太陽光発電を検討する上で、「本当に節約できるのか」「初期費用の元は取れるのか」という疑問をお持ちの方は多いでしょう。太陽光発電の費用対効果や導入・運用にかかるコストを詳しく解説します。システムの設置に向かない家の特徴も把握しておきましょう。
太陽光発電が電気代の節約になる理由
オール電化や電気自動車(EV)の普及により、ご家庭の電力消費量が増えつつあります。電気代を節約するため、太陽光発電を検討するご家庭もありますが、設備導入で家計にはどのような変化があるのでしょうか?「太陽光発電で電気代が節約できる」とされる3つの理由を解説します。
発生した電気は自家消費できる
太陽光発電は、太陽光を電気に変換できるシステムです。システム内にはパワーコンディショナーと呼ばれる太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換する機器があり、太陽光パネルから流れてきた直流の電気を家庭用の交流電流に変換します。
太陽光発電のメリットは、発電した電気を自家消費できる点です。「日中は太陽光発電で生じた電気を使い、夜は電力会社から電気を購入する」というスタイルにすれば、買電量(かいでんりょう)が減って電気代が安くなります。
電気代に含まれる燃料費調整額や再エネ賦課金などの支払いも抑えられるため、家計負担は大きく軽減するでしょう。
⇒太陽光発電の仕組みについて詳しく知りたい方はこちら
蓄電池があれば夜の電気代も減る
太陽光発電は太陽光を受けたソーラーパネルで発電するため、太陽が出ていない夜間は使用ができません。
しかし、昼間に発電した電気を「蓄電池」に溜めておけば、発電できない夜間や早朝にも溜めておいた分の電気が使えます。電力使用量が発電量を下回る場合、電気代は限りなくゼロに近づくでしょう。
蓄電池とは、電気を蓄える機能を持ったバッテリーのようなものです。かつては工場や商業施設に設置する大型タイプが主流でしたが、近年は小型化が進んでいます。蓄電池と太陽光発電を組み合わせれば、電気代の節約につながる上、災害時や停電時にも役立ちます。
⇒家庭用蓄電池について詳しく知りたい方はこちら
余剰電力は買い取ってもらえる
日本には、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が保証する「固定価格買取制度(FIT制度)」があります。
再生可能エネルギーとは、自然界に常に存在する枯渇しないエネルギーのことで、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなどが該当します。
発電量が自家消費に必要な量を上回った場合、余剰電力を電力会社に買い取ってもらえるのがメリットです。一定の売電収入を得られれば、太陽光発電の初期投資がスピーディに回収できるでしょう。2023年度の住宅用(認定容量10kW未満)の売電価格は、1kWhあたり16円です。
※出典:買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
太陽光発電の導入コストは高い?
太陽光発電が電気代の節約につながるのは事実ですが、「導入コストが高くて元が取れない」というイメージを持つ方は少なくありません。一般家庭が太陽光発電を導入する場合、本体の購入や取り付け工事にどれほどの費用がかかるのでしょうか?
設置費用は低減傾向
経済産業省が公開する資料によると、2012年のシステム費用(新築・既築)の平均は1kWあたり465,000円でしたが、2021年は288,000円にまで低減しました。約10年で4割ほどコストダウンしたことになります。4kWの容量のシステムを設置する場合、費用は約1,150,000円になる計算です。
システム費用は、工事費と設備費に大別されます。主な設備は、太陽光パネル・パワーコンディショナー・架台で、最もコストがかかるのは、太陽光パネルの購入です。新築に設置する場合、システム費用の平均は1kWあたり302,000円です。内訳を見てみましょう。
- 工事費:66,000円
- 太陽光パネル:171,000円
- パワーコンディショナー:42,000円
- 架台:21,000円
- その他:2,000円
補助金制度が活用できるケースも
太陽光発電設備の設置には1,000,000円ほどの費用がかかるのが一般的です。まとまった資金の調達が困難なご家庭は、国や自治体の補助金制度を活用しましょう。要件を満たした場合、上限の範囲内で補助金額が支給されます(※)。
例えば、東京都八王子市では、太陽光発電システム1kWあたり1万円の補助を行う「再生可能エネルギー利用機器等設置費補助制度」を設けています。上限は100,000円で、必ず機器設置工事の着工前に申請を行うことなどが条件です。
京都府宇治市では、太陽光発電システム1kWあたり1万円(上限40,000円)の補助のほか、住宅用蓄電設備への補助も行っています。自治体ごとに制度が異なるため、詳しくは市区町村の窓口に問い合わせましょう。
(※)2023年5月時点
※出典:再生可能エネルギー利用機器等設置費補助制度|八王子市公式ホームページ
太陽光パネルの寿命は20~30年
高いお金をかけてシステムを設置しても、稼働寿命が短ければ元が取れません。実際に使用した場合、システムはどのくらい持つのでしょうか?
太陽光パネルの稼働寿命は20~30年といわれており、国内には30年を過ぎても稼働し続けるシステム事例もあります。一方、パワーコンディショナーの寿命は10~15年ほどで、太陽光パネルよりは耐用年数が短めです。
費用対効果を考えるときは、10年を1つの目安にしましょう。固定価格での買取期間が10年間に固定されているため、システムを導入した最初の10年間は費用対効果の予測がしやすいでしょう。電気代節約と売電収入で、10年以内に初期費用を回収するのが理想です。
導入前に設置条件をチェック
太陽光パネルには設置に適した環境があります。立地や屋根の状態によっては、設置できない場合もあるため、導入前の事前調査は欠かせません。既存住宅の後付けも可能ですが、新築の建設と同時に設置するのがベターです。
屋根の方向・日当たり
発電量は屋根の方向や日当たりによって大きく変わります。設置に最も適しているのは、太陽の光がさんさんと降り注ぐ「南向きの屋根」です。真南・南東・南西の屋根であれば、充分な発電量が確保できるでしょう。
逆に北向きの屋根には太陽光が少なく、発電量が大幅に低下します。北向きの屋根に設置が可能かどうかは、素人では判断ができません。信頼できる専門業者にシミュレーションをお願いすることをおすすめします。
東向き・西向きの発電効率は、南向きよりも発電量が15%ほど減少するため、高効率のパネルを取り付けるのが望ましいでしょう。
屋根の面積・状態
近年は、狭いスペースにも設置できる小型の太陽光パネルが登場していますが、基本的には広い屋根の方が設置に適しています。
建物や屋根の老朽化が進んでいる場合は、屋根の補強工事が必要です。耐震強度の問題から、築年数が長い住宅には設置ができない可能性があります。
太陽光パネル1枚の最大出力(発電能力の最大値)はメーカーごとに異なりますが、約185~355Wが平均です。1枚200Wとした場合、4kWでは約20枚もの太陽パネルを設置しなければなりません。1枚が約15kgの重量とすると、屋根全体に300kgもの負荷がかかる計算です。
周囲の環境・地域性
設置を検討する前に、周囲の環境や地域性のリサーチを徹底する必要があります。以下のような環境は太陽光発電の設置にあまり適していません。
- 自宅が住宅の密集地にある
- 周囲にビルやマンションなどが建設される予定がある
- 海から近い
住宅密集地にある場合、太陽光パネルの反射光によって周囲の住宅に迷惑をかけることがあります。北向きは近隣の建物に反射する可能性が高いため、設置前のシミュレーションはしっかりと行いましょう。実際、近所トラブルが裁判に発展したケースがあります。
海から近い地域は「塩害」のリスクがあります。塩害とは、海水や潮風などに含まれる塩分によって建物が腐食・劣化する被害です。金属部分や樹脂部分が劣化して、耐久性が低くなる恐れがあり、塩害対策は欠かせません。
特に注意が必要なのが、精密機器であるパワーコンディショナーです。金属は塩害の被害を受けやすいため、各メーカーの塩害対策や保証を確認した上で購入をしましょう。
容量と発電量の目安は?
太陽光発電を導入する上で理解しておきたいのが、発電容量(kW)と発電量(kWh)の目安です。両者は比例の関係性にあり、発電容量が大きければ大きいほど、発電量が多くなります。自宅の屋根の広さや予算、設置目的に応じて最適な容量を選びましょう。
住宅用の主流は3~5kW
発電容量(kW)とは、太陽光発電システムでどれだけ発電できるかを表したスペック値で、出力容量やシステム容量とも呼ばれています。
発電容量が10kW未満のものは「住宅用」、10kW以上のものは「産業用」として区別されており、一般家庭では3~5kWが主流です。容量が大きければ、より多くの発電が可能ですが、設置するパネル数も多くなります。
太陽光発電協会によると、太陽光システム1kWあたりの年間発電量は約1,000kWhです。発電容量が4kWの太陽光発電システムでは年間約4,000kWhとなり、1日の発電量は約11kWになる計算です。
なお、発電量の目安はさまざまな条件によって変動します。常に一定の発電量が確保できるわけではない点に留意しましょう。
※出典:ニッポンのすべての屋根に太陽光発電を!住宅用太陽光発電システム設置のすすめ|太陽光発電協会
産業用は10kW以上
10kW以上の太陽光発電は産業用に区分されますが、一般家庭の住宅に設置しても問題はありません。家庭内で消費する電気は、10kW未満のシステムで十分に賄えますが、「余剰電力を積極的に売って収入を増やしたい」というご家庭は10kW以上がおすすめです。
固定価格買取制度において、1kWhあたりの買取価格(2023年度)は以下の通りです。
- 10kW未満:16円
- 10kW以上50kW未満:10円
買取価格だけを比較すると、10kW未満の方がお得だと感じるかもしれません。しかし、固定価格での買取期間は10kW未満が10年、10kW以上50kW未満は20年です。買取価格は下落傾向にあり、総合的な収益は10kW以上の方が大きくなる可能性があります。
※出典:買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
太陽光発電のデメリット・注意点
太陽光発電の導入には多くの費用がかかるため、デメリットや注意点を理解した上で、本当に必要なシステムであるかを判断する必要があります。不明点や不安点があれば、信頼できる専門業者に相談し、現地調査や見積もりを依頼しましょう。
夏は発電効率が低下する
太陽光発電のシステムは熱に弱く、直射日光が強い夏は発電効率が低下します。太陽光パネルのパフォーマンスが最も高まるのは、パネル温度が25℃以下のときです。
パネル温度が1℃上昇するごとに性能が約0.5%低下するといわれているため、高温日が続く真夏は想定した発電量が確保できない可能性があるでしょう。パネル温度の上昇によって発電効量が目減りすることを「熱損失」と表現する場合があります。
発電効率が最も良い季節は、春から初夏にかけて(3月~5月)です。梅雨時や真冬は熱損失が少ないものの、曇りの日が多かったり、日照時間が少なかったりして発電量は少なめになります。冷暖房器具を多用する夏や冬は、太陽光発電だけに頼るのは難しいため、蓄電池の導入も検討するのがよいでしょう。
メンテナンス費用がかかる
システムを維持していく上では、継続的なメンテナンスが必要です。太陽光パネルの寿命は20~30年といわれていますが、メンテナンス状況によって、寿命が延びることもあれば、短くなることもあります。以下は必要なメンテナンスと費用の目安です。
- 定期点検(4年に1回が目安):1回あたり約10,000~20,000円
- 太陽光パネルの清掃(汚れ具合に応じて):1回あたり約30,000~60,000円
- パワーコンディショナーの交換(10~15年に1回):約200,000~300,000円
太陽光パネルには黄砂・花粉・鳥糞などが付着しやすく、汚れを放置すると発電効率が低下します。
マイクロファイバーモップとガラス専用洗剤を使って自分で掃除する手もありますが、高所の作業は危険が伴います。パネル表面に傷が付く恐れがあるため、専門業者に依頼するのが賢明でしょう。
費用対効果のシミュレーションが重要
太陽光発電の導入すると、月々の電気代が安くなります。売電収入が得られれば、初期費用の早期回収が実現するでしょう。
一方で、発電量は立地環境や季節、天候に大きく左右されます。毎日一定の発電量が得られるわけではないため、シミュレーションや実地調査をしっかりと行った上で導入を検討する必要があります。
設置するシステムの容量や世帯人数にもよりますが、太陽光パネルの設置のみで電気代0円を目指すのは容易ではありません。太陽光パネルの導入と併せて、蓄電池導入の検討や電力会社・プランの見直しを検討しましょう。
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(30代 / 女性 / 3人暮らし)
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(40代 / 男性 / 1人暮らし)
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まずは、電気料金プランを見直して、今の生活のままで電気代が安くなるのか試してみてはいかがでしょうか。