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森林破壊の現状は? 今起きている問題と私たち個人ができること 森林破壊の現状は? 今起きている問題と私たち個人ができること

私たちが生きる地球は、環境に関連するさまざまな問題を抱えています。そして、私たちは誰一人としてそのことと無縁ではありません。現在進行中の森林破壊もその1つです。

この記事では、森林破壊の現状とその原因を探りつつ、解決に向けた課題を解説していきます。

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森林破壊とは

森林破壊とは、人間が行う森林伐採や森林火災などが原因で世界各国の森林面積が減少する状態のことを指します。自然の回復力を上回るスピードで森林伐採や焼失などが進行すると、森林面積は減少していく一方になります。

森林破壊は、単純に樹木が失われるだけにとどまらず、そこに生きる動植物などの生態系や人間の経済生活にも影響を及ぼすことになります。また、近年差し迫った重大問題となっている地球温暖化をさらに進行させる原因にもなります。

森林破壊の現状

森林破壊の現状 森林破壊の現状

地球上の森林破壊がどのように進行しているのか、統計から見ていきましょう。国際連合食糧農業機関(FAO)が公表する「世界森林資源評価(FRA)2020」によると、全世界の森林総面積は40億6,000万ヘクタールで、陸地面積の約31%を占めます。ロシア連邦を含むヨーロッパは世界の森林面積の25%を占め、南アメリカが21%、北中米が19%、アフリカが16%、アジアが15%、オセアニアが5%となっています。

全世界の森林面積は減少を続けており、1990年以降の30年間で1億7,800万ヘクタールもの森林が失われています。これは日本の国土面積の約5倍に相当します。

しかし一方で、植林活動と森林の自然拡大による森林面積の増加により、1990年以前よりは森林純減速度は低下しました。

※出典:国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 世界で最も包括的な森林資源の分析 新たな形式で発表

森林破壊は世界のどこで起こっているのか

世界の森林破壊は均等に進んでいるわけではなく、熱帯を中心に限られた地域で進行しています。再びFRA2020を引用しますと、2010年から2020年までの年間平均で森林面積が純減した世界上位10か国は、ブラジル、コンゴ民主共和国、インドネシア、アンゴラ、タンザニア連合共和国、パラグアイ、ミャンマー、カンボジア、ボリビア、モザンビークとなります。その多くは赤道付近の国々です(※1)。

その中でも、マレーシア、インドネシア、ブルネイにまたがるアジア最大の島・ボルネオ島の熱帯雨林の減少は深刻です。WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、パーム油を生産するためのアブラヤシ農園の拡大によって森林伐採が進み、2015年には熱帯林の面積がもともとの約3分の1にまで減少したと伝えています(※2)。

※1 出典:国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 世界で最も包括的な森林資源の分析 新たな形式で発表
※2 出典:WWFジャパン ボルネオ島の森を守る!パーム油の小規模農家との取り組み

アマゾンやオーストラリアでの大規模森林火災

オーストラリアでは、2019年から2020年にかけて大規模な森林火災が発生しました。この森林火災により34人が死亡し、約3,000件の家屋および数千のビルが焼失したとされています。また、生態系への影響も甚大で、コアラは総数の3分の1に相当する個体が死亡したと伝えられています(※1)。

2019年には、ブラジルのアマゾン熱帯雨林地域でも森林火災が多数発生しました。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)は、2019年の1年間で過去最高となる72,843件の火災を報告しました(※2)。

人為的な森林伐採は森林破壊の大きな原因の1つですが、それと並んで森林火災も破壊の1つの要因となっているのです。

※1 出典:国立環境研究所
※2 出典:ナショナル・ジオグラフィック「アマゾン森林火災、原因は「過剰な伐採」と専門家」

森林破壊の主な5つの原因

森林破壊はどうして起こるのでしょうか。ここではその主な原因について、5つにまとめて説明します。

1.土地利用への変換

世界の人口の増加とともに、食料やエネルギー需要が増加します。その結果、森林が農地などほかの用途に転換されています。前述したボルネオ島の例では、パーム油生産のためのアブラヤシのプランテーション農園へ、アマゾンではサトウキビ農園や牧場などへの転換が行われています。

特に近年では、パーム油の生産拡大が問題視されています。パーム油はポテトチップスやパンなどの加工食品、洗剤、せっけん、化粧品などに使われ、世界で最も消費されている植物油です。このパーム油生産の拡大は、熱帯雨林の伐採を進行させるだけでなく、そこを住処にしている動植物にも深刻な影響を及ぼし、生物多様性の喪失を招いていると指摘されています。

2.違法伐採

各国政府は、森林を守るために伐採できる木材の量や面積、区域などを法令で定めています。それらの法令を守らずに森林を伐採する行為を「違法伐採」と呼びます。

国際森林研究機関連合(IUFRO)によりますと、丸太と製材の違法伐採木材の貿易額は世界で63億米ドルにのぼると推定されています(※)。

違法伐採が引き起こす問題は、森林破壊にとどまりません。アマゾンなどが典型ですが、違法伐採・土地収奪によって森林に依存する先住民の暮らしや文化が破壊されています。また、コストをかけずに生産された違法伐採木材が不当に安い価格で国際市場に流通することで、持続可能な森林経営を阻害することが指摘されているのです。

※出典:環境庁

3.非伝統的な焼畑農業の増加

焼畑農業とは、森林や原野を刈り払い倒した樹木や草本などを燃やして、陸稲、イモ類、雑穀類などを栽培する伝統的な農業の手法のことです。数年間農地として利用した後に別の場所に移動して、自然の回復力で森林に戻すというサイクルを繰り返します。

近年では、植生がきちんと回復するのを待たずに、再び草木を焼き払う焼畑が開発途上国を中心に頻発しています。焼畑のサイクルを短縮させ、森林が回復しないうちに再び焼いてしまうと、土地の地力が劣化してしまい、森林が再生しなくなります。

こうした持続可能ではない非伝統的な焼畑農業の拡大は、森林破壊の大きな原因の1つとなっているのです。

4.燃料用木材の過剰な採取

開発途上国では、現在でも日常生活の燃料として薪や炭を利用しており、そのために森林が伐採されています。人口の増加などの原因により、伐採のペースに森林回復のスピードが追い付かず、森林の減少や劣化が起こっているのです。

5.森林火災による消失

森林火災による森林面積の消失も、森林破壊の原因の1つに数えられます。森林火災の原因は自然発火と人為的原因の2つに大別することができます。

自然発火

前述したオーストラリアの大規模森林火災や、2021年夏にアメリカのカリフォルニア州で発生した山火事がそうですが、猛暑による乾燥が火災の原因となっています。乾燥によって落ち葉や枯れ草の水分が失われ、風が吹くことで枯れ葉同士が摩擦して種火が生まれ、ほかの乾燥した枯れ葉や枯れ草へと燃え移ることで、火災が広がります。

また、カリフォルニア州の例では、火災の発端が落雷であったことが報告されています。

人為的原因

日本では森林火災の多くが人間の不注意によるもので、自然現象は稀です。森林火災の原因を2015年から2019年の平均で見ると、「たき火」が30.2%で最も多く、次いで「火入れ」が17.5%、「放火(疑い含む)」が8.4%、「たばこの不始末」が5.1%となっています。

また前述したアマゾンの大規模森林火災の原因は、森林伐採と野焼きによるものとの見方が有力です。

※出典:林野庁 山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?

森林破壊によって地球に起こる影響

伐採された森林の写真 伐採された森林の写真

森林破壊が進行すると、地球にはどのような影響があるのでしょうか。生態系の問題と気候変動の問題に絞って見ていきます。

生態系が崩れてしまう

森林が減少することによって、動植物の生態系が破壊され、多くの野生生物を絶滅の危機に追いやる大きな原因につながってしまいます。一度滅びた種は、二度と地球上に戻ることはありません。生物多様性の確保といった点からも、森林破壊の問題は深刻です。

国立環境研究所によれば、熱帯雨林が地球の陸地に占める割合は7%に過ぎませんが、そこに生息する生物は地球上に生存している生物の50~80%にのぼるとされています(※)。熱帯雨林の消失は動植物にとってインパクトが大きく、種の維持が困難なほどに生息地が狭められる可能性があります。

※出典:国立環境研究所

気候変動をもたらす

植物は大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、光合成により体内に固定します。樹木の集合体である森林は、温室効果ガスである二酸化炭素の吸収源となるのです。その森林が失われると、空気中にある二酸化炭素の取り込みができなくなってしまいます。そのため、二酸化炭素濃度が高まり、地球温暖化が加速するように働きます。

2015年に締結され、2016年に発効した地球温暖化対策の国際協定・パリ協定では、2030年のCO₂の排出量が2013年比でマイナス26%という目標と定められていますが、そのうちの2%は森林による吸収とされています(※)。

※出典:独立行政法人農林漁業信用基金

昨今の森林破壊が続いてしまうと、パリ協定の目標達成は困難になります。そのことをふまえ、パリ協定は第5条において「森林の減少及び劣化の抑制」を強調しています。

森林破壊によって起こる人への影響

前章では、森林破壊によって起こる地球への影響を見てきましたが、ここでは人間社会に与える影響について見ていきます。

社会問題を引き起こす

森林破壊は社会問題と密接に結びついています。現在、世界人口の4分の1以上に相当する約16億人が森林を生活の糧にして暮らしています。そのうち7,000万人が先住民です。

森林が失われることは、そうした人々の暮らしや文化を奪うことにつながります。そしてそれは、貧困や飢餓の問題に直結します。さらに、それを発端とする児童労働、強制労働、売春の増加、犯罪の増加などのさまざまな社会問題を引き起こしてしまいます。

※出典:国際連合広報センター 持続可能な開発目標(SDGs) - 事実と数字

新たな感染症が拡大する恐れ

森林が破壊されることで、新たな感染症が拡大することがあります。森林を追われた野生生物が人や家畜と接触する機会が増えるため、未知の感染症が広がっていく恐れがあるのです。

1997年のインドネシアでは、森林火災によって森から果樹園に住みついたオオコウモリを媒介として、「ニパウィルス」の感染が広がり、1999年までに265人が重度の脳炎を起こし、105人が死亡したと伝えられています。

マラリアを媒介する蚊、ライム病を媒介するマダニなども森林破壊が引き金になっているケースが報告されているのです。

※出典:ナショナルジオグラフィック 深刻な感染症、森林破壊のせいで増加、研究

森林破壊を止めるために行われている取り組み

これまで見てきたように、森林破壊は後戻りできないほどに進行しています。これを食い止めるために、国際的な取り組みが始まっています。代表的な取り組みを3つご紹介します。

持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)

前述したとおり、パーム油はアブラヤシの実から採れる植物油です。カップ麺、お菓子、パンなどの加工食品や化粧品、洗剤、医薬品などの生活用品にも幅広く使われ、最近ではヤシガラをバイオマス発電の燃料にすることも多くなっています。

アブラヤシのプランテーション農園の急速な拡大によって、熱帯雨林が減少しています。しかし、生産国のインドネシアやマレーシアでは、パーム油生産は輸出産業として重要な役割を担っているのも事実です。生産をやめることは現実的ではありません。

そうした中、「持続可能なパーム油」を目指し、生産と利用を促進する非営利組織として、「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil:RSPO)」が2004年に設立されました(※)。

RSPOは生産と流通の2つの場面で規制を取り決めるなどして、環境と調和した持続可能なパーム油生産のための認証制度を運営しています。

※出典:WWF JAPAN

違法伐採を取り締まる制度

違法伐採に関しては、国際的な議論が重ねられてきています。九州・沖縄サミット(2000年)、グレンイーグルズ・サミット(2005年)、ハイリゲンダム・サミット(2007年)、エルマウ・サミット(2015年)において、違法伐採への対策の取り組みが決定されています(※1)。

欧州連合(EU)では、EU市場における違法伐採材の取引を禁止する「EU木材規則(EU Timber Regulation)」が2013年に発効しました(※2)。

アメリカでは、違法伐採対策に対応する連邦法としてレイシー法、熱帯林保護法、絶滅危惧種法があります。

日本では、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)」が2017年5月20日に施行されました。これは、適法に伐採された樹木を材料とする木材・製品の利用を促進することを目的としています(※3)。

※1 出典:外務省
※2 出典:EU MAG
※3 出典:林野庁

持続可能な開発目標SDGs

最近では、主要メディアでも盛んに報じられているSDGs。これは、Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標のことを指します。貧困や気候変動などの地球上の課題を解決し、持続可能な世界を2030年までに目指すものです。

SDGsでは17の目標(ゴール)が掲げられており、そのうちの1つのNo.15は「陸の豊かさも守ろう」となっています。このゴールは12のターゲットで構成されており、森林減少の阻止、劣化した森林の回復、世界全体での新規植林と再植林などを訴えています。

※出典:外務省

森林破壊を止めるために私たち個人ができること

森林破壊を止めるためには、政府や企業だけでなく私たち個人の行動が必要です。私たちのなにげない普段の生活が、地球の未来に関わってくるのかもしれません。そんなつながりを意識することが、森林破壊を食い止める私たちの第1歩になります。

具体的には、この記事でご紹介したRSPO認証のパーム油を使った製品を購入するところから始めてみるのはいかがでしょうか。探してみると、多くの商品にRSPOのマークが見つかります。買い物の際は、RSPOのマークが付いていないか確認してみましょう。

木材製品を購入するときには、FSCマークを目印にするといいかもしれません。これは、FSC認証制度(森林認証制度)で認証された木材製品に付けられるマークで、適切な森林管理が行われているか、そういった森林からの資源で製品がつくられているかどうかに着目して認証されているものです。

消費行動のベンチマークとして、RSPOやFSCなどの認証制度を知っておきましょう。認証制度を意識することで、私たちの普段の買い物が森林破壊防止に役立っていくでしょう。

1人ひとりの取り組みで地球の未来を変えていこう

「消費者の行動が地球の未来を変える」。これは森林破壊に限った話ではなく、環境問題全体についていえることです。

現在、待ったなしの問題となっている地球温暖化についてもそうです。発電時にCO₂を排出しない再生可能エネルギー由来の電気を選ぶことによって、再生可能エネルギーの普及・拡大に寄与することができます。

地球温暖化が気になっている方は、Looopでんきの環境価値サービス「eneco」がおすすめです。Looopでんきは再生可能エネルギー実質100%、CO₂排出量実質ゼロの電気「eneco RE100%」というプランを提供しています。私たちの未来のために、普段使う電気から見直してみてはいかがでしょうか。

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  • Q 森林破壊とは? 矢印アイコン

    森林破壊とは、人間が行う森林伐採や森林火災などが原因で世界各国の森林面積が減少する状態のことを指します。自然の回復力を上回るスピードで森林伐採や焼失などが進行すると、森林面積は減少していく一方になります。

  • Q 森林破壊によって地球に起こる影響は? 矢印アイコン

    森林破壊によって生態系が崩れてしまう、気候変動をもたらすなどの影響が挙げられます。