突然、電気が使えなくなったとき、「ブレーカーが落ちた」「ブレーカーが飛んだ」と思ったことがある方も多いはず。そもそも「ブレーカー」とはどのようなものなのでしょうか?このページではその役割や仕組みに加えて、ブレーカーが落ちたときの正しい対処法まで詳しく解説します。
「ブレーカーが落ちる」とは?ブレーカーの役割と仕組み
ご自宅で突然、「『バチン』という音がして電気が使えなくなった」という経験のある方もいるのではないでしょうか。そしてそんなときは、「ブレーカー」のスイッチを確認し、オンにすることで電気を復旧させてきたのではないでしょうか。
ブレーカーのスイッチがオフになり、電気が使えなくなる現象を一般的には「ブレーカーが落ちる」と表現します。では、ブレーカーが落ちるとなぜ電気が使えなくなってしまうのでしょうか。ブレーカーの役割と仕組みから、ブレーカーが落ちるという現象を解説していきましょう。
そもそもブレーカーとはどのようなもの?
ここまでブレーカーという言葉を当然のように使ってきましたが、そもそもブレーカーとはどのようなものなのでしょうか。もしかすると別のものを思い浮かべてしまっているかもしれません。例えば、ブレーカーという言葉を聞いて下の写真のようなものをイメージしてはいないでしょうか。
実は写真に写っている装置は「分電盤」と呼ばれるもので、正確にいうとブレーカーではありません。ブレーカーは分電盤の中に入っています。下の写真を見てみましょう。分電盤の中にある、スイッチのついた黒い装置、一つひとつがブレーカーです。
ブレーカーの役割
それでは、本題であるブレーカーの役割の説明に進んでいきましょう。一般家庭においてブレーカーは、「安心して電気を使うための安全装置」の役割を担っています。具体的な機能は「住宅内の電気回路に何らかの異常が起きたときに、その回路に流れる電気を自動的に遮断」すること。この働きにより、電気の使いすぎや感電・火災などの事故を未然に防いでいるのです。
そして、ブレーカーにより自動的に電気の流れが遮断される現象を、一般的には「ブレーカーが落ちる」と表現しています。このため、ブレーカーが落ちると電気が使えなくなるのです。
ちなみに、分電盤にブレーカーがたくさんあるのは、ブレーカーによって「どのような異常を検知するのか」「どの電気回路の異常を検知するのか」が異なるからです。詳しくは以降で説明します。
一般家庭の分電盤にあるブレーカーは3種類
一般家庭の分電盤にあるブレーカーには大きく分けて、「アンペアブレーカー(サービスブレーカー)」「漏電ブレーカー」「安全ブレーカー」という3つの種類があり、それぞれに別の役割を担っています。分電盤上の一般的な配置は以下の通りです。
アンペアブレーカー(サービスブレーカー)
アンペアブレーカーは、住宅内に流れる電気の総量を管理する役割を持ったブレーカーで、多くの場合、分電盤の左側に配置されています。
一度に使用できる電気の総量は電気事業者との契約により「30A(アンペア)」「40A」などと定められており(契約アンペア数)、それ以上の量の電気が一度に流れるとブレーカーが落ち、住宅全体の電気が使えなくなります。
なお、スマートメーターが設置されているご家庭には、分電盤にアンペアブレーカーがない場合があります。これは、設置されているスマートメーターがアンペアブレーカーの機能を持っているためです。
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漏電ブレーカー
その名の通り、住宅の電気回路内に漏電を検知すると電気の流れを遮断するブレーカーです。このブレーカーが落ちると住宅全体の電気が使えなくなります。漏電は火災の元にもなる重大なトラブル。電気の安全利用を支えているブレーカーといえます。分電盤の中央付近に配置されているのが一般的です。
安全ブレーカー
住宅内の各部屋・場所への電気の供給をコントロールするためのブレーカーです。複数の小さなスイッチで構成されており、分電盤の右側に配置されていることが多いようです。
それぞれのスイッチが、各部屋・場所への電気回路に接続されており、対応する部屋・場所でショートが起きたり、一定以上の量の電流が流れたりすると個別にブレーカーが落ち、その部屋・場所の電気が使えなくなります。
ブレーカーの役割と種類についてご理解いただけましたでしょうか。以降では、それぞれのブレーカーが落ちてしまう原因をおさらいしながら、正しい復旧方法について解説していきます。
アンペアブレーカーが落ちる主な原因と復旧方法
アンペアブレーカーが落ちたときは、ほぼ間違いなく「電気の使いすぎ」が原因です。アンペアブレーカーは電気事業者との契約アンペア数以上の電気を一度に使用すると落ちる仕組みなので、消費電力の大きな電化製品を普段より多く使用していないかを確認しましょう。
消費電力の大きな電化製品の代表例として、電子レンジ、電気ケトル、炊飯器、ドライヤー、電気ストーブ、エアコンなどが挙げられます。
アンペアブレーカーが落ちたときの正しい復旧方法
- 【1】短時間の使用が基本で、かつ消費電力の大きな電化製品を特定する(例:電子レンジ、電気ケトル、炊飯器、ドライヤー、電気ストーブ、エアコンなど)
- 【2】【1】で特定した電化製品の電源をオフにする(電源をオフにできない場合は電源プラグを抜く)
- 【3】アンペアブレーカーのスイッチをオンにする
- 【4】使用する電化製品のみ電源をオンにする
※夜間や十分な明るさがない状況で作業をすると思わぬ事故につながる恐れがあります。懐中電灯やスマートフォンのライト機能などを活用し、手元をしっかりと確認しながら作業を行ってください。
最初に消費電力の大きな電化製品を探して電源をオフにするのは、ブレーカーが落ちる前と同じ状態でブレーカーのスイッチをオンにしても、同量の電気が使用されてまたブレーカーが落ちてしまう可能性が高いからです。
前述の通り、スマートメーターが設置されているご家庭には、分電盤にアンペアブレーカーがない場合があります。通常は10秒後に自動的に電気が流れ始める仕組みになっているので、電気が使えなくなったら、すぐに消費電力の大きな電化製品の電源をオフにするか、電源プラグをコンセントから抜いておきましょう。
漏電ブレーカーが落ちる主な原因と復旧方法
漏電ブレーカーが落ちる原因は、漏電の発生です。住宅内のどこかの電気回線で漏電が起きていると考えましょう。アンペアブレーカーが落ちたときと同様に住宅全体の電気が使えなくなるのですが、こちらのほうがトラブルの深刻度は格段に上です。できるだけ早く対処することが大切なので、スイッチの状況を確実に確認しましょう。
漏電ブレーカーが落ちたときの正しい復旧方法
漏電ブレーカーが落ちてしまったときは、すぐに電気事業者や電気工事会社、不動産管理会社などに連絡して点検・修理を依頼しましょう。漏電は感電や火災などの重大な事故につながる可能性があり、素人感覚で修理したり、放置したりするのは危険だからです。
なお、ご契約中の電気事業者やプランによっては、電気のトラブルに関する駆け付けサービスを提供している場合もあります。契約内容を確認して利用してみるのもよいでしょう。
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しかし、家中の電気が使えない状態で生活をするのは非常に不便です。修理が済むまで待っていられないという方もいらっしゃるでしょう。そこで、一時的な方法ではありますが、漏電が起きている箇所を特定し、それ以外の場所だけの電気を復旧する方法を紹介します。
ただし、漏電ブレーカーの復旧作業を不用意に行うと思わぬ事故を招く恐れがあります。下記の操作は自己責任のもとで行ってください。専門家への点検・修理依頼が最優先と考えましょう。
※夜間や十分な明るさがない状況で作業をすると思わぬ事故につながる恐れがあります。懐中電灯やスマートフォンのライト機能などを活用し、手元をしっかりと確認しながら作業を行ってください。
分電盤を確認し、漏電ブレーカーが落ちていたら、アンペアブレーカーと安全ブレーカーすべてのスイッチをオフにします。
すべてのブレーカーを落としたあとに、アンペアブレーカーと漏電ブレーカーのスイッチを再度オンにします。
安全ブレーカーのスイッチを一つずつオンにしていきます。順番にスイッチをオンにしていくと、あるブレーカーのスイッチをオンにした瞬間に、漏電ブレーカーが落ちるはずです。つまり、そのスイッチと連動している電気回線のどこかで漏電が発生しているということです。
漏電ブレーカーが落ちたら、再度【1】【2】の操作を行います。続いて、漏電の疑いのない場所の安全ブレーカーのスイッチをオンにしていきましょう。これで電気が使えるようになります。
安全ブレーカーが落ちる主な原因と復旧方法
安全ブレーカーが落ちる原因の代表例は、そのブレーカーが対応している部屋・場所での電気の使いすぎと電化製品の故障によるショートです。
特定の部屋だけで電気が使えない状態になったら、安全ブレーカーの状態を確認したうえで、「普段より多くの電化製品をその部屋・場所で使っていなかったか」「電化製品やそのコードから焦げたようなにおいがしていないか」をチェックしてみましょう。
安全ブレーカーが落ちたときの正しい復旧方法
- 【1】電化製品の配線がショートしている可能性があるため、電気がつかない部屋(安全ブレーカーが落ちている部屋)の電化製品の電源プラグをコンセントから抜き、電源もオフにする
- 【2】落ちている(スイッチがオフ)安全ブレーカーのスイッチをオンにする
- 【3】電化製品の電源プラグを一つずつコンセントに挿す
- 【4】使用する電化製品のみ電源をオンにする
※夜間や十分な明るさがない状況で作業をすると思わぬ事故につながる恐れがあります。懐中電灯やスマートフォンのライト機能などを活用し、手元をしっかりと確認しながら作業を行ってください。
※特定の電化製品の電源コードに傷や焦げがある場合は、その電化製品のショートが原因で安全ブレーカーが落ちた可能性があります。以降の使用は控えたほうがよいでしょう。
安全ブレーカーは、そのスイッチに割り当てられた一定の量以上の電気が流れると落ちる仕組みになっています。そのため、単純にスイッチをオンに戻すだけでは、またすぐにブレーカーが落ちてしまう可能性があります。
安全ブレーカーが落ちている部屋・場所にある電化製品の電源プラグをコンセントから抜き、電気が使用されていない状態を作ってから、スイッチをオンにしましょう。
災害時に避難するときはブレーカーを落とそう
地震や台風、大雨などの災害に見舞われ、一時的にご自宅から避難しなければならないときは、すべてのブレーカーを落とすことをおすすめします。災害時には停電が起きやすいのですが、問題は電気の供給が再開したあとです。
地震や台風などで住宅が損害を被ったときには、住宅内にある電気の回線や電化製品も破損してしまうケースが少なくありません。そんなときに電気の供給が再開すると、電気の回線や電化製品が火災の元になってしまう可能性があるのです。
アンペアブレーカーが頻繁に落ちて困ったら
ブレーカーは住宅内の電気回路になんらかの異常が発生したときに、電気の供給をストップするものです。ご家庭で安全に電気を使うためには欠かすことができません。しかし、なかにはアンペアブレーカーが頻繁に落ちてしまい、普段の生活に支障をきたしてしまうようなケースもあるようです。
前述したように、アンペアブレーカーは契約アンペア数以上の電気を一度に利用すると落ちる仕組みになっています。つまり、電気の使いすぎが原因で落ちるということ。同時に使用する電化製品の数を減らせば、アンペアブレーカーが落ちることはなくなるのですが、普段の心掛けだけでは対応しきれないこともあります。例えば、下記のようなケースです。
- 電化製品を新たに購入して設置したら、アンペアブレーカーが落ちやすくなった
- 同居する人数が増えたら、アンペアブレーカーが落ちやすくなった
こういった場合は根本的な解決策を講じる必要があります。最もシンプルなのは「契約アンペア数を上げる」という方法です。契約アンペア数を超えた電気を使用するとアンペアブレーカーが落ちるのですから、契約アンペア数を上げれば、アンペアブレーカーは落ちづらくなります。
契約アンペア数は、ほとんどの場合、電気事業者に電話やWebサイトから申し込むだけで変更できます。難しい手続きは必要ありません。
ただし、注意が必要なのは単純に契約アンペア数を上げると、電気料金が高くなってしまう可能性が高いこと。多くの電気事業者が契約アンペア数と連動して基本料金が高くなる料金体系を採用しているからです。
一例として、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bという一般家庭用プランの契約アンペア数と基本料金の関係を下の表にまとめてみました。契約アンペア数によって基本料金に大きな違いがあることがわかるはずです。
東京電力エナジーパートナー(従量電灯B)の契約アンペア数と基本料金 | |
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契約アンペア数 | 基本料金 |
10A | 286円 |
15A | 429円 |
20A | 572円 |
30A | 858円 |
40A | 1,144円 |
50A | 1,430円 |
60A | 1,716円 |