器の電気代を節約する方法
炊飯器は自炊をする世帯なら毎日使われるもの。電気代を節約する方法をちゃんと押さえて実践すれば、効果が期待できるでしょう。炊飯器にかかる電気代を節約するためには、タイマー予約やエコ炊きモードを活用する方法があります。
また、一度に炊飯する量を増やして炊飯器を使う回数を減らす、保温時間を減らす方法も電気代の節約に効果的です。ここでは、それぞれの方法ごとのやり方を紹介します。
タイマー予約で保温時間を短くする
無駄な保温時間をなくして電気代を安くするには、食べる時間に合わせてタイマー予約をすると良いでしょう。ほとんどの炊飯器にはタイマー予約機能が付いているため、帰宅時間や家族がそろう食事時間にあわせてセットしておくことをおすすめします。
タイマー予約を活用すれば、食事のときに炊きあがったばかりのおいしいご飯が食べられるうえに保温時間を減らせます。炊飯器に搭載されている機能を上手に使うのも節電の方法です。
エコ炊きモードを利用する
近年では省エネタイプの炊飯器が増えています。なかでも「エコ炊きモード」が採用されている機種は消費電力を抑えながら炊飯できるので、通常の炊飯モードよりも電気代が安くなります。
エコ炊きモードは電力を抑えて炊飯しても炊き上がりがおいしくなるのが特徴です。
一方で、短時間で炊き上がる「早炊きモード」の電気代はどうでしょうか。
炊飯にかかる時間が少ないため節電になるイメージを持ちやすいのですが、実際には通常モードよりも電気代が高くなることがあります。これは、炊飯時に一気に水を沸騰させるので消費電力が増えるためです。
とはいえ早炊きモードも便利な機能であるため、必要に応じて使い分けてみましょう。
炊飯回数を減らす
炊飯器の電気代を抑えるには、炊飯する回数自体を減らすのも1つの方法です。
朝食と夕食の2回炊飯器でご飯を1合ずつ炊いていた場合、1回にまとめて2合炊いた方が電気代を抑えられます。炊飯回数を減らせばお米を研ぐ際の水の使用量も少なくて済みます。まとめて炊けば節電と節水につながるのでおすすめです。残ったご飯はラップで小分けして冷蔵庫または冷凍庫に入れておき、必要に応じて電子レンジで温めましょう。
保温時間を短くする
炊飯器の保温時間と電気代は比例します。保温の時間が長くなれば電気代も高くなるため注意が必要です。保温時間はなるべく短くするよう心掛けると良いでしょう。
ご飯が炊きあがったらすぐに小分けにして保存すると、長い時間保温するよりもおいしく食べられます。炊飯器で長時間保温するとご飯が固くなりやすく、黄ばんでしまうこともあります。炊飯が終了すると自動的に保温になるため、ご飯が炊きあがった時点でスイッチを切っておきましょう。
まとめ
炊飯器は、加熱方式によってマイコン式、IH式、圧力IH式の3種類に分けられます。それぞれ特徴が異なるため、これから炊飯器を購入する方は予め知っておくと選びやすくなります。また炊飯器は毎日使う電化製品なので、タイマー予約やエコ炊きモードを使うなどして上手に節電するのがポイントです。
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