今まで一般ご家庭から公共施設まで光源として広く使用されてきた水銀灯。現在は水銀灯からLEDなどへの移行を推奨するメーカーも増え、一般家庭で使用されている数は少なくなってきています。
水銀灯とLEDでは電気代はどのくらい違うのでしょうか。また、水銀灯からLEDに切り替えるメリットはあるのでしょうか。
この記事では、水銀灯の特徴や水銀灯にかかる電気代、LEDとの違いについて解説します。現在使っている水銀灯からLEDに買い換えを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
水銀灯とは
まずはじめに、水銀灯の特徴や水銀を使用した製品に関する規制とその理由について解説します。
水銀灯の特徴
水銀灯の正式名称は「高輝度放電灯」。ガラス管内の水銀蒸気中で起こるアーク放電という現象を利用した光源で、その特徴から「水銀灯」と呼ばれています。照明用として最も一般的な電灯の一つである蛍光灯も水銀灯の一種です。
また、放電という不安定な現象を利用する水銀灯を実際に明かりとして使用する際には、「安定器」というランプに流れる電流を調整するための機器が必要になります。
水銀灯はいくつかのタイプに分かれていますが、ここでは代表的な4つをご紹介します。
まず、低圧水銀灯は強い紫外線を放つことでも知られており、UV照射用ライトや殺菌用ライトとしても利用されています。
次に高圧水銀灯は日本の工場や倉庫、体育館などでよく使用されているランプで、強い光と熱を発するのが特徴です。
続いてバラストレス水銀灯。前述の安定器を内蔵したタイプで、屋外に設置する看板などに使われています。
最後に超高圧水銀灯です。管内の水銀灯の圧力が1000kPaを超えるものを指し、主に産業用として利用されています。
水銀の規制について
水銀を使用した製品は、近年では製造中止など規制される流れになっています。規制の理由は主に水銀による環境汚染です。
2001年に始まった国連環境計画(UNEP)による活動から始まり、2013年には政府間交渉委員会第5回会合(INC5)にて、国際的な水銀に関する条約である「水銀に関する水俣条約」が結ばれました。2017年には発効条件である締約国数が50カ国に達したため、この条約が効力を持つに至りました。
2020年にはこの条約に従って、一定量の水銀を使用した製品の全面規制が通達されています。
また、「水銀に関する水俣条約」の発効を受け、2018年には日本でも「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」と関連法の改正が行われ、法律によって正式に水銀の生産が中止となりました。
「水銀汚染防止法」と呼ばれるこの法律では、水銀の日本国内での製造はもちろん、海外からの輸入・持ち込みも禁止。水銀を使用している水銀灯も、生産は事実上全面廃止となっています。
こうした背景から、従来の水銀灯をLED電球に切り替える必要性ができているのです。
水銀灯のデメリット
生産廃止の流れにある水銀灯には、どんなデメリットがあるのでしょうか。
まず挙げられるのは、前述の「水銀に関する水俣条約」の理由にもなった環境汚染問題です。工業廃棄物に含まれる水銀が原因の公害病・水俣病は1956年に熊本水俣市で発見されました。15,000人以上の被害者を出したこの公害病は、世界各地でも同様の症状が確認されています。
厳密に言えば、水銀灯に使用されている水銀は、水俣病の原因であるメチル水銀とは異なる「金属水銀」と呼ばれるものです。しかし、この「金属水銀」は気化しやすく、吸い込むと肺をはじめとする臓器に危害が及ぶ恐れがあります。
リスクを懸念した各メーカーによって、水銀灯内に入れる水銀の量の削減が行われ、1974年に約50mgだった平均封入量は2002年には約10mg以下に抑えられていましたが(※)、先ほどの「水俣条約」によって生産が規制される結果となりました。環境汚染や健康への懸念は水銀灯の持つ大きなデメリットなのです。
水銀灯のデメリットはほかにもあります。先ほども触れた通り、水銀灯の紫外線放射量はかなり多く、その波長を好む虫が寄り付きやすいです。太陽光の紫外線がない夜の屋外では水銀灯の周囲に虫が集まるため、虫のフン害や、集まる虫を狙いクモが巣を張るなど衛生面や景観に問題が生じます。
また、水銀灯は熱も発するため、屋内で使用すると空調の効率が落ちてしまう場合があることも省エネや節約の観点から好ましくありません。
その他、LEDに比べると、水銀灯の寿命はかなり短いです。ゴミが増えやすいだけでなく、明かりにかかるコストも大きなものになってしまいます。
水銀灯の電気代
水銀灯についての基礎知識がわかったところで、次は水銀灯にかかる具体的なコストについて見てみましょう。ここからは、電気代の計算方法について説明します。
電気代の計算方法
電化製品にかかる電気代は、以下の計算式で計算できます。
消費電力(W)÷1,000×1日の使用時間(時間)×1kWhあたりの電力量料金(円/kWh)
まずは製品に記載されている消費電力と稼働時間をかけて消費電力量を算出します。はじめから消費電力量が記載されている場合は、計算の必要はありません。
次に電気量料金単価の単位はkWhなので、消費電力量がWhの場合は1,000で割り単位をそろえてください。また、ここでは1時間あたりの電気代の目安単価を27円/kWh(※1)とします。
例として一般的なご家庭用LED電灯をモデル(※2)に、1日8時間点灯すると仮定して1日分の電気代を計算してみましょう。
38.1(W)÷1,000×8(h)×27(円/kWh)=8.2296(円)
1日あたり8時間の点灯で約8円という計算結果になりました。
水銀灯の消費電力と電気代
それでは、実際に水銀灯の電気代を、消費電力ごとに計算してみましょう。よく使われている水銀灯の消費電力は、以下の6つに分かれています。
300W / 400W…工場や体育館など屋内照明、道路や商店街など屋外照明向け。ムラなく照らせる蛍光形などがある
700W / 1000W…大規模な屋内施設や広い屋外照明向け。蛍光形や、ガラス球に反射鏡が貼り付けられた反射形などがある
1500W / 2000W…大規模な屋内施設ほか、工事現場や庭園などの夜間照明屋外用投光照明向け。蛍光形、反射形がある
300Wの場合
300Wの水銀灯を1日10時間点灯すると仮定して、電気代を計算してみましょう。先述の電気代の計算式を当てはめます。
300(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=81(円)
1日分の消費電力は81円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
300(W)×10(h)×30(日)=90000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
300(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=2,430(円)
400Wの場合
400Wの水銀灯も同じく1日10時間点灯すると仮定して、電気代を計算してみましょう。
400(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=108(円)
1日分の消費電力は108円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
400(W)×10(h)×30(日)=120000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
400(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=3,240(円)
700Wの場合
700Wの水銀灯を1日10時間点灯すると仮定した電気代は以下の通りです。
700(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=189(円)
1日分の消費電力は189円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
700(W)×10(h)×30(日)=210000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
700(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=5,670(円)
1000Wの場合
1000Wの水銀灯を1日10時間点灯すると仮定した電気代は以下の通りです。
1000(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=270(円)
1日分の消費電力は270円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
1000(W)×10(h)×30(日)=300000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
1000(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=8,100(円)
1500Wの場合
1500Wの水銀灯を1日10時間点灯すると仮定した電気代は以下の通りです。
1500(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=405(円)
1日分の消費電力は405円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
1500(W)×10(h)×30(日)=450000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
1500(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=12,150(円)
2000Wの場合
2000Wの水銀灯を1日10時間点灯すると仮定した電気代は以下の通りです。
2000(W)÷1,000×10(h)×27(円/kWh)=675(円)
1日分の消費電力は675円になりました。
1カ月の電力消費量は以下の通りです。
2000(W)×10(h)×30(日)=600000(W)
1カ月の電気代は以下の通りです。
2000(W)÷1,000×10(h)×30(日)×27(円/kWh)=16,200(円)
水銀灯の電気代一覧 | |||
---|---|---|---|
ワット(W)数 | 1日の消費電力量 | 1カ月の消費電力量 | 1カ月の電気代 |
300W | 81円 | 90000W | 2,430円 |
400W | 108円 | 120000W | 3,240円 |
700W | 189円 | 210000W | 5,670円 |
1000W | 270円 | 300000W | 8,100円 |
1500W | 405円 | 450000W | 12,150円 |
2000W | 675円 | 600000W | 16,200円 |
水銀灯とLEDの違いとは
生産が規制された水銀灯に代わり、ご家庭から企業、公共施設までLEDの明かりを見かけるようになりました。水銀灯とLEDでは、何が違うのでしょうか。
LEDとは
LEDは、端的に言えば電気を流すと光る性質を持つ半導体です。電気を熱に変換し発光していた従来の電球とは違い、電気をそのまま光に変換できます。「Light Emitting Diode」という英語の略称で、日本語の名前は「発光ダイオード」。こちらの表記なら見聞きしたことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
LEDは省エネ効果が優れているため、一般ご家庭で使用される電球形LEDランプをはじめ、施設照明や屋外照明などの幅広い用途で需要が急拡大しています。
LEDの特徴
LEDにはこれまでの電球の欠点を補うような特徴がいくつかあります。まず、消費電力が少ないこと。先ほども触れたように、電気を熱に変換する必要がないので、その分消費電力をかなり抑えられます。
また、LEDに使われている半導体は劣化しにくく、平均寿命が長いのも特徴です。白熱電球の寿命が1,000~2,000時間、蛍光灯の寿命が6,000~12,000時間程度であるのに対し、LEDの寿命は40,000~60,000時間。1日10時間の使用で10年以上持ちます。
仕組み上、スイッチをつけるとすぐに点灯するのもLEDのメリットです。手もとや足もとをすぐに照らす必要があるときもストレスなく使えます。
LEDは水銀や鉛などの環境負荷物質を含まないため、エコの視点からも優れています。また、基本的に衝撃に強いLEDですが、万が一割れてしまったときも、内容物に健康が害される心配もありません。
LEDには虫が寄り付きにくいというメリットもあります。これは、虫の好む紫外線をほとんど出さないためです。
水銀灯とLEDの違い
水銀灯とLEDの違いをポイント別に比較してみましょう。まずは消費電力です。120Wの水銀灯と同等のLED電球は28W。80%弱もの節電につながります。
また12,000時間の水銀灯と同等のLED電球の寿命は約3倍の40,000時間。先ほども触れましたが、1日10時間の使用で約10年は替える必要がない計算です。
点灯性でもLEDが勝っています。水銀灯は消灯後、再点灯するまで10~20分待たなくてはなりませんが、LEDは瞬時に点灯可能です。
さらに、水銀灯が点灯時に持つ熱は300℃以上ですが、LEDは80℃前後とかなり抑えられており、安全面でもメリットがあります。
ここまで解説した水銀灯とLEDの違いを表にまとめてみました。
水銀灯とLEDの違い | ||
---|---|---|
水銀灯 | LED | |
消費電力(同等で比較) | 120W | 28W |
寿命 | 12,000時間 | 40,000時間 |
点灯性 | 瞬時点灯不可 | 瞬時点灯可 |
ランプの発熱 | 300℃以上 | 80℃前後 |
水銀の含有量 | 13mg(80Wの製品) | 0 |
電気代の節約方法
ここまでの内容を踏まえて、電気代の節約方法について解説します。
水銀灯からLEDに切り替える
先ほども触れた通り、LEDは消費電力が低くエネルギー効率の良い電灯です。光源を水銀灯からLEDに切り替えることで、消費電力を3分の1ほどに落とし、同時に電気代を抑えることができます。
LEDの設置費用など初期コストはかかりますが、消費電力やLEDの寿命など長期的に考えれば、LEDのほうがコストパフォーマンスが優れています。
水銀灯からLEDに切り替えることは、電気代の節約につながると言えるでしょう。
電力会社やプランを見直してみる
大幅に電気代の節約をしたければ、契約プランや電力会社を見直すのも良い方法です。
2016年の電力の小売全面自由化に伴い、おのおのが自由に電力会社と契約できるようになりました。参入した電力会社も、ライフスタイルに応じたさまざまな電気代プランを提案しています。
こうした中から契約する電力会社を乗り換えれば、月々の電気代を大きくカットできる場合もあります。
まとめ
「水俣条約」によって生産に規制がかかった水銀灯の代わりに、欠点を補ったLEDが主流になりつつあります。性能や環境保全の観点だけではなく、電気代も大きく抑えられるのがLEDの魅力です。水銀灯からLEDへの切り替えを考えている方は、ご紹介した内容を参考にしてみてください。
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まずは、電気料金プランを見直して、今の生活のままで電気代が安くなるのか試してみてはいかがでしょうか。