2021年から2022年にかけての冬は深刻な電力不足が予測されています。しかし、そもそも「電力不足」とはなんでしょうか? 電力不足が原因で計画停電などの電力制限が行われたた例は2011年が最後であり、ほとんどの場合は生活に大きな影響はありません。では、そもそも、「電力不足」とは一体どのような状態を指しているのでしょうか。
この記事では、電力不足の意味、電力不足がが起きてしまう原因や私たちの生活への影響について解説します。また電力不足に備えて今から私たちができる取り組みについても合わせてご紹介します。
2021年の冬は電力不足が心配されている
経済産業省が発表した2021年の電力需給の見通しでは、夏は電力を安定して供給できるものの、冬は安定供給するための供給力の確保ができないとされています(※1)。火力発電所は常に稼働しているわけではなく、コストや燃料調達の問題などから休停止が行われることも多く、必要な供給力が確保できない見通しがあるからです。また、2021年の8月に開かれた資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会でも「2021年度冬季に向けた対策」が話題に挙がっています(※2)。
電力を安定供給するためには、最低でも需要を3%上回る供給余力が必要です。しかし、東京電力管内の2022年1月~2月の供給余力を示す予備率はマイナスの見通しとなっています。東京電力管内だけではなく、関西や九州など6電力管内の予備率も3%程度と、ギリギリな状態になっており、電力不足が心配されています。
しかし、あらためて考えてみましょう。そもそも「電力不足」とは一体どういう状態なのでしょうか。
電力不足とは
電力不足という言葉の定義が厳密に決まっているわけではありません。しかし、電力業界では安定供給上、予備率を3%確保しておく必要があるとしています。予備率が3%を下回ると電力の安定供給が続けられなくなるかもしれないのです。
この予備率とはどのような意味があるのでしょうか。また、なぜ3%以上の予備率が必要なのかについても確認していきましょう。
予備率とは
電気を安定供給する上で重要なのが、電力の需要と供給のバランスを揃える「同時同量」というルールです。同時同量とは、電気の作る量と電気を消費量とが同じときに同じ量になるということ。もしこのバランスが崩れてしまうと電気の周波数が崩れて、電気の供給を正常に行うことが難しくなります。
電気は貯蔵できないため、常に需要に合わせて供給を調整しますが、ある程度ゆとりを持たせておかないと突発的な事故や災害が起きてしまったとき需要と供給のバランスが保(たも)てなくなります。このゆとりの指標が予備率です。予備率が高いほど電力に余裕がありますが、予備率が低くなると電力不足が起こります。電気を安定的に供給するためにも、最低でも3%以上の予備率が求められます。
なぜ3%必要なの?
電力の需要は一定時間の平均値に対して3%程度の上振れ・下振れがあるので、最低でも3%程度必要です。さらに気象変動による需要や発電機のトラブル対応のため、8~10%の予備率が電力安定供給の目安といわれています(※1)。
しかし、毎年春秋の受給検証で用いる猛暑・厳冬を想定した予備率を見ると、7月の北海道・東北・沖縄以外のエリアはすべて3%になっています。また、2022年1~3月の東京エリアの見通しは-2.1~0.8%と非常に厳しい数字が出ています(※2)。
2021年に電力不足が起きている背景
今回の電力不足の大きな要因の1つとしてLNG不足が挙げられます。LNGとは、メタンを主成分とした天然ガスを-162℃に冷却した、液化天然ガス(正式名称:Liquefied Natural Gas)のことです。
火力発電所では石油、石炭、LNGを燃料としています。LNGは石炭や石油に比べると二酸化炭素発生量が少ないため、比較的クリーンなエネルギーです。日本では環境への配慮から、火力発電で使う全体燃料の約7割をLNGにしています。LNGは埋蔵量が多く、世界各地で安定的に産出されています。しかし、日本ではあまり産出できないためほとんどを輸入に頼っている状態です。
今回の電力不足の要因となるLNG不足の原因には、大きく4つの理由があるとされています。
1つ目は、最大の輸入先であるオーストラリアの生産施設でトラブルが発生したため、供給不足が起こってしまったことです。
2つ目は、新型コロナの影響で通過する船に対する安全手順が増えていることです。さまざまな船が通過するパナマ運河ではタンカーの渋滞が起こり、国内へ届くLNGの供給量が低下しています。
3つ目は、中国によるLNG買い上げです。新型コロナの影響で消費が低下してLNGの生産量が下がっていたところに、経済復興しつつある中国などが大量のLNGを買い上げたことからLNG価格が押し上がりました。
中国も国際的な世論の問題があり、燃料を石炭からLNGへシフトしている傾向があるため、以前よりLNGの需要が高まっているのです。電力会社はできるだけ安く発電するために燃料費の削減に努めていますが、LNGの供給量の低下、価格の上昇が原因でLNGの調達が非常に困難になっています。
4つ目は、火力発電所の休廃止です。2020年の夏には動いていた10基が老朽化などの影響で休廃止しており、設備損傷で停止しているものもあります。電力小売自由化で競争が激しくなるなか、採算性の低い発電所を維持できなくなることも問題です。
経済産業省では、今回の電力不足への対応として各電力会社へ火力発電所の修繕時期をずらし、火力の発電量を上積みすることで供給力を増やすように求めています。
しかし、それだけでは十分な対策とはいえないため、国民に節電に努めてもらうなどの理解を得る必要があるでしょう。
電力不足において私たちができる取り組み
電力不足を回避するためには、節電など私たち1人ひとりの取り組みが重要となります。また、電力不足で停電が起きる可能性なども考慮して十分に準備しておくことが大切です。電力不足に備えて、私たちが今からできることについて考えてみましょう。
節電を心がける
まずは普段の生活スタイルを見直すことで、意外と電気を使っていることに気づくことができます。
例えば、早寝早起きを心がけるだけでも、夜の消費電力を減らせるので節電につながります。
日頃の習慣を変えることも1つの手です。例えば、電気のスイッチをこまめに切る、洗濯物をまとめて洗うことで回数を減らすなどは誰でも簡単にできます。
またコンセントのプラグを常に差したままだと待機電力が発生します。実は、待機電力だけで、ご家庭で消費する年間電力の約5.1%を占めています(※1)。待機電力は使わない電化製品のプラグを抜くだけでカットできるので誰でもできる節電です。パソコンやゲーム機などは使うときだけプラグを差すなど、習慣づけたいですね。
電化製品の買い替えを検討されている方は省エネ家電に買い替えることをおすすめします。エアコン、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、液晶テレビ、電気便座、蛍光灯器具(家庭用)を購入予定の方は特にチェックしたいところ。電化製品のカタログや製品に省エネ性能の向上を促すための目標基準の達成度具合が示されたラベルが表示されています。省エネ基準達成率が高いほど省エネ性が優れているので、節電できるだけではなく年間電気料金も安くなりますよ。
また電球が切れたときにはLED電球に交換するのもおすすめです。適用畳数や明るさが同じでも省エネ基準達成率が高ければ電気料金が安くなります。白熱電球に比べ、LEDランプは約86%の省エネ効果があります(※2)。
停電に備える
深刻な電力不足になると、電力の需要と供給のバランスが崩れ、大規模停電などに発展する恐れもあります。また大規模な停電を回避するために計画停電が行われる可能性もあります。
計画停電が行われるという可能性や大規模な停電が起こることを予測して日頃から十分な備えをすることが大切です。計画停電の前後や大規模停電後はカセットコンロのボンベ、乾電池、インスタント食品、ペットボトルの水などが大量に買い占められる可能性があります。
いざ必要なときに入手できないことが考えられるので、必要な分だけ日頃から備えておきましょう。日頃の備えは、台風や地震で停電してしまったときにも役に立ちます。
停電時は電気が使えないため、カセットコンロ、懐中電灯やランタン、乾電池式のラジオなどが役立ちます。性能が良いものをリサーチして備えておきましょう。
また冬の停電は暖房器具が使えないため、寒さとの戦いになります。電気がなくても使える暖房器具やカイロがあると安心です。石油ストーブの場合は石油を確保しておくことも忘れないようにしましょう。計画停電など事前に停電の日時がわかっているときはダウンジャケットなどの防寒着や寝袋などの防寒具も準備しておきたいですね。
最近ではアウトドアブームで停電時にも使える便利なアウトドア用品が増えています。太陽光で充電ができるコンパクトなLEDランタンやモバイルバッテリーはおすすめです。折りたたみ式のバケツやウォータージャグなども活躍します。
高層マンションなどは一度水をためて電動のポンプを使って各戸に水をくみ上げているところもあるので、停電になると水道が止まってしまうこともあります。十分な水の確保も心掛けましょう。
デマンドレスポンスに取り組んでみる
電力の需要量と供給量のバランスを保つ方法として、「デマンドレスポンス(DR)」という考え方があります。
デマンドレスポンスは、電力会社からの要請に合わせて需要量を上げる「上げDR」と需要量を減らす「下げDR」に分かれます。
上げDRは、需要に対して供給が多い場合に電力の消費を増やすことです。具体的には晴天で太陽光発電での発電量が多く、供給過多になる恐れがある場合に、蓄電池に充電するよう要請するなどが考えられます。
下げDRは、需要が供給を上回り電力不足の恐れがあるときに電力の消費を抑えることであり、デマンドレスポンスといえば一般的にはこの下げDRを指します。
下げDRは、電力の供給側である電力会社が需要家である電気を使用している人に電力の節約を促すことで、余剰電力を生み出し、需要家側はその分の対価を受けとることができる仕組みとなっています。
さらに下げDRは大きく2種類に分けられます。まず電力需要量がピークになる時間帯に電気料金を割高にすることによって需要家側に抑制を促す「電気料金型デマンドレスポンス」。次に、電力需要量が逼迫(ひっぱく)するタイミングで電力会社からの要請で節電し、節電量に応じてインセンティブが得られる「インセンティブ型デマンドレスポンス」です。
節電することは環境負担を減らすというメリットがありましたが、「デマンドレスポンス」の考え方は経済的なメリットも生まれます。
「デマンドレスポンス」の考えは日本でも既に始まっています。電力小売サービスの「Looopでんき」は2021年1月からデマンドレスポンス型節電を開始。約42,185世帯の契約者と連携して節電を行っています。
Looopでんきからの節電リクエストに応じて節電協力できた契約者にはポイントが付与されます。契約者は獲得ポイントをギフト券に交換して対価を得られるという仕組みです。
Looopでんきは2021年から2022年にかけての電力不足に備え、55万kWhの節電量を目指しています。
まとめ
電力不足は私たちがストレスなく生活するうえで深刻な問題です。まずは2021年から2022年にかけての冬に早急の対策を練らなくてはいけません。しかし限定的なものではなく、環境問題や自然災害の増加に伴い国民全体が節電について真剣に考えなければならない時期がきています。
LNGの供給量の低下、価格の上昇、火力発電所の休廃止の問題は個人でどうすることもできません。しかし電力供給量の低下が見込まれたときに国民全体で節電に努めれば、需要量を減らすことができ、結果的に大規模停電を避けることができます。
個人で節電をするのはなかなかモチベーションが上がりませんが、デマンドレスポンスに取り組んでいる企業と契約することでメリットを受けながら節電することができます。
Looopでんきでも2021年1月からデマンドレスポンス型節電を開始しています。Looopでんきは基本料金も解約金も0円。使用した電力に応じて支払うのみのシンプルな料金設計なので自然と節電が身につきます。Looopでんきについて詳しく知りたいという方はぜひチェックしてみてください。
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