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電力小売自由化や新たな住宅購入の際によく目にする「HEMS(ヘムス)」。節電につながるとされるHEMSですが、具体的にはどのようなシステムなのでしょうか。この記事では、HEMSの基本的な仕組みやメリット、デメリットなどについて解説します。この先、すべての世帯に導入される見通しなので、この機会にぜひHEMSについて知ってみましょう。

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HEMSの基礎知識

ここでは、HEMSという言葉の意味をはじめとする基礎知識について解説します。

HEMSとは

HEMS(ヘムス)とは「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略称です。ご家庭内で消費するエネルギーを「見える化」できるシステムを指します。

HEMSの基本的な機能は、電力消費量を時間単位で記録することです。記録を見れば電力消費量の多い時間を振り返り、効率的な節電対策を考えられます。

また、高機能なHEMSになると、個々の電化製品に接続してそれぞれの消費電力を知ることが可能です。さらに、電化製品の使用状況に応じて自動的に運転を抑制できるなど、電力の節約に大きく貢献してくれます。

今までは電力消費は目に見えず、電気料金の請求などでしか把握できませんでした。しかし、HEMSの導入によって、ご家庭の電力消費の内訳を詳しく知ることができるようになったのです。

HEMSの普及には政府や企業も積極的に取り組んでおり、太陽光発電やオール電化などの設備を設置しているご家庭を中心に利用され始めています。

スマートメーターとは

HEMSを使用する際に欠かせないのがスマートメーターです。
スマートメーターとは、情報通信機能を持った高機能電力メーターのことです。これまで電気料金の請求は、検針員が各ご家庭を訪問して電力量計(機械式メーター)を調べてから行われていました。しかし、スマートメーターなら消費電力量を直接電力会社に送信するため、これまでのような訪問による検針が不要となります。

ちなみに、スマートメーターの導入は、電力小売自由化には欠かせない設備です。
2016年にの電気小売の全面自由化で続々と参入した電気事業者は、利用者のライフスタイルに合わせたさまざまな料金プランを提案しています。中には時間帯を細かく区切り、それぞれ異なる料金を設定することで電気料金の節約を提案するプランもあるため、消費電力量が詳細に把握できるスマートメーターは必須なのです。

スマートメーターは現在、電力会社により徐々にご家庭に導入されはじめており、2020年代にはすべてのご家庭に導入される見通しです(※1)。将来的にはHEMSを設置し、スマートメーターと連携させて、使用している電気料金プランに合わせた電気の使い方を自動で設定できるようになっていくと考えられています。

※1 出典:総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会(第10回会合)長期エネルギー需給見通し関連資料


スマートメーターについて詳しくチェック

HEMSが政府に推進されている理由

HEMSが政府に推進されている理由は大きく2つあります。

1つ目は温室効果ガスの排出量削減です。2021年の地球温暖化対策推進本部で、政府は2030年までに温室効果ガスの46%の削減を目標に掲げました(※1)。発電によるCO₂の排出は、地球温暖化の原因である温室効果ガス増加の原因として大きな割合を占めています。そのため、企業からご家庭まで電気の節約が急務となっているのです。

2つ目は発電設備の安定運用と低コスト化です。2011年の東日本大震災で電力供給量が不足する事態に見舞われたことから、政府はスマートハウスを始めとする省エネ住宅の普及に本格的に乗り出しました。
発電設備は通常、最大の電力需要を想定しているため、1日の電力需要の差が大きいほどコストに無駄が生じてしまいます。
電力需要がピークとなる時間帯に消費電力を制御できるHEMSならば、昼のエネルギー消費をなるべく夜に移行するなど電力需要の平準化に貢献し、発電設備の安定的な運用と低コスト化ができるという狙いがあるのです。

先述したスマートメーターは2020年代、ご家庭の消費電力量を把握し制御するHEMSは2030年ごろまでにすべての世帯に導入することを目指し、政府による取り組みが進んでいます(※2)。

※1 出典:日経ESG「どう挑む温室効果ガス46%削減」
※2 出典:総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会(第10回会合)長期エネルギー需給見通し関連資料

HEMS導入の目的

方向標識の画像 方向標識の画像

地球温暖化対策や節電、節約のために今後必須となるHEMS導入には、具体的にはどんな目的があるのでしょうか。ここからは、HEMS導入の2つの目的について解説していきます。

エネルギーの見える化

HEMS導入の大きな目的は、エネルギーを「見える化」することです。これまで使用電力量を知るためには、月々の検針や電化製品の消費電力量から計算するしか方法がありませんでした。しかし、HEMSの導入によって、電化製品や装置それぞれが実際に消費している電力量や時間帯などの内訳を数値で知ることができます。

HEMS導入で消費エネルギーを詳細に把握すれば、節約方法や目標を立てやすく、効率良く節電ができるのです。これまで以上にエネルギーを節約するためには、HEMSは必要不可欠と言えます。

エネルギーの一元化/一元管理

HEMS導入のもう1つの目的は、エネルギーを一元化し、管理することです。HEMS導入後のご家庭では、すべての電化製品・電気を動力とする装置を、タブレットやPCなどの端末で把握・制御することができます。

HEMSは接続された電化製品を遠隔操作することも可能なため、外出先から電化製品の稼働状況を調節したり、不要な電気のスイッチを切ったりと、さらに効率良く電気を節約することができます。状況によってきめ細かく消費電力量を調節できるエネルギーの一元管理は、HEMS導入で実現可能な新しい節電方法です。

HEMSの仕組みと導入方法

HEMSの基礎知識をお伝えしたところで、次はその仕組みや導入方法について見ていきましょう。

HEMS使用例 家と電気製品とEVカーの画像 HEMS使用例 家と電気製品とEVカーの画像

※出典:資源エネルギー庁ウェブサイト


まずは、HEMSの基本的な仕組みについて説明します。

①電気量を測る機械を配電盤などに設置する
電量消費量の計測ができるよう、HEMS対応の電力測定ユニットを配電盤や分電盤、コンセントなどに設置します。こうした装置の設置は工務店など専門業者が行います。

②インターネットで情報を共有する
設置した測定機器から送られたエネルギーの使用状況は、オンラインで利用者や電力会社に共有されます。

③電力使用データをパソコンやスマホなどで確認する
インターネットで共有された情報は、パソコンやスマホなどの情報端末で確認することができます。また、製品によっては専用のモニターや端末用アプリで電子機器の運転を制御可能です。

まず、HEMSの導入・設置には以下の2つが必要です。各メーカーからは既存住宅、新築住宅向けにHEMS対応の製品が数多く販売されています。

①スマートメ―タ―
前述の通り、通信機能を持った高機能電力メーターは消費電力量を測る、HEMS導入に欠かせない機器です。

②計測を行う機器
消費電力量を計測するためには、専用のエネルギー計測ユニットやHEMSに対応した分電盤などの機器も必要です。

HEMSで把握できるもの

HEMS導入によって把握できるようになるのは、世帯ごとのエネルギーの利用状況です。HEMSならば、次のようなことを詳しく知ることができます。

まずは、電力消費量の詳細な内訳です。これまでは総量でしか見ることができなかった電力消費量を部屋単位、コンセント単位で把握することができます。また、電気だけでなく水道やガスといったライフラインと連動して1世帯のライフラインの実態を詳しく知ることができます。

また、電気の使用実績は常に記録されるので、1日単位、1週間単位での電力消費量を見ることも可能です。また、これらの使用実績はグラフなどで見ることができるので、天候や家の滞在時間などの状況から電力使用を分析することもでき、効率的な節電対策が立てやすくなります。

HEMSのメリット

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1世帯のエネルギー利用について詳しく知ることができるHEMSですが、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。

「見える化」によって節電が進む

HEMS導入の最大のメリットは、エネルギー消費を目で見て確認できることです。

HEMSを導入することで家の中で稼働している電気機器がどれだけの電力を消費しているか、モニターで詳しく見ることが可能であることは先ほど説明した通りです。

例えば、ある部屋の消費電力量が高ければその部屋で使う電化製品を見直したり、時間帯や週の中で電気を特に多く使う日が見つかれば電気やエアコンなどの使い方を考えたりと、節電対策を具体的に立てることができます。

さらに、ご家庭内で使うエネルギーを「見える化」することで家族全員に問題意識が芽生えます。みんなで協力して節電に取り組むことができるのも見逃せないポイントです。

電化製品や機器の自動制御が可能

先述の通り、HEMS導入には電化製品や電子機器の自動制御が可能であるというメリットもあります。例えば、時間帯によって電気料金が変わるプランを契約している場合、料金が安くなる時間帯に電力消費量の多い電化製品を稼働させれば電気料金の節約に役立ちます。

「スマートメーター」の項目で説明したように、電力の小売自由化によって利用者のライフスタイルに合わせた多様な電気料金プランが提案されています。こうしたプランとHEMSの特徴を上手に組み合わせて利用すれば、電気料金をより低く抑えることもできるのです。

また、蓄電システムや充電式バッテリーを活用することで、最も電力需要が高まる時間帯の消費電力を抑えるピークカットも期待できます。

外出先から家の機器を操作できる

HEMSのメリットとして、外出していても家の機器の運転を制御できることも挙げられます。

オンラインでエネルギーを一元管理できるHEMSに対応しているものであれば、スマートフォンなどの端末をリモコンとして使い、どこにいても機器のON/OFFなどの操作が可能です。

例えば、電化製品のスイッチの消し忘れを端末で確認したとき、遠隔操作ですぐに切ることができます。また、帰る時間に合わせて風呂の給湯を開始したり、帰宅の直前にエアコンをつけておいたりと、HEMSの機能は効率的かつ便利に活用できるのです。

また、HEMSには一定以上の電力を使用した場合や水道が使われたときなど、状況に応じて登録した連絡先にメールを送付する機能もあります。この機能を利用することで、家族の帰宅や、遠方に住む高齢者の生活状況などを確認することも可能です。

電気以外のエネルギーも管理することができる

HEMSのメリットは電化製品の遠隔操作や消費電力量の把握だけではありません。太陽光発電システムを持つご家庭の発電量や、蓄電池の状態などもHEMSで一元管理できるため、自ら操作しなくとも最適な時間帯に蓄電システムを作動させてくれます。

さらに、電気のほかにもガスや水道などのエネルギー使用量もすべて一元管理することができるため、世帯全体でのエネルギー利用のコストカットが狙えます。

HEMSのデメリット

数々のメリットを持つHEMSですが、デメリットもあります。導入に際し、マイナスポイントも押さえておきましょう。

導入コストがかかる

HEMSのデメリットとしてまず挙げられるのが導入コストの高さです。導入するHEMSの機器や工事内容によって金額は異なりますが、平均で10万円~30万円ほどのコストがかかります。

システムの運用には費用はかからない場合が多いものの、HEMSに必要な専用機器の購入・工事費用は自己負担となります。ただし、住宅用太陽光発電装置や蓄電システムの導入に際して、HEMSを含めた導入費用の補助が出る場合もあるので、各自治体や政府・メーカーの公式サイトなどで一度チェックしてみましょう。

また、近年では1~2万円台から手に入るモデルも発表されており、HEMSのデメリットを補う製品の登場が注目を集めています(※2)。

※1出典:スマートソーラー「太陽光蓄電池機器導入の自治体別補助金制度」
※2出典:PHILE WEB「1万円台から買えるHEMSシステム「Nature Remo E」シリーズ。手軽に家庭のエネルギーマネジメント実現」

HEMSに対応した機器が少ない

HEMSに非対応の機器であっても、消費電力を把握することは可能です。しかし、HEMSによって自動制御できる電気機器はHEMSに対応した製品のみとなるため、導入の際には買い替えの必要も出てきます。

さらに、異なるメーカー間では互換性がない可能性もあるため、違うメーカー間の電気機器をHEMSに接続することはできない場合もあるのが難点です。

ただし、メーカーの多くはこの問題解決に乗り出しており、互換性のある商品も開発されています。(※1)導入の際にはこうした点もチェックしておきましょう。

※1出典:三菱電機「Q.他社の機器は三菱HEMSに対応していますか?」
株式会社デンセン「HEMSの発展性は?」

認知度がまだ低い

HEMSの認知度がまだ低く、導入した人の口コミや語られるコストメリットが見つかりにくいのもデメリットです。

どれくらい電気料金が安くなるかなど明確な事がわかりにくい状況では、コストの高さだけが目に付いてしまいます。積極的にHEMSを導入しよう考える人が増えるよう、認知度を上げていくことがHEMSの今後の課題といえるでしょう。

まとめ

ご家庭の消費電力量を一括で把握・管理し、コンセント単位での消費量の内訳がわかるHEMSは、将来的にすべての世帯に導入される見通しです。

エネルギーの「見える化」や電化製品の遠隔操作や自動運転など未来のエネルギー利用の形に備えて、今から必要な知識を得て備えておきましょう。

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