再生可能エネルギーを利用しようと考えて、自宅に太陽光発電を設置する方が増えています。ただ、設置を検討する方の中には、まとまった資金が必要となるだけに、太陽光発電設備が実際のところどれくらい発電し続けてくれるのか心配している方もいます。
太陽光パネルの寿命は、どれくらいの期間となるのでしょうか。また、長く使うためのコツや、どういう点に気をつけるべきかを解説します。
太陽光発電パネルの寿命は?
太陽光発電パネルの寿命は、通常どれくらいの期間なのでしょうか。
寿命は20~30年
太陽光パネルの寿命は20〜30年程度とされています。構造はシンプルで、初期不良がないかぎり、20〜30年の間は故障せずに稼働することが通常です。ただし、個別の製品の使用の条件により、寿命は延びたり、あるいは短くなったりします。
奈良県・壷阪寺の例
現実、長い間稼働している太陽光発電設備があります。現存する太陽光発電設備で、日本で一番古いとされているのは奈良県の壷阪寺(つぼさかでら)で、1983年に設置された設備です。当時の住職が「自然エネルギーで観音様を照らしたい」と考え、設置したものだそうです(※1)。
使用されているのはシャープ製の太陽光発電パネルで、2022年現在で39年間稼働しています。2011年に実施した検査では、当時28年経過していて、出力低下は6.43%のみでした(※2)。
太陽光発電は、適切に管理されれば製品寿命も非常に長く、性能低下もわずかであることが実証された形です。
太陽光発電の法定耐用年数
太陽光発電の寿命について考えるうえで、法定耐用年数にも触れておきましょう。
法定耐用年数とは
「耐用年数」とは、減価償却資産(年々価値が減っていく資産のこと)を通常の用途で使用した場合、通常予定される効果を上げることができると見込まれる年数のことをいいます。法定耐用年数は財務省令で定められているものです(「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」)。
太陽光発電の法定耐用年数は、売電用であれば17年とされています(※)。ただし、法定耐用年数は実際の寿命とは異なり、会計上の概念であって、あくまで減価償却の計算のための年数です。会計上は、耐用年数を経過すると資産価値が帳簿上0になると考えます。
太陽光発電設備と減価償却
減価償却資産には、税務上のメリットがあります。
事業用の設備は取得にかかった費用を経費とすることができますが、減価償却試算の場合、一定のルールの下で毎年経費を配分し、課税対象となる所得額から差し引くことが可能なのです。
例えば、太陽光発電で売電収入を得ていると、確定申告をする必要が出てきますが、その際減価償却によって、太陽光発電設備の取得に要した金額をルールにしたがって毎年の経費として計上します。計上された経費は所得から控除することができるのです。
パワーコンディショナーの寿命
太陽光発電設備は基本的にはパネル・パワーコンディショナー・ケーブル・架台により構成されます。基本構成にさらにプラスして、蓄電池を接続すると、夜間も太陽光で発電した電力が使えるほか災害用のバックアップ電源としても使えるようになります。
寿命を考えるためには、発電した電気を電気器具に使えるようにする役割をするパワーコンディショナーも重要です。
パワーコンディショナーとは
パワーコンディショナーとは太陽光パネルで発電した直流電力を交流電力へ変換する機器のことをいいます。「パワコン」や「PCS(Power Conditioning System)」とも呼ばれています。
私たちが使っている電気の流れには、直流と交流の2種類があります。直流とは、電気が流れるとき、その電流や電圧、極性(向き)が一定のものを指します。例えば、電池は直流電源の代表的なものです。
一方、交流とは、電流、電圧、極性が周期的に変化するものです。例えば、家庭のコンセントに挿して得られる電気は、100Vの交流電源です。
そして、太陽光発電は太陽の光エネルギーから電気を生み出す太陽電池を利用した発電方式で、直流電源となります。
太陽光パネルで生まれた直流電力を交流電力に変換しないと、発電しても電力供給に利用することはできません。そのため、太陽光発電設備の寿命を考える際には、パワーコンディショナーの寿命を考えて、交換費用を積み立てるなど、準備をしなければならないのです。
15年に一度は交換する必要がある
パワーコンディショナーの寿命は一般的には10〜15年とされています。太陽光発電設備全体は20年以上の寿命があるので、最低一度のパワコンの交換を迎える計算になります。パワーコンディショナーのメーカーの保証期間も、10年〜15年が多いようです。
太陽光発電の寿命を長くする方法
太陽光発電設備の寿命をなるべく長くするためには、定期的なメンテナンス・点検などいくつかの方法があります。
定期的なメンテナンス・保守点検を行う
太陽光パネルは「メンテナンスフリー」と言われることもありますが、長持ちさせるためには定期的なメンテナンス・保守点検が必要です。
太陽光パネルにはまれに初期不良が発生することがありますが、定期的な点検をしていると初期不良に早く気付くことができるなど、早く対応することができます。点検で気が付いたことを基に対応すると、太陽光パネルを長持ちさせることができます。
2017年4月の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)改正により、FIT認定の太陽光発電所の保守点検が義務化され、住宅用太陽光発電も定期点検の対象に含まれるようになりました。
定期点検には、異常や破損に早く気付くことができること、また、設置の安全性を確認でき、太陽光発電パネルが外れる事故を予防できることなどのメリットがあります。
定期点検はどれくらいの頻度で、何を見たらいいのかは、日本電気工業会・太陽光発電協会が共同で刊行しているガイドラインに詳しい記載があります(※)。
同ガイドラインによると太陽光発電の点検は最低でも4年に1回必要であり、以下のような項目について点検が必要です。
設置1年目 初期不良の発見
設置5年目 劣化・破損状況の確認
設置9年目以降 劣化・破損状況やメーカー保証期間の確認、消耗部品の交換
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設置20年目以降 劣化・破損状況の確認や設備の交換時期の検討
特にパワーコンディショナーは耐用年数がパネルより短いこと、適時に交換すべき消耗部品もあることから、しっかり点検してもらいましょう。
メーカーや施工業者の保証を活用する
保証を活用し、無料修理をうけることにより、太陽光パネルもパワーコンディショナーも長持ちさせることができます。
太陽光パネルについて、メーカーの多くは10〜15年のシステム保証を行い、さらに、20〜25年の出力保証をしています(※1)。また施工業者が10年の施工保証をしている場合もあります(※2)。
使用中に異常が発生した場合に、保証を利用することはもちろんですが、点検で異常が発生することがあったときも無料で修理をしてもらうことが無料修理保証期間内は可能です。点検に加え、異常があった場合は保証を活用し、設備を長持ちさせましょう。
太陽光パネルの清掃をする
パネルに付いた汚れは基本的に雨で落ちます。
しかし、落ち葉や鳥のふんなどが付着したところは雨では落ちにくいことがあります。放置すると電気の流れが悪くなり、発熱する現象=ホットスポットが生じる可能性があるので、パネルの表面から付着物を取るのがおすすめです。
気になる方は、高所作業になるので専門業者に依頼して清掃してもらいましょう。
太陽光パネルの廃棄について
10kW未満の住宅用太陽光発電はFIT制度によると電力の買取期間が10年、10kW以上の事業用太陽光発電所は買取期間は20年です(※)。
FIT制度が開始されたのが2012年なので、住宅用太陽光発電の買取期間10年を考えると、買取期間が終了するご家庭が増えてくると思います。ただし、買取期間を終えた後の売電については、FIT価格以下にはなりますが継続することができます。また、事業用太陽光発電所も自家消費用に転用することも可能です。一方で、「廃棄」という選択肢も出てきます。
廃棄には環境への配慮から留意点があります。具体的にはどのように行えばいいのでしょうか。
太陽光パネルは産業廃棄物
太陽光パネルは産業廃棄物になるので、廃棄物処理法により、必ず専門業者に委託して処分をすることが必要です。
廃棄する太陽光パネルは、産業廃棄物の品目のうち「金属くず」、「廃プラスチック類」、「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」の混合廃棄物という扱いになります。それらの必要な許可を取得した専門業者に依頼することが法的義務となります。
専門業者には、廃棄物処理法によって課される処理方法の制限や手続きがあり、これらにしたがって適切に処分を行う義務があります。
また、太陽光パネルの撤去作業も、パネルが割れるおそれがある、電気配線を切断するための技術が必要となる、高所作業となる(屋根置きの場合)などさまざまな危険が予想されますので、自力ではなく必ず専門業者に委託しましょう。
事業用太陽光発電所は廃棄費用の積立が義務化
太陽光パネルを適切に廃棄処分せずに、放置したり、不法投棄したりすることは違法行為です。特に野立ての事業用太陽光発電所については大量の産業廃棄物が予想されることから、FIT法は改正されて2022年4月1日より「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となり、廃棄費用の積立が義務化されます(※)。
不法投棄は環境破壊
環境省は、ガラスや有用な金属が含まれている太陽光パネルは、リサイクルが可能であることから、できるだけ専門業者によるリサイクルを呼びかけています。
さらに、太陽光パネルの廃棄の取り扱いについては埋め立てによる最終処分を管理型最終処分場で行うべきことについて注意喚起もしています。管理型最終処分場とは、埋め立てた廃棄物の中を通った雨水など(浸出水)が周辺の土壌や地下水に影響を与えないよう対策が整えられた最終処分場です。
環境にやさしいはずの太陽光発電が、パネルの不法投棄によって環境を破壊するのは本末転倒ですので、産業廃棄物処理に関するルールが守られなければなりません。一般の住宅で太陽光パネルを利用する方も、廃棄の際には専門業者に委託することとして、環境に対する責任を果たす必要があります。
太陽光発電の導入はLooopにご相談ください
太陽光発電設備はまとまった初期費用がかかることが難点とされています。住宅用太陽光発電はFIT価格での売電が約束されていますが、買取価格が毎年下落していることも懸念材料です。
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